13.学院入学(入学式)
それからしばらくして、学院の入学式の日になった。朝早く起きて新しい制服に身を包んだ。制服を着ると学院生そんな実感が湧き上がってくる。制服を着てくるっと回ってみる。
「ううーん、完璧」
両親のところに行って、制服姿を見せてみる。
「どう、私、おかしいところない」
「ないわよ、見違えるようよ」
「そうだな、あのハンマーを握っていたティナがまるでどこかのお嬢さんだ」
「そう、おかしいところない」
「ないわよ、立派な学院生よ」
「よかった」
その後、朝食をとると花時計のところに行った。花時計は、いつものように朝日を浴びて輝いていた。
「今日から学院生、どうか見守ってくださいね」
そう言うと、花時計が嬉しそうにほほ笑んだ気がした。
すると、後ろから声がした。
「ティナもいっぱしの学院生だな。見違えるようだ」
「おはよう。ジェフ。今日から私たち学院生ね。ジェフもその制服似合っているよ」
「そうか、おかしいところないか」
「ないわよ、すごくかっこいい」
「そうか、ありがとう、ティナもすごく綺麗だよ」
「綺麗だななんて、ジェフったら口がうまいのだから」
「そんなことないよ、本当に綺麗だ」
そんな2人の甘い時間を花時計が温かく見守っていた。
その後2人は乗合馬車に乗って学院に行った。入学式は講堂で行われる。行くととりあえず受験番号順に並ぶそうである。並ぶ順番は貴族が先でそのあと平民となる。
Cクラスのところに並んでいると、あと3人平民の入学生がやって来た。名前はマイクとルナとレム、マイクは王宮の下級官吏の息子だそうだ。
ルナとレムは商会の娘でジェフのことも知っているようだ。学院に入学する平民は、平民といっても、やはり何らかの形で国や貴族と繋がりがあるか裕福な商人のようだ。
ティナのように工房の娘のなどというまったくの平民はティナだけのようである。何となく後ろめたい気がして下を向いてしまった。それに、ジェフがルナとレムと知り合いで親しそうにしているのが寂しかった。
しばらくすると、講堂に入場する時間となった。貴族を先頭に順番に入場していく。私たち平民は最後尾、後ろでちょちょと付いて行くだけ。他のクラスを見てみると貴族は前を向いて堂々としているが、後ろの平民は不安げな表所を隠せない。
Cクラスが入場し終わるとBクラス、そしてAクラスが入場していった。Aクラスは平民でも毅然としているように感じられた。
「そうだ、私たちは入学試験に通ったのだ。堂々としていればいい」
そう思った。
「貴族でも、試験に通らないと学院には入学できない。ただし、王族、公爵家、侯爵家の人間は試験の結果によらず入学できが、その場合はクラスはFクラスで、多額の寄付金を要求されるそうである」
アデーレさんの言葉がよみがえる。
新入生が入場し終えると、司会が式の次第を読み上げていく。
「校長の挨拶」
校長の長々とした挨拶が始まる。
「皆さん入学おめでとう。この学院は王国の発展のため、強い剣士や魔法士を生み出すため、そして優秀な官吏を輩出するため設けられました。
学院ではこの建校の精神にのっとり、貴族と平民は平等をもっとうにしています。だから学院ではたとえ王族であっても成績が悪いとクラス落ちします。貴族風を吹かせることなく貴族も平民も仲良く武術や勉学に勤しんでください。
皆さんは難しい入学試験を通って来たのだから、その精神を忘れずに、入学後も剣術や魔術、勉学に勤しんで将来はこの国の一翼を担うような立派な人間になってください。
立派な人間と言うのは何も武術や勉学が出来るだけでなく、人間的も立派な人間になってください。他者を蔑むことなく、慈愛の精神で接することが出来るような人間になってください。
改めて皆さん入学おめでとう」
「来賓挨拶。挨拶は王宮より第2王子が参られております」
「皆さん、楽にしてください。私は第2王子のリンゼーです。私もこの学院の卒業生なので、皆さんは私の後輩に当たります。
日ごろは王宮で国の仕事に携わっているわけですが、時折学院時代を懐かしく思うときがあります。特に王宮で昔の同級生にあった時などは、仕事を忘れて昔の話に花を咲かせることもあります。
皆さんも先ほどの校長の言葉にもあるように学院では貴族も平民も平等、その建学の精神を忘れずに充実した時を過ごしてください。そして卒業後も、懐かしく思えるような思い出を作ってください。
皆さんご入学おめでとう。私の話は以上です」
その後、生徒会長の挨拶、入学生を代表して主席入学の公爵令息の話があって、式は終了となった。




