8.剣の注文
ティナと父親の打つ鍛造品はその形もさることながら強度や粘り気などの点でも優れた評価を得るようになった。そして、今までは馬の蹄鉄や農具といった小物の注文が多かったが、初めて剣の注文が来た。
王都周辺の農家の次男坊が、王都に出てきて冒険者になったのだが、剣を持っていなくて、ジェフの父親の商会の紹介で家族が使っていた鍬や鋤を作っていたティナの父親の工房を訪ねたのである。
「この工房は俺の村でよく使われていた鍬を作っている工房でいいのですよね」
「そうですが、どちら様ですか」
「俺の名前はグンツ、村から出てきて王都で冒険者になった。新しい剣を作りたいのだが、いい工房がないかと思って以前村に行商に来ていた商会に聞いたらこの工房を紹介された。お金はあまりないのだが、剣を1本作ってほしい」
「私どもは主に農具や蹄鉄を作っているので、剣については作ったことがないが、お客様の要望とあらば作ってみたい。剣を作るのは初めてなのでお金は安くしておく。まず、どのような剣をお望みなのかそこから知りたい」
「剣はあまり重くなくて長さは、これくらい、とにかく丈夫な剣が欲しい。あまりお金がないので壊れると買い替えることが出来ない。」
「わかりました、とにかく1本打ってみます。お金はどれくらいならいいですか」
「あまりお金がないので、1本銀貨5枚ぐらいになりませんか」
「銀貨5枚、鉄の値段だけでもそれくらいかかるので、あと鞘と持ち手も作らないといけないし、できたら金貨1枚ぐらいになりませんか」
「今は手持ちがないので」
「それでは、後の代金はその後支払うということではどうですか」
「わかりました。それでお願いします」
「いつごろできますか」
「1週間後に来てもらえますか」
「わかりました。1週間後」
グンツが帰るとティナ親子は
「お父さんどうします。私たち剣なんて作ったことないし」
「とりあえず、ジェフの商会に行って、見本になる剣を1本借りてきてくれ。それを見本に作ろう」
その後、ジェフの商会に行って剣を1本借りてきた。剣を見ながら
「取りあえず打ってみるぞ」
「わかった」
そう言って、親子は剣を打ち始めた。初めての剣ということでティナは気持ちが抑えられない。
「なんかワクワクするね。鉄が私たちを呼んでいるみたい」
「そうだね、俺も興奮している。こんな気持ちは何年ぶりだ」
そうやって剣造りに没頭した。気づけば夕方になっていた。
「こんな感じかな」
「でも、剣というと強さと粘り気が必要なのでしょう。だから剣の強い部分を表面に出して、粘り気のある部分を芯にしたら、強さと粘り気のある剣が出来るのじゃない。そうだな、そうすると違う材質の鉄を打って接合するか」
「そうだね。幾重にも重ね合わせて打ち込んで一体化する。金貨1枚では割が合わないね」
「仕方ない、いつも俺の農具を使ってくれている農家出身の冒険者の頼みだから」
次の日同じようにして昨日打った剣をまた打ち直した。そしてやっと剣の刃が完成した。それをジェフの商会に紹介してもらった工房に持ち込んで鞘と持ち手を作ってもらった。合わせて銀貨2枚取られた。
「鉄が材料費で銀貨5枚、鞘と持ち手が銀貨2枚だと私たちの手間賃は銀貨3枚、私たちが2日もかかったのではとても採算が取れないね。そうだな、この剣だと最低でも金貨2枚はもらわないと割が合わないね。そうだね、これからはそうしよう」
1週間後にグンツが剣を取りに来た。
「剣は出来ましたか」
「剣は出来た。ただ、鞘と持ち手を他の工房に頼んだら銀貨2枚かかった。それで金貨1枚は今回限りにしてほしい。これからは金貨2枚もらわないと俺たちの手間賃が出ない」
「わかりました。今回は特別料金ということで、それからこの剣で依頼がこなせたら後の銀貨5枚は持ってきます」
「頑張れよ。それからこの剣の出来が良かったら感想を聞かせてくれ」
「はい宣伝しておきます」
そう言って、グンツは帰っていった。初めての剣の依頼はそうして終了したのであった。




