第80話 ダークホース、マケメロン
まんぷくテロリストはリラックスしている。追っ手はヘリの墜落に巻き込まれていなくなった。先頭車両からはあと半分で山脈を越えると聞く。このまま逃げきれば自由だ。
BBは左の崖を見る。下にはアウターセブンが走っていて、さらに遥か下には戦車隊がいる。自分はこの戦いで何もしていない。何かする必要がないので当然だ。それでも活躍したかった。いつも戦ってきたので、戦闘しないと違和感がある。
オサムとレモンは後方を警戒。レモンのスコープに何か写った。バイクだ。スマイリムは上に行ったので間違いなく敵。「敵、バイクが一名来ました」と報告しつつ発砲。流れ作業。
しかしおかしなことに敵はダメージを負うどこらか、そのまま進んでいる。腕を振ったように見えた。もう一度撃つ。腕を振るっている。手にはナイフ。姿が見えてくる。レモンの口が開く。
「マケメロンさんです! マケメロンさんが追ってきています!」
「メロン?」草食が振り返った。
確かにいた。マケメロンだ。ナイフ片手にバイクで突っ込んでくる。あわてずオサムが機銃掃射。体を狙う。全て斬られた。斬られた? 理解が遅れた。マケメロンは掃射を全てナイフ一本でさばいた。
マケメロンがスピードを上げる。加速。バンを余裕で越える速さ。止めようと撃ち続ける。マケメロンは右手の崖に乗り上げた。いや、壁を走っている。崖のわずかな凸凹に乗って走っている。オサムはなおも撃つが全て弾かれ斬られバンの前に行かれた。そしてついに弾が切れた。
「ハチ公!」
マケメロンが吠える。彼女は最初からBBを狙っている。まんぷくテロリストで最も危険な相手さBB。彼女はそのように評価している。故に最初はBBを始末する。
「マケメロンさん!」
BBは狼狽。上から圧力をかけられて来たのか。それにしては殺意が海のようだ。たとえゲームでも命を奪う気迫。背中の高周波ブレードを抜く。
マケメロンが崖から降りてきて横に並ぶ。BBが横薙ぎ。上に弾かれた。マケメロンはサブマシンガンを抜く。距離を取ろうとした。できない。道が狭い。前方の車が邪魔。
サブマシンガンを乱射してきた。BBが全て斬る。その間に再度接近される。ナイフで突かれる。この近さではブレードの意味がない。BBはブレードを口で咥えナイフで応戦。突きを弾く。しかしマケメロンがナイフをナイフで絡みめとり、くるりと手首を回して弾き飛ばす。BBはナイフを失う。
「こちらプロペイン。マケメロンと交戦中!」
「こちら第二先頭車。これより別れ道。予定通りまんぷくテロリストと別れる。すまないが頼んだ。ここでは戦えない」
プロペインは歯を噛み締める。草食はマケメロンの背中へ射撃。マケメロンBBへの追撃をやめ、避けた。草食は本気で驚く。自分の射撃が避けられた。これまでは必中だったのに。
マケメロンが後方へ銃を向ける。BBがすかさずブレードで斬った。刃の側面を叩かれ弾かれる。諦めず下から斬ると見せかけて突き。銃で峰を叩かれた。
しかしマケメロンも追い込まれている。右へ右へ。壁へ追い詰める。
すると突然空間が開けた。さっき言われた別れ道だ。前方車両は左へ。BBとマケメロンは右へをそしてバンは、
「しまった!」プロペインが言う。
左のままだった。目の前の戦いに夢中で気付かなかった。「ハチ!」オサムが叫ぶが間に合わない。
BBとマケメロンは一騎討ちの形となる。
だがBB達の目的はあくまでも脱走。マケメロンの撃破ではない。彼はもっと速度を上げる。振り切るつもりだ。
一瞬離れた。背後からの銃撃に注意。そのためにマケメロンを見る。彼女も速度を上げた。そんの一瞬で追い付かれ、追い越された。その間にナイフでの重い一閃。避けた。
どうやらバイクの性能事態が違うようだ。振り切れない。なら倒すしかない。前に出てくれたマケメロンへ撃つ。背中に目でもついているかのように避ける。なぜ避けられるのか。BBの特技であった弾丸斬りもやってのける。比べようのない強敵だ。
BBはキルすることにした。危険だ。銃をしまう。ブレードで斬ろうと接近。離される。バイク対バイクでは基本ドッグファイトとなる。だがそれは最高スピードが同じだったらの話。マケメロンのバイクは恐ろしく速い。つまり追い付けない。ずっと攻撃され続けることになる。
サブマシンガンを悠々とリロードしている。射撃。BBは全て斬る。が、焦った。狙いが正確な弾があった。バイクの上で安定してヘッドショットを狙うのは難しい。彼女は引きっぱなしで足と頭を狙った。発射の間隔を理解している。
BBはバイクの上に立った。バイクからジャンプ。乗り捨てる。バイクでの戦いでは勝てない。白兵戦で挑む。
マケメロンはブレーキ。くるりと回りそのまま突進。BBがショットガンを抜く。ギリギリまで待つ。ショットガンを向ける。
射撃と同時にバイクを回避。マケメロンは空へ跳び回避。BBはショットガンをしまいマケメロンの着地点へダッシュ。着地狩りだ。一撃で葬る。
マケメロン、着地。膝を曲げる。BBが上段から振り下ろそうとして突き。マケメロンが動く。だが彼のはフェイント。下段に変えるブラフを見せ突き。彼女は膝をピンと伸ばし跳んで避けた。すぐ追撃の拳銃を向ける。撃つ。弾かれる。弾かれている間に駆け薙ぎ払い。マケメロンは頭上へ跳び回避。そして上から突き下ろし。ショットガンを抜く。撃つ。その寸前にマケメロンは自分ショットガンを蹴飛ばした。転がる。BBは武器を一つ失う。
ナイフを構えるマケメロン。順手で突く。避け手首を掴もうとした。彼女は逆手に持ち変えBBの手を斬ろうとした。かわす。同時に斬り上げるが回避される。逆手のまま彼女は突いてきた。後ろへ下がる。マケメロンは追撃に飛びかかり。横に避けるが彼女は銃を抜き乱射。何とか斬り防いで対処。サブマシンガンを戻す。マケメロンはナイフで斬り上げ。ブレードでわざと受ける。弾かれ上へ。そのまま上段に構えて振り下ろす。銃を向けながらマケメロンは下がる。
もう一回BBは斬る。ナイフで流された。計画通り。流された方向に腰を動かした。マケメロンのその動きから攻撃に移るには間がある。わずか一瞬の隙。BBは突いた。
だが彼女はその上をいく。紙一重で回って避けられ逆手のナイフで背中を刺そうとする。BBは肘打ちで一旦防ぎ距離を置く。仕切り直し。
それをマケメロンは許さない。銃撃。弾いている間にBBの真上に跳ぶ。さらに撃つ。ナイフのキルゾーンで突き。BBは手首を掴みマケメロンを叩き伏せる。彼は追撃。マケメロンは転がってかし、同時に撃つ。ようやくBBに一発当たった。だが状況は好転しない。互いにとって。
マケメロンはスモークグレネードを地面に転がす。煙で周りが見えなくなる。それでBBは不利にならず。先ほどまで彼女がいた場所と息遣いを聞き攻撃。マケメロンはリロードしていた。彼女は何とかBBの攻撃をいなす。体勢は崩れた。さらに左腕で肘打ち。体を回転させて彼女を斬った。
わずかにナイフで防ぐも少しもらう。マケメロンのHPは半分。気にせずナイフを投げる。BBの胸に刺さる。彼はナイフを抜く。そして回復剤を注射。HPを全快させた。下手に追撃すると反撃をもらうと互いに下がった。
二人は認めあう。強い。すでにBBは拳銃を手にしている。マケメロンは迂闊に回復できない。
彼女は苛立って、焦ってもいた。こいつらを逃がしたら、この世界の終わりが近付く。これは何としても避けたい。BBを説得していれば、と悔やむ。もし彼が、脱出したくないと言ってくれれば。そうすれば話は簡単だった。
後悔して仕方ない。やるしかない。
マケメロンはナイフを口で咥える。BBはすかさず撃つ。避けられ回復される。その隙にBBはリロード。仕舞って突っ込む。壁へ跳び三角跳び。突く。
峰を弾くマケメロン。が、足を絡めとられ地面に倒れる。馬乗りになった。マシンガンを向ける。撃つ。BBは首をブレードで狙う。やけくその銃撃をやめて避ける。二回目、三回目とも回避。ナイフを捨てブレードを白刃取り。二人は力を込めあった。
「お前達を」マケメロンは興奮し、意思とは関係なく体が勝手に口走る。「クリエイターに合わせはしない!」
「クリエイター?」
疑問を感じたBBの力がわずかに緩む。ブレードをどかしマシンガンを拾う。BBはすぐ彼女から離れる。
「クリエイターとは誰です!」
マケメロンは苦渋の表情を浮かべる。必死になって口走ったことが、よもや重大なこととは。これで奴らはクリエイターなる人物がいると知ることになる。それが誰で何かは知らずとも。状況からどのような人物かは当てられてしまう。
二人の間に沈黙が漂った。その間、素早く思考。どうすればいいか。どうすれば敵をキルできるか。
爆音がする。バイクのエンジン音。
「スタァァァァップ!」
スマイリムだ。こちらに向けて崖を垂直に下っている。
マケメロンは走った。彼女を狙っている。走りきり何とか濁流から逃れた。彼らスマイリムはさらに下へ。マケメロンはバイクに乗る。BBを討つのは諦めた。まずはBB以外の弱者からやる。
BBはマケメロンを見失った。だが行く先は解る。
「プロペインさん!そっちにマケメロンさんが行きました」
「了解した。ハチ、戻れそうか?」
「マケメロンさんには追い付きません」
「構わん、来い!」
マケメロンは全速力でバイクを走らせる。サーキットのレースの如く。彼女は乗りこなす。誰も止められない。
左の崖下を見る。スマイリムと、マケメロンについてきたゴブジのバイク隊がぶつかっている。スマイリムにかかりっきりで、飯テロはお留守だ。
断崖を斜めに駆け降りる。重力が変わったかのような激しい衝撃。崖からジャンプ。飯テロの前に出た。
草食が撃つ。斬った。彼女の悔しそうな顔。
草食の早撃ちは見事なものだ。しかし早撃ちは二つある。ホルスターから抜き撃つもの。ハンマーを下ろして速射するもの。前者であればBBもマケメロンも防げない。抜くのが速すぎる。だが最初から銃口が向けられている後者は、マシンガンと変わりない。いかようにもできる。
バイクを蹴り跳ばし、飯テロのバン、そのフロントに乗る。オサムが銃座から拳銃で撃とうが、草食が撃とうが、全て斬った。プロペインが車を揺らす。最小限の動き。あまり激しくするとバンが落ちてしまう。
マケメロンは草食に向けて突きを繰り出した。勝った。確信。残るはBBと雑魚のみ。
そう思えればよかったのだが。草食の左胸を刺したハズ。なのに途中で阻まれた。何か硬いものがナイフを遮った。マケメロンは動揺する。
草食はすでに銃口を向け、引き金に指をかけている。
「あたしの運が勝ったね」
マケメロンの頭を撃ち抜いた。倒れ、車体上部に彼女の頭が当たり、そのまま車両の後ろへ投げ出される。空中でポリゴンとなって消失した。
草食は友を撃ったこと、自分の運の良さ。その二つを息として吐き出した。左胸のポケットから、何かを取り出す。
「いやぁ、リベルタリアの硬貨が役に立つとはね。こんな古典的な豪運で守られるなんて、今日はラッキーだよ」
「……それ、どこで拾ったんだ」プロペインが聞く。
「あの廃墟街で」
車内が呆れで満ちる。微笑みへ変わり行き、笑い始めた。なかばやけくそのばか笑い。気分転換にはなる。
「こちらプロペイン。マケメロンをキルした。他の奴はスマイリムが戦闘中」
「こちら先頭車了解。このまま走ってくれ」
無線が終わる。草食はリロードした。
「なんでメロンが襲ってきたんだろう。あいつ、あまり上のこと信じている感じないし」
「そうなのか」
「うん。あたしらの敵になるのは避けたがっていた」
そこへ、BBから無線が入る。
「みなさん。マケメロンさんが、オレ達をクリエイターに会わせないと言っていました」
「クリエイター?」
こうして、マケメロンの敗北が共有された。




