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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第2部の1 連邦同盟間戦争編
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第12話 人災なる英雄殺し


BBとオサムは逃げた。敵の決戦兵器が複数展開。そのどれもが二人を狙っていた。特に第三号。帝国主義と呼ばれたそれは空から襲ってくる。立方体の箱に、たくさんの機銃、機関砲。端にはプロペラが四つ。破壊するにはプロペラをどうにかせねばならない。だが今の二人にはできない。


決戦兵器の第二号、共産主義が二十機迫っている。ロケットブースターで移動、加速減速は自由。左右についたブレードによりコンクリートをなで斬りにする。


二人は現在ビル内部に立てこもっている。決戦兵器第一号、資本主義は沈黙。不気味だ。心臓は騒音を鳴らしていた。


BBが警戒のため見張りにつく。オサムが無線をかける。


「こちらオサムです。誰か聞こえますか」


不安。それが報告を妨げた。応答したのはプロペインだった。


「聞こえている。何が起きた。今、プロシオン機に乗っている。ここからでもあの、壁か? 壁が見える。サム、あれは何だ」


「わたし達相手専用の決戦兵器第一号らしいです。資本主義とか呼んでました」


「あれが、兵器? 壁じゃなく?」


「らしいです。たくさんの砲が見えました」


「内部に入って破壊は?」


「それが」落ち着こうと息を吸う。遠くでプロペラの回転音。探されている。「共産主義がたくさん出てきて、身動きが取れません」


「何体だ?」「不明です」


ロケットブースターの加速音。見つかれば、どこまで抵抗できるのやら。プロペインは続けた。オサムに冷や汗。


「他に、何かあるか?」


「あと、決戦兵器第三号が空にいます。手出しできません」


「交戦したか?」


「逃げました。敵が多すぎます」


「そうか、解った。じっとしていろ。こちらで何とかする」


通信終わり。BBが戻ってきた。彼がいることでオサムは安心する。そんな自分に嫌気が差してきた。依存していてはダメなのだ。けれども息は吐けた。


「外は奴らで(うごめ)いている。歩兵は一人もいない」BBも座る。「お手上げだね」


「ハチでも?」言って、情けなくなる。


「無理だね。一機でも手こずったのに何機も。さらに空も占領された。質を伴った数の暴力だ」


「プロペインさん達が何とかするって。ここで待とうよ」


「そっか。じゃあ、何してる?」


「……待つんじゃないの?」


「ただ待つのは、辛いでしょ?」


彼は挑発するように笑う。これはオサムへの慰みだ。嬉しくて、BBに近寄る。肩と肩を合わせた。二人共、胎児の如く安堵した。




……そうも言っていられないのが本隊。指揮官達が再び集合。緊急会議を開いていた。まんぷくテロリストは偵察と保護のためプロシオン機に乗ったまま。無線で参加する。ハリーが始めた。


「プロシオンの報告は、敵の新兵器が三つ現れたということだ。BBとオサムではどうにもできない。我々で何とかしなければ」


「まず、脅威となる決戦兵器を洗おう」部隊長が言う。「二号機は確認できているが、どうだ?」


「プロペイン、どうだ?」ハリーが取り次ぐ。


「ここにいる俺達には関係ないだろう。ここから街までの間には地雷原があるんだろ。二号機が超えるのは無理じゃないか? 三号機は空にいるらしいが」


「脅威となるか?」ハリーは時折街の方角を見た。外での会議であるため、ここからでも壁が見える。突撃寸前で止まっているのだ。


「ちょっと待て……サム……そうか。どうやら恐れる必要は無さそうだ。あれは一機しか確認できていない。ここまで来たら対空兵器の餌だ」


「では、あの壁、一号機が脅威となるワケだ」


「そうなるな」


「スペックは判るか?」


「不明。現在ハチとサムは動けない。閉じ込められている」


指揮官達は目を合わせた。攻めの空気が醸造されていく。雫が代表して言った。


「なら、あの壁を破壊すればいいワケね。大砲、自走砲、ロケット砲、何でもかんでもあの壁に撃てばいい。話はそこからよ。やりましょう」


反撃を貰うことは承知の上。戦闘の常だ。列車砲の梅と桜も攻撃に参加。


丘を越え、ロケット弾を撃つ。自走砲が狙いを定め撃つ。大砲も同様。まずは様子見と一度撃って止めた。プロシオン機のレモンがスコープで弾着観測。


「どう?」


同じ機内の草食に問われる。爆発が見えた。そして、砲塔が動く様も。壁に備え付けられた全ての物が起動した。爆煙が晴れる。レモンは二度見した。


「ダメージ、微量です」


声を震わし伝えた。プロペインが伝えるより早く反撃が来る。砲煙が見えた。遅れて音が届く。火山が噴火したかのうよな轟音。恐怖を叩き起こす。プロシオンが本能的に回避した。


連邦軍砲撃陣地は、砲弾の台風に見舞われた。


何から何までが落ちてくる。当たらずとも地面はくぼむ。命中して爆発する。陣地は粉微塵となった。


指揮官達が複数人デス。混乱によりさらに被害が拡大。反撃を一切許さぬ砲弾の弾幕。砂煙のせいで自分の居場所を見失う。ハリーがデスしたのさえ誰も気付かない。雫は這う這うの体で撤退した。


「全員退け、撤退だ! 逃げろ!」


空からプロペインが叫ぶ。意味はない。無線を聞き取れる者はいないのだ。着弾の音で耳をやられた兵士は多い。逃げねばならない。それだけは理解し、這う。陣地に建てた急造の建物が貫かれ、砂塵が舞う。ヒューマンエラー作戦は完全に失敗した。


プロシオン機はだいぶ下がった。そこで、プロペインはオサムからの通信を聞く。


「すみません! 伝え忘れていたことがあります!」


「どうした!」


「敵は畳返し作戦がフェーズ4まで進んだと言っていました。今は決戦兵器が現れただけで終わってます!」


「動きは?」


「そちらを攻撃したこと以外ありません。まだ見つかって……」


通信が途切れた。見つかったのだろう。ミニガンの掃射が聞こえる。プロペインは敗北の悔しさで無線機を潰しかけた。




当のオサム達は、帝国主義と共産主義、どちらにも狙われていた。ひたすら走る。とにかく空の帝国主義が鬱陶しい。ひたすら弾幕を張ってくる。BBとオサムは斬り防ぎ対処。だが後ろの共産主義はどうにもならない。


ビルに飛び込む。共産主義の一振が扉を割る。中に入ってきた。ミニガンを乱射。二人は弾を斬った。ブレードで突いてくる。オサムを狙っている。


斬り下がって回避。BBがフロントガラスに跳ぶ。高周波ブレードでガラスを斬り、パイロットを突こうとした。ブーストで下がられる。同時にミニガンを撃つ。斬って進む。「ハチ!」オサムが叫ぶ。BBは止まった。彼女が手榴弾を投擲。機体の中にゴールイン。爆発。一機撃破。BBがガッツポーズ。上手い攻略法を見つけた。ちょうど、倒した共産主義はビルの入口で朽ちている。いい壁となるだろう。


BBは振り返ってオサムに感謝、しようとして先の共産主義が爆散する。天井から弾が貫通してきて床を刺す。帝国主義の機関砲だ。外に逃げねば。出口を探す。


そうしていると壁からブレードが突き出た。共産主義のものだ。これ幸いと、穴を開けた共産主義の脇を通り脱出。ビルは崩壊。崩れ煙を上げる。狙ったように空から弾丸。二人はさらに逃げる。


しかしどこに逃げるというのか。背後を見る。敵はビルを次々破壊。隠れる場所をなくしていく。それに合わせるように、資本主義も街を撃つ。わざわざ下方に向けられた火砲。連邦本隊への砲撃はすでに止んでいた。


「ハチ!」オサムは思い付いた。「灯台もと暗しで行こう!」


「なるほど、解った!」


二人は資本主義へ向け全力疾走。このままではあの砲撃に食われる。なら砲塔のすぐそばまで近付けばいい。大砲は砲手を撃てない。


ビル壊しに熱心な三号機はこちらを向かなかった。砲撃を掻い潜り、壁の根元まで来た。ひとまず、呼吸を整える。そびえ立つ資本主義という兵器を見上げて。


何かが着弾。壁の一部が大きく崩れる。梅か桜の砲撃だ。希望が湧いて、肩を下ろす。


そこに、雫から無線が来た。


「大変なことになったわ」晴れ間から火山灰へ、望みが変わる。「アライランスラインの、ここ以外の全てで同盟が総攻撃を開始したわ。連邦軍は突然の攻撃に対応できていない」


BBは「どういうことですか」と聞かずにいられなかった。


「敵は畳返し作戦のフェーズ4に移行したと言っていたわね?」


「そうです」


「これでハッキリとしたわ。敵の作戦がね。同盟の畳返し作戦は、連邦の最大戦力たる貴方達をここに向かわせ、他の戦線で巻き返しを図ることよ。そのためだけに三種類の決戦兵器を投入したのよ。このままだとわたし達は包囲される」


「え? ……え?」


BBはスケールの大きさに思考を手放す。オサムも、彼らの考える本気さに戸惑った。オールドスランガーズは、いつもふざけているものではないか。完全に潰す気だ。


「BBくん、オサムちゃん、二人はまだ待機して。こっちで話し合うわ」


そうして、通信は終わってしまった。




アライランスライン廃墟街前、即席の連邦軍本陣。作戦会議がまた開かれた。プロペイン達まんぷくテロリストも地上に降りて参加。


「我々は」ハリーが重い口を開く。「多くの大砲類を失った。ヘリは未だ健在だが、他がボロボロだ。そして資本主義とやらは梅と桜でしか崩せない。そして崩そうにも時間がかかる。何より、他の戦線が押されている。包囲されかれない現状だ。どうするべきだと思う?」


「撤退しかない」プロペインは首を振る。「奴らは俺らを閉じ込めたいんだろう。ならそれを失敗させればいいだけだ。とっとと逃げる。それでいい」


「いや、戦うべきよ」雫が言い返す。「あれが現れたことで廃墟街はアライランスラインで最も強固なものになってしまったわ。もうどこにも死角がない。ここで振り出しに戻れば、弱くてニューゲームよ」


「どう戦うべきかだな。振り出しに戻るのはその通り。だがこれ以外道はない。今退かないとどうにもならん」


正論だった。発言するプロペインもいい思いはない。だが現状には正論が必要だ。雫は気後れした。


草食が手を挙げる。みなが目を向けた。


「ちょっと思ったんだけどさ。あの資本主義とかいう兵器って、どのぐらい弾あるのかな」


「それがどうかしたのか」焦りからプロペインの語気も荒い。


「いやぁ、あれって地下から現れたんでしょ。だったら弾は地下にないと。地下に大量輸送って、今できるの?」


「地下から現れた……」雫が呟く。誰も聞いてない。プロペインは草食と話を続ける。


「どう輸送しているかは知らん。それがどうかしたか」


「もし弾が少ないなら、弾切れさせればいいじゃん。そうすればあれはただの壁だよ」


「いやいや。ただの壁としたところで、あれは完全に破壊できないだろう。梅と桜でやっとダメージが通るんだ」


雫は今聞いた話を脳内に埋め込んだ。そして糧となり花開いていくのが判る。雫は決断をした。


「一つ、案があるわ」


注目が集う。傾聴の姿勢。


「まずは資本主義の根元を列車砲で砲撃。それで壁が崩れたり揺れたりしたら、わたしが言う作戦を実行できるわ」


「根を撃つ。つまり、地盤の固さを調べるワケか」プロペインは乗り気で聞く。


「正確には、あれを支えているだろうものを破壊するのよ」


「あずきバーみたいな構造ってことか。だが、この世界なら他の方法で建たせることも……」


「いえ、この世界でも支えは必要なの。そして、あの壁を、あずきバー? の形にしているなら相当の無理をしているハズよ。支えを壊せば、崩れるでしょう。結果、アライランスラインに穴を空けることができるわ」


「穴を空けても補給は断たれる。突破しても包囲される。だからな」


否定でない意志を見せる。プロペインが不遜に腕を組む。


「まんぷくテロリストをアライランスラインの先に行かせてしまえばいい。そこで俺達はひたすら暴れる。工場とか基地だとかを潰す。そしてデスしてもここからだ。巻き返せる」


「いいの?」雫が聞く。「もちろんだ」返すプロペインは仲間を見ない。草食も、レモンも、反対しない。


「なるほどな。飯テロなら、単騎で暴れてくれると」指揮官の一人が口にする。「資本主義をぶっ潰してこいつらを送る。あとは皆下がる。撤退論も攻撃論も吸収している。強引だが、いいと思う」


反対意見はなかった。「あとは、詳細なプランを詰めるだけだ」ハリーが締めた。


梅が一発撃った。これがないと作戦はできない。プロシオンが観測。資本主義の根元に着弾。かの兵器は大きく揺れた。どうやら、建築基準法に反しているらしい。これで、かの兵器は崩せることが解った。


雫が立案を始める。


「まず、ここのプレイヤー全員が武器を捨てる。そして突撃。トコトン走る。それだけ。無駄な砲撃をさせる。弾切れしたらこちらの砲兵を出す。地面に撃って傾けさせる。さらに列車砲によって壁を攻撃。倒れさせて、まんぷくテロリストを通過させる。残りの決戦兵器はわたし達が処理する。飯テロは先に行き、わたし達は退く。これでいい?」


「なるほどな」関心するハリー。「この世界では命は弾より安い」


「そういうこと。延々とリスポーンする。奴らの射程距離ではベッドを破壊できないからね」


作戦は決まった。名前は、大祖国作戦。内容は走るぐらい。脳筋ここに極まれり。


レモンはBB達に無線をした。詳しく説明する。壁を破壊と言っても、二人は狼狽えない。


無線を切ったBBは、壁を見上げる。


「それにしても、建物があんなに揺れるとはね」


「まさか、こんなものがあるとも思わなかったよ」


オサムの言葉通り、空洞がある。そこに一本の柱が縦に伸びている。少なくともこれが壁を支えているのは確実だ。


「壊す?」


BBの何気ない呟き。オサムは試してみたくなった。


「ちょっかいかけようか」


「どうやって?」


「共産主義のブレードならいけるんじゃない?」


というワケで、二人は共産主義を襲い鹵獲。待機しろという命令は、二人を止められない。

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