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準備

薄暗いだだっ広いホールに力任せに引き裂かれたであろうボロボロの服を着て正座をした少女、その対面に椅子にふんぞり返るがたいの良い男を中心に人だかりがが出来ている。


先程までホールを支配していたけたたましい音楽が止み騒々しい光の乱舞も消えてしまった。

まぁ原因を作ったのは俺だが音楽を止め服をボロボロにしたのは対面の男だ。


右頬が痛い、と言うか全身が痛い。

椅子にふんぞり返る男にしこたま殴れたからね、そりゃ痛いわ。

周りに居る男達が止めなければ危なかったかもしれない、だが、その止めたはずの男達も俺のスキルの影響で別の危険な存在に変わりつつあるが。


それにしても資料以上に凶暴な男みたいだ、反射神経も判断力もかなり良い。

クラブで飲んでいたこの男の前で拳銃を取り出しただけで手に持っていたグラスを投げつけられた。

状況判断力もかなりの物だ。

咄嗟に避けはしたがその間に左ストレートを顔面に叩き込まれた。

倒れると後は止められるまでフルボッコだ。


「一応無駄だと分かってるが何処からのヒットマン?」

俺が持っていた拳銃を弄りながら聞いてきた。


「・・・・・・・」

俺は何も答えず下を向いている。


「やっぱり体に聞くしかない?」

下卑た笑みを浮かべる。


やっぱりこいつも俺のスキル、発情に当てられてるのか?それともそれが地なのか?。

地なのだろうな普段からそんな犯罪を普通に行えると聞いた。


「・・・・・・・」

更に沈黙を貫く。


目の前の男はこの街ではそこそこ有名な悪ガキらしい、悪ガキと聞こえは可愛いが半グレとかチンピラとかで呼ばれるそんな危ない部類の人間だ。

警察は勿論、公安からも監視視対象たして目を付けられている奴だ。


どうしょうもない悪ガキ、更生が望めない悪ガキそれが俺達のこの男の評価だ。

だからこそ俺はこいつの前にいるのだがな。

 

「兄貴、こいつ少し前に110番してるわ」

俺の持っていたスマホを弄りながら子分の1人が叫ぶ。

まぁ俺が警察に通報していると思わせるための小道具なのだが。


「あ、もしかして警察来るの待ってるのか?なら目論見違いだぞ。

いるんだよなー俺を弾いた後、事前に通報していた警察に捕まって逃げようとするバカが。

この街の警察なんて真面目に働いてる奴なんかいねぇよ。

もし駆け付けて来ても小金渡したら引き上げるしな。

あ、来た警察にお前の体使って引き上げてもらうのが1番コスパ良いな」


下卑た笑みを浮かべながら勝手な想像を口にする。


入り口が騒がしくなり何人かのスーツ姿の男達が慌ただしく入って来た。


「おやおや、マル暴の課長代理さんじゃないですか。

今日はどうしたんで?」

芝居がかった仕草でスーツのリーダーらしき男に声をかける。


スーツの男は心底面倒くさい顔をしながら口を開く。

「あのな、何回も言ってるが通報があったら俺らも動かずにはおれんのだ、何も無かったは何回も使えん。

それにお前がどういう状況になってるのか分かってんのか?」


「分かってますって、だから今回はこの女はどうっすか?」


スーツ姿の男達が下卑た笑みに変わる。

「なるほどねー仕方ねーな、今回だけだぞ」


「あざーす、あ、使い終わったら洗浄室に放り込んでおいて下さい」

おちょくった口調で返事を返す。


「じゃ、行こうか、楽しませてくれよー」

スーツ姿の男が俺の髪を掴み引きずるようにして歩き出した。


・・

・・・


「花の道!!」

荻田さんの怒鳴り声で目が覚める。


「着いたでー」


先程の会合でバベルがゲームの開始を宣言した後、本来の会合もせず解散になった。


無言のまま車に乗り込むと荻田さんが腹空いたわーって昨日のお店に立ち寄る途中で眠ってしまっていたらしい。


ほんの数分で見た夢だがやけに生々しい。


車から降りると見知った店が目の前に在った。俺がサージェリーに返却された時に使われた居酒屋だ。

深夜にもかかわらず店は開いていた、以前でも個人で経営の居酒屋なのに24時間体制年中無休と言う変わった店だった、それが異星人に経営が変わっても同じらしい。


店に入るとサージェリーやフェルガナで店内が埋め尽くされていた。


「中将お待ちしておりました」

水色肌のサージェリーが荻田さんに気付くなり声をかけてくる。


「ヒジュ?なんでここに居んねん?」


「それは我等の船が撃墜されたのでこの店に一時避難したからですよ」


「偶然?」


「そんなわけ無いでしょう、私のスキル”誘導”を使ってますよ」


「スキルの乱用は関心せんなー、まぁええわ親父ビール」

注文しながらヒジュさんの隣の席に着く。

俺も同じ物を頼むとクトゥルフ神の様な見た目の親父に未成年?と聞かれるが違うと答えておく。


「硬いことは言ってはいけませんよ。

で、会議は如何だったんですか?グーレイは糾弾出来ましたか?」


「グーレイは糾弾出来へんかったけど面白い事になったで内容送るさかいに見たってや」


ヒレを頭に当てると同じくヒジュさんも頭にヒレを頭に当てる。


暫くの沈黙の後に口角が上がる。


「太陽系を我がサージェリーが取れる。

確かに面白いですね、ですがこれはひとつ間違えばスィーティ・スィージュと全面戦争の火種にもなりますよ、これ」


「まぁ全面戦争の切っ掛けにはなるわな、やからサージェリーは矢面に立たん、全面に出すんはこの前作った会社や」


「あぁ海賊対策にスィーティで登録した会社ですね」


「会社の国籍はスィーティやからスィーティから文句は出しにくいやろ。

ほんでスィーティ・スィージュ加盟国に必ず協力してくれる国が1カ国ある、後2カ国か3カ国ぐらいから協賛なり出資なりを取り付ければスィーティ・スィージュとの全面戦争は避けれるやろ」


「そう上手く行きますか?協賛でもスィーティ・スィージュに不和を招く行為として糾弾されかねないですよ」


「上手く行くような秘策があんねん、地球人が古くから使っているコードが成功確率を格段に上げる方法があんねん。

ヒジュのスキル”誘導”の強化版やな」


「地球人がコードを?コードって魔法を使うときに唱える力ある言葉の事ですか?」


「そや」


「まさか地球に?そんな都合のいいコードが?我等より後進文明なのに?」


「後進文明って、あのなヒジュ、ワイ等がコードを使って魔法を使えだしたんはほんの60年前や。

60年前にアリアドネが発見されるまでコードの概念すら無かったんやで、ワイ等が知らんコードが地球に有っても不思議ではないやん」


「地球に我々が知らないコードがあったと?」


「そや、しかも新たなる分野かもしれんしな」


「俄には信じられませんが本当なら興味深いですね」


「地球では風水と言うんやけど、地球の大気や地中に流れるダークマターに色んな意味を持たせたり制御できるコードらしいわ」


「あぁ地球の一部の地域で使われる暮らしやすくする為のまじないみたいなやつですね」


「一般に知れ渡ってるやつはな、本当に効果があるんはそれにコードとダークマターを併用してるんや」


「その話しから察するに対象は国規模、莫大なダークマターを集めなければ効果を発揮しないのでは?小規模では運用するのは難しいのではないでしょうか?

それに外部からダークマターを持ってくるにしてもダークマターを溜めれる魔力石は高価な上に蓄える量によって大きくなっていきます、隠密作戦には不向きではありませんか?」


「大丈夫や、魔力石なんか使わんでも切り札があんねん。

な、花の道」


「花の道?使う?どうやってです?」


「スキルマニアとは思えん発言やな、コイツにはダークマターを発生させるスキルがあんねん」


「スキル?・・・まさか強制発情?ですが強制発情にダークマターを発生させる能力は有りませんし出来ませんよ?」


「勿論、スキル事態にはダークマターを発生させる能力は無いで、やけどダークマターを発生する源は惑星や生命や。

その中でも知的生命体の感情や行動で発生するやん。

やからスキルで発生する行動をとらせばええねん」


「行動?発情したときの行動と・い・・え・・・ば?」


「交尾やな」


「ちょいちょいちょい何ヤバイ事さらっと言ってんのお前」


「ヒジュ、素が出てるで」


「ん、んん、失礼」


「具体的にはワイ等が根城にする建物に花の道にダークマターが集まるように据えて交尾をしてくれる人達を送り続けたらええねん」


「そんな事が出来ますか?」


「筋書きはこうや、ワイ等の経営する会社が事務所にするために買った物件にたまたま不法武力勢力が巣くっており、それを排除のために現地治安維持機関に排除を依頼するも悉く失敗し泥沼化するちゅうわけや」


「それは犯罪では?」


「やからワイ等の法が及ばん無法地帯でやる」


「法が及ばない無法地帯、まさか・・・地球で」


「そや、太陽系はスィーティの管理下やけどスィーティの法では原始知的生命体がいる惑星は現地の法が優先されるってあるんや、そして地球の法にコードやダークマターを利用した行為を罰する法は無い。

まぁ、スィーティの法にも厳密には無いんやけどな」


「なるほど、後は我々の良心的呵責だけですか」


「そやな良心の呵責だけや。

勿論ワイ等の犯罪に巻き込まれるんは犯罪を犯した者に限定するつもりやで、ワイ等の呵責的にもな」


「その犯罪者にも生存権はありますが?」


「突発的な犯罪や事故による犯罪は除くで、常に人を食い物にしょうる奴等が対象やな」


「分かりました、そこまで考えているなら私も協力しましょう」


「あんがとな、やけどヒジュの艦隊の出番は最後の最後やねん。

地球人を太陽系からワイ等の支配星系までの護衛やな」


「はい?護衛?太陽系を取るのでは無いのですか?」


「太陽系は取るつもりやけど地球人は地球に残せんやろ」


「なぜ?誕生惑星から離してしまうと後々に禍根を残してしまいますよ」


「地球人は他の種族に唾付けられすぎやねん。

大きい勢力やとスィーティ・スィージュにも加盟してるのに別枠で同盟を組んでる7カ国同盟。

宇宙一暗躍の上手いレセプティ。

そして拡張政策を撮り続けないと国が滅ぶのグーレイ。

名前が上がっただけでも9カ国や、唾付けられすぎやろ」


「どの国も領有権が無い未開の星系を発見すれば調査探索はするでしょう?」


「それが只単なる調査探索ならなんの問題も無いで、やけどさっき名が上がった種族は明らかに接触して地球の現地政府に影響力持ってるで。

何処かの紐付きを一括りにして纏めてみ内部から無茶苦茶にされんで。

ワイが反対の立場なら絶対にスパイをしてるという自覚の無いスパイを紛れ込ますわ。

ナノマシンである程度は遠隔操作か特定の行動をさせる事が出来るからな」


「無自覚なスパイですか、確かにあり得ますね。

ですが母星から引き離なさずともいいのでは?」


「スパイちゅうんは寝てるか完全に隔離されてへんと安心できんもんや。

サージェリーの支配星系から最寄りの星系まで100光年は空いてるから通信は絶望的、情報を抱えてハイパードライブで逃げるなら何処ぞの寄港地で捕まえられるからな。


そして最大の懸念がバベルや。

地球が奴の本拠地や、スパイどころか兵器まで作れる、そんな危ない所に置いておけるか」


「確かにそうですね、納得しました。

では中将ご指示を」


「そうやな、まず下地を整えるか、花の道」


「はい?」


「地球出身はお前だけやねん、お前の地縁を使いたい」


「地縁?ッスか?」


「どんな生命でも生まれた星系、その星、その土地により力ある者から恩恵を受けんねん。

土地神、精霊、色んな呼び方があるけど根本は一緒や。

で、その恩恵と言う縁を利用して力ある者にエネルギーを送る。

そしたら新たなる恩恵が受けられる場合があんねん。

新たなる恩恵はある程度はこちらの臨む恩恵にすり替える事が出来るからな」


「マジっすか」


「ヒジュは花の道の地元で会社の事務所登録をお願いするわ。

そう言う事柄の積み重ねが縁を強くするからな。

会社の登録やけど、ここに相談してみ、ワイからも連絡しとくさかいに。

なんか個人でこの国の上層部と繋がりがあるみたいやで、その時ついでに上層部と挨拶しといてや」

ヒレで頭に触るとヒジュさんもヒレを頭に当てる。


「了解、で、花の道君、君の地元は何処かな?」


「あ、俺の地元ここっす」

2人が一瞬固まる。


「・・・偶然か?誘導されたか?まぁええわ力ある者の考えは分からん。

ヒジュが会社登録してる間にワイと花の道はエネルギーの収集の下準備をするわ。

先ずはここの土地神様にご挨拶やな。

仕組まれたんならここで何かしらのアクションがあるやろ。

ほな行くで花の道」


そう言って店を出る。

再び車に乗り込むのかと思いきや車を通り過ぎ商店街の小道に入っていく。


俺も荻田さんを追いかけ小道に入っていく。


しばらく歩くと商店街が突然に終わり鬱蒼とした森に変わる。

確かこの先は神社?だっけか?県下では1番栄えている神社のはず毎年、鳥居やら干支の置物が増えているから儲かっているんだろう。


暗闇の中をどんどんと進んで行くと拝殿の前に着く。

深夜だからか独特の雰囲気がある、じわりと恐怖が這い上がって来る。


「二拝二拍手一拝やっけ」

突然の言葉に心臓が飛び出そうになる。


「あ、え、うん、そッスね」


「オッケー」

そう言いながらなにも無い空間に手を入れプラスチック製の板を取り出し俺に1枚を渡してきた。


「なんすかこれ」


「お賽銭や、参拝するのに手ぶらはあかんやろ」


お賽銭を放り込みパンパン、パンと荻田さんが参拝をする。

サージェリーのようなクリーチャーが参拝している姿を見ると結構シュールな光景である。


「花の道もやっとき」


促されるままお賽銭を何気なく放り込み参拝をする。

最後の一拝を叩いた瞬間に突如として様々な感情が沸き起こる、多幸福感、畏敬感、そして肉体にも異変が起きた、強烈な快感が体を駆け抜ける。


「ギャッ」

短い悲鳴を上げへたり込む。


「おぉーやっぱり反応があったな」

関心するような声を上げるとヒレを俺の頭に乗せ小声で何かを呟き始めた。


バチッと眼の奥で何かが弾けた。

「痛っ」


「ほい、完了」


「な、なにを?」


「説明するとな、さっき参拝したときにお賽銭や言うて渡したんはダークマターが籠もった石や。

さっき説明したやん力ある者にエネルギーを渡すと新たなる恩恵を得られるって。


花の道の魂はこの神社と繋がりがあるけど肉体は何処で生まれたんか分からんやん。

やから肉体的な繋がりを再度作っんやけどここの神様は太っ腹らしいわ、本来なら生まれてから受けられるはず恩恵をいっぺんにくれたらさっきみたいな衝撃になるわな」


「へ、へぇ、そう・・な・・・ん・・です・・・ね」

適当に相槌を打ち平静を装う。

実は新たな快楽が波のように押し寄せ軽い絶頂を繰り返している。


「ほんで新たに貰った恩恵ワイがを引き寄せる恩恵に変えたんや。

って、なんかすまん、動けるようになるまで待つわ」

段々と弱っているのが分かったのだろう説明を止め口を紡ぐ。


快楽の浪に耐えていたがいつの間にか眠っていたようだ、近付いてくる足音で目が覚める。


「誰か来たな」


「おい!荻田よ、何でこんな危険な場所に呼び出すかね?」

聞き覚えのある渋い声が暗闇の中から発せられる。


「商売の打ち合わせやろ?しゃーないやん」


「場所を考えろって事だ、地球じゃ無くても月とか火星とか色々有るだろ?

わざわざ危険な地球で打ち合わせせんでもいいだろう」

顔が確認出来る距離まで来ると見知った顔が現れた事に驚いてしまった。

黒いスーツに黒い皮靴、顎髭がとても似合う、

ゲーム、ラストフロンティアで俺が所属するクランのマスター、レモンハートさんだ。


「すまんな、しばらくワイが地球を離れれんねん」


「お、サージェリーも地球争奪戦に参加するのか?」

その言葉に顔がにやける。


「何で知っとん?」


「商売の基本は情報、情報は鮮度が命だからな、色んな所に網を張りめくらせてる、グーレイが雇っているトロイドルやさっきお前が居た居酒屋の親父とかな」


「さよか、なら話しは早いな、そこに居るんがワイ等サージェリーの代表や桜井花の道やよろしくな」


「桜井花の道?、俺の知ってる花の道か?」


「そやで、ワイ等のクランの仲間の花の道君や」


「時系列が会わないぞ?、まさか培養器で育成中からラストフロンティアをプレイしてたのか」


なにか変な勘違いしてるような気がする。


「ァ・・チ・・ガ・・」

上手く声が出ない。


「花の道、休んどれ。

てか何で知っとん?」

おい!否定しろよ。


「いや、ラストフロンティアをプレイしていた頃から不思議ではあったのだ。

何故、母国では英雄とまで呼ばれた者がこんな辺境で遊んでいるのかと、納得したよ」

いや、ちげーよ、なに納得してんだ。


「まぁそんなとこや」

否定!


「ならば改めてご挨拶せねばなるまい。

私、ミールー商人協商連合体、最高決定評議会『8』の一角であります総合商社ハート・コーポレーションの副社長を務めますレ・モン=ハートで御座います、以後お見知りおきを地球の正当なる継承遺伝子を引き継ぐ者よ」

俺に向き直り恭しく礼を取る。


正当なる継承遺伝子?それにミールー?


「ァ・・ミールー?・・」


「説明するとな」

いきなり口調が砕けたな。


「ラストフロンティアでのミールーは同じく8の一角であるアルハパスカンパニーのことを指す。

ハート・コーポレーションはラストフロンティアプロジェクトに間接的にしか関わりが無い。

俺がラストフロンティアでプレイしていたのは仕事だからだ」


「え?仕事だったん?ガッツリと楽しんでいた様に見えたが?」


「仕事は楽しまないとな。

で、なんで花の道はそんな状態なんだ?」


「人生を実りある豊かな物にするちょいとした儀式や」


「変な文化がサージェリーには有るんだな。

まぁいい、ところで荻田、お前んとこの少将から連絡があったぞ。

ここで会社を興すのか?」


「そやな」


「何故かは聞かないが地球の政府に登記して意味が有るとは思えないんだが?。

どうせ無くなる国だぞ」


「それも含め大丈夫や」


「登記だって金は掛かる、俺が出来るのは口利きだけだからな。

タブレットに手を乗せろ、それでこの国で登記は完了する」

スーツ内ポケットから手のひらサイズのガラスの板を取り出した。


「会社の代表は花の道やから花の道でお願いしていいか」


「なら、荻田、お前が代わりに貰ってくれ。

俺はこれ以上は近づけんのだ、先程から体内防衛ナノマシンが警告を発しているんだ。

花の道が発生源の嗅覚異常が出てる、ガス?フェロモンか?」


「よう分かったな、ワイ等サージェリーは生態が違い過ぎて効かんのやけどな」


「可愛く見えてもリヴァイアサンか」

レ・モンさんの目が何故かは分からないが不快に思えた。


レ・モンさんよりタブレットを渡された荻田さんが俺にタブレットを差し出してくる。


「手を置くだけでええで」


息も絶え絶えに手を差し出すが、疑問が浮かんだ。

荻田さんに言われ流されるままで良いのか?

少しだけ特別な立場になれた。

なにか出来るのでは?


「荻田さん、地球人は助かりますか」


「うん?」


「地球人は生き残れますか?。

俺がゲームだと思ってたのは異星人の侵略の手段は分かりました。

ラストフロンティアで決着が着けば何処かの国になるのは理解しました。

その時、地球人は奴隷にもならず生きていけますか?」


「うんなもん分かるかいな。

太陽系の領有権を取った国の方針によるやろ」


「そんなこと聞きたいんじゃ無いんです。

俺がサージェリーに協力して地球人は生き残れますかと聞いてるんです」


「まぁ、そこは気にすんな」


え?誤魔化された?


「地球人全体で考えると救える者は限られてくる。

地球人にも色んな考えがあるやろ。

勝ち馬に乗ろうと選択肢を間違えてしまう者までは救えんで。

サージェリーを信じてくれる地球人の生命は出来る限りの事はするけど他の勢力に加担する奴までは知らんで」


「そこまで聞ければ大丈夫です」


タブレットに手を置くと手の外郭をなぞるように光が走る。


「契約完了だ。

これによりこの国の上層部にご紹介出来るようになった。

そちらはヒジュ少将に任せて俺らは販売した物件の引き渡しを終わらせたい」


「えらくせっかちやな」


「お客様の要望には迅速に対応させて頂くのが商売の基本だからな。

うん?少し待て、振り込み名がファイナンスだが大丈夫か?これ個人の借金だろ?」


「まだ本国から予算が降りてきてないねん」


「そうか、なら何も言わないがファイナンスは高金利だから気を付けろよ」


「分かっとるがな」


言葉が終わると同時に体が浮き上がった。


慌ただく手足をバタつかせるが何の意味もなかった。

いや、足下に大小様々な球体がバタつく手足にくっ付く。

手に着いた物を嗅いで見たがうっすらとアンモニア臭と体液の匂いがした。


・・・

・・


3人で人気の無いビルの屋上に降り立つ。


先程のは反重力を応用した移動手段とレモンハートさんが説明していたがあまり頭に入って来なかった。

何故なら快楽の波は収まったがショーツ、ズボン全てがびしょ濡れで気持ち悪い。


「荻田、見ろ」

レ・モンさんが屋上から下を指さしてる。


下を見るとガラス張りの8階立てのビルが見えた。

向かいのビルなのにけたたましい音楽が聞こえてくる。

ビルの前には6人ほどの普段では近づきたくない風貌の人影が見えた。


「なんかガラの悪い輩がビルの前で立ってはるけど何なん?」


「見張りだよ、あいつらが居るビルがお前等が買った物件だ。

ヒジュ少将より見栄えの良い格安物件を、と条件に出されたが、今はあれしか無い」


「あーあいつらは持ち主が変わったから素直に居らんようになってくれるん?」


「無理だろうな、今現在でも不法占拠状態だ。

だから俺も格安で手に入れれたんだがな」


「排除してくれんの?」


「ん?ヒジュ少将からはなるべく治安が悪く一般人が近寄れない曰く付き物件がご希望だったからお前等がするんでは?」


「あ、さよか」


「では、引き渡しは完了だな。

あいつらの詳細情報は送ったから見ておいてくれ。

これからも何卒末永く御用命くださりますようお願い申し上げます。

お客様のご要望には迅速、そして完璧に対応いたしますので」

いきなり口調が変わり恭しく礼をする。


「ほな、これも頼むわ」

ヒレで頭を押さえるとレ・モンさんが不適な笑みを浮かべる。


「これはこれは大量注文だな。

早速の御用命ありがとうございます。

ですが大量かつ高額になりますのでお時間を頂きたい」


「かまへんで」


「ありがとうございます。

商品が揃い次第にご連絡致します。

じゃぁ、俺は帰るわ、急に忙しくなったからな」


そう言って再び空に舞い上がり帰っていく。


「口調の忙しいやっちゃな。

ほなそろそろ、仕事しよか」


「え?排除をッスか」


「ちゃうで、あいつらは糧や、そしてお前は餌や。

レ・モンの資料によると不法占拠の半グレのリーダー格は指名手配犯、治安維持組織とも繋がり有りか。

将来大物になりそうやな、ま、そんな未来は訪れんけどな」


「あの、餌って?」


「あのビルの中で強制発情のスキルばら撒いて風水のコードを使えるぐらいまでエネルギーをあの建物に貯め込む為の餌やな。

あ、殴り込みかけたら繋がりのある治安維持員にも通報が行くか?」


「それむちゃくちゃ危なく無いっすか、荻田さんが居るとはいえ一歩間違うとそのまま殺されますよ」


「発言宜しいでしょうか」

突然何も無い空間から声がする。


「ピヤッ!!」「かまへんで」

悲鳴を上げる俺、冷静に答える荻田さん。

何も無いと思っていた空間から1体の蜘蛛型異星人フェルガナが姿を現す。


「先に通報して花の道さんだけ突撃すればいいのではないでしょうか」


「むちゃくちゃびっくりしたっ!」


「あれ?気づいてなかったん」


「いや、分からなかったッスよ」


「居酒屋からずっと後ろ着いてきてたで。

あ、レ・モンも気づいてる様子なかったかもなー」


「見えなくなる技術ッスか」


「いや、フェルガナの基本生態や肌の色を変える不可視、足の接地面を変形させて限りなく音が出ない無音。

フェルガナってむっちゃ優秀な狩人やねん」


「マジッスか」


「あの、話しを戻しても宜しいでしょうか」


「あぁすまんすまん。

花の道だけ突っ込まして油断を誘い、通報で繋がりのある治安維持員にもあのビルに来て貰おうってことかいな」


「理解が速く助かります」


「やけど通報ってどうすればええんや?」


「お持ちしました」

また何も無い空間から声がする。


「!!」

もう1体フェルガナが現れる。


「先にあのビルの偵察も兼ねて現地の通信機器を調達してきました」

後に現れたフェルガナが前脚で器用にスマホを差し出してきた。


「あ、ありがとうございます」


「それと殴り込みですから武器も必要ですよね」

前脚で黒く鈍く光る鉄の塊を差し出してきた。


「拳銃」

ズシッとした感触に嫌でも恐怖が湧く。


「スマホも武器もあのビルの中で居る地球人が持っていた物ですからお気になさらず。

彼等にはもう直ぐ必要無くなりますから」


「流石フェルガナ、段取りが上手いわ。

ワイが否定する要素無いやん」

フェルガナが嬉しそうに体を揺らす。


「あ、あの、俺が、殴り込み、ッスか?」


「心配すな、護衛で後ろからこのフェルガナが付いてくるがな」


「い、いや、でも」


「覚悟を決めろ」

怒鳴るわけでもないが言葉に重みを感じた。


「分かりました、行きます」


「ほな、下まで行こうか」

荻田さんの頭が薄らと赤く光ると体が浮きビルとビルの隙間に落ちていく。


路地から件のビルを見ながらスマホで電話を掛ける。

はい、緊急ダイヤルです事件ですか?事故ですか?と声がする。


「襲われそうなんです、助けて!〇〇ビルに居ます、助けて!」

分かりました、緊急で向かわせま・・・慌てた反応が返って来たが途中で切り緊急なのを演出してみる。


「ほな行こか、狙うんはコイツや」

荻田さんが頭にヒレを当てると俺の視界に半透明の1人の男が浮かび上がる。


「不法占拠のリーダーらしいわ、コイツの前で打つ真似だけで任務完了や。

ほんで嬉しい事に地下にお前のスキルを遺憾なく発揮出来るもんがあったわ」


男の姿が消え何処かの一室が半透明に見えだした。

何十人もの男女が裸で居るのが見える。

1人の男に何人もの女が群がっているのもあれば1人の女に何人もの男が密着しているのが見えた。

防犯カメラをハッキングしてるのだろうか解像度が悪いが何をしているのかは分かった。


「見張りは眠らせます」

フェルガナの言葉に覚悟決めビルに向かい歩きだす。


崩れ落ちた見張りを横目に両開きの自動ドアをくぐり重圧な扉を開けるとけたたましい音楽が更に五月蝿くなる。


五月蝿い音楽に光の乱舞、狂ったかのように踊っている者達を間に半透明の矢印が浮かぶ。

ナビゲーションだろうか矢印に従い進むと件の男が豪華そうなソファーに座り酒を飲んでるのが見えた。


頭が真っ白になり無心で背中で隠していた銃を男に向ける。

銃を向けた途端手に持っていたグラスが飛んできた、続いて右頬に衝撃が来ると何故か床が目の前に見えた、服を掴まれ倒れる事は許されなかった。

悲鳴、怒号が入り交じり出すと全身の至る所にに痛みが走り出す。


痛みが発生する度に股間は嬉しい悲鳴を吐き出し始めた。

少し乾いたであろうショーツが再び濡れ腹部と胸は異常な熱を帯び始める。


新たな痛みが無くなったのは嬉しい悲鳴をショーツとズボンが吸収出来なくなり床に滴り落ち始めた頃だった。


音楽が止むと唐突に声がする。


「おい!正座!!」


周りを見渡すと俺を中心に人だかりが出来ていた。

光の乱舞は止み薄暗いだだっ広いホールは人相の悪い男達しか居なくなっていた。

力任せに引き裂かれ服はボロボロ。

人だかりの圧に負け着て正座をする。

息を切らしリーダー格の男が豪華そうなソファーにふんぞり返る。


右頬が痛い、と言うか全身が痛い。

だが、それ以上に胸と股間が疼く今すぐにでも手で疼きを止めたいがそんな事を出来る空気では無いのは分かる。


周りに居る男達が止めなければ無意識に行為に及んだかもしれない、だが、その止めたはずの男達も俺のスキルの影響で別の危険な存在に変わりつつあるが、躰はそれを望んでいるかのように疼きを激しく強める。


それにしても資料以上に凶暴な男みたいだ、反射神経も判断力もかなり良い。

拳銃を取り出しただけで手に持っていたグラスを投げつけるとは。

状況判断力もかなりの物だ。

咄嗟に避けはしたがその間に左ストレートを顔面に叩き込まれた。

倒れると後は止められるまでフルボッコだ。


「一応無駄だと分かってるが何処からのヒットマン?」

俺が持っていた拳銃を弄りながら聞いてきた。


「・・・・・・・」

俺は躰の疼きを必死に耐える。


「やっぱり体に聞くしかない?」

下卑た笑みを浮かべる。

その言葉に躰の疼きが更に強くなる。


やっぱりこいつも俺のスキル、発情に当てられてるのか?それともそれが地なのか?。

地なのだろうな普段からそんな犯罪を普通にやれるんだろうな。


「・・・・・・・」

強くなる疼きは嬉しい悲鳴の水溜まりを床に作り始めた。


どうしょうもない悪ガキ、更生が望めない悪ガキ、だからこそこいつ贄になるのだから。

 

「兄貴、こいつ少し前に110番してるわ」

俺の持っていたスマホを弄りながら子分の1人が叫ぶ。

まぁ俺が治安維持組織に通報していると思わせるための小道具なのだが。


「あ、もしかして警察来るの待ってるのか?なら目論見違いだぞ。

いるんだよなー俺を弾いた後、事前に通報していた警察に捕まって逃げようとするバカが。

この街の警察なんて真面目に働いてる奴なんかいねぇよ。

もし駆け付けて来ても小金渡したら引き上げるしな。

あ、来た警察にお前の体使って引き上げてもらうのが1番コスパ良いな」


下卑た笑みを浮かべながら勝手な想像を口にする。


入り口が騒がしくなり何人かのスーツ姿の男達が慌ただしく入って来た。


「おやおや、マル暴の課長代理さんじゃないですか。

今日はどうしたんで?」

芝居がかった仕草でスーツのリーダーらしき男に声をかける。


スーツの男は心底面倒くさい顔をしながら口を開く。

「あのな、何回も言ってるが通報があったら俺らも動かずにはおれんのだ、何も無かったは何回も使えん。

それにお前、今がどういう状況か分かってんのか?」


「分かってますって、だから今回はこの女はどうっすか?」


「なるほどねー仕方ねーな、今回だけだぞ」

スーツ姿の男達が下卑た笑みに変わる。


「あざーす、あ、使い終わったらダンジョンに放り込んでおいて下さい」

おちょくった口調で返事を返す。


「じゃ、行こうか、楽しませてくれよー」

スーツ姿の男が俺の髪を掴み引きずるようにして歩き出した。


「痛い」

髪を掴んだ手を払いのけようとするがスーツ姿の男の力が強くほどけない。

ズボンが濡れていのかよく滑る。


(上手いこと釣れよるのー)

テレパシーで荻田さんの声が頭に響く。

どうやら現状は把握しているみたいだ。


エレベーターで地下の扉が開くとむせ返る匂いが入ってきた。


エレベーターホールにはバニー姿の女性が俺を蔑んだ目で見ると男を扇動するように歩きだす。


床がクッションの様に柔らかい個室に放り込まれると男達が服を脱ぎ始めた。


恐怖とは裏腹に躰の疼きは最高潮になっていた。


服を脱ぎ終えた男達はそのまま崩れる様にへたり込んでしまった。


「ここまでです」

上から声がすると天井に張り付いていたフェルガナが姿を現す。


「何もかも上手く行きましたね、上手く行きすぎて恐いぐらいですね」

声が出ない、てか声を出す余裕が無い。

必死に躰の疼きに耐える、ここで疼きに負け慰めてしまえば一生勝てない気がした。


「いましばらくお待ち下さい、急ぎ我等の長官がこの国の上層部と会談を終えこちらに向かって来ています。


会談の結果、現在このビルに居る全ての地球人は我等サージェリーが管理運営してよいとの承諾を得ま・・・

危険な状態だと判断します」

その言葉と同時に太股にフェルガナの前脚が触ると針で刺された痛みが走る。


激しい快楽が全身至る所から巻き起こり全身を駆け巡り幾度となく痙攣を引き起こす。

それと同時に世界が暗転し深い闇に落ちた。



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最後魔で読んで頂き感謝感激です。

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