35.魔獣討伐実習(続き)
今年の魔獣討伐実習は夜は順番に夜の見張りをする。ティナのグループは6人なので2人ずつ3交代ですることになった。ティナは冒険者登録をしているので多分この中では一番強いと思って一番魔獣が出そうな深夜に当番をすることにした。するとジェフもティナアと一緒にすると言ってくれた。うれしかった。ジェフがティナのことを気にかけてくれる。それだけで熱くなるものがある。
深夜にジェフと2人で当番をする。ジェフと火を囲んで話をする。何を話したらいいのかと最初は思ったが、2人でいると自然と言葉が出てくる。幼かった時に一緒に花時計の側で遊んだこと、それからジェフの家で一緒に学院の入学試験の勉強をしたこと、それから、学院に入学してから一緒に勉強したこと、錬金クラブで一緒に活動したこと、話は尽きない。
「これからも一緒だね」
ジェフがそう言ってくれる。
ティナも
「これからもずっと一緒」
そう言って返す。
甘い時間が過ぎていく。そんな時ティナはふと違和感に気が付いた。今まで聞こえていた虫の鳴き声が聞こえない。
「ジェフ、少し変、虫の声が聞こえない」
「えっ、変なの」
「そう、おかしい。とりあえず、みんなを起こして」
ジェフがグループの他のメンバーを起こしに行っている間にティナは剣を構えた。そして、辺りを見回した。すると、黒い影がよぎった。
とっさにティナは黒い影を避けつつ、剣をその影を切り裂くように振り下ろした。すると、手に何かが当たったような反動が伝わってきた。そして、目の前に2つに切り裂かれた蝙蝠が落ちた。
すると、向こうのテントで悲鳴がとどろいた。
「キャー、変なものが私の肩に、なんとかして」
すると、そばに待機していた騎士団が駆けつけた。
しかし、その女生徒が暴れるので、騎士団も背中にかみついた魔獣を切ることが出来ない。やっと、火魔法の使える騎士がその女生徒の背中に食いついた魔獣に火魔法を当てて魔獣を倒した。倒された魔獣は蝙蝠とのことであった。
その間、数十秒、しかし、その数十秒が限りなく長い時間のように思われた。その後も、蝙蝠の襲撃は続いた。蝙蝠が生徒にかみつくたびに騎士団が火魔法を行使して蝙蝠を撃退する。その繰り返しが続いた。
ティナは蝙蝠が近づくたびに蝙蝠を切り裂いた。これを見ていたグループの男子は
「よくそんな小さなもの切り裂けるね」
「わたしにもよくわからない。体が勝手に反応するの」
「とにかくこのグループにティナがいてよかった」
そう言われた。うれしかった。
空が少し白みだすころには蝙蝠の襲撃はなくなった。
騎士団が蝙蝠の襲撃で被害を受けた生徒を確認したところ、やはり男子よりも女子の被害が多かったようである。特にグループに火魔法の使える者がいないグループは惨憺たる結果であった。
とりあえずポーションで傷はいやしたが、「体に傷が残るようだと嫁に行けない」と言い出す女子もいて、引率してきた学院の教師も騎士団も対応に苦慮した。
夜が明けるのを待って、魔獣討伐実習は中止となり。すぐに馬車を手配して被害を受けた生徒を治癒士のもとに向かわせることになった。
森の入り口まで戻ると、魔獣の襲撃を受けたのは2年生だけでなく、3年生も1年生も魔獣の襲撃を受けたことが分かった。死者こそ出なかったが負傷者は多数出たそうである。
すぐに馬車の手配がなされた。そして、手配した馬車が到着して負傷者が乗り込んで馬車は治癒士のもとへ向って行った。その後ティナたち負傷しなかった生徒は徒歩で森を離れそのまま学院に戻った。そこで解散となった。その後、ティナはジェフとともにいつものように乗合馬車で家に帰った。
乗合馬車を下りたティナはジェフとともに花時計のところに行って
「今日は魔獣が襲ってきたけど、私もジェフも怪我をしなかった。これからも守ってね」
そう言って、祈りをささげた。するといつものことだけど、花時計は何も言わないけど、喜んでいるような気がした。




