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第18話 怪しい商人と胡散臭い元同級生

 辺境の町はそれなりに賑わっていた。

 店が複数あるし飲食店もある。宿屋は酒場と兼任のようだった。

 

 建物や人の数的に住人は数百人程度だろうか。

 店の呼び込みの声も知り合いに向けられてる者が殆どだった。


「まず何か食べるか」

「いいですね」


 リュカオン様に言われて串焼き屋に近づく。

 匂い的に羊肉だろうか。


「串焼きをそのまま食べる形でも大丈夫か?」

「大丈夫です」


 確認してくる彼に私は答えた。

 屋敷の食堂で食べる時私の分だけ盛り付けが細かいのは彼の指示だったのかもしれない。

 初日に肉は食べられるかとも聞かれた。

 確かに聖女には肉食をしなかったり、ナイフとフォークが無いと食べられない人もいる。


(でも私は食べ物なら腐りかけでも落ちた物でも食べていたし)


 寧ろ貴族学園に入る為にテーブルマナーを必死で覚えた反動で雑な食べ方に戻りたかった。

 渡された串を前に軽く祈りの言葉を吐きだす。食事への感謝の祈りだ。


 そして脂がふっふっと表面で震える香ばしい羊肉にかぶりついた。

 熱い。そしてやや固い。だがそれが美味しい。


(お肉を食べてるって感じがする)


 学園で出された料理も間違いなく美味しかったが私はこちらの方が好きだなと思った。

 何より気を抜いて食べることが出来る。


 私が串焼きを一本食べ終える頃にはリュカオン様は三本目に齧りついていた。

 大きな口が大きな肉の塊をやすやすと食いちぎっていく。

 今食べている肉がこの人のたくましい体の一部になるのだなと納得出来た。


 広間の端で立ち食いをしながら人々の流れを目で追う。

 大抵がこの町で暮らしている人たちだろう。


 ただその中にあからさまに異質な集団が居た。

 裕福な商人一行だが何が楽しいのかニタニタと笑っていて雰囲気がおかしい。

 そして中年男性ばかりの中に一人、十代の少年が居た。場違いに制服を着ているようだ。


「あっ」

「どうした?」

「えっと、その……貴族学園の生徒が居たので驚いてしまって」

「貴族学園の生徒?」


 何故そんなのがこの場所にと言いたげな顔をリュカオン様がする。

 私も同意見だった。


「しかも彼は……」


 王太子の取り巻きの一人で、確かジョンという名前だ。

 着替えている私と一緒に王太子に置いて行かれたので立場は下の方だろう。


 ちなみに私が学園を出ていく時に「生意気な孤児は出ていけ」と叫んでいた男子生徒でもある。

 そんな彼が何でこんな辺境の町にいるのだ。しかもわざわざ貴族学園の制服なんて着て。


(まさか王太子も来てないわよね……)


 きょろきょろと探したが幸いあの目立つ姿は見当たらなかった。

 横で私の言葉を待っているリュカオン様に伝える。


「あの男子学生は王太子殿下のお供みたいな真似をしていました。何故ここにいるのかわかりません」

「王太子殿下は来ていないのか?」

「恐らく、そして彼はあの胡散臭い商人たちと同行しているようです」


 そういえばと思い出す。ジョンの家の領地には宝石が出る鉱山が幾つもあるらしい。

 その中には聖女がお勤めに使用するアイテムの原料になる宝石も含まれていると以前言っていた。

 だからお前は聖女を代表して俺に感謝しろと言われ雑にお礼を言ったこともある。 


「宝石の出る鉱山を幾つも持っていて、聖女たちも感謝するべきだと言っていました」

「成程宝石か……浄化石の原石を売りつけにでもきたのかな」


 リュカオン様に言われて、私は聖女がお勤めに使うアイテムの正体を知った。 


「ただ、たちの悪い笑い方してるな。あれは悪さをして儲けてやるって顔だ」

「そうなんですか」

「そうだよ。ここは辺境だから物知らず相手にぼったくれると思う奴がたまにいるんだ……よし」


 リュカオン様は食べ終えた串と私の串をまとめて串焼き屋の店主に渡す。


「あいつらがこの町で何をやらかすか、劇代わりにでも鑑賞でもしてみるか」


 にやりと笑うリュカオン様は不思議な迫力と魅力があってまるで二枚目役者のようだった。


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