第43話 魔獣たちの保護の方法
『美味しい。美味しいよシー君!!』
『ね、言った通りでしょう? それから元気にもなるでしょう?』
『あっ、そういえば。体痛いのなくなった!! それに疲れてたのも、全部なくなった!!』
『ヒトミ、僕とクー君元気にしてくれてありがとう!!』
『ありがとう!! ヒトミすごいね。シー君みたい。シー君はいつも僕のこと守ってくれる、すごいシー君なんだよ。ヒトミも元気にしてくれる、すごいヒトミだね』
凄い私か。みんなには、ただ普通に作ったパンを食べてもらっているだけなのに、どんどん私の評価が上がっていくな。後でパパたちが私のパンを調べてくれるけど、一体、私のパンはどうなっているのか。
それに、ママが言った通り、これが私だけなのか。それとも、私と同じ焼き方を、他の人たちがしたとして、その人たちもパンもそうなるのか。
私だけだったら、確かにちょっと問題かも。ただ、他の人たちもそうなら、もっとたくさんの人や魔獣たちを、助けられるようになるんだけどな。
『さて、お前たち。これからどうすつ予定だ? ここに住んでいる人間、リアの家族が、お前たちを保護すると言っているんだ』
『ほご?』
『それ、なぁに?』
『保護というのはだな、安全な場所で、いろいろ世話をしてもらえるということだ』
グルルが、シー君とクー君に説明してくれる。私はその間に、今の状況をパパたちに知らせに行ったよ。具合が悪いって聞いて、パパもママも、みんな心配していたからね。
「パパ、ママ」
「ヒトミちゃん!」
「具合が悪いと言っていたスノウタイガは? それと、もう1匹、スノウタイガが入って行ったと思うんだが」
「ぐあいわるいこは、ちーくんっていうの。しょれで、はたけにいたこは、くーくん」
「チー君? クー君?」
「ちがう、ちーくん」
どうにもまだ、ちゃんと話せないから、シー君がチー君になっちゃうよ。
「父さん、チーじゃなくてシーなんじゃ?」
「しょ!!」
「ああ、シーか。2匹は名前待ちか」
名前持ち? もちというか、自分たちで考えたって言ってたけど。私はそのことを、パパに話したよ。
「自分でか。ならば、他のスノウタイガと変わらないということか」
「かわる?」
「ああ、ヒトミは知らないかな。あのね、名前がもともとある魔獣は、他の同じ魔獣と比べて、優れていることが多いんだよ。凄いってこと」
どうも、名前持ちと名前なしでは、力にかなりの差が出るらしい。名前持ちの魔獣は、生まれた時から名前を持っていて、それを本人も感じ取ることができるため、自分の名を名乗るようになる。
そしてそんな名前持ちの魔獣は、同じ種類の魔獣と比べて、かなり強い力を持っていて。それは単純に身体能力が高かったり、強力な魔法を使えたりと、さまざまな面で他よりも優れているんだって。
さらに、状況判断も他より早く、的確に対処できるから、群れの中ではリーダーになることが多いらしいよ。
スノウタイガは、保護対象の魔獣。そんなスノウタイガが、2匹とも名前持ちだったら、また対応が変わってくるらしい。
保護対象の魔獣は、他から狙われることが多いから、警備しないといけないんだけど。それが、名前持ちともなるとね。かなり警備の規模が変わるらしい。だから、パパがちょっとだけ、ホッとしていたよ。
「じゃあ、今は、グルルが話を聞いてくれているのね」
「うん」
「ここに隠れていたくらいだから、今すぐに、どこかへ行くとは思えないけれど。でも、だからといって、すぐに私たちの話を聞いてくれるかどうか」
「このまま保護できるのが、1番良いんだがな。人の側が、どうしてもダメな魔獣たちもいる」
「しょのときは、ほごちない? でも、ほごちないと、ダメなんでちょ?」
「保護にはね、いろいろな方法があるのよ」
「いろいろ?」
自然で生きている魔獣たち。すぐに懐いてくれる魔獣もいれば、もちろん、ずっと警戒したままの魔獣もいて。でも、だからといって、そういった警戒している魔獣たちを、無理矢理、人の側に来させようとはしないよ。
いろいろな所に、魔獣を保護するための場所が作られていて、懐いてくれた子たちは、それぞれ、その子に合った場所へ行って、保護してもらうんだ。聞いた感じ、保護施設のような感じかな。
でも、それが難しい子は、場所だけを移動してもらい、自然の中で生活してもらうの。
自然。ほら、地球では、野生動物を守るために、施設ではなく、自然の地域全体を、保護区域に指定して、地域全体を守っている場所がいくつもあるでしょう。どうも、それと同じような場所があるみたい。
だから、どうしてダメな場合は、そこへ移動してもらって、そこで自由に暮らしてもらうんだ。
ただ、移動自体が嫌な子もいるから。そういう時は、魔獣が暮らしている場所そのものを、保護区域に指定して、警備するみたい。
だから、スノウタイガ2匹も、いろいろ話を聞いて、1番いい保護の方法を、考えてもらえるって。
それを聞いて、安心したよ。いくら保護と言ってもね。2匹が苦しむような保護だったら、ダメだもん。それなら、私たちのもう1つの家、洞窟で、シエラたちと暮らした方が、絶対に良いよ。
そんな、保護についての話も聞き終わった後は、グルルたちを待つことに。そうして、30分くらいして、私を呼びに来たグルルは、なぜか、とても疲れていたんだ。




