第51話 紐選びは集中力が大事?
「おいらみたいに、首にかけると良いじょ。グルルも、そうなんだじょ。好きな紐で付けてもらえるんだじょ! おいらは最初、カッコよくて、それから可愛い紐にしてもらったんだじょ!! それからはいろいろなんだじょ!!」
見える場所に付けないといけない印だけど、どんな風に、何で付けるかは自由だからね。だからモルーとグルルは首から下げているんだ。
ただ、この首に下げるための紐を選ぶのに、かなり時間がかかったんだよ。その時間、というか日数は、約1週間。もちろん時々、他のこともしたけど、1日のほとんどを紐選びに費やしていたっていうね。
何でそんなに時間がかかったかって? それは……。
ママがね、自分で好きなものを選んだ方が良いって、リボンや革の紐、鎖やよく分からない素材でできている紐、他にもいろいろとたくさん用意してくれてね。
とりあえず一旦、見やすいように、種類別に分けてずらっと並べ。パッと見てもらったあと、さぁ、いざ選んでもらおうと思ったら。
まさかの、そう、まさかのだった。グルルとモルーは、ほとんどの物を気に入ってしまって、それからぜんぜん決まらなくなっちゃったんだよ。
しかも言った通り、ママはかなりの量を用意してくれたから。パッパッと確認していけば良いのに。あぁでもない、こうでもないと、1つ1つ丁寧に確認をし始めてさ。その集中力たるや。
用事がある以外は、ずっと私たちの部屋に引きこもり。私が声をかけても気づかず。時々集中力が切れると、私のパンでを食べ、集中力を回復させ、また紐選びに戻るっていうね。
なんてことをしているうちに、気づけば、紐を選び始めてから約1週間経っていて。それでようやく、それぞれの紐が決定したんだ。
そして時間をかけて選んだ紐は……。
グルルが選んだのは、黒い革で編まれていて、ところどころに宝石のように輝く石が散りばめられた、かっこいい革紐。
モルーは、真ん中が、グルルの選んだ紐みたいに、紫の革で編まれているんだけど。両端は紫色のフリル付きリボンになっていて。全体にラメのようなものがキラキラと輝く、カッコいいし、可愛いくもある紐を選んだよ。
あの時のパンの消費量といったら。最初は自由に食べられるように、少し多めにお皿に出しておいてあげたんだけど。あまりにも食べすぎるから、途中から1日4つまで、午前、午後、夕、夜、と決めて。
そうしたら、紐を選びながら、チラチラと私を見てくるようになり、それで余計に、紐1本にかける時間が長くなっちゃって。チラチラもうざいし、これ以上時間が伸びるのも嫌だったから、最終的に7個で手を打つことになったんだ。
ただ、ようやく選び終わったと思ったら、他の紐に未練たらたらで。毎日、紐について、ママに何か言いにいっていたグルルとモルー。
そんなある日、ママとグルルとモルーの間で、何があったのか、私は知らないんだけど。ママが盛大な溜め息を吐きながら、もう、全部あげるわ、って。まさかの、ママが用意してくれた紐を、全部グルルとモルーにくれたんだ。
その時のグルルとモルーの喜びようといったら。それからは日替わりで紐を交換して、印を首から下げているよ。それがさっきのモルーの言葉ね。最初カッコよく可愛い紐で、それからはいろいろってやつ。まったく、あの紐を選んでいた1週間は何だったのか……。
『ママにさっき頼んで、シーとクーの紐も、いっぱい用意してもらったんだじょ! 全部シーとクーのなんだじょ。今日はどれにするじょ? 明日はまた別の好きで、付ければ良いんだじょ!!」
『わぁ、いっぱい!!』
『これ、全部ぼくたちの!?』
『そうなんだじょ!!』
『凄い凄い!!』
『全部、ぼくとシー君の!! シー君、どれにする!?』
『どれにしようか!! これ良いかも、あっ、こっちも良いかも!』
『ぼくは……これ? あっ、やっぱりこっち?』
首から下げることについては、何も言っていないけど、この様子なら大丈夫かな? 魔獣によっては、首はダメ、腕なら良いとか、付けること自体嫌がるとか、いろんな魔獣がいるみたいだからさ。まぁ、それ以前に、今日中に紐が決まるかどうか。
「ねぇ、おへやいってから、えらんだほがいいかも」
『あっ、そうなんだじょ! その方がゆっくり選べるんだじょ!!』
『おへや?』
『ゆっくり?』
ということで、談話室へ移動することに。みんなで長い廊下を歩きながら、3階の談話室を目指す。
「……これじゃあないな」
「……これでもないわね」
『……洞窟に、2匹が言ったような魔獣はいたか? 似ている奴がいれば、そこから調べることもできるが』
『そんな大きくて、強い魔獣がいたっけ?』
『兄さん、これなんかどうだ?』
『ぜんぜん違うよ。それはどう見てもゴツゴツじゃないか』
2階まで上がった時だった。グルルやパパたちの声が聞こえてきて、私はそっちを見てみる。すると、ママの仕事部屋のドアが開いていて、そこから声が聞こえてきていたよ。
「ちらべてる?」
「はい。図書室にも記録書はあるのですが、まずは最新の記録からお調べになられているかと」
大規模な調査は5年前、ちょっとした調査は3年前にしたみたい。
ん? というか、シー君とクー君家族は、昔から森に住んでいたのかな? だって2人はスノウタイガっていう、珍しい魔獣なんでしょう? 調査で分かれば保護されてるよね? それともやっぱり野生の魔獣だから、上手く隠れていて、分からなかったとか?
私はそう思いながら、今の状況がちょっと気になって。談話室へ行く前に、ママの仕事部屋を覗いてみようと、そっちへ歩き出したよ。




