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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の3 プレイヤーズ編
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第61話 疾走する鳥


「状況を説明するわ」


都市連合に属する都市の一つ……特に名前のないその都市。十人以上の男女が並んでいた。傍らにはバイクを停め、武装している。リーダー格である女が、気迫を持って彼らにことを告げる。


「飯テロが南西の諸都市を襲っているわ!」


「飯テロ?」「まずいことになったな」彼らは飯テロを知っているのか、知らないのか、全くやる気なく答えた。


「聞こえたでしょ? 飯テロって言ったのよ!」


横へ歩き、苛立ちを隠さない女。緊迫感がないから、とは言える。周りから見ればいつものことだが。


「どこから来て、誰が連れて来たのかなんて事はあまり気にしてないわ。知りたいのは、都市を襲おうなんて間違いをどうして犯したかよ!」


「だが……飯テロと戦えるのか?」一人の男が聞く。飯テロのことは確かに知っている様子。彼らの出自からすれば当たり前なのだが。


「いい質問ね。誰も飯テロを見たことはないし」少なくとも元オルスラの彼らは知っている。「戦うなんて考えたこともないわ」女は腕を組み、言う。


「でも、名誉にかけて戦うわ。負けるとしてもね。この飯テロは故郷を……家族を襲った」


良いことを言っているのかもしれない。どこか違和感のある日本語で心に響かない。特に、このこの飯テロという部分。


「この怪物から逃げたら、スマイリムって名乗りなさいよね。一人で戦わせるつもり?」


「よすんだ」「やめろ」「もう終わりだ」野次馬達は彼ら、スマイリムの士気の低さに不安。これがこの都市の持つ精鋭とは。本当は嘘なのではないかと散々に思う。


「でも、ここでは名誉以上のものがかかっているわ。考えてもみなさい。この世界の閉鎖以来、ポストアポカリプスで初めて見つかった飯テロなのよ」


日本語のおかしさで、誰も耳に残らない。少しの間を開けて、


「あいつを殺す栄誉は貰ったわ。貴方と一緒ならね」


なぜあいつ、と単数なのか。名誉なのか栄誉なのか。貴方達ではなく貴方なのはなぜか。野次馬は謎の言葉に頭を抱える。


「じゃあどうするの? 飯テロに殺されろって言うの!」


突然の激昂。あまりにも脈絡がないので周りの市民は困惑する他ない。


「おう!」「その通りだ」「おおお!」


「行きましょう」


スマイリムはみなバイクに乗り、出発した。彼らはこの都市で最も強い組織。かつてオールドスランガーズに属していた。彼らが壊滅したために、残党が独自に結成した。


そんなことより。あの士気がボロボロの演説はなんたることか。もう行ってしまったので後の祭り。とても彼らには任せられない。都市の人々は、自分の身や財産を守るため、行動を始める。




一方その頃。キーコードは街を二つ攻め落とした後、休憩をとっていた。度重なる戦闘。兵士達はもう疲労困憊。特に酷使されたBBとオサムは休むと決めたら横になり、爆睡した。


プロペインも荒れた運転により疲れ果てた。休むことに。あまり活躍していないレモンと草食は、二人で破壊された街の探索を始めた。


「おっほー。あたしの銃と合う弾、いっぱいじゃーん」草食が手から弾丸を溢す。


「元は武器店だったのですかね。この建物は」


崩壊した物体を建物と呼んでいいものか。それでも弾を補給できたのは僥倖だった。レモンも残骸の中から物資を漁る。


「ところで、レモン」


「何ですか?」


「ハチのことどう思ってんの? 三人とも仲良いからさ」


質問の意図を計りかねた。草食はレモンに青春を求めているのか。


そうだとすると。確かに自分とBBの関係について、深く考えてはいなかった。レモンは黙々と悩み始める。


BBのことは信頼していた。強く、何だかんだ気が利く。ただ、どうにも距離はあった。遠からず、近すぎず。BBとなら、オサムの方が関係は密接だった。


ともかく、自分のBB評を考え、言葉にした。


「いい人、だと思います」


「そっか。いい人か」


弾をポーチに入れ、草食も少し考える。レモンは狙撃手。そして作戦立案者。今はマケメロンにお株を奪われているが、彼女の立場は変わらない。BBとオサムのような、前線担当とは物理的にも距離がある。


レモンはとても社交的だ。しかし、訓練や任務で忙しくなった。あまり子供達で話せていないのではないか。草食がこんな質問をしたのも、そうしたことが心配になったからだ。


ではなぜBBとの関係を聞いたのか。それは昔々、BBが女装した時のことで、関係の変化を知らなかったからだ。BBが嫌だったことは知っている。だがそれなら今もわだかまりとして残りそうだ。それがない。だから彼女には三人の関係が解らない。


「ハチとサムの関係についてはどうよ」草食は作業を止める。


「あの二人の関係ですか」


積極的に考えたことのない議題だった。BBとオサムに、レモンは嫉妬していた。それが正直なところ。表には出せない悩み。


嫉妬している、というのは恋愛関連ではない。友情だ。あの二人の、深い関係に入れないのが寂しかった。彼女は基本、交友関係に不満を持ったことはなかった。けれども今回は例外。疎外感があった。二人の関係に入れず、入っていいのかと悩むこともある。孤独を感じていた。


「少し、寂しいです」やっと出せた言葉がそれだった。


「寂しいかぁ」


草食は、レモンの苦しそうな顔を見て安心した。彼女は聡い子である。自分とは違い、自分から逃げない。素直だった。レモンは話を続ける。


「あの二人はもう、恋人みたいに近しくて。その、二人が二人でいるのが、遠くに行っちゃいそうで」


「そっか。そっか」


一人っ子の草食。彼女は姉のような気持ちになった。てっきり、レモンから信頼されていないものだと思っていた。また、恋煩いでもしているのかとも考えていた。


草食はギャンブルばかりする。真面目からは程遠い。レモンから見たら、嫌なものだろうと。そらでも信じてくれるなら、助言をするべきだ。


「まぁ、一人の大人として言っとくなら」


レモンと草食はやっと目を合わせた。


「レモンが良き友であり続ける限り、手の届く範囲にいるよ。友人ってのは」


「良き、友?」


「……さぁね。あたしも何を言ってるんだか。でも、あの子らがレモンを切るのはまずないね」


良き友。レモンはこの言葉に目を見張った。今までの友人とは、良き友でいられただろうか。今の二人にも、良き友であれるだろうか。


それに、良き友でないと、遠くに行ってしまうのか。ワケが解らなくなる。寂しいのは嫌だった。


「姉さんは、寂しくならないんですか?」


「どういう意味かは正直解らんけど、独りってのは、意外と慣れるもんよ」


草食という女は、こんなでも大人ではあった。ギャンブルで身を落とした。だけども元はいい人だったのかもしれない。レモンの中で評価が変わる。


その草食は、己へ苦笑した。良いことを言っているようだが、自分が言っては泥塗りだ。結局友人達は手の届かないところまで離れられた。金を貸せと言えば、当然だ。


自分はいい奴ではない。ただの軽薄な人間だ。尊敬されるのは性に合わなかった。


「さ、あたしらも寝よう。もうすぐ夜が開ける。メロンが早起きしないよう、祈っといて」


二人も仮眠をとった。レモンは、BBとオサムとの三人で、学生生活を送る夢を見た。


そうして休憩は終わる。また進軍を開始。北東へ。ファームシティへ。キーコードは進んだ。


そして、また街を見つけた。攻撃を用意。先頭のBB達が異変を見つける。


前方から砂煙。よく見ればバイクの群れだ。


「マケメロンさん。前方からバイクの集団。攻撃を」


「おーけい。皆、あのバカ煙に撃ちまくれ!」


言われた通り機銃の音が風を切る。敵のバイク集団はグルリと反転。背を向けて逃げ出す。


どのみち追いかける。追撃。と、そこへバイク集団から手榴弾のプレゼント。距離、爆破時間共に正確である。


丁度通った車列の上で爆発。機銃手が何人かやられる。マケメロンは舌打ちでこの被害を評価した。


「サムハチコンビ! あのバイク集団をやれ! 私ゃらは街の破壊に専念する!」


「了解!」


BBはスピードを上げる。オサムはライフルを取り出し、BBの肩上から銃口を突き出す。


集団に追い付いた頃には、すでに街に侵入していた。敵方は三つに別れ街に忍ぶ。BBは真っ直ぐに進む者共を追うことに。


「都市連合はスマイリムのものだ!」


敵が叫ぶ。どうやらバイクの集団はスマイリムと言うらしい。左手にらサブマシンガンを持ち、後方を見て撃ってくる。BBは抜刀と同時に弾丸を斬り刻む。困ったことに、オサムは前に撃てない。BBの刀に遮られてしまうのだ。レシプロ戦闘機のようにはいかない。


スマイリムはリロードをする。ここが隙だ。オサムはすかさず引き金を引く。BBの耳元にやかましい銃声。


BBはバイクを移動。オサムが狙いやすい位置へ。次々と撃ち抜いていった。敵はキルされ、バイクは主を失い転がり跳ねる。


背後から弾丸。オサムが振り返ると先程別れたスマイリムが合流してきた。オサムは座り方を変え、後方の敵に集中する。BBもオサムの背中を感じた。刀から拳銃へ切り替える。


BB達は敵に挟まれた。サブマシンガンの乱射。BBが素早く蛇行。ダメージは貰うも軽微。互いに決定打に欠けた。


「ハチ、このままじゃジリ貧だよ!」


「すまないけど運転と並列はできない!」


「解った! わたしが策を練る!」


銃撃は止めず、考えあぐねる。とりあえずと手榴弾を真上に投げた。落ちていく中、爆発。そこを通ったスマイリムを幾人か倒す。だがまた増えた。これで三つに別れた敵の全てが集った。もし自分達も含めた全員が徒歩ならば、BBによって勝利を確信するのだが。


オサムは無線機をとった。策は思い付いた。あとはBB次第。


「プロペインさん、聞こえますか! 今からバイク集団をそちらに向かわせます。 わたし達でら勝ちきれません。機銃でどうにかしてください!」


「よし。判った。レモン! ハチとサムから援護要請だ! 準備!」


二人は無線を切り会話。「ハチ、前の奴らは倒さないと」「了解」


オサムはまた座り直し、前へ銃を向ける。前方の数人を撃って仕留める。


転がるバイクが後ろへ流される。その背後からの銃撃を避けるため運転は荒々しくなる。オサムはBBにしがみつく。右へ急カーブ。次の曲がり角まで来て、また急カーブ。背の敵は何人か曲がりきれず転倒する。


「レモンです! ハチさん達を目視で確認! 避けてください!」


遠くにバン。飯テロだ。BB達は横滑りしつつブレーキ。そして再度発進。路地の間を突っ切る。


レモンは敵へ掃射。草食も早撃ちでキルを重ねる。混乱した敵勢は逃げようとして、逃れようのないことを知る。更なるパニックへ。


「こちらレモン。バイク達を片付けました。街の破壊に移ってください」


「ありがとうレモン。オレ達も作戦に戻る」


都市連合の雄であったテイル、精鋭のスマイリムは負けた。残っている者は、ファームシティを攻略中。


今日中に都市連合は落ちる。マケメロンはほくそ笑んだ。

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