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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の3 プレイヤーズ編
60/137

第60話 ただの荒らしプレイヤー


キーコードは北へ向かっている。多くの車を並べ、今まさに都市連合を討たんとする。偵察隊からの情報によれば、守りは薄い。あくまでも一都市の情報だが。他はその都市を落としてから決める。


「みなサァン。お聞きですかぁ」


マケメロンが無線で通信。作戦を言うのだろう。今は事態が切迫している。移動しながらの説明もやむなしだ。


「私ゃらはこれからマジの電撃戦をする! 四六時中走ってファームシティまで縦断する。物資がなくなったら、戦いながら集めてちょ。無理なら銃剣突撃でどうにかしてねー。まあハチ公がいるなら余裕っしょ。サムハチいたら負ける気せぇへんキーコードやし」


ゲラゲラ笑う声。トーンを落とし、真面目になる。


「ま、とにかく街は荒らすだけ荒らせ。とっとと行け。軍は残さんから、確認できるものは何でもいいからぶっ壊せ。奪えるもんは奪えるだけ奪え。今は悪魔が微笑む時代なんだ!」


各車から、雄々しい叫び。歓声が無線から噴火する。間に挟まされた飯テロはただ苦笑するしかない。


レモンもプロペインも、指揮者であるマケメロンのことは少し不安が残る。だが今は言うことを聞くしかない。とにかく暴れ回って、敵を混乱させる。そしてファームシティへ着く。ハッキリ言って一日走ろうと目的地へは着かない。それはどうするのか。二人は頭を捻らせた。


そんな考えが頭をよぎっても、眼前の事実は避けられない。都市が見えてきた。すでに一発、狙撃された。幸い外れている。マケメロンは雄叫びをあげる。


「よっしゃあ! 敵が見えた! 全員、街中荒らすだけ荒らせ! あとはとんずらだ! 昔を思い出せ!」


ゴール・オブ・ジューシーの過去はちょっと気になった。そんな暇はない。オサムは銃座から機銃を撃つ。他車も機銃から弾を放つ。


BBは速力を上げる。機銃で制圧されている前線を乗り越えて街の中へ。全部壊せとの命令。気が引けないかと言ったらウソになる。なにせ、一般市民もいるだろうから。


……と思ったが、よくよく考えたら相手はプレイヤーである。非戦闘員をキルしたところでなんなのだ。ゲームであるなら武装していないほうが悪い。BBはあっさり考えを変えた。


BBは店頭のすれ違いざまに手榴弾を投げた。この街はコンクリートが多い関係上、建物は壊しにくい。せめて物資はメチャクチャにしてやろう。


敵の兵士が路上へ飛び出した。BBはアサルトライフルを片手で持ち、反動を抑えずに乱射。気の小さい兵士達はそれだけで壁に逃げようとする。


一人を轢き倒して、十字路を右へ。前哨基地からパクった火炎瓶をコンクリート住居の中へ投げ込む。哀れ炎よ。煙が窓から出始めた。


機銃の鉄火が聞こえてくる。本隊も街の中で暴れているに違いない。


「コンクリートしかねぇ! ええい、降りられる奴は降りろ! 各自でベッドをぶっ壊しとけ!」


マケメロンの指示が飛ぶ。遊撃のBBはあくまでも街を駆けずり回るとする。外の兵士を削って、室内突入隊の援護をしよう。


「こちらBB。依然遊撃を続行。外の兵士を倒しきる。よろしいですか?」


「いいぞハチ公やれやれ!」


上からのお許しも出た。抜刀。止まって撃つ兵士を狙い斬る。


街は災禍の雨が降る。外に出ればBBか機銃の餌。室内では突入されベッドを破壊され、前のリス地に送られる。もしかしたらそこは何もない荒野かもしれないのだ。移動をするなら尚更大変だ。


街に侵入して数十分。もう街は元の形をしていなかった。


「こちらマケメロン。もうこの街はぶっ壊した。移動するぞ! 北へ向かえ!」


BBはバイクを回転。北へ進路をとる。もっと戦果を。次の街も攻撃する。


そう思った矢先に無線が入る。


「ハチ! こちらプロペイン。サムがまだ来ていない。回収してくれ」


「了解」


オサムはどうやら室内の掃除をしていたらしい。さっさとオサムの所へ向かう。


「場所は?」「こちらオサム。南西にいる」太陽を見る。南西を認識し、さらに転進。


南西地域に着いた。オサムは片っ端から物を手に入れた。主に弾薬だ。ロケットランチャーまで持っている。


「お迎えに来たよ」


彼女のそばで停める。BBは内心次の攻撃のことを考えていた。表情には笑みで迎えている。その矛盾に気付きつつ、オサムが後ろに乗った。


「サム。オレに抱き付いて。移動中はそっちの方が安心だ」


「え、抱き付く?」


「……恥ずかしい?」


「ハチはどうなのさ」


「抱きつけば解るよ」


少しなげやりな態度。BB自身も後悔する。どうにも恥ずかしかった。なぜだろうか。サムの体に触れることなんて初めてではない。なのになぜこんな気持ちになるのか。


サムは嬉しさと気恥ずかしさがせめぎ合う。ゆっくりと、BBの腹に手を回す。胸と背中をくっつける。BBもオサムも、相手の心音が判った。速い。


「……行くよ」


BBはオサムのために優しく発進した。急がねばならないので徐々にスピードを上げる。


二人は無言だった。特にオサムは、彼の背中に顔をつけ、やめる。また胸と背中を合わせる。とても心地よかった。顔が赤いのは自覚している。それは恥からではなく、安心感であることも理解していた。


なんだか青春みたいだ。オサムはそこまでに思考が至った。すると当然の連想として、恋が浮かぶ。だが彼女はそれを否定した。強く。なぜなら、好きという感情が解らない。家族愛は解る。知っている。両親は好きだと公言できる。しかし恋とは違う。彼に、自分は何を抱いているのか。恋と思いたくないのは、ただ、何かが怖かったからだろうか。


オサムはプロペインから応援されている。そう言われた。多分BBとの関係のことだろう。それは自明の理だ。それでも恋とは認められない。それは、己を虐めてきた奴らのしていたことだ。自分は絶対そうならない。青い恋とやらに呆けて、それで周りからあれこれ言われるような、そんな奴にはならない。自分は自分でいたかった。それはただの強がりなのか。


BBは、彼もまた戸惑っていた。なぜオサムにこんな心情を抱くのか。そもそもこの心は何であろうか。どんな名前の感情なのか。苦しい、悲しい、辛い、それらは知っている。最近は楽しいというものもよく知り抜いた。だがオサムに対しての感情だけは解らなかった。


もしかしたら、愛と言うものかもしれない。BBはあくまで冷静に考えて、駒を進めた。妹のように見ているのかもしれないと思う。けれども、愛とは受けたことも、与えたこともない。知識としては知っている。だがそれを己に当てはめられるほどの思考回路がない。故に、恋心なぞという言葉が、浮かぶハズもなかった。


二人が黙っている間、いつの間にか車列に追い付く。次の都市も見えてきた。


「おい見ろよ。さっきのと比べたらヒヨコとタカだな。よっし、あの木造住宅に火をつけろ!」


マケメロンのノリノリ指示。BBとオサムの二人は思考の迷路から戻り、戦いへ意識を向ける。


「サム、このまま戦える?」


「ここで銃を使うの? いいよ」


オサムは名残惜しそうに手を離し、体を離す。ライフルのストックを肩に当てる。バイクの後ろからだと少しやりづらい。できないことはないが。


「プロペインさん、BBです。オレとサムは遊撃に入ります」


「了解した。レモン! 引き続き銃座を頼む!」


またバイクのスピードを上げる。二人で一番乗りだ。かの街の多くが木造。もしくはあばら家だ。


BBは抜刀。待ち構えていた敵からの銃撃を全て斬った。後ろにいるオサムからの攻撃。もちろんそれで数を減らすのには足りない。けれど突破には充分だった。一人轢き飛ばし街の内部へ。


オサムはロケットランチャーに切り替える。この街唯一のコンクリート建築に一発撃ち込んだ。着弾。爆発と共に崩れ落ちる。


BBは街を走る。オサムは道路上の敵へ銃撃。もうただの射的の如く。日々訓練で培ってきた彼女の腕が発揮された。


そしてオサムとBBにばかり注意を向けている兵士達へ罰が下る。車が突撃し、機銃装甲で薙ぎ払う。あばら家を壊して進む。火炎瓶を投げ、真っ赤に燃える。

「よぉし! この街は雑魚だ。もういい、次に行くぞ!」


すでに大火の街。見切りをつけ、さらに北へ進路をとった。日が暮れ始める。夜へ戦場は伸びていく。


全員フルスピード。このまま勢いに乗る。先のあばら家の街では物資を奪う暇もなかった。次で一気にもらう。マケメロンは舌なめずり。


そして次の街が見えた。BBはまず目を疑う。廃墟にしか見えない。先頭を走るBBがそう見えるのだ。後続も同じことを考えただろう。


だがなればこそ丁度いい。ここで物資、さらに弾を取って次に行けばいい。スピードは緩めない。取り分はどのぐらいにしよう。そんな損得勘定が頭の中に揺らめく兵士達。車のライドをつけ、目の前の視界を確保する。


廃墟から爆音。だが手榴弾とは違う。


BBは勘に従った。危機。


「サム! 掴まれ!」


すぐ動いたオサムの胸を感じてからバイクを左に傾ける。背後、近くで大きな弾着。幸い車列には当たらなかった。


「やばい! 大砲だ! あの街にもプレイヤーがいるぞ!」


マケメロンの声で各員戦闘の覚悟を決める。大砲は一門しかないのか間を開けて撃ってくる。しっかり狙いを定めている。車はそれぞれ蛇行を始めた。BB達のバイクもその通りに。


「サムハチコンビ! 最前線にいるなら大砲を手に入れるんだ! 我々の物にする! いい手土産だ! 壊すなよ!」


「了解!」


スピードはすでにフルスロットル。街が近付く。バリケードで守られていた。BBとオサムはアサルトライフルを乱射。しかし相手も負けじと撃ち返す。構わず速力全開。バリケードを突破。オサムは手榴弾をポイと置き土産。爆発。


前方真っ直ぐに大砲を見つけた。このままのスピードだとオサムは一人しかやれない。BBはトップスピードのバイク制御に忙しい。


「サム! 指揮官っぽいのを!」


「判った!」


それでも彼は言った。二人の会話はこれで足りる。オサムはライフルをリロード。一瞬のタイミングを待つ。


エンジンの唸る音。背中の先から鳴る銃声。バイクは大砲から見て左へ。オサムは右へ体を向け狙う。まもなく大砲を通り過ぎる。


発砲。オサムの銃から放たれたそれは見事大砲手を撃ち抜く。確認と殲滅のため横にスライドし急ブレーキ。オサムは右を向いたままなので銃撃を継続。咄嗟のことで対応できず大砲の兵士は全滅した。


脅威が取り除かれた本隊はバリケードを踏み潰し前進。折角の廃墟。潰すだけではもったいない。なので基本機銃掃射で壊さず攻撃。


「降りれるもんは降りた降りた! 弾をかき集めるんだよん! ただしサムハチはそのまま走り回れ! 暴れろ暴れろ!」


「了解!」


そう言いながらバイクをその場で回し、大砲を背にして駆けた。バイクのライドがアスファルトを照らす。


一度外敵の侵入を許したら、あとはもう勝ちのみだ。廃墟中くまなく探され、物資は奪われ大砲も車に牽引された。ベッドは全滅。その徹底ぶりは、マケメロン以下が元々ギャングだったことを、如実に表していた。


「さぁ止まるな! このままファームシティへ! 乗れ乗れ!」


回収が終われば、即発進。決断の速さは果敢だった。プロペインもアクセルを踏み仲間に追い付く。


「はー。人使いが荒い」


「プロペインはずっと運転だしね。レモンは大丈夫?」


「大丈夫ですが、サムさんとハチさんは大丈夫でしょうか」


心配をよそに、BBとオサムは二人走っていた。


もう夜だ。星空とライトだけが世界を映していた。

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