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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第2部の1 連邦同盟間戦争編
96/137

第15話 兵法に常勝なし


「なんで着いてきてくれたんだ?」


「そりゃお前、同じ敵だからな」


まんぷくテロリストと暴風神風は共に行動し始めた。プロペインはその意図をスコスコに聞いていた。現在休憩中。


「言った通り俺様達と同盟は敵対関係にある。本当はとっとと逃げ出すところだ。だがお前さんらに助けられた。恩は返さねぇとな」


「ありがたいが、俺達が返せるもんはないぞ」


「たく。気にしすぎだぜ。俺様にもメリットがある。それだけでいいじゃねえか」


「そうだな。せいぜいがんばってくれよ」


「おうともよ」


二人は拳を打ち合わせた。そこへスコスコの部下が来る。


「ボス。南に敵のデケェ基地を見つけました。どうも爆弾を貯めているみたいだ。オルスラはいませんぜ。しかも隊は前線に移動した。狙い目だぜ」


「ヒヒヒ、見つかってないだろうな」


「もちろんですぜ」


「よぉし。プロペイン!}


プロペインは片手を腰に当てる。工場じゃないのが惜しい。しかし基地を潰せばリスポーン地点を減らすことに繋がる。やるべきだろう。


「いいか? 正面から皆で突っ込むのはなしだ」


「俺様達もそこまで馬鹿じゃねえ。だがよ、攻める以外にできることなんかあるか」


「いつも通り奇襲といきたいがな。どうしたものか」


スコスコも悩む。バイクの上で。モヒカンを撫で、頭を見るような輩を睨む。指を鳴らした。


「俺様達が陽動する。んで飯テロが横からやるいか」


「いいが、耐えられるか?」


「昔の俺様達とは思わないことだ。ここずっとデスなしだ。見せてやるよ」


全員車両に乗る。プロペインが無線で作戦を伝える。


「俺達は基地を攻撃する。暴風神風が陽動、飯テロが横を突き崩す。中に入ったら、とにかく壊しまくる」


「ヒャッハー!」「一日中だ!」


「行くぞ」


おそらくこの世界を十二分に楽しんでいるのが暴風神風だ。草食は密かに、彼らの中に紛れたいと考えていた。


二つのチームは途中で別れた。またまんぷくテロリストは孤独を食らう。一夜明けようとここは敵地。安息はそうそうない。


だが、ここで余裕を持つべきなのは確か。雑談のひとつでもしよう。空気の読める少女、レモンは喋る。


「そういえば、プロペインさん。スコスコさんとはどんな出会いをしたんですか?」


「あいつとか? 昨日と似たような感じだな。ゾンビに追われているところを助けてやったんだ。車で轢いてな。それから少しだけ行動を共にした。弱かったから、頼りにはならなかったが」


「スコスコさんは、合わなかったとか言ってましたね」


「あのノリは嫌いじゃない。ただノレなかっただけだ。少し空気について行かなかったな。楽しそうではあるが」


オサムはやはり会話に混ざれなかった。暴風神風やオルスラが言っているのは漫画とかからの引用だ。そう言いたかった。しかしながらこれは知識自慢に近い。会話が広がるきっかけにはならないだろう。


かといって、寂しくて苦しいワケではない。話せないことが苦痛にはならない。無理に話す必要のないことが、彼女には心地よかった。


「こちらプロペイン。あとはお前らを待つだけだ」


「よしよし。ヒヒヒ。それじゃあ突撃だ! 行くぞ!」


無線機からいつもの叫び。いつ聞いても楽しそうだ。


プロペインは指示を待たず車を動かし始めた。


「ちょっと、プロペイン?」草食が咎める。


「あのヒャッハー共の戦闘力が心配だ。初めて俺に会った時のことを思い出してくれ。押されていただろう。昨日だってな。信頼していないワケじゃないが」


「その昨日で、基地を襲った時、あの人達は無双していたよ」


「だとしてもな」


草食はこれ以上言えない。一人の友人として心配しているだけだ。なら付き合ってやるべきだろう。BBは、予定より早く動くバンに戸惑いつつ、追う。


基地の正面扉より横へ。すでにモヒカン共への対処に行ったのだろう。人はいなかった。バリケードを破り、中へ。


「ヒャッハー!」


すでに、暴風神風が中に入っていた。これも予定外のこと。同盟の兵士が追われ、バギーに轢かれる。コンクリートの建物へRPGを撃つ。見境のないモヒカン達だ。


スコスコがサブマシンガンを撃つ。やけくそに見えて、頭を狙っている。BBも流れに乗るべく突撃。


グラウンドに兵士達が逃げていた。他に逃げ場がなかったのか。まずBBが行く。銃撃で出迎え。当然弾を斬って返答。「ハチ公だ!」相手に気付いた敵は恐慌する。腰を抜かす者、狙いが定まらない者、何人も。そこへBBの斬撃。二人キル。バンがさらに追い討ち。オサムが機関銃を放ち、肉体を蜂の巣にする。


かつて訓練に暮れていた場所。今はキルの稼ぎ所。モヒカンも着いた。火炎放射で焼かれていく。遠方で爆発。建物一つが吹き飛んだ。「ヒャハハハハ!」下品な笑い声。


BBはグラウンドを周り、建物群へ。ベッドルームを壊し始めた。地下があることも念頭に入れる。


「おい、ハチ公!」


暴風神風の一人に呼び止められる。


「残念だったな、ベッドは全部燃やしちまったぜ!」


「助かります」


「助けたぜ! ギャハハハハ!」


BBは苦笑いで答えた。


ほとんどの建物は制圧。残るは、奥に残る高いビル。基地には似合わぬ形相。まるで管制塔だ。何のためにあるのか。ともかく目標は定まった。今はあれを管制塔と呼称しよう。


プロペインは車を降りる。スコスコのもとへ。


「ようペイン。突撃が早かったな」


「そっちこそ。もう中に入ったのか」


「言ったろ? 俺様達は弱くない」


「あぁ。誤解してたよ。どうやら強いらしい」


「あったりめぇだ。弾の無駄遣いなんてできないからな」


「あとはあの塔をやるだけか。さっさと突っ込もうか」


「敵はあの中でこもるつもりだろう。ベッドルームもどうせあの中にもう一つある。木の葉っぱを落としたきゃ、木をぶった斬るのが一番だ」


「乱暴だな。崩せるのか?」


「さぁな。失敗したら頼むぜ」




さて、管制塔。そこには何十人かいるオルスラ四天王が三人いた。乱丸、タフー、十三番目。


「飯テロをキルすることだけを目的として開発された究極の戦法」タフーがニンマリと笑う。「クククク……脳死突撃は決戦兵器破壊・コスパ・面白さ……そしてロマンが含まれている完全破壊作戦だァ」


「全部私の発案ですけどね」


十三番目がホッケーマスクの下で言う。「拙者、お前の中に勇を見た」と乱丸が言う。十三番目、彼女を褒めているのだろう。


「脳死突撃か……で、それが何の役に立つ!}


今度は馬鹿にされた。しかしこれは質問しているだけだ。伊達に長い付き合いをしていない。


「今回の作戦は、飯テロ共のパクリです。資本主義が破壊されたのは結局、敵が馬鹿みたいに特攻したからです。それで弾切れを起こした。なら、同じことをするまで。飯テロは略奪以外で補給ができない。すぐ弾切れになるでしょう。これで最低でも、草食とレモンは無力化できる。ヒャッハー達は……どうしましょうかね。パロットでも片付けられなかったし」


「噂通りいい作戦だ! ついていこう!」


十三番目の作戦を盲信する乱丸。そこはかとなく不安になる。タフーはあまり喋らない。喋ったところで語録だけだ。


「ところで十三番目」乱丸が調子を変えて聞いてくる。


「何ですか」


「語録喋らないの?」


「急に真面目にならないでくださいよ。私の元ネタ、語録と呼べるものが少ないんですよ。ネットで流行っているワケでもないし。だからこの姿もただのコスプレです」


「ふーん」


「正直者には好感が持てる」タブーが呟いた。


口にこそしないが、彼女は他の人が元ネタで盛り上がれることが羨ましかった。それをねこにも相談したが、曰く、流行りよりも好きを優先しろとのこと。ねこがネットスラング以外の言葉を言ったのは、これが初めてではないか。十三番目はそっちのほうが感動した。


エレベーターの扉が開いた。


「申し上げます! バンザイ突撃の準備が完了致しましたぁー!」


「この基地にコモドドラゴンを放てッ」


「いつも思うんですけど、コモドドラゴンって何ですか」


「さぁ?」


二人の会話は誰も聞いていなかった。




基地。今まさに爆薬を集めきった暴風神風。貼り付けに行くところだ。そんな時に異変が起こった。


管制塔に至る道に、斜めに開く通路が現れる。地鳴り。明らかに人の足音。予感は悪い方向にしか進まない。声。暗闇からの視線。


人が現れた。何十人も。人の塊が押し寄せてきた。何人かは旗を持っている。


「大日本帝国バンザァァァァイ!」


「大和魂を見せてやる!」


ちなみに持っている旗は、星条旗、ソ連国旗、なぜかシーランド公国の旗。日本のものはどこにもない。兵士はみな初期装備。ナイフしか持っていない。


「突進してきたぞ!」


モヒカンの一人が叫ぶ。銃の火が吹く。敵は撃たれた仲間を乗り越え進む。すぐこちらまでたどり着くだろう。


草食といえど、早撃ちが追いつかない。レモンは狙撃技術を活かせない。残りの五人は引き金を引くだけだ。どこを撃っても当たる。


「マズイぜ! このままだと弾が切れる!」


スコスコが悲鳴を上げた。レモン、プロペインは溶けるほどの思考をする。目の前から来る焦りに押される。思考に不純物が混ざる。


「退きましょう!」レモンが叫んだ。「このままではやられます!」


「いや、敵は非武装だ! 車で轢く!」


「多すぎます! 取り囲まれたら!」


「待てお二人よ!」スコスコが笑顔のまま叫ぶ。「こっちには大量の爆弾がある! 集めたぜ!」


目線がスコスコから、互いを見つめる。合点。BBがブレードを抜く。もうそこまで来ていた。


プロペインは車に乗った。暴風神風も各々乗る。飯テロが先陣を切る。群衆へ。はねていく。オサムの掃射。空いた空間へモヒカンが駆け抜ける。爆薬だの爆弾だの、四方に投げる。点火。人が天高く舞う。空中でポリゴンになり消失。


だがついにはバンが押し止められる。人の壁オサムが撃つ。だが減らぬ。BBが飛んできた。バギーに掴まっていたのだ。敵陣へ。斬り抜き捨てていった。モヒカンが火炎放射。プロペインはハンドル片手に機関銃を撃つ。


人は減っていかない。撃てども撃てども。失敗したか。


「ペイン、耐えてくれ!」


スコスコが無線で指示。BBは一人跳び回り、敵を即死させていく。その間、暴風神風は通路と敵の間へ侵入。秘密兵器、ガトリングガンを持っていた。


「ヒャッハー! 皆殺しだァ!」


チェーンソーのような金切り音。BBはまだ崩れていない建物へ急いだ。敵は飯テロと合わせて十字砲火を浴びた。さらに爆弾を幾つも投げ込まれた。


さらに、モヒカン達は通路へも投げた。TNTも仕掛け、爆破。通路を封鎖した。他にも通路があることは想定済みだ。今はあくまでも足止め。他が出る時はその時だ。


「もう解散なんです!」


「もう終わりだぁ!」


オルスラから悲鳴。ナイフ以外持たないなら、ただの的だ。百人以上いても、この弾丸の幕からは逃れられない。


基地内で、さらに異音。別の通路が現れるのだろう。暴風神風はすぐ移動。誰かが出る前に通路内を爆破。通行止めにした。


下にベッドルームがあることは確定だ。だが全員相手取るなど愚の骨頂。生き埋めにすればいい。プロペインは安心して息を吐く。モヒカンも、中々上手い。


残るは管制塔だ。余った爆弾を集結させ、向かう。


その管制塔の三人は、青ざめていた。


「え、どうすんのこれ」十三番目は声のトーンが変わる。「私達脱出路塞がれたんだけど」


「人生の悲哀を感じますね」


「言ってる場合ですかタフーさん。詰んだんですけど」


「敗北は敗北なんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ」


「敗北者……? 取り消せよ、今の言葉ァ! っていやいや、モヒカンが強いとか聞いてないんですけど」


彼女は頭を抱えて屈む。前の作戦でもそうだ。飯テロ以外の何かで問題が起こる。彼らをキルするためには、協力者をどうにかせねばならない。反省点が見つかっただけ、よしとするべきか。


立つ。腐っても自分は四天王。戦わずしてデスするつもりはない。問題は、地上に出ようにも全て潰されたことだ。


「負けたかどうかは俺が決めることにするよ」乱丸が呟く。


「お、何か案があるんですか?」


「お前は物事を焦りすぎる」


「ここから飛び降りたら戦えますかね」


「爆発して死ぬのに? 意味ないよ」


「乱丸さんは戦うのか戦わないのかどっちなんですか」


「そうとも言えるし、そうでもないとも言える」


諦めている。いつものオールドスランガーズだ。パラシュートもないし、ガラスを割って落ちても無意味だ。


「タフーさんは何かあります?」


「負けた話はするな。ワシは今滅茶苦茶気分が悪いんや」


「そりゃ揺れてますからね。TNT起爆してますし」


「まぁ、作戦が悪かったから負けたとは言わんけどなブヘヘヘ」


「すみませんね。なんか床が斜めになってません?」


「ま、なるわな」


「ワクワクしかしねぇー!」乱丸も叫ぶ。


「これ崩れてますね完全に」


管制塔が斜めに崩れ落ちる。飯テロ達は避難。激しい土煙が上がる。気のせいか塔から悲鳴が聞こえる。


基地は制圧された。最低でも百人は生き埋めだ。ベッドを破壊しKIAしないければ出られない。地下にある物資も、現状誰も触れられないだろう。


管制塔の中から誰かがでてきた。草食は興味深く見た。彼は全身を出し、息を切らす。顔を上げる。草食は知らないが、タフーだった。


「う、……うわあああ。草食がポストアポカリプスを練り歩いている」


草食は撃ち抜いた。

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