7.匠の技
学院入学に向けてジェフの家で家庭教師に教わる傍ら、父親の工房で鍛冶師見習いの修業を始めて5年がたった。ティナは10歳になった。体だもだいぶ大きなったし、力もついてきた。
そして、今日初めてハンマーを握らせてもらえることになった。5年間修業して初めてである。
父親が
「これがハンマーだ。持ってみろ」
そう言われてハンマーを持ってみる。ずしりとした感覚が手に伝わって来る。でも、その重さが何故か心地よい。
「なんか、ずしりと来るね。でも、なんか気持ちいい。ハンマーの思いが伝わってくるというか。そして、鉄の気持ちが分かるような気がする」
「そうか、ティナは鉄の気持ちが分かるか。鉄の叫びが分かるようになると、どのように鉄を打ったらいいかも自然と分かるようになる。俺はまだ、その域に達していないが、一流の鍛冶師は心で感じるそうだ。鉄は生き物。時に激しく、時には優しく、鉄はそういって打つものらしい。ティナは将来一流の鍛冶師になれるかもしれないな」
「ティナがんばる」
「今日は鍬の刃だ。鍬の刃の先の部分は土にうまく食い込むように、土の性質によっても形状や厚さを変える必要がある。
最初はいろいろな形状にして試してみた。そして今の形状に落ち着いた。いわばこれは俺の汗の結晶だ。だから俺の作る鍬は王都周辺の農家に人気だそうだ。
それに、鉄は打てば打つほど緻密になって強度も上がる。そして粘りも出る。そして、その温度も大事だ、鉄は熱い間に打たなきゃならない。若し冷えてくるようだったら自分の火魔法で温度を上げることも必要になる。
それから、大事なことを言う、ティナこっちへ来い」
テイナが父親の側によると、父親はティナの耳元で
「鉄に自分の魔力を乗せるのだ。すると、鉄はさらに強くなる。これは俺が長年鍛冶師をやってきて編み出した秘宝だ誰にも言うなよ。これは俺とお前だけの秘密だ」
そう言って、父親は口元で何かを言いながら鉄を打ち始めた。すると鉄の輝きがました。そして飛び散る火花がまるで吸い込まれるように父親が打っている鉄に吸い込まれていった。
「きれい」
思わずティナはつぶやいた。
作業が終わると、父親は額の汗をぬぐって、
「この鉄の板を同じように打ってみろ」
そう言って、1枚の鉄の板を渡してきた。
「鉄に魔力を乗せる方法は、ハンマーを持つ手に魔力を乗せて、鉄よ強くなれと願うことだ。言葉に出してもいい。だけどこれは俺とお前だけの秘密だ。だからほかに誰かいるときはしないように」
「わかった。鉄よ強くなれだね」
「そうだ」
ティナは渡された鉄の板を炉に入れると鉄が熱くなるのを待った。しばらくすると鉄が赤く輝きだした。それをヤットコでつまみだして、ハンマーで打ち始めた。そして、父親に言われたようにハンマーを持つ手に魔力を込めながら鉄よ強くなれと願った。
するとティナの願いが鉄に通じたようで、鉄の輝きが増した。それからはもう夢中だった。ハンマーを持つ手が軽く感じられる。ハンマーを振るうたびに鉄が喜びの声を発しているように熱い火花が飛び散るが、それはすぐに鉄に吸い込まれていく。
どれくらい時間がたったのだろう、先ほど渡された鉄の板はもう鍬の刃の形になっていた。そして、その先端は鋭くとがっていた。
鉄が喜んでいるように感じたので、作業を止めて、父親を見ると、父親が
「ティナお前は天才だ。俺の言った言葉をすぐに理解して鉄に魔力を乗せることが出来るのだからな。将来は名前持ちの一流の鍛冶師になれるぞ。お父さんはうれしい」
そう言ってティナを抱き寄せた。
それからは、父親と一緒にハンマーを持ちながら鉄を打つようになった。そうティナは見ているだけの見習いを卒業したのである。
私は鍛冶師は素人なので、もし今書いた鉄の鍛造の仕方が間違っていたらごめんなさい。その場合は、これはあくまでの異世界の話と割り切ってください。




