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開拓村2年目:宴のあと

新年会でしこたま飲み食いした次の日

「楽しかった新年会もお終いかぁ・・・・・・」

「あのお酒美味しかったなぁ」


 飲み上戸の女性2人が名残惜しそうに話している。新年会は昨日で終わり明日から野良仕事の再開である。酒飲みでなくても名残惜しい。ただ、この新年の宴がなければ寒いだの、夜が長いだのを3か月か4か月ほど愚痴り続けることになったはずだ。本当に丁度いい「中休み」であった。緯度の高いヨーロッパでは貴重な中休みである。現在の太陽暦――そして、なぜかこの世界でも使われている太陽暦――がいつ頃からなのか分からないが、年の初めである1月がなぜこの時期になったのかがそこにあるような気がしてきた。


「でも、魚丼好評で良かったっすね」


 小谷君も同じようなことを考えていたのだろうか。感慨深げに呟く。村の中心の広場を始め、少し広めの場所には所狭しと倉庫が建てられている。宴も全員一か所でできず、大きめの建物何件かで分かれて飲むしかなかった。そのため、まだ全員に感想を聞けたわけでもないが持ち寄った料理の中でも好評だったようだ。


「魚醤の風味がダメな人も思ったより多くなかったですね」

「そうね。酒飲みは多少クセのある味の方がいいからね」


 高部君がいうように当初心配していた魚醤のクセもそこまで大きな問題にはならないようだ。ただ、瀧本さんの言う酒飲みの好み、であるとするなら酒飲みでない人たちにはどうなのかという問題は喉の奥に閉まっておいた。


「お米も日本のとは違ったけど、それはそれで……」


 米の味を思い出しながら自分も発言した。見た目は短粒米ながら、食感などはいわゆる長粒米のようであった。最初その米を見た時には懐かしのご飯が食べられると思ったその心は裏切られたものの、十分すぎるほど味であった。


「さて……そろそろ見張りの準備を……」

「あらあら、もう支度するの?ところで、あのお米とお魚美味しかったわね」


 後藤さんの掛け声とともに席を立ち上がろうとしたところ、シモーネさんが居間に顔を覗かせた。子ども繋がりか何かで自分たちとは違う家に集まっていた。


「子どもたちはどうでした?」

「そうね。大人より魚醤が苦手って子は多かったけど、ダメって子は半分もいなかったわ」


 瀧本さんの問いかけに台所に向かいながら答えてきた。竈に火を入れる準備をしている。高部君が用意しておいた薪を指して質問を続ける。


「あ、薪はそこに。で、大人たちは?」

「あら、ありがとう。うん、好評だったわよ」

「そうですか……」


 シモーネさんは酒もそこそこ、立ち居振る舞いも荒っぽくなく、ある意味この世界の「平均的」な人間に思えた。そんな人から意見を聞きたい。ただ、忖度なしで答えてくれているのか、どんな聞き方をすればいいのか頭の中でまとまらない。高部君も同じ思いなのか、言葉を打ち切ってしまった。


「あら、水も汲んでくれたのね。ありがとう」

「ああ、いえ……」


 なんとも言えない空気の中、シモーネさんは忙しそうに夕食の準備をしている。その隣で見張りの準備を進めるしかなかった。


「ところで、あれ宿屋で出すとしたらいくらなのからしらね」


 竈に向かっているシモーネさんの背中から声が飛んできた。


「ちょっと変わり種だけど、好きな人には受けそうよね」


 自分たちの思いを汲んだわけではないのだろうが、作業しながらなにげなく出た率直な疑問なのだろう。


「やっぱいけると思います?」

「もちろんよ。ただ魚醤は嫌いな人も多いから、それだけで看板メニューにはならないだろうけどね」


 山田さんが満面の笑みで聞き返す。好みが分かれることは百も承知であり、この反応からすると宿屋で出せるメニューを1つ作り出せたことは間違いなさそうだ。ただ、そういえば売り物にするつもりにも関わらず値段を考えていなかったことに今更思い出した。


「まぁそろそろ日没ですし行かないと」


 腕時計を見ながら後藤さんが言ったその言葉に背中を押されるように見張りにいくことにした。


間延びした料理の話は次で終わり……

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