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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第2部の1 連邦同盟間戦争編
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第18話 細胞の判断


BBが潜入した基地。そこは、経済同盟の企業、クロームのものだ。PMCとして名を馳せているクロームは、しかし企業間の勢力争いに苦戦していた。彼らは権力、既得権益の維持のため、連邦の誘いに乗った。なぜか莫大な資金を持っていたオルスラが、自慢の決戦兵器を失ったのも抜ける要因となった。


倉庫から飛び出した兵士が司令部へ。誰からも怪しまれない。部屋の一つをノック。入る。


「失礼します」


「何のようだ。こんな時に」上司は地図を見ている。


「ビジネスの時間です」


上司は目を上げる。それは開戦の暗号だ。顔が険しくなる。立つ。兵士の肩を叩き、着いて来させる。あくまでも平常のまま。まるで本当に、日常作業のようだ。


クローム社の兵士達が二人を見る。何かを察した。司令部内の地下へ行き、厚い扉を閉じる。


上司から口火を切った。


「何が起きた。なぜ今だ」


「まんぷくテロリストのハチ公が来ました。現在保護しています」


「本当にハチ公か? オルスラか他社のスパイでは?」


「いえ、本物です」


「そうか。議論しても仕方ない。ハチ公ら飯テロと協力を取り付ける。連邦にも報告だ。本社へは当然最優先で。いいな」


「承知しました。しかしハチ公はこちらを不審に思ってます。あれの協力がないと、オルスラの、朕って奴は倒せません」


「俺が直接行く。君は連邦を。急げ」「はい」


二人はすぐ別れた。上司の男は部下を何名か連れる。倉庫へ。注意深く扉を開けた。拳銃がお出迎え。BBだ。目を開き耳を立てる。


「君がハチ公か」


彼は答えない。銃も下がらない。


「俺はこの基地の上級指揮官の一人だ。クローム社に所属している。我がクローム社は連邦につくことに決めた。今後我々の戦いで君達が必要だ。中に入れてくれ」


BBは下がり、中に入れた。扉が閉められる。男は外にバレなかったことを心の底から感謝した。


BBが無線機を取る。プロペインと繋げた。指揮官の男に渡す。話せということだ。彼は早速無線機の先とプロペインと会話する。


「俺はプロペイン。あんたは指揮官か何かだな。名前は言わなくていい。憶えん。協力してほしいなら、武器弾薬食糧水ガソリンをくれ。さもなきゃ何もできん」


「了解している。我がクローム社は全て連邦につく。だがオールドスランガーズとの対峙には飯テロが必要だ。オルスラを頼みたい」


「そうしたくても、現状攻め込む力はない。そちらの動き次第だ」


「我々は各地に情報伝達後、反乱を起こす。基地からオルスラその他企業を追い出す。あとは同盟と戦うのみだ」


「ではこの基地での反乱を待てば良いか?」


「そうだ。こちらの行動を待ってくれ。それまでハチ公は保護する」


「生贄がこちらだけでは不公平だな」


「悪いが、こちらも今は下手に動けない。信じてくれ」


「判った。では任せる」


通信終わり。男はBBに無線機を返した。「部隊の指揮があるので失礼する」と言い、去った。


再び緊張が走る。この場の主はBB。暴君がいつ暴れるのかと震える。そんなBBは、まず拳銃を仕舞う。態度も柔らかくなる。


「オルスラは、そんなに恐れる奴らなんですか」


これが質問だとしばらく気付かなかった。彼が待っている。やっと気付いて女兵士が答え始める。


「そ、そうだね。結構ヤバい奴らだね」


「何が、どう?」


「まず、何でか知らないけどめっちゃ金持ってるんだよ。ほら、なんたら決戦兵器いっぱい作っていたじゃん。大量の兵士もいるし、四天王とかいうのも何人もいる。侮れないのよねー」


「金?」眉をひそめる。


「いや知らん知らん。同盟に来た頃は一文無しで、石ころな傭兵集団だったんだよ。でも、ハイン……いやウォーターメロンって会社があいつらを支持してから、急成長して。そんでヤバい後援者を持ったオルスラは、決戦兵器を造ってあんたらに挑んだワケ」


「なぜオレ達を?」


「だよねー。気になるよね」女はすっかり打ち解けた。「同盟の敵は連邦なのにね。まぁそれだけあんたらを恨んでいたんでしょ」


「ウォーターメロンというのは?」


「さぁ知らない。前まではハインドって名前だったんだけど、つい最近、ウォーターメロンに変えたみたい。あんたらがあの塹壕に来る前ぐらいかな。他は何も知らない。金あるとしか」


「そうですか。……ありがとうございます」


「え! 感謝してくれるの! いやいい子だわァ。今度はこっちから質問させて! 好きな子とかいる? 年齢と体重は? スリーサイズいくつ?」


BBは、ネズミの死骸に群がるゴキブリを見るような目を向けた。


一方、司令部、オールドスランガーズの部屋。四天王の一人、朕がいた。ガタイはいいが、女性だ。豊かな胸、というより胸筋が特徴。一通り指示を終え、リラックスしている。部下の男と雑談を始めた。


「トロトロの飯テロが僕に挨拶したいみたいですよ?」


部下はすぐさま脳内変換。もう死に体のまんぷくテロリストがここにやってくるだろうと言っている。


朕は立ち、窓の外を見る。部下はニューロンを焼くほど語録を探す。だが彼女は一方的に喋りたい気分のようだ。安心して聞き役に徹する。彼女はため息を一つ。


「残金カッスカスで無様でございますわね」


これは自虐だ。オルスラは資金難に陥っている。後援者とのやりとりはねこしか知らない。だから、台所事情は誰も解らないのだ。それでも現在優勢なのはオルスラだ。それが朕に楽観をもたらす。


「飯テロっさ。ほんとはクソ雑魚なんじゃないの? 正体見たり! って感じだな」


そんなところへ、扉がノックなしで開かれる。兵士が膝を突く。


「申し上げます! 伝説のスーパー反乱が現れましたァ!」


「ダ……え?」


驚きから素で反応してしまった。反乱とは。詳細に聞きたいが、フリーズした。何とか立ち直り、語録で返す。


「反乱ゴンゴンされる気分はどうだ? 感想を述べよ!」情報寄越せと言っている。


「多分クロームの反乱でしょう。だがその他一切のことはわかりません!」


つまり何の情報もない。空気さえ凍る。朕の正気が戻ってきた。何で自分はネットスラングで話しているのか。何でロールプレイで効率を下げているのか。泡沫の夢から、スっと覚めてしまった。


そんな彼らを戦車砲が襲う。沈黙と部下と兵士は一緒に吹き飛んだ。デス。


クローム社が兵舎を占拠。朕のベッドは司令部にあったため無事だ。そこではオルスラの反撃が開始。


朕はベッドから起き上がり、武器を取った。丸太。丸太である。太くて、長くて、硬い。他のオルスラ兵士も丸太を持った。可哀想なぐらい重そうだ。朕は片手で振り回す。外へ出た。


「皆丸太は持ったな? 行くぞぉ!」


兵士の一人が叫ぶ。朕が暴れ始めた。丸太を薙ぎ、叩きつけ、クローム兵士を潰していく。散開し、兵士達は朕を撃つ。彼女は丸太を扇風機のように回し弾を防ぐ。弾丸は丸太を貫通できない。幹を使っているので当たり前だ。


そこへ、BBが躍り出る。兵士達を飛び越え、目の前で着地。相見える。朕の大きさは、BBを優に超える。それで怖じげづくことはない。BBはこういう相手に幾度も勝ち抜いてきた。臆せず目で情報を取得。丸太がメイン武器。丸太は初めてだ。


「ふーん」朕がBBの体を舐め回して言う。「この体で男性は無理でしょ。こんなメス堕ち専用ボディで最強を名乗るなんて各方面に失礼だよね」


「は?」


あまりの不快感に身をよじった。セクハラは何度もされたが、これは驚いた。


朕も、自分で言って冷や汗をかいた。少なくとも子供相手に言うことではない。元ネタを知らない人にとって、こういう言葉は失礼にあたる。ねこ総隊長に散々注意されたことを思い出し、覇気がなくなる。


「えー、ハチ公」素で話す。「今のなし。ごめん」


「え? は、はぁ。いいですけど」


周りの兵士も動きを止めていた。敵同士であるクロームとオルスラが目を合わせる。とても戦う空気ではない。オルスラの空気の読まなさは天下一のハズだが、弁えてはいるらしい。


爆発音。遠方で戦車がやられた。やっと我に帰り、BBが攻撃。一直線に突き。丸太に防がれる。丸太からブレードを抜こうとした。抜けない。深々と突き刺さってしまった。丸太が持ち上がる。振り下ろされる。空中で脱出、ブレードを抜く。転がって避ける。地面と衝突した丸太を横目にBBが動く。朕はスイングし、BBは跳んで回避。空中から斬る。後ろへステップされかわされた。構わず追撃。


「クソ……なんだこの早い動き。どこで覚えてきた!? かわいいね」


朕がそう言い一歩踏み出す。首根っこを掴み地面に叩きつける。下がり、両手で丸太を振り上げる。


「オラッ丸太で死ねっ! 硬い棒で死ねっ! 何とかイキで死ねっ!」


酷い言葉を言われた。勢いのまま叩きつけられる。寸前に転がり、BBは立つ。まだ叩きつけてくる。一歩一歩、避けて近づいていく。決して刃では受けない。刃が丸太にくっついてはならない。キルゾーンまで浸入。あえて斬撃をしない。また朕が下がる。兵士達とぶつかる。彼女の後ろはもう人まみれだ。


朕とBBを狙う兵士はどちらにもいない。フレンドリーファイアを恐れた。それを誘発させるつもりなのだ。朕はそれを知った。


朕が後ろを振り向く。兵士達はすでにいない。壁があった。追い込まれた。


「しまっ」


BBが攻撃。ギリギリ丸太で防ぐ。さらにBBは跳ぶ。ブレードは丸太にくっついている。ナイフを抜き、頭上から来る。丸太を盾のようにして上げる。朕は攻撃を待った。待った。待った。来ない。丸太は頭上への視界を塞いでいる。正面に目を向けた。BBがいた。丸太を振り下ろす。彼は避けるが、朕の計画通り。薙いで、吹っ飛ばして潰すつもりなのだ。


丸太を薙ぐと、BBは上へ跳ぶ。ナイフを投擲。朕の読みが外れた。彼女は避けようとした。もう遅い。首へナイフが刺さる。やられた。


だが朕はそのまま丸太を振り上げ斜めに下ろした。避けたBBの足元を掬う。空中に浮いたBBを突く。丸太を蹴り飛ばして生き長らえ、彼は見た。ナイフは鎖帷子に防がれている。だからなんだ。BBは朕の攻撃を待つ。横薙ぎが来る。後ろへ下がる。追撃の丸太、それにつくブレードを掴み、同時に避ける。ブレードを引いた。丸太を斬りながら抜けた。すぐ投げた。朕の右肩に深々刺さる。部位損傷。右腕が動かなくなる。BBは飛び蹴り。首のナイフを蹴った。より奥へ入り、首を貫通。


「うお……今期一番死ぬ……」


朕をキルした。ナイフとブレードを拾い、戦闘に参加する。


司令部に突入。撃ってくる者は全てキル。目下最優先目標は司令部の制圧。ベッドを破壊し、アサルトライフルを拾う。通路には手榴弾を投げ、弾丸は斬った。ライフルは片手で撃つ。狙いはめちゃくちゃだがとにかく邪魔をした。


攻撃を切り抜けていくと、朕がいた。リスポーンしていたらしい。当然リスキル。ベッドルームに浸入し破壊。朕の物もあった。ライフルを捨て、脱出を急ぐ。


最上階へ。BBは逃げようとする者全員をキルした。部屋に入り、窓から飛び降りる。壁にブレードを突き刺し、落下スピードを抑える。着地。基地の大部分は制圧した。無線機から声。


「ハチ、聞こえる?」


「サム。基地の様子は?」


「ほぼ制圧した。あとはクロームさんも使用してない区画だけ」


「何かいるね。すぐ行く。場所は?」


「北西。皆行ってるから着いていって」


「了解」


走り出す。兵士達も集まる。オールドスランガーズもバカではなく、何かの対策をしているだろう。最悪、決戦兵器が現れる。


サイレンが鳴る。女の声が響き渡る。


「我々オールドスランガーズが! この時を予想しなかったと思うか! 対まんぷくテロリスト専用決戦兵器第三号……ちょっと待て、誰だお前は!」


サイレンの向こうで悲鳴。気を取られていると、目標の区画から爆発。全滅を思わす爆炎。地下から上がる。もう仲間が入ったのか。手が早い。


殺意を感じ取る。すぐ弾丸を斬った。狙撃だ。まだ生き残りがいるらしい。サーチライトが次々光を消す。基地内の灯りが発光をやめる。暗闇。BBはブレードを振った。銃撃だ。彼だけを狙っている。


さらに爆発。砲弾だ。車両を破壊。兵士達は混乱。さらに、接近するプレイヤーを視認。黒いレインコートを着ている。


「何だこの部隊は!」「見たことないぞ!」兵士の声。


レインコート達は高周波ブレードを抜く。BBに斬りかかるも弾かれる。すぐ別の敵が狙う。弾くとまた別の敵が。キリがない。


スモークが焚かれる。BBの視界が奪われた。三百六十度全てから撃たれる。斬り捨て、抜け出す。即座に二人キルした。


「ハチ! 所属不明の部隊に襲われている!」プロペインが叫ぶ。「やけに強い。目的地はどうなっている!」


BBは片手で弾を斬り無線をとる。


「こっちも襲われています。敵は高周波ブレードを所持」


ヘリのミニガンにBBは耐える。他の兵士はやられた。爆炎の中から、プロペラ音が重なる。決戦兵器の帝国主義だ。ヘリが随伴、どこかへ去っていく。


フラッシュバンが投げられる。BBは伏せる。轟音。視界が回復する頃には、レインコートはいなくなっていた。撤退された。


BBは追えない。動きが早すぎた。


「こちらBB。プロペインさん無事ですか」


「何とかな。助けるために入ったが、こんなことになるとは。クロームはどうなった」


「やられていますねかなり。奇襲とはいえ、手強い。車が何両もやられています」


「合流しよう。司令部前で」


BBは急いだ。


着くと、プロペインと草食がクロームの兵士とやりとりしている。BBが着く頃には話は終わった。


「ハチ!」


オサムが飛び出した。抱きつく勇気なぞなくそばで固まる。


「大丈夫だった?」


「何とか。サムも?」


「大丈夫。それより」


目を向けられた草食が腰に手を当てた。


「クロームの人達も知らないみたい。同盟のどっかの企業じゃないかとは言ってた。あんなのが埋めれているハズないし……」


「手際もいいが、何のために?」プロペインは顎に手を当てる。


「決戦兵器第三号が盗まれたようです」


「ホントか、ハチ。手が込んでるな」


「最初からあれが目的では?」


クロームは反乱に成功。しかし一部地域で謎の部隊に襲われる報告が相次いだ。どれもオルスラが関わった基地であり、帝国主義を奪われている。


だが今は、アライランスラインの背後を突くことにした。話し合いが終わった後、基地に光が戻った。

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