第50話 シャンプーの出来栄えはフサラァとルイ君とトイ君。……誰?
『……なんか、違うんだじょ』
『うん、思ってたのと違った』
『ゴンおじさんみたいになると思った』
「だから、ごんおじしゃん、わからない。しょれに、なにがちがうの?」
『おいらは、フサラァってなると思ったじょ』
『僕は、ルイ君みたいにもなると思った』
『ぼくはね、トイ君みたいにもなると思った』
だから、誰なのさ。ゴンおじさんさえ、どんな魔獣か分からないのに、さらに新しい名前が増えたよ。
それにモルーも、フサラァってなに? 地球にも、何々ラーって、ラーってつける言葉があるけど、まさかそれじゃないよね?
「るいくん、といくん、わからない。もるーも、ふしゃらーなに?」
『フサラァは、ハウルのことだじょ。ハウルの毛、フサラァだったじょ。おいら、シーとクー、毛がふわふわで長かったから、フサラァになると思ってたじょ』
ああ!! ハウルか!! 確かにハウルの毛はフサラァだったわ!! 思わず納得して、手のひらを手をぽんって叩いた私。
ハウルは洞窟に住んでいた、アフガン・ハウンドに似ている、ハルリーという魔獣ね。若いのに、なかなか強く。それからとても優しく、子魔獣たちとよく遊んでくれていたから。洞窟に住んでいる子魔獣たちに、大人気なんだ。
もちろん、モルーも大好きで。時々背中に乗せてもらって、遊んでもらっていたよ。私もね。
そして今言ったように、アフガン・ハウンドに似ているから、毛は長く。その毛がフワッとサラッと、とっても綺麗なんだ。まさにモルーが言った、フサラァって感じ。
うん、やっと、1つだけだけど、納得することができて、モヤモヤが少しだけなくなったよ。だって、シー君とクー君のゴンおじさんの話から、分からない答えばかりだったんだもん。
ゴンおじさんの見た目。まずは、バキッでズンッで、モジャモジャでブワッで始まり。それからもグルルとママは、何とか答えを見つけようと。シー君とクー君に、いろいろ細かく質問したんだ。
目の色は何色? とか。大きさは、どのくらい? とか、いろいろね。それで分かったことといえば。
目の色が茶色で、大きさは2メートルよりも大きく、でも小さくもなれる。魔法も、他の物理的な攻撃も得意ということと……。
ボスッでブワンで、ヒューンでポスッ!! だった。うん、擬音が増えただけだったよ。
ただ、それでも、目の色や大きさは分かったからって、グルルとママは、ゴンおじさんの正体を調べるために、途中で浴室から退出。
ゴンおじさんは、街から見える、すぐそこの森に住んでいるって言っていたでしょう? それで森には、ゴンおじさんだけが住んでいるだけじゃなく、それこそ危険な肉食魔獣も住んでいて。
さっきグルルに、シー君とクー君の歳っていくつだろうねって聞いたら、まだ2歳ぐらいじゃないかって。後で確認するけど、それくらい小さなシー君やクー君が、街まで歩いて来られるくらい、近い森だからね。他の魔獣だって来られるわけで。
もしも肉食魔獣たちが、街を襲ってきたら? そしてそれは、森だけじゃなく近くの山や林、海だって同じで……。
だから、いつ襲われても対応できるように、どんな魔獣が生息しているのか、定期的に調べられるだけ調べて、記録に残してあるんだって。
グルルとママは、その記録に、ゴンおじさんに該当する魔獣がいないか、調べに行ったの。お兄ちゃんたちにも、手伝わせるって言っていたよ。
そして、調べごとや、他の何かでも、たいして力になれない私たちといえば、そのままお風呂を楽しむことに。そしていまは、ライラや他のメイドさんに、シー君とクー君の毛を、乾かしたところだったんだけど……。
どうにもみんな、仕上がりが思った感じじゃなかったみたい。グルーは、アフガン・ハウンドの毛並みで、シー君はルイ君。クー君はトイ君だって。……誰? モルーのフサラァは分かったけどさ。
私は、凄く可愛くなったと思ったんだけどなぁ。今のシー君とクー君の姿は、ホワイトライオンの赤ちゃんを、もっともこもこ、もふもふにした感じで、ぬいぐるみを超えたぬいぐるみって感じなんだ。もうね、今すぐにでも抱きしめたいくらいなのに。
『良い匂い、ふわふわ、とってもいい』
『でも、違う』
あぁ、目がすわっちゃったよ。可愛い顔が台無しに!? 不機嫌なモルーたち。というか、モルーは関係ないでしょうに。
「とてもお可愛いですよ! さぁさぁ、シー様、クー様、次はこちらです。これを首にお付けしますね」
そんな不機嫌な3匹を、いちいち気にしていられないとばかりに、グイグイ来るベテランメイドさんのケリーさん。ライラは3匹の反応に、オロオロしていたからね。
『これなぁに?』
『キラキラしてる』
「これはね、たいしぇちゅな、ものなんだよ」
「そうですよ。これを付けていると、全員ではありませんが、シー様とクー様を、傷つけようとする人間が、少なくなるのです」
「いじわる、しゃれにくくなるんだよ。いじわるいやでちょ? だからちゅけないとダメ。ぐるるともるーも、べちゅのちゅけてるの」
『これなんだじょ!』
モルーがシー君とクー君に見せたのは、銀色の石に、家の家紋が彫られている物で。これをどこか見えやすい場所につけることで、モルーがだれの家族か、すぐに分かるようになっているんだ。印って感じかな。この街へきてすぐに、パパが作ってくれたの。
これで、絶対、っていうわけじゃないけど、モルーに手を出そうとする人が、ガクッと減るって。侯爵家の家紋だからね。手を出したらどうなるか、みんな分かっているんだよ。もちろん、グルルも持っていて、モルーと一緒に、いつも首から下げているんだ。
ちなみにグルルやモルーだけじゃなくて、住民で魔獣と一緒に暮らしている人も、自分の魔獣だと分かる印をつけているよ。冒険者ギルドや商業ギルドで、魔獣登録すると貰えるんだって。
魔獣を奪おうとする人たちから、自分の家族、相棒魔獣を守るため。逆に街で、魔獣が何か問題を起こした場合、印で確認が行われて、登録した人が罰を受ける。なんて、いろいろなことに使われるから、付けることが義務付けられているんだ。
シー君とクー君は、まだ家族じゃないから、銀色じゃなくて、緑色の石に家紋が彫られているものを付ける予定。言い方はアレだけど、パパの所有物ってことで。これもやっぱり、他の人から狙われないようにするための対策だよ。




