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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の3 プレイヤーズ編
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第74話 かつての敵


外に草食を置いて建物内へ。銃を向けるが誰もいない。物置小屋なのか。物が雑多に転がっている。電球さえない。


口にはしないがみな理解した。地下への道を探す。段ボールなどをどけて床を蹴り音を確かめる。気分はガサ入れ。怪しければいつでも撃てる。


オサムが何気なく蹴った床が動く。その上の物を全てどける。取っ手がある。


「皆、あったよ」


「でかした。よし行こう」


プロペインが先導。中へ。ほこりはあるのに咳き込まない。そんなところまでリアルだったら現実のほうがいいだろう。BBはそう考えた。


地下は存外明るかった。電球があり、壁も床もしっかりとしたコンクリートだ。ここに敵のベッドルームがあるだろう。


少し前進。右と左への別れ道。


「ここで別れよう。無線は通じるな? 俺とハチ、レモンとサムで行こう。いいか?」


プロペインの発言に肯定を示す。


「行こう」


四人は二人ずつになって別れる。プロペイン達は右へ。レモン達は左へ。


歩く。静かだ。不気味なほどに。ベッドルームに近付いているなら、敵は多いのが普通だろう。寂れた沈黙が続く。プロペインは警戒を強める。


走る音。前方左の曲がり角より。何かが飛び出した。プレイヤーズの軍服ではない。即座に撃つ。キル。それだけだった。


「敵はヘッドルームに待ち構えているのかもな」


「でしたら、プロペインさん。さっきのはいったい」


「判らん。しかし、静かだな」


先とは具合の違う沈黙。敵がいることが明らかになった。だからこそ安心もある。敵がいると知れば、そう身構えればいい。緊張で背伸びする。


そのBBの様子をプロペインが見る。少し肩の力を抜かせようとする。


「ハチ。一分だけ雑談しよう」


「任務中ですよ」


「久々に二人になったんだ。少しぐらい聞かせてくれ」


二人は言い合いつつ、四方へ目を配ることを怠らない。前へ。


「何を聞きたいんですか」


「サムのことをどう思う」


「信頼できる仲間です」BBの即答。自分でも驚く。


「そうか。なら、よし。それはよし」


プロペインがニッと笑う。悪い関係ではない。ならもう口出しすることはない。大人として、彼らの仲を応援するだけだ。しかし助けも忘れない。


「関係で苦しんだら、相談してくれよ。人間関係こじれると第三者がいるからな」


「憶えておきます」


彼に押し付けがましさがないことを、BBが感心した。いつも作戦を立てたり気を使ってくれている。頼れる兄貴分だ。そろそろ休むべきだろう。人知れず心配する。


通路右側に扉を見つける。二人は目を合わせ頷く。BBが扉の取っ手側に、プロペインがその反対に。手榴弾をBBは取る。ピンを抜く。プロペインが扉を引き開ける。中へ手榴弾を投げる。扉を閉じる。爆発音。しばらくして、突入。


中には誰もいない。それどころか何もない。外れの部屋だ。息を吐いて扉を閉める。


そして、どこかが爆発した。


レモンとオサムは爆発を足で感じた。


「何があったんだろ」オサムは不安。レモンが無線機を取る。


「こちらレモンです。プロペインさん、聞こえますか」


しかし返事がない。ノイズまみれ。


「プロペイン! ハチさん! 返事をしてください!」


叫んでも何も変わらない。やられたか。だがプロペインはともかくBBが易々とやられるワケがない。レモンはBBの生存を確認することに。BBが生きているならプロペインも。


「サムさん、二人を探しましょう」


「急ごう。何かあった」


二人は元の道を駆け出した。しばらく走り、オサムが殺気を肌に受ける。


「危ない!」


レモンを押し倒し伏せた。すぐ仰向けに。銃弾が真上を通貨。ライフルの引き金を引く。銃声が止む。頭を引っ込めたようだ。


オサムは唇を噛んだ。敵が何者か、判らなかった。撃ち返したらすぐ退いた。姿も見えなかった。発砲音の軽さからして、銃は拳銃だろう。なぜ拳銃なのか。考える暇はない。オサムはレモンに手を伸ばす。


「大丈夫?」


「いえ。ありがとうございます」


「敵の動きが速い。急がないと」


オサムは走る。レモンが追従。曲がり角。オサムは止まり、壁に手を当てる。角から覗く。誰もいない。しかし気配はする。方向的に爆発地点が近い。


オサムは銃を向けて忍び足。レモンも少し距離を置いて目を鋭くする。オサムは前を注視。通路は長い。先に何があるのか。


レモンは上を見上げ、配線が剥き出しになっているのを発見。その中に、石鹸の箱のような形をしたものがある。レモンは立ち止まった。何であろうか。汗が滲む。呼吸を忘れる。


爆弾。


「サムさん飛んで!」


オサムは振り返らず前へ身を投げる。耳を破るほどの爆発音。オサムは吹き飛ばされ転がる。


起き上がる。目の前には土でできた壁。爆発で崩れたもの。となるとレモンは。自分の現状は。


「レモン!」


壁に向かって叫ぶ。声が聞こえる。耳を当てた。


「サムさん、逃げて」小さく聞こえる。レモンの声。「敵が来ています。速くッ」


背後から足音。ライフルを向ける。あったのは手榴弾。背筋が絶対零度。無茶苦茶に乱射し手榴弾を弾き飛ばす。前方で爆破。過呼吸になりかけながらリロード。


オサムは地を蹴った。角を曲がり敵を確認。ゴテゴテにアーマーを着こんでいる。撃ちまくった。敵は驚きもせず撤退。何発か当てるもキルには至らず。進路を曲がる。敵は増えた。


一直線に続く道。多くの通路と繋がっていて、つまり角がいっぱいだ。隠れられる場所も多いということ。オサムも角に潜む。一人一人があそこで、自分を討つために好機を窺っている。オサムは一人だ。


一人。敵は多い。BBなら力業で勝てる。レモンなら策を練って対処する草食なら早撃ちでKO。プロペインは上手に退く。自分は? この惨禍で自分は何ができる?


何もできないと絶望するのは今ではない。オサムは己を奮い立たせる。今はやるかやらないか。やる。この場を勝ち抜きベッドルームを制圧。それに、手榴弾がある。


オサムは通路の形状を思い出す。手榴弾を取る。ピンを抜く。レバーを弾く。投げる。枝分けれした通路の、手前へ入った。爆発。キルは確認していない。


「こちら拳察隊三班。現在飯テロ、オサムと交戦中。至急増援乞う」


拳察隊。響きから連想する記憶を辿る。


「こちらハリー。現在我に余剰戦力なし。そちらの戦力で対処せよ」


「了解」


拳銃警察隊だ。かつて、ファームシティに行く以前、彼らと戦った。初めて組織らしい組織とぶつかったあの時。まさか再開するとは。


敵の武器が拳銃なのも納得する。わざわざ縛りプレイをしてくれている。勝機はいくらでもある。


その安心を嗤う手榴弾が足下に。オサムは全力疾走。身を投げる。爆発。奴らは拳銃以外でも使う。立ち上がる。オサムへ走る音。隠れ場所を失う。ハチの巣にされる。


自分に降りかかった脅威が、オサムの頭脳に回転を促す。身を隠せるような場所はない。たとえ撃ちまくっても弾がない。なんなら手榴弾だけで追い詰められる。逃げ場はない。なら進むしか。進めない。無理だ。


無理。本当に無理だろうか。唐突にBBを思い出す。彼は力業でねじ伏せるとオサムは考えた。どうやって、だ。


そうだ。銃弾を斬ればいい。


僅か一瞬の思考で、オサムは解を得た。


アサルトライフルを捨てる。ナイフを抜く。ナタを抜く。立つ。道へ歩き始める。敵はまだ隠れているだろう。感覚を総動員。弾丸は全て斬る。そしてキルする。


通路。一歩。敵はまだ隠れている。一歩。一人がこちらを見た。一歩。体を出した。一歩。銃を向けた。一歩。引き金を引かれる。


銃口がどこを向いているか空間的に把握。狙いは胸。あとはそこへ武器を振るうだけ。


しかし体に着弾。HPが減る。落ち着きはある。ナタを前に向け、半身になる。


二発目。頭を狙っている。ナタの横をすりぬけようとした。ナタをスライド。少し振るう。弾いた。斬ってはいない。


他の敵も体を出した。拳銃を向けている。たかが一発で苦戦した。経験的にいえばまず体が音楽室の壁になる。だが、オサムに絶望感、なし。もはや斬撃しか頭にない。


全員、オサムを撃ち始めた。怒涛の連射。


金属音。弾と刃が交差する。


オサムは飛来した弾の全てを斬っている。


一歩。一歩。一発も被弾せず歩く。拳察隊は怯み後退しようとした。一つ目の曲がり角。オサムは駆け込み一人をキル。アーマーの隙間をキレイに斬った。もう一人は弾切れに気付かず引き金を引く。気付いた頃にはナイフで首を突かれている。


そして先ほどの通路へ。歩く。弾丸を斬る。敵は徹底的に恐怖を刻まれる。一発も当たらない。必ず当たる弾道なのに。


恐慌状態になった一人がオサムへ突進。銃を捨て、ナイフで突いた。オサムは口でナイフを噛む。横に避け腕を掴み回転させる。背後をとった。背中を押す。走り出す。人を盾に突撃。ナイフを収納。手榴弾を片手で取り次々横へ投げる。一つ一つの通路へ。悲鳴。爆発。オサムは口に挟んでいたナタを手に、盾にした敵を斬った。


全滅。オサムがやった。手榴弾はなくなった。オサムは駆ける。完全にハイの気分。敵を斬る。狩る。殺す。殺意。


曲がり角をまた曲がる。会敵。撃たれる。弾を斬る。飛びかかり押し倒し首を斬った。隣の敵を蹴り飛ばす。よろめいたところをナイフで突く。キル。さらに走る。


道中扉を発見。蹴破り中へ。敵がこもっている。撃たれる。全て防いだ。部屋を駆け巡る。誤射を恐れる敵。隙を逃さず首を斬る。だが功を焦ったせいで中央へ行ってしまう。包囲された。敵はナイフで対処。仲間を撃ちたくない。


後ろから突き。左にふらりと避け首にナイフを刺す。右から来る。ナイフをナイフで弾きナタで一閃。また後ろ。足で蹴り転倒させる。首を撫で斬り。前、左、同時に攻撃される。跳躍。足を回して地面に頭をぶつけさせる。ナイフとナタでとどめ。最後の一人。やけくそにナイフを振りかぶる。やり返しキル。


部屋から出てまた駆ける。部屋を探す。発見。敵が現れる。ナイフを投擲、首に刺さる。もう一人いた。発砲。ナタで弾を斬った。目前まで接近。タックルでよろめかせ体を回し首を絶つ。ナイフを回収。扉を押し破った。


扉に罠があった。頭上から手榴弾複数。ナタで弾き飛ばし部屋中へばらまく。爆発連続。敵の悲鳴。見ればベッドルームではない。舌打ちもせず通路へ。


また扉を見つけた。嫌な予感。オサムは飢えていた。だが予感に従い、扉を破ったけあと地面に身を投げ転がる。手で地面を押し空中へ。弾丸が来る。空中で斬って着地。


「誰が来るかと思えば、オサムか」


発言者は男。腰に二丁、後ろ腰に二丁、太ももに一丁ずつ、胸に一丁。計七丁の拳銃を身に持っている男がいた。


ダーティハリー。拳銃警察隊のリーダーだ。


オサムは右へ左へステップしながら近付く。正確に狙われる。斬るもハリーは下がる。なおも銃撃は止めず。追っても逃げる。その間も発砲。弾切れになり他の銃へ切り替える。


通路へ出た。ハリーは後退しながら撃つ。どれも外さぬ一発。だがオサムは全て斬った。


「クソ、オサムも斬れるのか」


困惑と衝撃。太ももの銃も弾切れ。腰の銃に切り替え。オサムは歩く。弾切れを待つ。


弾切れ。胸の一丁を抜き撃つ。全弾撃ち切った。オサムが走り斬り上げ。に見せかけてジャンプ。脳天をかち割った。


「ぐえ」


ハリーは倒れた。オサムは今、彼が敵のリーダーだと気付いた。急に疲れてきた。しかしまだベッドルームを見つけてない。


「サムさん、サムさん。聞こえますか」


レモンの声が無線からする。ハリーの部屋に戻り連絡をとる。


「ハァ。聞こえてるよ。よかった。デスしてないんだ」


「何とかプロペインさん達と合流しました。ベッドルームを確認し破壊しましたが、数が足りないように思います。そちらでも確認を」


「判った。すぐ終わらせるよ」


部屋を飛び出て走る。進むと敵が複数。一斉に攻撃。くどい。オサムは全て斬り捨てた。彼らが守っていた扉を開ける。


ベッドの群れ。装備を整える敵まみれ。目に入ったのは機銃。奪い取りベッドに向けて乱射。敵は伏せる。羽毛が舞う。


反動で狙いは無茶苦茶。気にしない。ほとんど撃ち抜き、弾切れ。


銃を捨て、トランクを開ける。火炎瓶を取る。火をつけて投げる。何個も。燃えていく。手榴弾も見つけ投げた。


火、爆発、閃光、スモーク。パニックも突き昇る。


オサムは一度部屋から抜け、逃げようとする敵を討った。鎧さえない敵はいい餌。混乱は収拾がつかない。


そして、ベッドルームは壊滅。扉を閉め、それを背に寄りかかる。だんだんと落ちていき、ペタッと地面に座った。


無線機を取る。


「こちらオサム。ベッドルームを片付けた」


「え、一人でか」プロペインの声。


「はい。リーダーのハリーもやりました」


「ハリー? 誰だ」


オサムはクスリと笑った。少し、自信がついた。

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