36.魔獣討伐実習の後始末とクラスでの立ち位置
まさか夜に蝙蝠が襲ってくるとは思わなかった。昨年までは、そんな事例は報告されていなかった。事前調査は昼間に確認しただけなので夜泊まり込んでの確認はしていない。また、あの森は比較的弱い魔物しかいないため冒険者も夜森に入ることはなかった。盲点と言えば盲点である。
しかし、大事な生徒を預かっている学院が夜の調査を怠ったのは学院の責任だという声が各所から起こった。その結果、怪我をした生徒の治療費は全額学院負担となった。また女生徒の場合は傷が残らないように教会へ依頼して治癒魔法をかけることになった。その費用も全額学院負担となった。
また、今回空を飛んで来る魔獣に対する対策として、防護服を開発することとなった。また魔獣対策として火魔法が有効であったことから、火魔法の使える生徒の強化が指示された。またティナが剣で飛んで来た蝙蝠を切り落としたことから、剣の得意な生徒には飛んでくる物を切り落とす訓練も行われることになった。
それと、昨年といい、今年といい、「魔獣討伐実習の時に限って魔物が現れる」ということについても引き続き調査が行われることになった。
これらの調査は王宮から派遣された調査官を中心として行われた。調査の結果が進まないのか秘密にしておきたいことがあるのか、調査結果についてはほとんど公にされなかった。
このようなバタバタの状況ではティナへのカルナ子爵令嬢の一派による嫌がらせも目立たくなった。そして、季節は秋から冬に移っていった。
冬になると、実習の後の混乱も落ち着いてまた平穏な日々が戻ってきた。結局、森での魔獣のことは不明ということで一応の決着が図られたが、怪我した生徒の親からの抗議で調査は規模を縮小して継続することとなった。
そしてまた期末試験となった。剣術実技は女子ではトップクラス、さらに今回は魔獣討伐実習で蝙蝠を倒した実績も加味された。さらに魔法実技においても火魔法ということも加点対象となった。座学の方はいつもどおり山をかけた。そしてほとんどの山が当たった。
魔獣討伐実習の余波で勉学に集中できなかった生徒も多くいたようで、そのような生徒は成績を下げた。私の成績は65番だった。Bクラスは変わらないが、クラスでは上位になる。すると貴族の妬みがひどくなった。カルナ子爵令嬢の一派による嫌がらせもひどくなったように思う。女子では段々孤立していくように思う。
やさしくしてくれるのは、セリーナ伯爵令嬢ぐらいである。彼女と彼女の取り巻きは私を適正に評価してくれる。平民でも切磋琢磨して上を目指すのはいいことだ。それに「魔獣討伐実習後のごたごたはみんな同じであり、それを理由にするのはよくない」と言ってくれた。
ジェフは60番だった。ジェフは頭がいい、剣術実技や魔術実技の成績はあまりよくなくても、座学はトップクラスなので総合順位は高くなる。今回もマイペースで自分を見失しなわなかったようである。
私とあまり成績が変わらないが、ジェフはクラスで孤立したりはしていない。まず誰とでもうまく接して嫌われるような事はしない。
それに何かを聞かれると丁寧に教えている。この点が好かれる秘訣だと思う。私は教えるのがうまくない。それに私の成績は主に剣術実技と魔術実技によるものなので教えることが出来ない。
帰りにいつものように花時計のところに行った。今回は愚痴を言いにである。
「花時計さん、聞いて、私今回成績が上がったの。すると、貴族にねたまれているみたいで、クラスの女子の中には、口をきいてくれない子もいる。どうしたらいいのかな」
すると、
「1歩、1歩地道に努力するしかないよ。相手が何か仕掛けてきたのなら、排除しなければならないが、そうでないなら、ほっておくしかないよ」
そう言っているような気がした。
そうしてまた期末休暇になった。今度もまたティナは父親の工房で剣を打って過ごした。




