第42話 新たな妖精たちのビックリ事実と、もう1匹のスノウタイガ
『美味しい!! とっても美味しい!! 僕、こんなに美味しいもの食べたの初めて!!』
おお、良かった。喜んでくれた。
『パンがとっても美味しくて、それから果物がとっても美味しくて、美味しいが合わさって、とっても美味しかったの!!』
ふむ、スノウタイガには、この組み合わせは合ったのか。私はまだ試していないけど、ママゴはパンに合う可能性があるね。これは後で試してみないと。
『ね、言った通りだったでしょう』
『ふんわりふわふわ、ほわほわで美味しい』
『でも、まだ少ししか食べてないんだ』
『次の約束の日まで待たないとダメなの』
『でも約束は大事』
『そ、だから今日はもう我慢』
『本当は、今日のパンくらいの大きさなら、あと10個くらい食べられる』
え? 今なんて言ったの?
「えっと、なんこ?」
『10個って言った』
『僕たち、いっぱい食べられるんだよ』
『だからあと10個くらい。でも、もっと食べられるかも』
……え? おかしくない? どう考えても、みんなのお腹の中に入る量じゃないでしょう。1個でも多いかなと思って、残ったら袋に入れて、持ち帰りができるようにしてあげようと思ってたくらいなのに。
だって、妖精さんたちの姿は、私が両方の手のひらを合わせて、1人でゆっくり座れるくらいの大きさんだよ? それでパンは、妖精さんよりも大きくて……。どう考えても、お腹に入らないでしょう?
それなのに、まだ10個も食べられるって? 場合によってはそれ以上? 食べたパンはどこへいくのさ。
妖精たちの話に、思わずそっちが気になって、いろいろ聞きそうになる私。でもグルルの声でハッ! として、スノウタイガの方へ戻ったよ。
『うるさい奴らは放っておいて、お前、体の具合はどうだ? 早ければ、もうかなり良くなっているはずだが』
そうそう、それそれ。どうも妖精たちの話を聞いてると、本題からずれちゃうんだよな。
『具合?』
「けられたところ、いちゃくて。きもちもわるくて。しょれから、ほかにもけがちてて。ど? なおった?」
反応が……。スノウタイガも、パンと妖精さんたちの方に気がいってて、自分の状態を忘れていたんじゃ?
なんて思いながら、私はチラッとしっぽを見てみる。実は、病気や怪我が治ったって、みんなから話は聞いていたけど。それを生で実際に見たことがなかったんだよね。治った、ありがとうって、報告を受けるだけだったから。
そうして見てみたしっぽは……。あれ? 咬み傷がなくなってない?
『あれ? 僕、パン食べて……、気持ち悪いのは?』
ほら、忘れてたでしょう。
『はぁ、お前は……。具合は良くなったのか?』
『蹴られたところ……、痛くない。他も……痛くない。気持ち悪いのもなくなった』
『今回はすぐに効いたらしいな。どれ、俺も確認するか』
グルルがそう言って、スノウタイガの怪我を確認してくれる。それにしても、いつ治ったのかな? 傷が治るところ、見たかったなぁ。治癒魔法みたいに治るのかな?
なんて考えているうちに、グルルの確認が終わって、とりあえずは大丈夫だろうって。
『ヒトミ、ありがと! 僕、元気!!』
「よかったねぇ」
と、その時。
『あ、戻ってきたみたいだよ』
妖精さんの1人がそう言ってドアの方を見る。それに続いて、私以外のみんながドアの方を見る。
「もどってきた?」
『ああ、もう1匹のスノウタイガが戻ってきたんだ』
あ、そうか! 薬草畑に呼びに行ってたんだった。ん? そういえば、その子をいじめっ子から守るために、こっちの子は怪我をしたんだよね?
守ってもらったかもしれないけど、戻ってきた子だって、一生懸命薬草を取りに行っていたんだから、疲れているんじゃ? それに、絶対怪我をしていないって、決まっているわけじゃないし。戻ってきた子にも、パンをあげた方が良さそう。
そう思った私は、グルルにそのことを伝えて、戻ってきた子の様子も見てもらうことにしたよ。
そうして、その子を待つこと数分後。守ったスノウタイガと、真逆の色をしたスノウタイガが、走り込んできたんだ。ホワイトタイガーの黒と白が、逆になった感じね。
『シー君!? 治った!?』
『うん!! ヒトミが治してくれたの!! クー君、薬草取りに行ってくれてありがと!!』
『……ヒトミ? 小さい人間、ヒトミ?』
クー君と呼ばれたホワイトタイガの子が、私をジッと見てくる。
『あ、僕、名前言ってなかった! 僕の名前、シー君。それで僕のお友達は、クー君!!』
『お前たち、名前があるのか?』
『あのねぇ、自分たちで考えたの』
『名前ある方がいい。ねぇって言うと、みんな振り向く』
あ、そうか。自然界にいる魔獣は、名前がある魔獣と、ない魔獣がいるんだもんね。モルーも最初は名前がなかったし。洞窟にいた魔獣たちも、誰かが声をかけると、みんな振り返ってたっけ。
『……ねぇ、本当にシー君、治った?』
『ああ。ちゃんと調べる奴がいないから、完璧には分からんが、問題ないだろう。何しろ、ヒトミのパンを食べたからな』
『ぱん?』
『お前も、俺が分かる範囲で怪我の確認をしてやる。それで、もしも怪我をしているのなら、ヒトミのパンを食べて治すんだ』
「あ、けがちてなくても、ちゅかれてるでちょ? だからどっちでも、ぱんあげるよ」
『あのね。ヒトミのパンは、とっても美味しいんだ。それで、怪我も具合が悪いのも、治っちゃうんだよ! クー君もパンをもらって食べたら、とっても元気になるよ!!』
『……とっても元気? とっても美味しい?』
『そうだ。が、まずは、一旦お前の体を見せろ』
そう言って、グルルがクー君を診ているうちに、私はパンを用意したんだ。




