46.ジェフの後悔
ジェフがティナの結婚を知ったのはティナが結婚してから1か月ほどたってからであった。久しぶりに届いたティナからの手紙に「遠いところへ行きます」とだけ書かれていたからである。
ジェフは休暇をもらって王都を出てから初めて実家に帰省した。そして父親から「ティナの両親とティナが来て、ティナを嫁にもらってほしいと言われたが断った」ことを知った。
「なぜ、断った」と父親に迫ったが、ジェフが地方へ飛ばされたのは貴族がらみだと聞いて、「今ジェフとティナが結婚すればさらに問題がややこしくなる」と思ったと言われると反論できなかった。
ティナの実家に行ったがもうティナは公爵領へ行った後だった。ティナの父親からは
「公爵家からの要請では断れなかった。断ればティナの家族だけでなくジェフにも影響が及ぶと聞かされ泣く泣く嫁に行った」
と聞かされた。
そして、「ジェフが来たら渡してほしい」と頼まれたガラスのブローチをもらった。そのブローチを見ると涙がにじんでいるような気がした。そして、今さながらティナが悲壮な思いで、嫁に行ったことが思い知らされた。その後、ジェフは家に帰ったが、何もする気がしなかった。
抜け殻のような状態が3日ほど続いた。心配した父親がティナの父親のところに来た。ティナの父親はジェフの父親に
「ティナは嫁に行った。どうすることもできない。我々平民は貴族には逆らえない。若し不満があれば貴族を頼ってみることだ」
「そんな貴族、私は知らない」
「ティナは学院の同級生のセリーナ様のところに相談に行った。それでも無理だった」
ジェフの父親は帰ってジェフに相談したが、ジェフに何を言っても腑抜けのような状態で話にならなかった。心配したジェフの父親はティナの父親が言っていたセリーナ様を訪ねることにした。取りあえず予定の連絡をサンシッソンヌ伯爵家に出してセリーナ様の予定を聞いてもらった。
すると、セリーナ様がジェフの家を訪ねてきた。これにはジェフの父親はびっくりした。玄関で迎え、そのまま客間に通した。「ジェフを連れてきてほしい」と言われたので、ジェフを連れてきた。
ジェフはセリーナ様の顔を見ると泣き崩れた。
「ティナが嫁に行った。嫁に行った。もう俺とは結婚できない」
「そうですね。ティナさんは嫁に行きました。平民が貴族の要請を断るのは難しいです。若し断れば影響はティナさんの家族だけでなく、ジェフ、貴方にも及んだでしょう。今はそんなティナさんの気持ちを汲んで応援してあげることしかできません。
ティナさんが結婚したネーポムク・ルーリールという人は公爵家の当主です。この国では有名な人で、子供が出来ないという理由で3度結婚し3度離婚しています。
若し今回ティナさんに子供が出来なければティナさんも離縁されるでしょう。たぶん3年ぐらいかと思います。若し、3年してティナさんに子供が出来なければティナさんは離縁されます。そうすればジェフと結婚することもできますよ」
これを聞いてジェフの目に光がさした。
「3年待ちます。そしてティナが離婚して王都に戻ってきたら、俺はティナと結婚します」
「そう、それが一番いいと思うわ」
その後、気を取り直したジェフはまた赴任地に戻っていった。
そんなジェフに「ティナが子供を産んだ」という知らせが届いたのは、それから1年後だった。知らせてきたのはセリーナ伯爵令嬢だった。
ジェフはまた王都の実家に戻ってきた。そして、すぐにセリーナ様の屋敷を訪ねた。
「ティナさんが子供を産んだというのは本当です。これまで3度結婚したのに、子供が生まれなかった公爵に子供が生まれたというので、ティナさんが浮気をしたと言う貴族もいるようですが、ティナさんは浮気をするような性格ではありません。
それにティナさんは結婚してから1度も屋敷から出たことがないらしいので、ティナさんの産んだ子供は間違いなく公爵の子供でしょう。
これからのことですが、もう公爵はティナさんを離さないでしょう。ジェフこれからあなたはどうします。このまま地方に居ますか。若し王都に戻りたいと言うのであれば力になりますが」
「少し、考えさせてほしい」
何も考えられないジェフは結論を保留して伯爵邸を後にした。




