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第21話 罪状確認の時間

 リュカオン様は宝石店店主に渡された書類にざっと目を通した。 

 そして私にも書類を渡してくる。


 癖のある字に少し悩みながらそれでも私は書かれていることを確認した。

 先程盗聴していた内容とほぼ同じだ。


 聖女アイラの身勝手な契約不履行によりの部分に視線が険しくなる。

 私を貴族学園に入学させることに関わったのは教会と学園首脳陣と王家だ。

 契約内容についてなど私だって簡単にしか知らない。


 ただの生徒の一人でしかないジョンが把握している筈も無いのだ。


「言いたいことはあるか?」


 リュカオン様が尋ねて来る。

 声を出していいと判断し私は口を開いた。


「この文面を書いた者はそもそも契約内容自体知らないと思います」

「やっぱりそうか」


 大体私は聖女候補であって正式な聖女では無い。

 その点についてはジョンだって散々馬鹿にしていたではないか。


 聖女は偉いかもしれないが、お前はただの候補なのだと。

 聖女になれなければ男爵家からも外され平民孤児に戻るだけだと。


 当時はその無知さに呆れるだけだったが、立場を悪用された今は腹立たしい。

 聖女に選ばれなかった場合など余計なお世話だ。

 少なくとも学園にいる間は建前だけでも男爵家の子女扱いすべきだろう。


(そんな弁えが出来ないからこんなことをするのだろうけれど)


 このままでは書類を握り潰しそうになる為リュカオン様に返す。


「では不埒ものを罰しに行くか」

「はい」


 リュカオン様が勢いよく扉を開く。

 来客用のふかふかした椅子にだらしなくふんぞり返っていた二人は驚いた顔をした。


「初めましてだな王家の財をくすねようとする大罪人共、俺は辺境伯家当主リュカオン・ゴットフリートだ」


 ニヤリと獰猛な笑顔を浮かべてリュカオン様は名乗る。

 悪徳商人とジョンはそれぞれ違う部分に反応した。


「へっ、辺境伯家当主?!」

「おっ、王家って……なんのことだよっ、アイラ?!」

「大罪人が私を呼び捨てにしないでください、汚らわしい」


 リュカオン様の背後にいた私に気付いたのかジョンが私の名前を呼ぶ。

 それに本心を隠さず冷たく返答した。

 すると何故かジョンは傷ついたような顔をした。意味が分からない。


「店主っ、これはどういうことだ!!」

「どうと仰られましても」


 顔を真っ赤にして中年商人は怒鳴る。

 先程までの気弱な演技が嘘のように店主はけろりとした顔で答えた。


「浄化石を購入される方は辺境伯様だと申し上げましたでしょう?」

「だっ、だが……何も本人が来なくても……」


 もごもごと言い訳をする商人の横にリュカオン様が座る。いつのまにか椅子が増えている。

 代わりに店主が座っていた横の椅子が消えていた。


 恐らくそれなりに重さのありそうな椅子をパンでもつまむように音もなく持ち上げて移動していたのだ。


「来ない訳には行かないさ。下手したら王家への反逆を疑われるところだった」

「はっ、反逆……とは?」


 ずいっとリュカオン様に顔を近づけられた商人は赤い顔で訊き返す。焦って興奮しているだけだと思いたい。


「俺たちが辺境で魔物と戦うのは王命だ。これは理解できるか?」

「えっ、は、はい……素晴らしいことだとおもいます」

「そして浄化石は瘴気に対抗し魔物を倒し続ける為に必要不可欠なものだ。ここまでも理解出来るかな?」


 いっそ優しい口調でリュカオン様は言う。

 幼い子供に教え聞かせるような言葉に私も流石に気づいた。

 商人とジョンは私が想像したよりももっと大それたことをしようとした。


「つまり、浄化石に対しての購入費用は王家からもご負担いただいているってことだ。お前たちは王家の金庫から泥棒をしようとしたんだよ」


 赤かった商人の顔が青さを通り越し白くなる。

 ジョンはおろおろと私を見てくる。私はそれに笑顔を返した。


「そしてその罪を教会側に被せようとしたことも含めて、貴方たちは国で上位の大罪人になりますよ」


 今後貴族学園で使われる教科書に名前付きで載るかもしれませんね。

 私の言葉にジョンは廃人のようになった。


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― 新着の感想 ―
まぁ普通に一族連座の大逆罪だよな
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