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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の3 プレイヤーズ編
70/137

第70話 宙のダンジョン


対リベルタリア戦争第一の前哨基地。そこにプレイヤーズは集っていた。キーコード各隊、基地を造るラストルネッサンス、偵察隊のスマイリム(プレイヤーズに吸収された)、あとは普通の兵士達。人数の多さから、基地もまた巨大であった。


今は休憩時間。指揮官達の作戦タイム。BBは兵士として一人、休息していた。楽しくはない。昨日のことを思い出していた。


オサムも草食も、自分なんかのために動いた。貸しでも作る気なのか。とんでもない嫌悪感に包まれる。貸しなんて考える自分が汚ならしい。唇を噛む。バイクに背を預ける。外。まんぷくテロリストからは少し離れて。


しかし視界に入った人物はオサムだった。彼女はBBを探しているようで、キョロキョロとしていた。目を閉じる。ため息を静かに一つ。目を開けた。「ハチ!」オサムの喜びが耳に届く。彼女は走ってきた。


「ハチ、探したよ」


「どうしたの。何かあった?」


「いや……別に」


「そっか」


BBは立ち上がった。オサムの目と同じ高さになる。不可解なことに、彼は彼女を見て安心した。


「ねぇ」BBは自分でも引くほど甘い声を出した。


「何?」


「昨日のこと。改めてありがとね」


キョトンとするオサム。クスクス笑い出した。特定の反応を望んでいたのではないが、笑われるとは思わなかった。


「いいんだよハチ。いつものお礼だから」


「お礼? オレは別に何もしてないよ」


「してるじゃん。いつも最前線で戦ってくれるし、訓練にも付き合ってくれている。恩返しぐらいさせてよ」


恩返し。したこともされたこともない。


「恩なんて売ってないけど」


「非売品でも買っているんだよ。BBもさ。一人じゃ抱えきれない問題があったら、相談してよ。何かの助けにはなるよ」


相談。しただろうか。してあげただろうか。


「いいの? 頼って」


甘い声はなくなり、小動物の怯えが現れる。


「うん。いっぱい頼ってね。……って、昨日のはほとんど姉さんのおかげだったけども」


「いや。サムが気付いてくれなかったら、チームのほうが大変になってたよ。ありがとう」


「どういたしたまして」


彼女の笑顔に、BBは救われた。さっきまでの不可解な気持ちや疑問、全て溶けた。温かくなり、癒してくれる。


「休憩終わり。全員集合」


ヒトマルの声が無線機から。BBとオサムは互いに苦笑した。


「行かないとね、ハチ」「行こうか」


二人は早歩きで行った。


人に頼っていい。BBは、その事実を噛み締める。人は利用するものと無意識に考えていた。信頼してはならないと。


しかし、オサムやまんぷくテロリストなんてふざけた名前の人達は違う。やることをやっただけで、恩返しまでしてくれる。報いてくれる。当然といえるそのことが、BBに眩しく、浮かせるほど美しかった。


ならば。自分も報いようじゃないか。このポストアポカリプスから脱出したいと思っている仲間がいる。その仲間のために動こう。助けてくれる人達なんだから。ここだけが、居場所なのだ。……考えに、己の境遇は含まなかった。


BBやオサム以下全兵士が集合した。彼らの前には、指揮官達が立つ。


まんぷくテロリストの草食とプロペイン。


アウターセブン及びキーコードの隊長ヒトマル。


ゴール・オブ・ジューシー隊長兼キーコード副隊長マケメロン。


ラストルネッサンスの副リーダーボクサイ。


スマイリム隊長のエンデルフィン。


中々の会議だった様子。


「作戦を説明する」ヒトマルが口を開く。「が、至って単純だ。敵の全容が不明だからな。強行突破の形になるだろう。敵、リベルタリアはこの先の巨大廃墟街にいる。巨大というのは誇張ではない。世界観設定的には首都かなんかだろう。とにかくその街を通らなければリベルタリアには行けん。そして、その街は要塞化されているらしい。らしいというのは、近付いたら狙撃されるためだ。腕のいい奴を集めているんだろう」


水をひと飲み。話は続く。


「すでに偵察隊は全滅している。そこで、戦車と大砲の支援の下、ハチ公とスマイリムを突っ込ませる。俺達は後ろから街を撃てばいい。スマイリム達は街に侵入後、無線を使って情報を集めてくれ。どこにどの敵がいるか、ベッドはどこか。調べてくれ。困難な任務だとは承知している。しかし必ずやり遂げてくれるお信じている。さぁ行くぞ。全員乗車!」


兵士達はみな動く。バイクに、車に乗る。BBもバイクに乗った。エンジンをかけ、スマイリムに合流する。振り返る。まんぷくテロリストの四人が手を振っていた。BBも振り返した。


スマイリムの下へ。全員がバイクに乗っている。皆々が鉄の鎧を装備し、目の見えない兜を被っていた。それごときで萎縮するBBではないが、珍妙なものを見たと思う。


「待てよ、お前を知ってるぞ」スマイリムの一人が言う。


「はい、まんぷくテロリストのBBです。よろしくお願いします」


「面倒は避けろよ、同族」


「はぁ」


この会話の感じはオールドスランガーズだ。もしかしたらこいつらも同類なのかもしれない。BBは疑うだけに留めた。だが実際彼らはオールドスランガーズの残党である。


「出発!」


ヒトマルの掛け声で発進。BB達は最前線。真っ直ぐ突っ込んで、街に入る。簡単で粗雑だが、針を通すよう。


数時間後。巨大な廃墟街が見えてくる。視界こ端から端まで続いている。目を凝らせば、大砲なども見えた。早速放ってきた。発射の煙が見えてから、遅れて発砲音が鳴る。


「全車スマイリム達を支援! 戦車砲撃て! 大砲は急いで配置しろ! 急げ!」


砲撃に負けずと叫ぶ。スマイリムは一気に速度をアップ。


一人やられた。バイクから転がり落ちポリゴンとなって消失。バイクは地面をはね空中で回転。


BBは迷いなく抜刀。他のバイク乗りが蛇行で狙撃を避けようとする。BBはより速度を上げ、狙う弾を斬り進む。大砲は当たらない。どんどんと近付く。機関銃の掃射が来る。BB自身は刀で防げる。しかしバイクの損耗が激しい。


丁度いい頃に味方の砲撃。機銃手が倒れる。狙撃を掻い潜り、ついに街へ侵入。なおも狙撃は続く。


「こちらBB。街に侵入しました」


「どんな様子だ! ハチ公!」


BBは走りながら上を見る。ビルとビルの間に橋がかけられている。そこら中橋だらけだ。とんだ空中回廊。橋は鉄製で、欄干は鉄板で補強されている。


「ビルとビルの間に鉄橋があります。おそらくそこを」


言い終われずに橋から身を乗り出し射撃してきた。危ういと判断し角を曲がる。だがそのさきでも待ち伏せ。直感的に、ビル内部へ。


「どうしたんだハチ公!」


「鉄橋から狙われました。至るところから」


「スマイリムは?」


「判りません」


「スマイリム! エンデルフィン! 応答しろ!」


「……何とか、街に、入った。だが完敗だ、後退するぞ!」


BBはバイクを横に倒し置いておく。アサルトライフルを手に取り、呼吸。敵が来ないか気配で探る。


「エンデルフィン、他は?」ヒトマルの無線は続く。


「いや、判らない。完全にはぐれた。もういいだろう! やめてくれっ」


無線機から銃声。エンデルフィンの声が悲鳴と変わる。


どうやら状況は最悪らしい。BBは作戦の失敗を悟った。強行突破はできない。一帯に広がる橋から狙撃されてお陀仏だ。BBとて、全方位からの弾丸を斬ることはできない。また、支援も期待できず。BBは一人孤立した。それだけ知った。


「ハチ公、生き残れるか?」


ヒトマルも失敗を知った。敗戦処理に移行しようとしていた。BBはこの状況で生存可能かシュミレート。だが具体案は浮かばない。


「不明です」


「そうか」


「ヒトマルさん、ヒトマルさん、俺です、プロペインです」


突然プロペインが通信に割り込んできた。ヒトマルは不快感をも持たず耳を傾けた。


「ここはBBに、俺達飯テロに任せてくれませんか」


「できるのか? なら、せめて撤退の助けを」


「いえ、この街を制圧します。俺達で。BBで」


「……いや、お前達だけに手柄は渡さん。協力する。どうするつもりだ」


「引き続き、街には攻撃します。しかしこの街の真の兵器は橋でしょう。そこから好き放題に攻撃できる。だから、外は俺達で制圧。中ではBBがベッドルームを見つけ破壊。難易度はさっきまでのとそう変わりません」


「……やれるか? ハチ公」


呆れ気味なヒトマル。BBは「はい」と簡単に答えた。近付く足音。敵が来る。階段を降っている。


「よし。やろう」


「頼んだぞ、ハチ」


ヒトマルとプロペインの声を聞き、やるべきことをやる。そして今こそ、訓練で鍛えたスキルを見せる時だ。


右の階段への扉を開く。階段。上階に銃を向ける。速く、静かに足を運ぶ。敵は足音を隠さない。もうすぐ接敵。階段のわずかなフェンスを盾とする。


敵が視界に入った。BBはフェンスの隙間から頭へ発砲。一人キル。二人目に撃たれれた。フェンスのおかげで狙いが定まっていない。キルした。三人目が手榴弾のピンを抜く。BBはフェンスから離れた。撃った。キル。手榴弾がその場に落ちて爆発。油断せず制圧射撃。リロードしながら登る。


ベッドルームはどこだ。現在BBの位置はおよそ街の外側と思われる。少なくとも本陣を前には出さない。多分奥のほうにある。奥とやらはどこだ。確認のため屋上へ行く。


このビルに屋上があるのかと思いつつ登る。そして登りきって扉がある。開けた。光が差した。屋上だ。


BBは匍匐になり進んだ。高い場所は目立つし的になる。このビルより高いビルは多い。上を気にする。


どうやら予想は当たり、ここは街の外側だ。BBの前には高層ビル群。後ろに荒野とプレイヤーズ。進むべき方向は判った。


殺気。転がって回避する。狙撃だ。中腰になって上を見た。スナイパーがいる。発砲。しかし当たらずスナイパーは身を隠した。後悔の暇なく別方向からの狙撃。銃声で場所がバレた。


BBは立ち走る。幸い金網はない。BBは屋上からジャンプ。別のビルへ跳んだ。窓を破り転がる。ガラスの破片でダメージ。ポーチから回復剤をとり注射。


階下から足音。階段を探す。ない。真下で足音が止まる。BBは身を投げ出す。爆発。背後で床が崩れる。手榴弾を抜き床下へ投げる。悲鳴。爆発。BBは転がり落ちて一階下へ。生き残りが一、二、三人。二人を撃ちキル。パソコンデスクを盾に三人目の銃撃をかわす。反撃。キルした。


BBは必ず頭を狙っている。当たればキルできる。しかしながら一発必中とはいかない。


リロード。奥に進むには鉄橋を渡らないといけない。橋を探す。走る。一階分降りた。割れた窓がある。橋が伸びていた。銃口を向けつつ行く。案の定敵が待ち伏せ。撃ってきた。デスクを盾にする。貫通される。階段まで退く。


手榴弾は使えない。橋を壊す恐れがある。なら刀だ。BBはアサルトライフルを肩にかけ抜刀。敵に向けて突進。全ての銃撃を斬り肉薄。すでに橋にいる。一人首をはね、一人心臓を突き、腰を動かして腹を裂いた。三人キル。奥には機関銃、猛射。何発かはもらうがほとんどの弾を斬り捨てて機銃手の頭を刺した。ビル内へ。機関銃を奪い、刀を口に咥え乱射。室内は阿鼻叫喚。敵は伏せた。銃を捨て手榴弾を投擲。


爆発し床が抜ける。BBも下に落ちた。生き残りを追撃。キル。アサルトライフルを取ろうとして、ない。落とした。敵から銃と弾を奪う。進む。


上の上の階へ。壁が抜けている。橋もある。チラリと見れば撃たれる。間一髪避けた。弾は一発。単発銃だ。ならばと刀で突撃。近距離狙撃を弾きスナイパーをキル。橋を渡る。別のビルへ。


途端、爆発音。このビル全体から響く。天井が崩れ、空が見える。納刀。ビルは爆破され崩れゆく。BBは斜めになった床を走り他の瓦礫へジャンプ。壁キックをし瓦礫から瓦礫へ空中移動。走り回り飛び回る。他のビルへ着地。背には崩れるビル。土煙が街を覆う。


相手も必死だ。だからもうすぐだ。BBは刀を抜き走り出す。隣のビルへ再び跳ぶ。空中にて狙撃される。みな斬った。着地。屋上。他のビルより一段低め。


屋上への扉が開けられた。敵が撃ってきた。斬り捨て同時に拳銃で撃つ。ヘッドショット。遮蔽物がないため相手は退く。罠に違いない。


BBは屋上からぶら下がり下の階へ。窓を掴み登る。静かな移動なので気付かれず。階段へ向ける銃多数。やはり罠。BBは後ろから近寄り斬る、突く、刺す。待ち伏せを片付けた。悲鳴を聞かれたのか、走る音がする。


落ちているライフルを拾い出てきた敵を撃つ。弾がなくなれば次のライフルへ。手榴弾が来た。立って詰め寄る。背から爆発。前方から銃撃。横へ転がる。制圧射撃。しばらく敵を止めた。弾が切れ抜刀。地面を蹴る。目の前の部屋の中へ。敵を複数確認。壁を蹴る。一人一人刺していきキル。ここだけやたら守りが固い。このビルか。


下から足音。階段をさがす。部屋から出る。狭い通路に敵複数。ショットガンを抜いて撃つ。撃たれた敵の後ろの敵も吹き飛ぶ。キル。


穴から下へ降りた。狭い室内。刃物を持った敵のみ。一斉に襲いかかる。


敵の攻撃。弾いた。斬った。キル。足を捌き攻撃を避ける。斬り捨てた。キル。キルを重ねた。


部屋を抜ける。また機関銃。右へ左へ回避。接近。斬った。敵の増援。デスクに隠れ手榴弾を投げる。キルした。


下の階へ。ライフルを手に入れた。敵を倒していき、一階へ着いた。ベッドはなかった。


一階の下から慌ただしい音。地下だ。BBは地下へ通ずるハッチを見つけた。開けて、降りた。

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