4.鍛冶師見習い
スキル授けの儀式で火魔法を授かったことから、今日からティナは父親の職場で鍛冶師見習いである。最初は火の起こし方と火の温度を一定に保つための練習である。
父親の背中を見ながら、火の温度をつかんでいく。鍛冶師になるには長い期間が必要である。とにかく肌で、火の温度や鉄の状態が分かるようにならないといけない。
何度も何度も同じ工程の繰り返し、それを肌で感じ取っていく。父親のすることをじっと見つめるだけ、今日はまだ何もさせてもらえない。するのは周りを掃除することだけ。まだ、父親の工具や炉には触らせてもらえない。
「お父さん、何かさせてほしい」
「まだ、無理だよ。お前は小さい。俺もおやじに教わったけど、最初はただ見ているだけだった。この蹄鉄も少し間違うと最初からやり直しだ。もう少し大きくなって、このハンマーが扱えるようにったら、させてやるよ」
「わかった。でもつまんない」
「これが仕事だ、いい加減なものを納品すると、注文が来なくなる」
父親の仕事が終わってから、ティナは父親が使っていたハンマーに触ってみたが、重くてとても持てなかった。
「まだ、私には、無理みたい。このハンマーが持てるのはいつのことだろう。子供用のハンマーがあればいいのに」
すると父親が戻ってきた
「ティナにはそのハンマーは持てないだろう」
「重くて持てない。子供用のハンマーはないの」
「そんな物あるわけないじゃないか。お前に持てるようだと軽すぎて力が入らない。生半可な力じゃ鉄は打てない」
「そうか、やっぱり無理か」
「そんなに焦らなくても、そのうち持てるようになるさ。そうさな、後5年ぐらいしたらティナも見習い卒業、何か作れるようになるかもしれないな」
「ええー、5年も先なの」
「そうさ、鍛冶師になるにはそれだけ厳しい修業が必要なのさ」
スキル授けの儀式で火魔法を授かって、もう自分はいっぱしの鍛冶師気取りでいたティナには5年とかいう年月は途方もない先のように思えた。
「何かいい方法ないの」
「そうだな、まず、体を鍛えることだな、丈夫な体を作れば、重いハンマーも使えるようになるだろう」
「そんなのいや、5年も先なんて」
「魔法でもあればいいのに。このように、ぱっと、剣になれとかいうように」
「ははは、そんなことが出来たら俺たち鍛冶師は仕事が無くなってしまう」
「そうか、それもそうね、それじゃやっぱり体を鍛えて、重いハンマーが持てるようになるしかないの」
「そうさ。それが近道さ」
「そうだ、明日、花時計のところに行って、お願いしてみる。早く一人前の鍛冶師になれますようにってね」
「そうだな、花時計ならティナの夢をかなえてくれるかもしれないな」
次の日朝早くティナは花時計のところへやってきた。
「どうか、早く一人前の鍛冶師になれますように。重いハンマーも自由に使いこなせますように」
花時計にお祈りをささげていると、ジェフがやって来た。
「どうしたんだ、ティナ」
「あのね、私、昨日からお父さんの職場で、鍛冶師の見習い始めたのだけど、鍛冶師になるには重いハンマーが持てないとだめなの、それで、花時計に『早く重いハンマーが持てますように』って祈っていたの」
「俺も似たようなものさ、昨日から俺も商人見習いを始めたのだけど、商人に成るには文字が読めないといけない。それに計算もできないといけない。文字は何とか読めるが、難しい言い方だとよくわからない。特に貴族が使うような言い回しは全く分からない。それで俺も花時計にお願いに来たわけさ」
「そうなの、お互いに大変だね」
すると、ほかにもスキル授けの儀式でスキルを授かった近所の子供たちがやって来た。
「お前たちも、花時計にお願いに来たのか」
「そう、早く一人前になれますようにって祈っていたの」
「そうか、そうだよな、仕事は大変だよな」
「そうね、でもみんな同じで安心した」
「そうだね、みんな同じ、今はみんな見習い」
そうやって、集まった子供たちは、「みんな一緒」ということで安心して、またそれぞれの職場に戻っていくのであった。それを花時計は温かく見守っていた。




