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開拓村:魔法、初歩の初歩

今度こそ本当に魔法が覚えられそうだ

――メキメキ


 最後の残された一番太めの木が切り倒された。開けた草地となった土地はサッカーグラウンド半分いった所だろうか。壮観とまでは言えないが十分に満足感を味わえる光景である。


「よっしゃ。これで終わりだな」


 これまで指導監督してくれていたボルトラーミさんも満足げに頷いている。自分たちの慣れなさ加減からだろう、4日半かかってしまった。作業を覚えることが第一で仕方がないことなのだが、自分たちは8人でやるよりもボルトラーミさんたち3人だけでやった方が早かったのではないかという疑念が頭によぎってしまう。


「さて、この木を運んで昼飯を食ったら魔法の練習じゃな」


 そう言いながらパリッセさんは立ち上がった。いよいよ夢に見た魔法が使えそうである。その一言で今まで頭にあった疑念は頭の隅に追いやられ、期待で胸が高まって来る。


********


「さて、始めるかの」


 河原に集められた自分たちの手には、件の魔女と魔法使いから「せしめた」魔法書が握らされていた。羊皮紙の上にはインクで幾何学模様が描かれている。まさに魔法書といった趣ではあるが……


「どうやって使うのかという顔をしておるな」


 全員その言葉に少し大げさに頷く。というのも、自分らの心の声をパリッセさんがそのまま口に出してくれたからだ。


「こうやって魔法陣に均等に魔力を流し込むと……」


 左手で持った羊皮紙に右手をかざしながらそう言った。


「光弾が出てくるじゃろ……」


 彼の右手の上になにやら光るものが現れた。


「で、これを打ちたい方向に押し出す……っと」


 そう言うや否な、その光の物体は対岸の岩場に放たれる。


――ッガン


 大きな音を出して岩に当たり、細かな石の破片が飛び散った。


「おー……」


 見るからに人に当たったらただ事では済まない威力である。それを見て、全員から感嘆の声が漏れる。


「これが一番基礎の光弾じゃ。基礎とは言ってもゴブリン程度なら十分殺せるし、使い手によってはトロールにも多少は効くぞ」


 どうやらトロール相手にはそこまで有効打ではなさそうだが、それでも全くの無力な状態から脱するには十分希望が持てる威力である。


「全員やってみよか」

「はい」

 

 全員で声をそろえて返事をしてしまった。自分でも期待で胸が膨らむのを感じて、練習に取り掛かる。


「――流し込む魔力が一定じゃないの」

「――右に偏っとる」


順番にやってみるが、誰が何度やっても出てきた光弾は不安定で放つ前にシャボン玉のように消えてしまう。見ている分には簡単そうであったが、どうやらそうではないようだ。


「さて、今日は終わりにしようかの」

「いや、もうちょっと……」


 全員が苦戦しているのを見てか、パリッセさんがそう言った。それに対して山田さんが食い下がろうとする。


「集中力も切れてきたじゃろ。あと、ちゃんと撃ててないにしろ魔法は案外疲れるからの」


 言われてみれば集中力が切れているだけでなく、少し体もだるい気がする。


「疲れるって、もし魔法を使いすぎるとどうなるんすか?」

「眩暈がして、しまいにはぶっ倒れる。まぁ酒に似とるかの」

「何回くらい使えるんですか?」

「そうさの、常人なら初級魔法でも片手で数えれるかどうかってとこじゃの」


 小谷君と高部君の質問に笑いながらパリッセさんが答える。


「ちなみに、その常人ならこの魔法はどれくらいで習得できるんですかね」

「そうじゃのぉ……」


 常人、という言葉が出てきたところで皆が最も知りたい質問を後藤さんが投げかけた。その質問に対してパリッセさんが言いかけてから少し天を仰いで考え、少しの後、言いづらそうに続ける。


「しっかり撃てるようになるまでだと……勘のいい奴ならひと月かふた月と言いたいところじゃが、大人になってからじゃとなぁ……」


 やはり大人になってから、というのがネックになるようだ。さらには、それはさておいても、まともに使いこなせるには大分かかりそうである。一番初歩の魔法から抜け出せるのはいつになるのだろうか。


「ただ、前にも言ったようにお前さん達才能もあるし、真面目に魔力を練る訓練もしてたんじゃな。初めから光弾が出せるだけでもたいしたもんじゃ」


 パリッセさんが褒めてくれているようである。


「そっかー……」

「お、どうした?」


 その褒められたこととはまるで無関係のように瀧本さんが呟いた。独り言にしては大きく皆の注目が集まる。それにパリッセさんも反応した。


「いや……夢見すぎッて笑わないでくださいね……」


 言いづらそうに続ける。


「あれだけの範囲を伐採したのだから、あそこの木も倒せちゃうくらいの魔法がすぐにでも使えるのかと期待しちゃいました」


 確かに岩場の斜面は大分登っており、その上の森には角度的にも相当魔法が逸れないと当たらなそうである。それならば、手前だけちょこちょこっと伐採すれば済みそうであった。ただその一方で、何を隠そう自分も同じことが頭に浮かんでいた。浮かんではいたが……


「ハハハハッ――」


 パリッセさんだけでなく、周囲も笑ってしまう。


「笑わないでって言ったじゃないですか!」

「いや、ごめんごめん、でも、言い方と表情がちょっとだけ情けない感じだったから」


 自分も同じことを考えていた罪悪感交じりに笑いながら宥める。それでも、瀧本さんは赤面したまま固まっていた。


「あの伐採は主に斧の使い方を覚えさせるためじゃ。期待させて悪かったな」


 パリッセさんも笑いながら答える。


「ゆくゆくは岩場の裏まで届くような魔法が使えるようにせんとな」


 ひとしきり皆で笑いあった後、その日はお開きとなった。


いわゆる指輪物語に影響を受けたRPGによくある魔法のエネルギーボルト。和名は何がいいんですかね。魔力弾、力弾、魔力投射……うーん……

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