43.陰謀の影
お茶会から帰ったティナは父親に、お茶会で言われたジェフのことを家族に話した。
「お茶会で、みんなに言われたのだけど、このままほっておくとジェフがほかの子に取れちゃうて。どうしたらいい」
そう言って泣き出した。
最初は、ただ話を聞いてもらうだけのつもりだったのだが、感情が高ぶって、そのまま泣き出した。これには両親も、どうしていいか分からなかった。
父親が
「一度、ジェフの親父さんのところに行ってくるか」
この言葉にティナが泣くのをやめて
「そうして、私をジェフのお嫁さんにしてと頼んで」
「わかった。明日行ってくる。お前も来るか」
「行く」
次の日ティナと両親はそろって、ジェフの商会を訪れた。そして父親と対峙した。しかし、父親は何故かあまりやさしくなかった。
「今日お伺いしたのは、ティナをジェフのお嫁さんにもらってもらいたいと思いまして」
すると、父親はおもむろに
「ジェフとは何か約束でもあるのですか」
「約束はありません。でも私ジェフのこと好きだし。ジェフも私のこと好きと言ってくれていましたから」
「子供頃の話ですよね。今ジェフは王宮の官吏として採用されて、忙しいのですよ。その話はジェフが王都に戻ってきてからにしてくれませんか」
結局冷たくあしらわれて、商会を後にした。
家に帰って、ティナは泣き崩れた。その日は食事もとらずにティナは泣いて過ごした。
次の日ティナはセリーナ様を訪ねることにした。貴族の屋敷を訪問するというのは気が引けたが、3年間同じクラスだったし、卒業パーティーでは「いつでも訪ねてきてね。歓迎するわ」と言われていたので、行ってみることにした。
伯爵邸を訪ねると、門番の人が
「お約束はありますか」
と聞かれた。
貴族を平民がいきなり尋ねるというのはないようである。それでも、セリーナ様に聞きに行ってくれた。そして、すぐに会ってくれることになった。
場所はセリーナ様の私室とのことで、家令の人が案内してくれた。廊下を歩いて行くとさすが伯爵邸、廊下にも花瓶や絵画が飾ってある。ティナの家とは大違いである。
セリーナ様の部屋に行くと、セリーナ様が
「ティナさんがここへ来るのは初めてね。そんなに緊張しないでいいわよ。私たち学院の同級生。それにティナさんの方が成績は私より上だったのだもの。最終試験の成績たしか55番よね。
それに私、不思議に思っていたのだけど、ティナさん魔法の腕を隠していましたよね。あんなすごい剣を打てる人が魔法が出来ないはずないと思っていたの。
確かジェフの商隊に同行した時、盗賊を倒したことあるでしょう。そのとき20人の盗賊が一瞬で足を貫かれたと聞いたわ。私の父の知り合いが騎士団に居たのだけど、その人が言っていたわ。
盗賊が出たと言われて行ってみたら20人の盗賊が足を抑えて倒れていたそうよ。一瞬で足を火魔法で貫かれたそうよ。こんなこと普通の魔法士ではできない。是非ともうちの騎士団に欲しい。と言っていたわ」
ばれているのなら仕方がないと思い
「私がやりました。一度に20本の炎の矢を放ちました。でも、このことは内緒にしてください。こんなことが出来るとわかるとまたねたまれるので」
「そうね、内緒にした方がいいわ」
「ありがとうございます」
「今日来たのはジェフのこと」
「はい」
「そのうち来ると思っていたのよ」
「ジェフは最終試験40番だったでしょ、それに王宮の官吏の試験に合格しているし、家は商会だし、嫁入り先としていいと思ったみたい。
1人の男爵令嬢が声をかけたみたい。でもジェフにはティナさんがいるでしょう。それでジェフは断ったらしいの。
そこで終われば何もなかったのだけど、その男爵令嬢は腹いせにそのことを言いふらしたらしいの。そしてそれが、カルナ子爵令嬢たちの派閥の耳に入ったらしいの。問題が起きるといけないと思った王宮はジェフを地方勤務にしたらしいの」
「それじゃジェフは王都には戻ってこないの」
「戻っては来るでしょうけど、すぐは無理ね、最低でも3年ぐらいはかかると思うわ。それにその令嬢がいる間は無理でしょうね。また問題が起きるから」
「そうなのですか。昨日ジェフのお父さんのところに両親と一緒に私をジェフのお嫁さんにしてと言いに行ったのだけど、冷たくあしらわれて、ジェフが戻ってきてから考えるって言われてしまって」
「そうなの、それは思い切ったことをしたわね。でも今は無理だと思うわ。今ジェフとティナさんが結婚したら、その男爵令嬢に何されるか分からないもの」
「それに、貴方も気を付けた方がいいわよ。ジェフは地方に飛ばした。次に狙われるのはティナさんあなたよ。学院の間は貴族も平民も平等と言う建前に守られているけど、社会に出てしまえばそれもなくなる。カルナ子爵令嬢たちの派閥が何を考えているか分からないから。今はおとなしくしているのがいいわよ」
結局セリーナ様に相談に行ったが、ジェフのことは何も解決しないまま帰って来た。




