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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第2部の1 連邦同盟間戦争編
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第4話 計画の段階


なぜか着いてくるオーウェルを尻目に三階会議室へ入る。プロペイン、草食、レモン、ダーティハリー、雫はそのまま。入室したBB達に目を向ける。疑問が浮かんでいるようだ。


「お帰りハチ」草食が椅子を揺らす。「その子は?」


呼ばれたオーウェルさ一歩前へ進み出る。


「はじめまして! 自分、トゥルー通信社所属のオーウェルっていいます。まんぷくテロリストのことを知りたくてつい追っかけてきちゃいました!」


「おお、あたしらの追っかけ」柄にもなく草食が喜ぶ。


「貴方は、早撃ちの草食さん! とんでもなく強いと噂はかねがね。ぜひ色々聞かせてください!」


「いいよ。中々見る目があるじゃないか」


調子に乗る彼女へ冷ややかな目線。雫も苦笑。プロペインが「あー」と一言呟き、BBを見る。


「なぁハチ。どうしてそんな格好してるんだ」


「この格好がどうかしたんですか」


「いやぁ、まぁ、似合ってるなと」


そう言いたいのではない。しかし下手なことを言えば傷つける。それに、似合っているのは事実だ。


BBは体を見る。自分の姿が女子高生のままだと知った。忘れていたのだ。真顔を維持。赤くなっていく。耐えきれず百八十度ターン。走っていく。オサムは彼の姿をスクショしなかったのを後悔した。


「さて、ハチは待つとして。オーウェル君は、その、マスコミ関係者なのか?」


「はい、プロペインさん。極細ですが、しっかりとしたメディアですよ。それと真実を追求するタイプの。雫さんはご存知ない?」


「え、わたし?」唐突に振られ戸惑う。「ごめん、知らないわ。貴方の会社はわたし達のこと知っているの?」


「もちろん。ピースサイダー社所属解放旅団団長の雫さんですよね。経済同盟との戦いで戦果をあげています」


「へぇー。調査能力は本物ね」


「そうでしょう」腰に手をあてて胸を反らす。自信に裏付けがある。オサムも見習いたいぐらいだ。


ドタドタと走る足音。オサムは廊下を見る。BBが来た。いつもの服装だ。せめて頭の造花は残してほしかった。勝手な感想が浮かぶ。


遅れて、サンドロチェリーが来た。さらに河流も。ずいぶんと大事になった。まだこれからやることを決めていない。そのことだろう。


BBは息を切らさず、何もなかったように立つ。チェリーは息を切らしている。河流は彼へ、おとぎ話の老人のように微笑んだ。


二人は室内へ入る。河流を見たハリーと雫は規律よく直立した。軍隊でもあるまいに。社会人とはみなこうなのか。オサムは息苦しさを垣間見た。


「お疲れ様です。みなさん」ゆったりとした河流の声。「して、この方は? 廊下で会ったばかりでね」


「ボクはサンドロチェリーです。ラストルネッサンスのリーダーやってます。貴方は?」


「ピースサイダー社の社長、河流です。どうぞよろしく」


二人は握手。目配せで、河流がチェリーへ話を促した。彼は好意的に受け取りまんぷくテロリストへ向き直る。


「BB君とは約束したんですが、まんぷくテロリストの家はボク達で造ろうと思うのです。いいでしょうか」


「いやチェリー。二回も世話になるってのは」


「いいんですよプロペインさん。ボクには借りがある。返さないと。また家を建てるだけです」


「どうやって」


「さっき言ったでしょプロペイン」雫が察して続きを継ぐ。「まだ企業が手をつけてない、いわゆるスラムに家を建てる。こうすれば実質家賃はない。そうよね? えっと、チェリーさん?」


「はいチェリーです。そうです。スラムを拠点にしようかと」


すでにそこまで情報を得ている。プロペインは舌を巻く。自分達も情報を収集しないといけない。


「んじゃあよろしくー」草食が軽薄にお願いする。


オーウェルは諸事情あってここに残りたかった。しかし残された良心と常識が空気を読ませた。帰ろうと足を動かす。


プロペインが発言する。オーウェルの足が止まる。


「これだけ人が集まっているんだ。聞きたいことがある」


「待ってください」レモンが止める。彼は首を振る。


「いや、大丈夫だ。オーウェル君にもいて貰ったほうがいい。記者がいるほうが、いい話なんだ」


全員がプロペインに注目した。BBは河流を席に案内。座らせる。オサムはレモンの隣に。ハリーが扉を閉めた。


棘のないが鋭い緊張。少なくとも遊びようのある話ではなさそうだ。


「皆は、クリエイターって知ってるか?」


「クリエイター?」


河流が目を見開き、けれど無知であることを表す。ハリーや雫も同様。オーウェルは腕を組んで真剣だ。


「ハチ、クリエイターについて説明できるか」


「いいですよ。何も知らないも同然ですけど。……オレ達がプレイヤーズから逃走中、マケメロンという人が、オレ達をクリエイターには会わさないって、そう言ったんです」


「マケメロンが?」


オーウェルが聞き返す。BBが不信を持って見返す。なぜプレイヤーズの兵士を知っているのか。怪しいためにキツく睨んでしまう。オーウェルはだじろぐ。すぐ復帰。


「マケメロン。ゴール・オブ・ジューシーのリーダー。まんぷくテロリストを調べたら、そのチームと接触していると解りましたので。でもまさか、マケメロンが」


「すると、クリエイターについては知っているんですか」


「もちろんです。と言うとおかしいですが。真実を求めていますんで。いやとにかく、ある日匿名で、クリエイターについて伝えられました」


熱くなり、BBをジッと見つめる。身振り手振りも大袈裟だ。


「この世界の運営、いわば創造者。その存在が仄めかされていまして。その人物が、この世界にいるとのことなんです。もしそれが本当なのだとしたら、みなさんの考えている脱出についても進展があるんじゃないでしょうか」


チェリーとBB以外は大真面目に考える。チェリーは居づらかった。別に熱烈な脱出を望んでいるでもない。空気は読めるので、黙っておく。BBもまた同じく。


プロペインは内容に興味を抱く。がしかし、多くの情報を知っていることに驚嘆した。トゥルー通信社の能力が、彼の中で上方修正される。


「クリエイターか」ハリーが気難しく言う。「本当にそんな奴がいるのか。この世界にいる必要なんてないだろう」


「でもハリー」雫が机に手をついた。「それ以外、わたし達は情報がないわ。頼れるものは頼りましょうよ」


「それもそうだが……。気になるのはマケメロンという奴だ。なぜクリエイターを知っている。会わせないと言うことは、会わせると何かマズイということだ。何がマズイ……? オーウェル君、マケメロンとやらについては?」


「……いえ、知りません」多少何か考えて答えた。「飯テロと戦闘後、消息不明です」


「え、どこにいるのか解らないの?」


草食が立ち上がり驚愕。それについては知らなかった。てっきりプレイヤーズにいるものだと。


「はい、行方不明です。それ以外は、特に」


意気消沈。情報がぷっつり途絶えた。だがその中でも河流は目をギラギラ輝かせた。資本主義を生き残った狼の目だ。


「そのクリエイターに会うためには、もっと会社の規模を大きくしなきゃいけませんな。クリエイターについて調査するにしても、人数が、金が、足りません。なのでピースサイダー社は、経済同盟と戦い、ほぼ私達だけで勝たねばなりせん」


「知らないだろうか言っておく」ハリーが補足。「経済同盟との戦争では、連邦政府から勝利の度に金が下りる。我々傭兵はそれをあてに同盟と戦う。金があれば、あとは判るだろう」


「そう。会社を大きくして、クリエイターを探すにも、脱出の手段を探るにも、リソースが割けるのです」


なるほどではやろう。なんて考えるほど飯テロも単純ではない。また戦果を挙げるために奔走しなければならない。となると、他の会社部隊と出し抜いてく競争だ。過酷なものとなる。


プロペインは子供達を見た。また苦労させることになる。ずっと戦いっぱなしで、そろそろ休ませてあげたかった。現状がそれを許さない。


「皆、了解した?」


雫がまとめた。みな頷いた。


「よし。それじゃあ決まりですね、社長。でもまずは、飯テロの住居からですね。チェリーさん、頼める?」


「はい。では着いてきてください」


「自分も連れてってください!」


オーウェルの言うことに、子供だからと軽く応じた。


まんぷくテロリストと、オーウェルとチェリーはスラムに来た。レモンはスラムと聞いて、親から伝えられたイメージだけで警戒。しかし見ればただのあばら家だ。ポストアポカリプス初期の街はみなこうだった。レモンもすぐ外観を受け入れる。


しかし人のごった返していること。治安はどうかと飯テロ一行は気にする。スリは困る。BBだけは余裕の顔。現実でも似た場所にいたのだ。むしろ安心感さえある。


オサムは都市部の方角へ顔を向ける。あっちはビル群。こっちはあばら家。不公平を感じる。これが格差というもの。オサムは授業の知識ではなく実感として、初めて知った。


奥地に着く。ここには、ラスルネの車両とメンバーが集まっていた。飯テロの車もBBのばいくもあった。プロペインはチェリーに礼を言っておく。草食は何か盗られていないか確認。用心深いのか、ただの私欲か。


「さて、皆」チェリーがラストルネッサンスに語りかける。「今ある資材で家を建てよう。プレイヤーズから持ってきたものでも一軒ぐらい余裕で建てられる。それを上手に分割したら何軒でもいける。ボク達の分と、まんぷくテロリストの分。狭くなるけど、やっていこう」


「おう」と仲間は元気に答えた。チェリーは飯テロへ声をかける。


「皆は休んでいていいよ。もうすぐ夜だし。ボクらは突貫でやるからさ。……気にしないで。これはボクらにとって新しい一歩なんだ。休む暇はない」


そう言い残してクラフトに参加した。木材が人の手を借りず積み上がる。この形は違うと吟味し、造り続ける。


「いやぁすごいですね。それでは取材させていただけますか?」


オーウェルの取材熱は冷めていないようだ。草食の気分が上がる。彼女がやる気らしい。


「お姉さんに尋ねて貰おうかなぁ。いやぁこれ答えると新聞に載るかなぁ。あたし有名人になっちゃうよ」


「もう有名みたいなもんですけどねアハハ」


草食はオーウェルに連れて行かれた。無駄なことまで喋らないか多少心残りはあった。だが今更気にしても仕方ない。プロペインはBBの肩に手をかけた。


「なぁ、俺達で街を見て回らないか。探検だ。そのためにハチにはボディーガードになってほしいんだが」


BBはオサムを見た。彼女は優しい笑みを浮かべた。レモンは「じゃあ私はサムさんと」と言う。二手に別れて街を探検することにした。


チェリーには一言残して、出発。街はネオンが太陽の代わりとなる。夕焼けと電気が哀愁の影を作る。プロペイン達は見て回る。


ここは商店街だろうか。最早店まみれでどこからどこまでがなんなのか。服屋もあれば、ガンショップも。カジノもあった。それらは全て自分達で建てたのだろう。プレイヤーズが弱く思える。


BBが服屋のショーケースに目を止める。男性のマネキンにメンズのファッションが着せられている。プロペインはまずショーケースを作られているということに愕然。


中の服に目を行かせるプロペイン。BBが見ているのはメンズ。そういえば女装をさせられたのだった。彼は慈しめる感情が湧いた。


「着たいか?」


「……いえ、別に」寂しさが含まれた声。


「女装させられるのは、やっぱ嫌か?」


「サムが喜んでくれるなら、いいかなって」


「サムのためか」


「はい」


「たまには自分のためのことをしてもいいんじゃないか。今は買えないが、いつか手に入れようじゃないか」


「考えておきます」


プロペインは吹き出した。BBが真顔で彼を見る。BBの頭に手が乗る。撫でてやる。撫でられるのは、複雑だった。子供扱いされたくないのと、年相応に見てくれるという想い。それらが交錯して、頬を赤くするしかできなかった。


「ところでハチ。サムとはどうだ」歩きだし聞く。


「仲良いですね。少なくとも、嫌われていないと思います」


「そりゃあいい。俺はサムを応援しているからな」


「応援?」


「良い……なんだ。良い関係に、なってほしいのさ」


「なら、成功ですね。応援の甲斐はあったんじゃないですか」


「ハチはもっと距離をつめたいとは思わないか」


「サムとですか。充分だと思いますが」


「充分なのか?」


途端に判らなくなる。プロペインは悩む彼を見て、懐古に浸る。老人のようだと自嘲。話を続ける。


「サムはな。もしかしたらハチにとって特別な人になるかもしれない」


「特別? いや、オレ達はそんな関係じゃ」


「今はな。俺も人を特別扱いするのは肉親だけだ。他をしたことはない。されたことは何度かあるがな。まぁ俺のことはいい。もし特別な人になるとしたら、それがたとえ一瞬でも、全力で相手してやれよ」


「はぁ……」


「理解してないな?」プロペインは愉快げに笑う。「焦らんでいい。今はいい。でも先延ばしにするなよ。その、自分の気持ちって奴を先延ばしにしちゃあいかん。俺なんて先延ばしにしすぎて振られちまったぜ」


「何を言っているのか。でも、御愁傷様です」


「ハチは自分の気持ちに疎いってことだよ。自分のことで後悔しちゃたまらないから、警告だ」


「憶えておきます」


「助かるよ。ところで、飯食わねぇか」


「でもお金が……」


「安心しろ。サムハチが出掛けている間、夕食代を貰ったんだ。活躍の期待代たとよ。レモンも受け取っているから、少し食おうぜ」


「いいですけど、プロペインさんが選んでください」


「いいのか? じゃあここにしようぜ」


彼が選んだのは、酒気のないラーメン屋だった。彼は、サムを連れてくるならここはダメだぞとからかう。流れに乗り、BBはおすすめの誘い方や、どこへ行かせるべきかを聞く。プロペインもラーメンに舌鼓を打ちながら答える。BBはそれがデートプランであることに気付かない。


一方その頃。


「あの、それよりマケメロンのことをですね」「うるさぁい! あたしの勝ち賭博を聞くのだ!」

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