9.剣の反響
グンツに剣を売ってから数日がたった。工房の前に数人の冒険者がやって来た。名前は銀嶺の森と言うらしい。
「グンツに剣を作った工房はここでいいのですか」
「はい、ここでグンツの使う剣を作りました」
「俺達は銀嶺の森という冒険者なんですけど、俺達にも同じような剣を作ってほしい」
「わかりました。お代は剣1本に付き金貨2枚です」
「金貨2枚か。少し安くならないか」
「無理です」
「わかったよ、そんな怖い顔しないでくれ」
結局剣の注文が6本入った。早速ティナ親子は剣の製作にかかった。前回は一度打った剣をもう一度次の日に打ち直したので、今回は最初から何度も重ねるように、剣の芯は粘り気が出るように、そして剣の表面は固くて鋭く切れるように打っていった。
ハンマーで叩いていると鉄が喜んでいる。そう感じることが出来た。そしてこれでもかというほど魔力を込めた。
時間が経つのも忘れて一心に鉄を打っていると、母親が夕食の時間だと呼びに来たが、そのまま鉄を打ち続けた。そして、夜半には6本の剣が打ちあがった。横で母親があきれていた。
「あなたたちはやっぱり親子ね。剣を打ち出すと何も見えなくなるのだから」
「そうだな、ティナも俺に似て、ハンマーを持つと周りが見えなくなるようだ」
「ごめんね、お母さん。私鍛冶は好きみたい」
「そうね、お父さんの子供ね」
それから遅い夕食を取った。そして、そのまま寝た。
次の日ティナは花時計のところに行った。
「私、剣を打てるようになったの、そして、私の打った剣をお客さんが喜んでくれた。これからも、いい剣が打てるように」
そう言って祈った。
花時計は何も言わなかったが、喜んでいるように思った。少なくとティナには花時計の喜びが伝わってきた。
花時計の周りには相変わらず近所の子供たちの歓声が聞こえていた。
それからしばらくして、グンツが剣の残りの代金銀貨5枚を払いに来た。
「これ残りの代金銀貨5枚です」
「はい確かに受け取りました。それに剣を宣伝してくれたみたいでありがとうね。あらからちょくちょく冒険者が剣を注文に来るようになった。グンツのおかげね」
「それほどでも、僕はただ買った剣がよかったって、仲間の冒険者に言っただけだよ」
「でも、それで注文が来たのはうれしかったわ。ありがとうね」
「役に立ったのならよかったです。僕も剣を安く売ってもらえましたので」
それからしばらくして、ティナは父親に
「私、剣を打っているだけでなく、剣がどのように使われているか知りたいわ。するともっといい剣が打てるような気がする。私も冒険者になってみてもいい」
「たしかに自分の打った剣がどのように使われているのを知るのは大事なことだが、危なくないか」
「大丈夫よ、私火魔法が使えるから、いざとなった火魔法で倒すわ」
「そうか、危なくないのならいいが」
父親の了解が得られたので、ティナは自分用の剣を1本作った。それから、冒険者ギルドに行って冒険者登録をした。冒険者ギルドに行くと、先日剣を買ってくれた銀嶺の森の冒険者たちがいたので
「いつも剣を打っているのだけど、私の打った剣がどのように使われているかを知りたくて、冒険者登録したのだけど、魔獣を狩るところを見せてもらってもいいかしら」
「お嬢ちゃん、剣を使ったことはあるの」
「ない」
「それじゃ魔法は」
「火魔法が使える」
「取りあえず実力を見てからだな、邪魔になるようだと連れて行けない」
「どうしたらいいの」
「地下の訓練場で実力を見せてもらう」
ということで、地下の訓練場に来た。
「まず、剣の使い方を教えてやる。そこの木剣を取れ」
「わかった」
そう言って、そばにあった木剣を取った。
「いつでもいいぜ、かかってきな」
「わかった」
ティナは思い切り地面をけった。そして剣を振り上げその冒険者に切りかかった。冒険者はティナの剣をよけると、足払いをしてティナを転がした。
「やっぱり剣はダメだな」
「次、魔法。あの的に向かって魔法を放ってみろ」
「わかった」
そう言って、ティナは的に火魔法を放った。
一瞬で的が燃え上がって、そのまま的ごと消えていった。
これには周りを取り囲んだ銀嶺の森の冒険者たちが唖然としている。
「お嬢ちゃん、詠唱は」
「詠唱、それ何」
「詠唱を知らないのか」
「知らない。いつも鉄を打つときに温度が低いといい鉄が打てないから、魔法で温度を上げている。とにかくその瞬間が大事なの、時間が遅れると打っている鉄が悪くなる。だから、いつもこんな感じでしている」
「わかった、連れて行ってやる。その代りお嬢ちゃんは剣でなく魔法で魔獣を倒せ」
「剣は使っちゃダメなの」
「ダメじゃなけど、お嬢ちゃんは剣では魔獣は倒せない。その代り俺たちが剣で魔獣を倒すところを見せてやる」
「剣を使う所を見せてくれるの。ありがとう」
こうして、ティナは銀嶺の森の冒険者たちに魔獣狩りに連れて行ってもらえることになった。




