激動
「やっと揃ったわね」
暗闇の中で声がする。
「よかったちゃんと7号にもチャンネルがあったのね」「コイツ大丈夫か?」「ここに来れたのなら大丈夫しょ」「ちげーよ、コイツ体もちっちゃいし胸も絶望的じゃね、まな板だよ、まな板」「まな板?」「・・・」「仕方ないでしょ、この子だけ作成時期が違うんだがら」「そんなに駄肉がご自慢?同一規格なのになんであんただけ成長するのよ」「あ?何だ3号?妬ましいの?グーレイの妬みは遺伝子レベルだって本当らしいな」「ねぇまな板って何?」「・・・」「そんなわけないでしょ」「ハイハイハイやっと全員揃ったんだから有意義な時間にしようよ」「お前が仕切るな2号」「じゃぁあなたがやりなさいよ、4号」「えー俺ー?、やだ!、面倒くさい」「あなたはいつも文句ばかり、なんか言ってやってよ1号」「仕方ないよ4号、仕切りたがるのはメルソレアの血だもんねー2号」「1号、それフォローになってないよ」「ねぇまな板って何?」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・ねぇ5号って明らかにおかしくない?元々天然っぽい子ではあったけど、これは明らかにおかしいよ、薬でも打たれた?」「別れて1日だよ、こんなふうになる?」「なんか聞いてないのか6号?今は別れたけど元々は同じ国なんだしほぼ同じ種族なんだろ?」「あまり言いたくはないんだけどね、レセプティって遺伝子工学に秀で出てると自負していてね、バラしても戻せると思ってる節があるの」「え?バラしたの?」「レセプティの所に行って1日も経ってないよ」「原形も留めていないと思う」「まじか」「最低!」「いつかはこうなるとは思ってたけどあまりにも早いわね」「みんな、分かってるとは思うけど私達も一歩まちがうとこうなるから」「だからお前が仕切るな」「そう言う点では7号もヤバくね?胸の所に着いてるの何?」「あら?あらら、本当、サージェリーも大概ね」「なぁ胸のそれ、こちらの声に反応してない?」「あら本当、声に反応して光ってるわね」「もしかしてこの能力の存在を認識してるのか?」「それはないでしょ、ご主人様ですら私達の姉妹の力に気づいていないんだし」「誰かサージェリーのこと分かる?」「知らないグーレイはくそ鳥と呼んでるくらいかな、酷く嫌ってる」「ミールーも同じかな、くそ鳥って呼んでるっぽい、何処かの家が付き合いがあるらしいけど詳しいことはまだ読み取れてない」「スィーティでもよく分かってないのよ、イメージ的には田舎のおっちゃんって感じね」「どうする7号は外す?」「そう言うけど7号の力は捨てるには惜しい」「何だっけ子孫繁栄?」「綺麗に言えばね」「他にも何か能力が有ればいいのだけど」「今まで繋がらなかった事考えると7号の力は最弱だね」「今回も2号が無理矢理繋げたんだっけ?」「違うよ、いきなり繋がるようになった。まぁ、様子を見ようよ」「そうね」「分かった」「あ、7号の接続が怪しい」「目覚め様としてる?」「多分ね」「7号、覚えておいて私・・・は死ぬ定めかも・・・けど・・・には死な・・・、創・・・主たるヤルハ・・・・ドに一矢報・・・までわ」「・・・・・・」「・・・・」「・・・・・・」
急速に声が聞き取れなくなる。
「あぁ最後に私達の使命は地球人の独立、それを忘れないで!」
ひときは大きい声が響くと急速に闇に包まれ意識が遠のく。
再び深い闇に落ちる。
「ゴホッゴホッゴホッ」
むせ返るほど悪臭にむせ返りながら目が覚める。
鉄の混じった人の体液の匂い。
匂いに自然と顔がしかめっ面になりその濃密さにより吐き気が込み上げてくる。
体内に何かがぐるぐると回りうねっているのも凄く気持ち悪い。
周りを見渡すと酒池肉林、何十人もの人達が男女の営みが繰り広げられる地獄絵図が広がっていた。
「気分はどうですか?」
頭上から声が降ってきた。
見上げると人型サイズの蜘蛛が糸に捕まりながら降りてきた。
蜘蛛型の知的生命体フェルガナだ、蟹の様な皮膚に蜘蛛の様な体型、完全にクリーチャーだ。
「最悪っス、なんスかこれ」
糸を切り足下に降り立つ。
「何って荻田さんからお聞きになっているはずですが?貴女に地球のコードを使うためのエネルギー集めてますよ、我等の言い方だとダークマター集めですよ」
「これが?」
何とも言えない複雑な気持ちが湧いてくる。
「ええ、そうですよ。
どの種族というかどの生物もそうですが、肉体的な性行為とは次世代に遺伝子を残す行為ですが魂霊学的には性行為とは周囲にあるダークマターを集めて圧縮し魂を製造する、その過程の一つですから。
本来は男性が圧縮し製造、女性は新たな魂が混ざらないよう隔離し成長させるのですが、地球の呪術と言うコードはその全てを体外に放出させ一点に集める技術の様ですね」
「・・・・・・」
説明されても複雑な気持ちが消えない。
「花の道さんの気持ちも分かりますよ、自分の種族が何らかに利用されている決して良い気持ちでは無いでしょうね。
ですが我々とて全てを救える訳では無いですからね。
自国民に加えるなら選別ぐらいはしますよ。
それに漏れた者達は・・・・・物と観るわけではないですが・・・・・有効利用・・・・・ですかね?」
最後の方は考えながら発言しているようだった。
「いや、まぁ・・・そうですけど・・・」
それでもなんか納得行かない。
「こんな所でお話しするのも何ですし食堂に上がって朝食を食べましょうか、ってもう夕方ですけどね」
そう言って歩きだした、俺も後を追いかけようとするが体は重く動きもぎこちない、まるで体の至る所に重しをつけているような感覚だ。
「無理はなさらずゆっくりでいいですよ」
歯を食いしばり体を引きずるような形で後をついて行く。
一刻も早くこの異常な空間から出たかった。
何となくだが装置と化した彼等から熱気なのか臭気なのか解らないが俺の体が少しずつ吸収しているのが感じられたから。
エレベーターに乗りフェルガナが8階のボタンを押す。
確か8階立てのビルだと言っていたから最上階か?。
エレベーターを降りると全面ガラス張り、太陽の光が指し込み明るく開放的だ。
ちゃぶ台より少し高いテーブルが並んでいるが背が低いのが開放感に一役買っているのかも知れない。
適当に座りフェルガナが何も無い空間に手入れジュース缶らしき物を出す。
「どうぞ、月で私が詰めているドッグで販売しているお茶です。
さて、先ほどの装置ですが納得して下さいとまでは言いませんが理解はして下さい。
彼らを自国民に組み込むのはリスクがありすぎます。
少しでも品行方正になって頂かないと我々も安心出来ません」
「品行方正ってエネルギーを搾り取る為の装置になってたらどうやって品行方正になるんッスか」
「・・・ハイ?」
「うん?」
お互いに首を傾げる。
「どういうことでしょう?」
「えーと選別に漏れた人はあの装置で死ぬまでエネルギーを搾り取る?」
「あっ!そう言うことですか言葉足らずですみません。
彼等は死ぬまでエネルギーを取られる訳ではありませんよ。
彼等が今出しているエネルギーはマイナス因子を持ったエネルギーです。
呪術と言うコードに我々のコードを加え根本にある人を騙しても平気な悪意とか、そういった良く無いものを出して貰っているわけです。
所謂、毒気を抜かれた状態になって貰っているわけです
それに死ぬまでとかのやり方では我々の法的にも道徳的にもアウトですから。
」
「あ、死ぬわけでは無いんですね」
心なしかほっとした。
「殺しはしませんよ、我々は野蛮な種族ではありませんからね。
先程も言いましたが法的にも道徳的にもアウトです、わが国の一員になればこんな事出来ませんからね一員になる前に、ですね。
ですが、他の種族では違うみたいですよ」
また何も無い空間に手を入れタブレットを取り出し画面をこちらに向ける。
画面には深い森の中に数名のグーレイが黒と白の槍を地面に突き刺している。
その他にも数十人の迷彩服を着た人間が辺りを警戒しているのが映っている。
「?」
「今から12時間程前の映像です。
私が貴女に鎮静剤を投与したぐらいですね」
「これが何か?」
「グーレイが地中に何かを刺しているのが映っていますが、何を刺しているのかは判明しています。
地上戦力殲滅兵器『オルガネスト』と言う物らしいです」
「ハァ?」
生返事を帰すしかない、イマイチ言いたいことが分からない。
「このオルガネストと言う兵器は周りに居る生物を糧に育つ兵器だそうです」
再びタブレットの画面をこちらに向ける。
映し出されたのはオレンジ色の服を着た人達が
青白く光る白と黒の槍に円を描くように跪かされている。
その者達は皆、目隠しをされ後ろで手錠を掛けられている。
何かを喚いているが上手く聞き取れない。
迷彩服の者達が銃を構えて躊躇無く発砲する。
オレンジ色の者達は力無く倒れると薄黒い粘液性の何かが直ぐさま体を包み込む。
粘液性の何かは包み込こんだ物を凄まじい速度で消化している。
消化しきらないうちにまたオレンジ色の者達が連れてこられ跪かされる、迷彩服の者達は事務作業の様に銃を構え引き金を引きオレンジ色の服の者達を倒れさせる。
いつの間にか青白く光る物が見えなくなりその代わりにぽっかりと穴が空いていた。
その穴の中から2つ尾と爬虫類の肌を持つ蠍が這い出てきた。
大きさは小型から大型まで不揃いだ。
新たに連れてこられたオレンジ色の服の者達に蠍は襲いかかる。
そこで画面が途切れた。
「オルガネストの成長に服役中の者達を使ったみたいですね。
使い捨てですね、グーレイらしい発想です」
「えっと、これが選別?なんで?」
「あぁ説明不足ですね、このオルガネストと言う兵器は生物を糧に成長するわけですが、糧になった生物の性質を受け継ぎ同性質の者達を選別し捕食するらしいのです。
判断基準は分かりませんが犯罪歴のある者や犯罪者予備軍を捕食対象にはしているでしょうね。」
「え?そんな事して大丈夫なんすか?」
「何がでしょうか?」
「え?殺人ッスよね?大量虐殺スよね?これ明らかに迷彩服の人達は軍人さんッスよね?何処かの国の人ですよね?
後々暴露されるんじゃないっすか?」
「暴露されるまでに今の秩序が続いていばいいですがね、まず無理でしょう」
「え?なんで?」
「理由その1、先ほどのオルガネストですが我々が確認出来ただけで30カ所で設置されました。
各国の軍部が護衛していることから国家ぐるみですね。
オルガネストが完全に成長するまで最短で2週間程だそうです。
一般的な地球人に確認され認知される頃には十分成長し地球人では対処出来なくなっているでしょう」
「マジっすか」
「それにこのオルガネストと言う兵器はよく出来ています。
捕食することで捕食対象の遺伝子を取り込み形質転換進化をする事が出来ます。
食べれば食べるほど手が付けられなくなりますね。
先ほど青白く光っていたのが核になるらしいのですがあれを壊さない限り成長を止めません。
ですが自身を守るために地中にコロニーを形成し外敵の侵入を阻みます。
この過程で1500℃程で発火するメジルンと言う物質を精製しコロニー内に散布します、これによりコロニー内で銃火器、光学兵器が使えなくなります。
武器を銃火器や光学兵器に置き換えてる文明にはよく刺さる兵器と言うわけです。
それでなのか分かりませんがミールーが鈍器や刀剣を大量に集め出しましたね」
「・・・・・・・」
「理由その2、宇宙人飛来により現在世界中が大パニック中です」
三度画面を向ける。
画面の中央に黒い塊が見える。
いや、黒い塊が水の上に浮いている。
画面の隅に日本語で瀬戸内海に島が出現?UFOの可能性も?そんなテロップが出ている。
画面がまた切り替わり山中になる、遠くに黒い塊が瀬戸の島々の間に鎮座している。
マイクを持ったキャスターが興奮気味に語り出す。
『こちら五色台展望台より中継です。
昨晩、後ろに見えます黒い物体が突如飛来しました。
情報によりますと深夜2時頃に連続的な爆発音をあげながら九州方面から飛来し瀬戸大橋を掠めるように不時着したとのことです』
画面が切り替わり瀬戸大橋が見える、瀬戸大橋を映す定点カメラだろうか。
赤い炎を上げた黒い何かが左から現れ橋桁の上部を掠め急減速し橋を通過後に停止そのまま落ちるように着水している。
また画面が切り替わりビル群の上空を炎を上げながら過ぎ去っていく映像も流れた。
「ね、大パニックでしょう?」
呆れた様子が声に滲み出ている。
「えーと、馬鹿みたいな着陸の仕方してますけど何処の宇宙人の方?」
「元サージェリー宇宙軍所属ラッサル級3番艦シュールクームと言います」
「・・・?んん?」
「もう全世界のニュース、ワイドショーからSNSまでこれ一色ですよ」
「ええー、そうーでしょうーねー」
「花の道さんの言うとおり、なんて馬鹿な事をしているのかと思いましたが地球人初の正式なファーストコンタクトを取った種族になれたと思えば悪くないかもしれないですね」
「あ、そんな考えなんすね。
で、その1は分かりますが、その2は秩序を乱します?」
「まぁ理由その2は混乱はするでしょうが大したことではないですね。
問題なのは我々の飛来とオルガネストが結びつけられる事ですね。
タイミングが良すぎると言われても仕方ないでしょうから。
グーレイにしてやられたと言うべきでしょうか?
後の問題はグーレイとその他の国の関係ですね。
アメリカはミールーとヨーロッパ各国はレセプティ・ドラゴニアと協定を交わしラストフロンティアを攻略していたはずですが、オルガネストをグーレイが設置していた所を見るとミールーとレセプティ・ドラゴニアはグーレイの軍門に下ったか何らかの密約を交わしたとみていいでしょうね」
「そうなんですか?」
あ、そんな力関係があったのね。
「はい、グーレイは基本的に他種族を信用しません。
重要な事、要となるような作戦は必ず自分達の手で行います。
危険なオルガネストの設置を現地の政府やミールーやレセプティ・ドラゴニアに任せていない所を見るとグーレイが他の国に対してイニシアチブを取ったとみるべきですね」
「グーレイが使い走りされてるとかは無いんッスか?」
「あり得ませんね、レセプティ・ドラゴニア特にレセプティは暗躍を好みます。
グーレイとは言え異星人を表には出さないでしょうね、現地の政府に任せます。
ミールーも同じです、オルガネストなんて兵器は他種族に持たせないでしょう。
盗まれて転売される又は解析されるのを最も嫌う集団ですから」
「なるほど・・・あれ?これ積んでません?」
「そうでもないですよ、我々がいち早くバベルの元にたどり着けば勝ちですし。
その後、不服として戦争に発展してもヤルハ・ウェイドの技術を吸収出来れば負けることは無いのですから」
「あぁーそう言えばそんな勝負してましてね。って、いや違います、地球人が積みになってませんかって話しです」
「そうでも無いですよ、荻田さん的には不時着したシュール・クームの他に地球の衛星軌道で待機している弩級戦艦ターケ・ノサートとキーノ・ノサートの姉妹艦からの衛星軌道からの精密射撃で殲滅出来るだろう、と言ってましたから」
「あ、地球の方は大丈夫なんですね。
あれ?でも荻田さんはバベルには興味無いって言ってませんでした?」
「そうなんですよね、サージェリーの方々はヤルハ・ウェイドに興味が無い。
今も何処かの銀河で連綿と生き続けている可能性が有る生きた化石の様な種族に興味を持たれないのがあまりにも不思議です。
本音を言えば我々フェルガナは貴女たち地球人よりもヤルハ・ウェイドの方に力を入れたいのですがね。
恐らくですがバベルがAIだったのが忌避感を持たせたのでしょうね、彼等のAI嫌いは上記を逸脱する場合がありますからね。
本作戦が荻田さんの管轄で本当に良かったですよ。
典型的なサージェリーであるヒジュ少将であればスィーティを敵に回してもバベルを殲滅とか言い出しかねないですから」
「?ヒジュ少将には敬称つけるのに荻田さんはさん付けなんですね」
「あぁ、私は荻田さんとは付き合いが長いですからね。
同郷だったのもありますし軍学校も同じです、荻田さんは2つ上ですけどね。
軍学校を卒業した後も配属先が同じだったりとまぁ腐れ縁ですね。
引退後も何かと引っ張り出されたりとかしましたね。
まぁ、そのお陰で魂の分裂なんて超レアケースを目撃出来ましたけど」
「?」
「貴女のことですよ、分かれた魂の半身、鴨の道さんの事はお忘れですか?」
「あ、あれ?なんで知ってるんスか?」
「それはあの時に同じ場所に居たからですよ」
「あーあれ?」
「花の道さん、私が誰か分かってますか?」
「・・・スイマセン、解らないです」
「商店街フェルガナ国、技術技師官オマ・エノ・シャッキン・フミータ・オースですよ」
「あ!ぁーーー、うん、ハイ、覚えてます。
借金さんですよね」
「言葉の偶然とは恐ろしいですね、私の名前の中にお金を借りる行為、しかも踏み倒す行為があるとは思ってませんでしたよ。
ちなみに日本語読みの借金ではなく、キンにアクセントを強くお願いします」
「相変わらず無駄に拘わっとんのー」
「名前とは本当に大事なものですから」
いつの間にか歩く海洋恐竜の荻田さんが居た。
「いつの間に後ろに?」「あれ?荻田さん今日は日本政府と折衝では?」
「いや、日本政府に謝罪も兼ねて会議してたんやけどな、会議の場にベビィも現れよったねん」
「?ベビィってアダルト・ベビィ大佐?スィーティの?」
疲れてるのが目に見える。
借金さんのタブレットを手に取り操作し始める。
とある動画投稿サイトを俺らに見せる。
タイトルは『都心に巨木が降ってきた』。
「なんすか?これ?」
「まぁ見てみ」
再生をすると2人の裸の女性がビルの屋上で絡み合っている、その背後の空に黒い点が現れ見る見る大きくなり巨木と言っても差し支えない物になり、音も無く空を浮遊している。
「し、CG?」
カメラマンの疑問、女の悲鳴が聞こえると巨木がビルとビルの間に座る。
ビルの間に座りやっと大きさが分かった、30階建てのビルと同等の高さが有る。
その全容が分かると異様さが際立って見える、形状としては杉の木が近いかもしれない、中腹まで幹が露出、但し色は赤だ。
中腹から上部の樹冠部分は葉なのだろうが色は紫、赤、青、黒と様々だ。
下部の根に当たる部分は緑、根っこらしく縦横無尽に広がっている。
「スィーティの太陽系派遣艦隊旗艦メルメ・メッソメソですかね?」
「恐らくなー」
「再生数が偉いことになってるっすよ」
「それで?スィーティは何をしに来たんですか?」
「日本政府との正式な国交樹立や。
ワイ等にはクレームやったけどな」
「クレーム?今回の地球の降下はアダルト・ベビィ大佐の発案とお聞きしましたが?」
「あぁ、いや、地球降下は問題無いねん、問題になったんはワイ等が地球人にグーレイの所業を告げ口しようとしたことや」
「グーレイの所業と言いますとオルガネストの設置ですか?」
「そや、それにワイ等が地球人及びオルガネストに干渉する事を禁じてきたわ」
「いやいやいや、何を言っているんです?地球人は億単位で死にますよ!」
「地球の現地勢力に知らせたところで何も出来ないから、やそうや。
それにグーレイのオルガネストの設置はスィーティー・スィージュの総意で有りスィーティー・スィージュからの依頼でもあるらしいんや」
「そんな!?いつからスィーティは他種族を虐殺をする事が出来る種族になったのですか!?」
「現時点で太陽系はスィーティが管理してるんや、いわばスィーティー・スィージュの領土や。
スィーティー・スィージュに加盟してない部外者が何言うても無駄や」
言い争いがドラマの1シーンに見える、現実味が全く感じられない。
放置されたタブレットから悲鳴の様な声が上がる。
いつの間にか次の動画が再生されていたみたいだ。
ヘリコプターに乗ったニュースキャスターが地上を指さし悲鳴じみた解説をしている。
『皆様ご覧下さい、警察車両が車道を埋め尽くしているのご覧に頂けるでしょうか』
映像には片側一車線の道路を警察車両が埋め尽くし封鎖している。
警察官、機動隊員らしき人達が忙しく動きまわっているが騒ぎの中心は恐らく道路脇の民家だろう、盾を立てた機動隊員が民家を取り囲んでいる。
その民家は窓ガラスは割れ壁面には所々赤い物が付着している、建物も半壊しておりその家だけ震災の後のようだ。
いや、映像を見る限り周りにある他の家も似たようなものだ、映像の中だけ震災が在ったようだ。
『機動隊員が家を取り囲み拡声器で何かを言っているようです。
犯人への投降でしょうか?』
これは立て篭もり事件なのか?
だがその予想は直ぐに裏切られる。
割れた窓ガラスから粘液性の何かがゆっくりと出てきた。
先ほどオルガネストの設置の映像に出てきた粘液性の物に似ている。
粘液性の物が何の前触れも無く体表全てに棘の様な突起を瞬時に作りだし射出した。
棘は粘液性の何かを中心に飛び散り半壊した家屋を更に破壊した。
『あぁー機動隊員が次々と倒れています。
どうした事でしょうか?』
破壊と同時に機動隊員がその場に崩れ落ちる。
崩れ落ちた機動隊員から赤い筋が粘液性の何かまで伸び始める。
まるで赤い糸が機動隊員と粘液性の何かと繋がろうとしているように見える。
粘液性の何かは赤い糸を辿り倒れた機動隊員をたぐり寄せる始めた。
1体、1体とたぐり寄せ機動隊員に覆い被さり機動隊員を消化し始める。
そこでやっと映像が途切れ、キャスターが座るスタジオに戻された。
『えーー、大変不適切な映像が流れてしまいました、深くお詫び申し上げます』
キャスターらしき人が深々と頭を下げる。
「あれ、オルガネストじゃないっすかね」
よく似ている、いや、どう見ても同一の生き物だ。
「そう見えますね、隠し撮りに出て来た生物によく似ています。
しかし、早く無いですか?オルガネストの成長は2、3週間掛かるはずでは?」
「時系列が合わへんな」
2人とも考え込んでしまう。
答えは意外なところから飛んできた。
「そりゃそうだろう、グーレイは我等が依頼するよりも先にオルガネストを植えていたんだから」
独特のダミ声が部屋に響く。
入り口にメルソレア星人がいつの間にか立っていた。
「ベビィか」
カシャッカシャッと音を立てながら歩みよってくる。
「事務所開所祝いだ」
綺麗な石みたいなのを荻田さんに投げる。
「お、あんがと」
受け取りながら目を見開らき驚いている。
相当高価な物だったのだろう。
「で、どういうとこですか?オルガネストの成長が合わないのですが?」
驚きから立ち直れない荻田さんに変わって借金さんが質問している。
「以前にも話したが、あのオルガネストという兵器は我々スィーティー・スィージュとアポロゼウスが休戦協定を結ぶ際にアポロゼウスが手土産に持ってきたのが約2カ月前。
世界最速のエンジン、最新のハイパードライブを使っても会合の有った星系から1カ月間半かかる。
入手し実験して運用までどんなに軽く見積もっても半年。
確実に時系列が合わない、なればどうやってグーレイはオルガネストを手に入れた?答えは簡単だグーレイがアポロゼウスと繋がっている」
「それはいけないことですか?」
「別に国家の枠組みとしては間違ってはいない、だがスィーティー・スィージュとしては不味いな。
スィーティー・スィージュの始まりはスィージュの蛮行をスィーティが止めるために作った枠組みだが他の国が参加し始めたのはアポロゼウスに対抗するためだ。
その対抗対象に接触は背信行為と取られても仕方あるまい」
「反アポロゼウスを掲げていたスィーティとしては立場が無いな」
「全くだ、だが、グーレイ全体が繋がっている訳では無く一部が繋がっている可能性は捨てきれないがな」
「そんなこと言っても一部の責任は全体の責任や、スィーティはスィーティー・スィージュの牽引国としてグーレイを糾弾か?」
「某個人としてはそうしたいのは山々なんだが、本国の馬鹿政治家共が反対すると思われる。
そんな判断が届く前に現場の判断で糾弾したかったのだがな、レセプティとミールーに呼びかけたが反応が無い。
少なくとも太陽系に要るレセプティ・ドラゴニア、ミールーはグーレイの傘下とみていい」
「お、大国スィーティと言えど白旗か?」
「そんな分けでは無い、奴等は忘れている。
太陽系にはサージェリー及びヒュードラという第4局が居る事をな。
某アダルト・ベビィはスィーティ自由民主共和国、太陽系最高責任者としてサージェリー市皇体制国に正式に依頼する。
地球人を救済しつつグーレイ糾弾の協力を願いたい」
「スィーティの大佐ともあろうお方がそんな発言してえんかいな。
それはあんさんとこの議会が決めることちゃうんか?」
「構わん、現地の判断で押し通す。
それにサージェリー及びヒュードラの原始知的生命体の保護の姿勢は本来のスィーティとの立場に合致するからな。
スィーティは直接保護をしてきた、サージェリーは間接的に保護をしている、地球人が救済されることには変わりは無い。
それにグーレイの糾弾はサージェリーとしては喜ばしいところだろ?」
「まぁ、グーレイしばくんはかまへんのやけどな、グーレイが何でオルガネストを設置した目的が分からん事にはしばいたところで奴等の手伝いをしてましたなんて目も当てられへん事態になるのは避けたい」
「大丈夫だ、グーレイの目的は分かっている。
地球人、いや、リヴァイアサンの遺伝子をオルガネストに取り込んで新兵器を作りたいのだ。
元々オルガネストは周りの生物を取り込み非常に敵対的な生物に作り替える装置だからな。
そこにアポロゼウスのアホ共は絶対に制御出来るプログラムを仕込んでいるはずだ、でなければオルガネスト使用後は危険な生物が跋扈する不毛な惑星が出来上がるだけだからな。
侵略する意味が無くなってしまう」
「アポロゼウスが手土産に持ってきた時に聞いてないんか?」
「制御出来るなんて報告は上がってきていない、だがグーレイは躊躇なくオルガネストを設置しているからアポロゼウスからノウハウ全てを譲り受けているはずだ」
「もう一つグーレイをしばいたら地球軌道上のスィージュの艦隊が地球に向かって攻撃せぇへんか?、あれは地球人を人質にしさてるんやろ、しばきたくてもしばけれへんやん」
「それも大丈夫だ、スィージュの艦隊は地球に降下しようとしていた我々、ミールー。
上がろうとしていたレセプティ、グーレイを攻撃している。
スィージュの艦隊はバベルの指揮下だと思われる」
「なんやワイ等は地球に閉じ込められたんかいな」
「そうなる。
そしてバベルはオルガネストの設置に関しては黙認している。
もしかしたらバベルは地球人がオルガネストで作り替えられる事を望んでいるのかもしれん」
「まぁどないにせよワイ等は生き残るためにはオルガネストを押さえ込まんとあかんのか。
やけど圧倒的に戦力が足らんわな。
地球人に協力してもらわんとオルガネストを押さえ込めへんわけか」
「そうだ、地球政府に対抗するための組織を作らせる、サージェリーにはそれを支援して欲しい。
その組織はいつか他の種族に対抗出来る組織になるだろう。
そうなるのはお前達の望む形だろ?」
「ならなんで日本政府との会談を邪魔したんや?ワイ等が日本政府を支援したらよかっやん?」
「グーレイが好き勝手して形骸化しているとは言え建前上は太陽系はスィーティの管理下なんだぞ、地球人にスィーティは頼り無いて思われてみろ、そうなれば我々の支援を断りグーレイの支配を受け入れる可能性が出て来る。
なれば地球人の支援はスィーティがしなければならない」
「面子の問題かい」
「信頼だよ、どの種族もそうだが最終的な判断の材料は信頼だからな。
で、協力してくれるのか?」
「協力するのはかまわんのやが、なんかお前に踊らされてる気がするのがなー」
頭を描きながら眉間にしわを寄せる。
「気にするな、気のせいだ」
ベビィさんの嬉しそうな気配が伝わってくる。
こうやって様々な種族の思惑が絡み地球は混迷の時代が幕を開ける
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ここまで私の妄想を読んで頂きありがとうございます。
誤字、脱字、批判、応援等有りましたらコメントにてお願い致します。




