開拓村2年目:板ガラス製作中断
現代知識を使って無双!とまではいかないが、少しだけ明るい兆しが見え始めてきた
「で、だ。この川沿いに伐採していこうかと」
「遠いわね。日帰りの作業はちょっと無理ね」
「ああ、じゃが、この川は広めだからここらを伐採すればこっち側の森は守られるはずじゃ」
机の上に広げられた地図の上で頭を寄せ合って話している。山火事が万が一止まらないときの話をしているようだ。燃えるものがない場所を作るいわゆる防火帯ということだろう。
「ただ、この距離だと日帰りは無理だな」
「ああ、この辺に打ち棄てられた少し大きめの伐採所があるらしいからそこを拠点に腕が立つのを集めて作業じゃろうな」
ボルトラーミさんが珍しくまじめな顔で呟いたのにパリッセさんが返した。
「で、何人くらいだ」
「それを今から話そうと思ってたんじゃが……」
「ん-……」
ボルトラーミさんはそれを聞くとしばし天井を見上げて固まった。
「休暇にいく砦からの兵士3人が村の警備を手伝ってくれるらしい」
「それは有難いが……」
「もちろん、小遣い程度でも報酬は払わんといかんがな」
「そうだな……」
パリッセさんの捕捉にそれだけ言うとボルトラーミさんはまた黙って考え始めた。本職である鍛冶屋の話でも真面目とは思えない彼は村の警備関連の話だけは真面目になるのは未だに不思議に思える。
「1週間か2週間でこの川沿いを伐採するとなると20じゃ足らんか?」
「30人ほど出しますか?しかし、それじゃ村の警備が怖いですね」
「それはそうなんだよな……」
少し考えた後のボルトラーミさんの言葉に会計係の女性が答え、またボルトラーミさんが黙り始めた。何が問題となっているのかは説明されるまでもなく理解できるが、それについて自分たちがどうこう言えるわけでもない。周囲はボルトラーミさんが悩んでいるのを認めると色々と議論を始め、一気に部屋は騒がしくなった。村での作業を最低限にしてしまって一気に伐採してしまおうとか、逆に伐採は諦めて数人で行って燃やしてしまおう、いや山火事がどこまで広まるかわからんうちからそれはもったいないだの、いっそのこと金を出して村の警備を雇えないかだの、様々な議論が飛び交っている。その議論に加わることはできず、一体なぜ呼ばれたのかの疑問符だけが頭の上に数個は浮かんで固まっているだけだった。
「あのー……ちなみに僕らが呼ばれた理由は?」
議論が少し止まって少しこちらに視線が来た隙を見て意を決して訊いてみた。
「ああ、そうじゃった。忘れておったわい」
パリッセさんが思い出したように頭をかきかきしゃべりだした。
「1つは、おまえさんたちが村に残ったとして戦力としてどこまであてにしていいのかという意味で、魔法やらの上達具合を聞きたかったのと……」
自分たちと一緒にいることが多いフゼルさんの方を向いた後で付け加えた。
「ガラス作りが結構うまくいっとるそうじゃないか」
「はい、なんとか」
「で、だ。今から外部の者たちも村の中をあちこち歩き回ることになるわけじゃ」
今まで村に来る人は、少し離れたところにある砦の交代の兵士が船着き場を利用するか、その砦や村への補給物資を納入する業者のような人たちが利用するくらいで、彼らは村をあちこち歩き回ることはなかった。
「ということで、いったんガラス作りは製法がバレないように中止してもらうしかないってのを伝えようかと思ってな」
せっかくうまくいきかけているガラス作りだが、確かに製法がバレて外部に流出してしまう方が怖い。
「鍛冶場の連中はだいたい腕っききだから伐採に行くことになる。鍛冶場の管理を任せたいんじゃが……」
「管理というと?」
「まぁ普通に鍛冶場にいてもらうだけなんだが」
自分の質問に対してそう言った後、パリッセさんが一呼吸おいて続けた。
「勘のいい奴だと中を見ただけで何か稀有なことをやってると気づきかねん。かといって鍛冶場を厳重に戸締りして中を見せないと、それもそれで何か怪しまれる。それでどうしたものかと思ってな」
それを聞いて周りの人たちが少し唸った後沈黙した。沈黙したということはそれだけガラス作りが重大で、外とに漏れてはいけないほどの可能性を秘めているということなのだろうか。かといって、中を見ただけでバレてしまうのかどうかはとんと分からない。
「あのー……」
一緒に同席した山田さんだおずおずと声を発した。
「……その」
気弱な山田さんらしく、全員の注目を浴びて一回黙ってしまう。そういえば、正式な会合に呼ばれたことは何にせよ、彼女は絵が描けるだけにちょっとした話し合いで説明するのに駆り出されていた。意外にも自分らの中でも人に説明するのに慣れているのかもしれない。
「穴を埋めてしまってはどうでしょう?」
少しの沈黙の後山田さんが目をつぶりながら発言した。
「大きな徐冷窯は不思議にせよ。穴がなければ流石に何をやっているかはわからないはずなので中を見られても問題ないかなと……」
上目遣いで周囲を見渡す。会合に慣れていそうと思ったのは気のせいのなのかもしれない態度である。
「そうですね……確かにそうかもしれませんね」
少し考えた後でフゼルさんが答えた。
「となると、穴を埋めて跡を目立たなくさせる程度でいいなら、たいして作業に人と時間は必要ないわね」
それを聞いて、教会の世話役の女性が感心した口ぶりで頷いた。
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