5.教会での勉強会と家庭教師
それからしばらくして、教会で勉強を教わる日となった。教会ではわずかなお金で週に1度、近所の子供たちに勉強を教えていた。
内容は文字の読み書きと計算、この国の人間が守るべき決まり事、そして、教会の教えであった。それ以上のことはここへ来るような子供たちにはあまり必要でないので、というか神父さんもシスターもあまりわかっていないので、教えられないというのが実情であった。
これくらいのレベルのことが出来ると、平民としては暮しに困るようなことはないのである。ただし、貴族と付き合いがあるような場合は、それでは足らないので、家庭教師を雇って授業を受ける必要がある。
来るのはだいたい8歳ぐらいまでの子供が多い。それ以上の歳になるともう家の手伝いや本格的に仕事に就くのでこられないのである。
ティナとジェフは一緒に机に座って、神父さんの言うことを聞いている。今は文字の勉強である。神父さんが黒板に書きだした文字を必死に机の上の板に指でなぞっている。
もう文字を読むのは問題ないようになってきた。書くのはさすがに時々間違える。この世界では紙は貴重品である。家に帰ってから書く練習などできないのである。
また、計算も同様である。ここでは神父の言うことを聞いて練習ができるが、家に帰ってしまえば、練習できない。
やろうと思えば地面に文字を書いて練習したり、計算もお互いに言い合ったりするぐらいである。それに家に帰ってしまえば商人でもない限り難しい計算をすることなどないのである。
「なあ、ティナ、俺のところへ来週から家庭教師が来ることになったのだけど、お前も来るか」
「どうして、じゃもう教会の授業には来ないの」
「うん。親父がうちの商会は今は平民が相手だけど、これからは貴族とも取引していきたいって言いだしたんだ。うちは貴族の知り合いなんていなし、貴族と知り合いになるのは学院に行くのが近道だってことになって、それで来週から家庭教師の先生が来ることになったんだ」
「家庭教師なんて、どこから探してきたの」
「商業ギルドで紹介してもらったらしい」
「うちお金なんて出せないよ。うちジェフのところみたいにお金持ちじゃないから」
「お金は要らないよ。うちの父ちゃんに言ったら1人も2人も同じだろうって言っていたから」
「でも相手の先生がどう言うかわからないでしょう。若しお金がかかるようだたら、私は無理だから」
「わかった、家庭教師の先生に聞いてみる」
ティナは家に帰って
「お父さん、ジェフのところに来週から家庭教師の先生が来るんだって、それでジェフに一緒に勉強しないかって言われたんだけれど。ジェフと一緒に勉強していい」
「お金はかからないのか」
「お金はいいみたい。1人も2人も同じだろうって。それにお金のことは家庭教師の先生に聞いてみるって話だし」
「わかった。お金がかからないならいいけど。ただし、工房での見習いとジェフのところで勉強で、空いている時間が無くなるけどいいのか」
「いい、もう花時計の広場に来る子供たちも、私と同じくらいの子供はみんな仕事で忙しいみたいで、だんだん少なくなってきたから」
「それに、最近はジェフに会うことも少なくなってきたからジェフと一緒に勉強できるのはうれしい」
「そうだなティナはジェフが好きだものな」
「うん」
その後、家庭教師の先生に聞いたところ1人も2人も同じなので、お金は変わらないとのことだったので、ティナはジェフと一緒に家庭教師について学ぶことになった。
しかし、学院ではお金がかかる。それをどうするか。それについては何も考えていないのである。ティナとしてはジェフと一緒にいたい。ただそれだけであった。




