開拓村:睨み合い
秋口も過ぎ、ついにまともに魔物が出現した。
「動かんのお」
「来るならさっさと来てほしいんじゃが」
自分たちが恐怖で震えている中、周囲は余裕綽々といった感じである。ホブゴブリンが前に出てきたと思ったが、群れが蠢くだけで前進してこない。まるで先陣を切るのを押し付けあっているように思える。
「もう1個の入り口にも何人か回ってるよな?」
「ああ、念のためマルコたちが行っとるはずじゃ」
「まぁゴブリンたちが囮を使うなんて頭はないと思うが」
歴戦の元傭兵の村人たちだから大丈夫なのだろうが、何かフラグのような発言に聞こえてしまう。
「うーむ、動かんな」
「このまま朝まで睨み合いとかは勘弁願いたいんだが」
相手が来ないし逃げないのでならば睨みあうしかない。
「この距離じゃ魔法は届かんな……弓でも打ち込むか?」
「届いても当たらんだろう。無駄に魔物に鏃を渡すだけだ」
そんなこんなを話しているうちにボルトラーミさんを先頭に比較的重装備の一団が鎧をガチャガチャ言わせながら到着した。
「おー、ホブもいる上、数もそこそこいるな」
「ああ、だが動きなしじゃ」
「まだ秋口だから無理して襲ってはこんか」
陽の光に弱い魔物の襲来は夜の長さが長くなればなるほど増えると同時に、冬が深まり食糧の乏しくなると増えるらしい。となると、秋口から少し過ぎた今であればまだ相手も必死になって襲ってこないということであろう。
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全員で闇に目を凝らしながら、待つことすでに1時間は過ぎている。
「うーむ……」
隣に立っている男がそう唸った。唸りたくなるのもよく分かる。ただ、待っているだけなのは苦痛である。慣れない自分たちは、そこに緊張と恐怖が付け足されている。
「こっちから行くか?」
「いやぁ、すぐ後ろは森、夜の森はヤツらの領域だ」
「こんなんで怪我人や、それこそ死者なんて出したらつまらんし」
「いっそのこと、全員壁に隠れたら向こうから来たり、するわけないか……」
口ぶりからするに森にさえ入らなければ討ち取れるようであるが、向こうからこない限りどうにも手詰まりのようである。
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「はー、やっと行ったか」
出現から2時間ほど経って諦めたのか去っていった。ようやく一息つけそうだ。
「念のため多めに人を残して残りは引き揚げるか」
「お前さんたちは交代の時間じゃな」
夜半も近くなりすでに見張りの交代の時間は過ぎているが、緊張と興奮のせいで寝られそうにないのが問題ではある。なんとも形容しがたい心持ちのまま帰宅した。
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「ふわー、眠いなぁ」
近くの人がそうぼやいている。魔物が出現した次の日ではあるが、当然のように作業は続く。昨日の今日のため作業は午後であったが、やはり緊張と興奮状態のせいかあまり眠ることができなかった。自分たち以外もぼやくということは、元傭兵の彼らでも眠りが浅くなってしまったのだろうか。それを考えると少し安心できる。
「眠いのは分かるが、人数も少ないしちょっときばってくれや」
昼間にゴブリンのねぐらを叩こうと捜索にかなりの人数が出ている。それでも作業の量は減らない。畑仕事に加え、倉庫の補修増築、土地の整備、さらには道の整備も要求されているらしい。
「戦えないから仕方ないけど、自分たちだけ役立たずな感じ……」
高部くんが周囲の人に聞こえないように小声で呟く。ここに来てから村の外に出たことがないのは子ども達を除けば自分たちだけではなかろうか。戦えない、馬に乗れない、何より自分たちから何も変化を起こせないこの状況に苛立ちにも似た焦燥感を持ってしまう。
「今できることをやるしかないですね」
後藤さんが額を拭いながら言ったその言葉はどことなく諦めが感じられた。自分も言葉少なに作業を進めるしかなかった。
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「そうか。ご苦労さん」
帰宅すると捜索から戻った人たちにパリッセさんが労いの言葉をかけていた。たぶん報告に来たのだろう。その人達と目で軽く会釈をしてすれ違い家に入った。
「おお、帰ったか。飯の支度もそろそろ始めようか」
そう言ってパリッセさんは迎えてくれたが、心なしか難しい顔をしていた。どういう状況なのか聞こうかと思ったが、外を見るとすでに太陽がかなり沈みかけている。今日の食事当番は自分と瀧本さんである。見張りに行く人のことも考えると早めに夕食の準備をしないといけない。日に日に夜が長く、昼間が短くなっているのを感じながらそそくさと台所に向かうことにした。
ちょっと物語のテンポが悪いのは分かっており、それを進めないとと思うと逆にかけなくなる。まぁ艦○れのイベントが始まったせいでもあるんですけどね




