45.悲しい結婚2
それからの動きは早かった。すぐに、公爵家から迎えの馬車が来た。そのして、ティナは家族に別れを告げて馬車に乗り込んだ。
馬車はそれから王都を離れ公爵家の領地ルーリール公爵領に向かった。ネーポムク公爵様は領都の公爵邸似るとのことだった。馬車は3日ほどして、領都ルーリールに着いた。ティナは1枚しかないドレスを着て馬車から降りると公爵邸の前に立った。着替えなどの荷物はすべてマジックバッグの中である。ただ、マジックバッグを隠すために大きなかばんを1つ持っている。
ティナはすぐに公爵様が待つ執務室に案内された。執務室のドアを通って、初めて公爵様と対面した。年は30歳手前、父親より少し若いぐらいである。3度も結婚と離婚を繰り返せばその年になるのもうなずける。
こんな年のいった人が初婚とは、悲しさが増す。ティナが何も言わないと
「よく来た。そこに座ってくれ」
ティナは公爵の前のソファーに座った。
「私は、ネーポムク・ルーリール、公爵だ。君はティナだな」
「はい、ティナです。お初にお目にかかります。公爵様」
「公爵様はいい。これから夫婦になるのだからネーポと呼んでくれ」
「わかりました。ネーポ様」
「様は要らない」
「わかりました、ネーポ」
「それでいい」
「これからのことを話す。私は聞いていると思うが、3度結婚して3度離婚した。子供が出来なかったからだ。私は公爵家の当主として子供を残す必要がある。
お前には私の子供を産んでほしい。子供さえ生んでくれれば後は好きにしていい。パーティーやお茶会は出なくていい。
どうせ俺はこの国では嫌われている。もう俺のところに嫁に来る貴族はいない。それで今回は平民にした。お前は学院を優秀な成績で卒業したと聞いた。それでお前を妻にすることにした。
若しパーティーやお茶会の誘いがあっても、それはお前を蔑むためのものだから断ればいい。
これからの予定だが、教会へ行って夫婦の誓いを述べるだけだ。その後のパーティーはしない。子供が生まれればその時に披露する。ただし3年経っても子供が出来なければ離婚する。その時は一生遊んで暮らせるだけの金を渡す。
これから屋敷の者にお前を紹介する。明日は教会で結婚式だ。その後は自由にしろ。ただし、この屋敷から出ることは許さない。
必要なものは家令かメイド長に言え、家令の名前はハンス、メイド長の名前はメアリーだ。それから屋敷で働く者の給金はお前から払え。そうしないとお前が侮られる。お金は毎月商業ギルドの者にこの屋敷に届けさせる。それをお前が受け取って、この屋敷で働く者に渡せ。お前はこの屋敷では俺に次ぐ地位にある。それを忘れるな。
それから俺はお前のことをこれからはティナと呼ぶ」
この説明を聞いて、ティナはどうも悪い人ではなさそうでほっとした。その後、公爵様が屋敷で働く者を一堂に集めて、ティナを紹介した。そして「この屋敷で働く者の給金はこれからティナから支払われる」と説明した時は家令とメイド長の目が吊り上がった。一瞬ティナはびくっとした。
その後、公爵夫人の部屋に案内された。その部屋を見た時その豪華さにびっくりした。セリーナ様の部屋を見た時もびっくりしたが、その何倍も豪華である。いくらお金をかけてあるのか分からなかった。その日は夕食を公爵様と一緒に取った。とても豪華な食事でびっくりした。
夜布団に入ってから、「これでもう完全にジェフとはお別れだ」と思うと悲しかった。涙が出てきたが、その涙を公爵様の前では見せられない。今日だけは特別と、その日は涙を抑えなかった。少しシーツが濡れたが、今日だけは特別と好きにさせてもらうことにした。
次の日、公爵様とティナは教会へ行った。そして神父様の前で誓いの言葉を述べ、キスをした。これで公爵様とティナの結婚が成立した。
屋敷に帰ると、また屋敷の者を一堂に集めティナと公爵様の結婚を報告した。すぐに王家へ結婚の報告書が送られた。この国では上級貴族同士の婚姻は王家の許可が必要だが、下級貴族や平民の結婚は許可は不要で届けだけでいいそうである。
その日ティナは結婚した。もう後戻りはできない。これから公爵夫人として生きていく。一見華やかに見えるが、ティナの心は晴れなかった。
このまま、この公爵邸で口落ちていくのだと思うと悲しかった。せめてジェフだけは幸せになってほしい。ティナが出来ることはそれだけだった。




