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開拓村2年目:ピザ窯

ガラス作りがもうすぐ終わる。それが成功の終わりであることを祈りたい。

「よーし、これで完成だな」


 目の前には大きなピザ窯のようなものができあがった。違いは奥行きがあり後ろ側にも口があることである。


「火を入れるのは明日でええかな」

「もう結構な時間だしな」


 鍛冶場の人たちと手伝いに来てくれた大工役が頷きあっている。ガラス作りはいよいよ最終段階に入ってきた。この間温度を上げたことにより遠心力でかなり伸びるようになり、薄くて大きい綺麗な板ガラスが出来始めていた。だが、円筒形を切り開いた後に波打ったものが出来上がってしまった。それを熱しながら平らに伸ばして順に奥に送ることで徐々に冷ましていこうということである。


「しかし、思った以上にでかくなったなぁ」

「ああ、本格的に鍛冶屋が開始される春までには増築せんと作業に融通が利かないな」

「しゃあないから、今からどう増築するか考えておくわ」

「おお、頼む」

 

 隣でボルトラーミさんと大工の棟梁が話している。かなりの空間をこの窯が占めてしまった。魔物討伐が始まった暁には武具の打ち直しなどの注文が来るはずで村の大事な収入源になるはずである。狭くて作業しづらい鍛冶場のせいで注文を逃したら痛手である。


「しかし、焼き締め煉瓦の材料も前の奴らが置いていったのはほとんど使ってしまったな」

「ああ、これ以上必要になったら探すか買うかしないとだな」

「手に入りやすいとは言えんから、ちょっと面倒だな」


 さらに別の方向からは、この窯のために使われた材料の話が聞こえてくる。温度を上げるための改良はあくまで「既存設備の改修」であったが、今回は違う。スペースも埋めてしまい、材料も大量に使っての新設である。ここまでして成果がでなかった時のことを考えると胃が締め付けられる思いだ。


「スズキ君どうしたの?」


 そんな表情を察してかフゼルさんの奥さんが話しかけてきた。


「いやー、ここまでしてもしうまくいかなかったらどうしようと」


 思ったそのままを口に出す。


「そんなこと気にしてたの?」

「大丈夫ですよ。ここ最近は我々の方が乗り気でやっているんですから、うまくいかなくても君のせいなんて誰も思いません」

「そうよ。だいたい、もうあと一歩のところじゃない。絶対うまくいくわよ」


 夫妻が口を揃えて慰めてくれる。有難いと思う反面、そういう風に思わせるように誘導した自分がいるのも事実で、少し後ろめたい気分もある。少し苦笑いして返すしかなかった。


「あの……」


 外に出て行った山田さんが足を止め振り返ってきた。自分たちの会話を聞いて戻ってきたのだろうか。


「もしかしてヤマダさんまで、スズキ君と同じことを?」

「やあねぇサチ。だいたい、男臭い鍛冶場にあなたが入ってきてくれて、それだけで私は有難いわよ」

「ちげえねえや」

「あとはボルトラーミがいなくなったら、むさ苦しさはもう解決じゃねえか?」

「おい!」


 フゼル夫妻の会話に鍛冶場の男が混ざり、その会話にボルトラーミさんが反応する。この鍛冶場の人たちとの関係も空気を考えるとあまりに気にしすぎなのかもしれない。


「いや、違うんです……また、煙が……」


 煙とは山田さんが見つけた山火事がまた起こったということだろうか。今までの会話とは全く違う予想外の事態のその言葉を聞いて、皆半分怪訝な表情でぞろぞろと外に向かうしかなかった。


「あー……間違いないな」

「これは結構でかいか?」


 前と同じような方角が煙っている。いや、煙るというよりはかなりはっきりとした煙のようにすら見える。それを見て小谷君が呟く。


「えーっと、どうすんすか?」

「どうするも何もあんな遠くなもの消せやしないし」

「祈ることくらいしかできないんじゃないか?」


 正確な遠近感は掴めないが、彼らの言うように近くはないようだ。


「ただ、木材が勿体ないなぁ」

「ああ、それだけは気がかりだが、もうすぐ乾季も終わるはずだから、それこそ本当に祈るしかないな」


 ガラス作りをどうこうしているうちに、まだまだ暑いものの、わずかに夏の暑さも和らぎ、そろそろ晩夏がやってきそうな空気が漂ってきた。秋口になればかなり雨が降り始める。去年も秋の気配がするや否や雨が降り始めていた。


「この間と言い、私が一番初めの外に出た時に限って……」

「何?自分のせいって?」

「はは、お嬢ちゃん。いくら元傭兵が迷信深いとは言えうちらでもそこまで考えんわ」

「ちょっと考えすぎじゃで?」


 山田さんの呟きに鍛冶場の男たちが笑い飛ばすが、彼女はまだ暗い表情である。


「何よ。女の子はそういうの気にするんだからね。ねー、チエちゃん」


 フゼルさんの奥さんが山田さんの傍に来てにんまりと笑いながら、男たちにあっちいけといわんばかりに手を振った。どう反応して良いか分からないが、彼らの空気と表情から察するに今すぐここに危険が来るような類のものではないということだけは分かった。



週1投稿……。そうしないと遅々として進まない。

ただ、5回で次の激動の季節が来る前の半年進んだのは上出来と思おう。

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