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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の3 プレイヤーズ編
58/137

第58話 鉱山の主テイル


ランプが所々き下げられた鉱山の中。その入り口付近。その広場。二人の戦士が己の武具を構える。


片方、テイル。アメフトのヘルメットに錆びた鉄の鎧。左手に脇差を持ち、右手には大曲刀。肩に乗せられている。彼の背は高い。大男だ。


片方、BB。ハチ公とも。武器は豊富。右手に刀。腰にはショットガンと拳銃、サバイバルナイフ。手榴弾もある。ここでは使いづらいか。


緊張の細菌が心中に風を立てる。始まりの合図はない。小さなBBがテイルを見上げ、テイルはたたずみ見下ろす。


テイルがまばたき。BBはショットガンを抜く。地面を蹴る。銃を向けて短期決戦を狙う。


テイルの脇差による横薙ぎ。撃つ前にショットガンは弾かれる。テイルの左手を刀で斬りつけた。手首を狙う一撃は彼に微量のダメージを与えた。


さらに肉薄。首を突く。ステップでかわされる。同時に下段を薙ぎ払ってきた。ジャンプで避けてテイルへ近付く。肩に掴まり、首を狙う。しかし逆に、脇差で首を斬られかけた。蹴り飛ばしてBBは距離を取る。その間銃で撃った。完全に背後を取られていたテイル。何発かもらうも、鎧によってダメージは減っている。


テイルは振り向いて駆けてきた。鎧の音がやかましい。上段から大曲刀を振り下ろしてくる。なんなくかわし彼の首を狙う、と見せかけたBBの刀は下に落ちて股間を狙う……と見せかけて下から首を狙う。判断が追い付かないテイル。本能的判断で防ぐ。脇差と刀の衝撃音。テイルは素早く曲刀を振り回す。また距離を置く。


またテイルが大曲刀を上げ、振り下ろそうとする。BBは避けた。が、まだ振り下ろされない。ディレイをかけられた。気付く頃には刃先が来る。何とか刀で受け流す。続いて脇差で斬られかける。刀で防ごうとして、火花が稲妻のように弾ける。


BBは転がった。たかが脇差なのに一撃が重い。これは単にテイルの腕力からなるものだろう。強い攻撃を弾くことはできない。


テイルが走って来る。脇差で攻撃される。下がって避ける。曲刀の振り下ろし。回避しても脇差で追撃される。これもよけた。曲刀が再び落ちる。地面に叩きつけられた。BBはそれに乗る。


子供一人とはいえ、重さはバカにならない。BBはここぞと刀で首を狙い突く。咄嗟のガードも切り上げて脇差を無効化。再び突き。勝利を確信。


テイルは「おおお!」と声を張り上げBBごと大曲刀を持ち上げる。体勢が崩れたBBは地面に落ちる。テイルは大曲刀を肩に乗せた。


強い。BBは素直にそう思う。互いにまだ決定打を与えられていない。そして当たり前のように隙がない。一撃も重く、また防御も固い。歩く刀剣戦車。


弱点を探す。首元、ひざ裏、手首。そのぐらい。対しBBはどこから斬られても大ダメージ。刀では、あの鎧を貫けない。拳銃ならば少し通じるだろうが、正面から撃てば弾丸が斬られる。


こんな時、レモンやプロペインの思考があったら。そう思わずにはいられない。思う暇もない。


ショットガンならあるいは。最低でもひざを突かせることぐらいはできるのではないか。いや、いや、いや。考えが回る。


ショットガンは拾う。それを必殺のためでなく、相手の隙を作るために使用する。いわば攻撃する盾にする。それで行こう。BBは決めた。


この間、わずか一秒足らずの思考。


拳銃を抜きありたけ乱射。テイルは全弾弾くことができず何発かもらう。その間にショットガンを駆けずりながら回収。拳銃はホルスターへ。左手にショットガンを持つ。


その空白を逃すハズもなく。テイルは大曲刀を振り下ろす。同じ行為で、今回は考えあってのこと。だが考えを実行する前に、BBがショットガンを向け、撃ち放った。


「ごばっ」


テイルは不恰好に吹き飛ばされた。それでも武器を離さないのは流石。追撃を狙う。


吹き飛ばされたテイルは壁に激突。土煙をあげる。BBはテイルの姿を煙の中に失う。そこから大量の弾丸。アサルトライフルのものだ。BBは即座に刀を振るう。神速の刃。


集中がより過密になる。一発一発の弾丸が見える。それらを一つずつ斬り落とす。


BBはライフルの連射を弾き、斬り伏せた。これまでは拳銃だけだった。だが成長を喜ぶ時間はない。


煙が晴れる。そこにはテイルが回復剤を打った姿が。BBは思わず舌打ちした。


だが、ショットガンの有用性は明らかに。銃によってダメージは減った。けれど瀕死まで持っていった。恐らく二発撃てば確殺。しかし当たり前だが二発も待ってくれない。その度に回復されてはたまらない。


テイルの装備を改めて見る。持っているのは大曲刀と脇差のみ。ポーチやベルトとかはない。先のアサルトライフルも、ロストアイテムを拾っただけだ。つまり回復剤の収納スペースはほとんどない。対してこちらのショットガンの残弾は残り十二発。六回はキルできる。


回復剤を切らせる作戦で行くことにした。


テイルは忌々しげに立ち上がる。


テイルとしては、驚くことしかできない。ライフルの連射を全て斬った。確実にキルしたと思ったのだ。


「やるじゃねぇか。ハチ公」


そうでなくては面白くない。テイルに笑み。


BBは息を吐けるだけ吐いた。全ての筋肉と意識を回復させる。必ず奴を討つ。覚悟はできている。殺意さえ芽生えた。攻撃を防ぎ避け、散弾をぶち当てる。


テイルが仕掛けてきた。ただ撃ってもかわされるだろう。キルゾーンまで待つ。大曲刀を斜めに振るう。後方に下がる。一歩踏み込まれ曲た。刀を薙いだ。BBはジャンプ。空中へ脇差の突き。ここぞとショットガン。撃った。テイルは吹き飛ばされた。


追撃の代わりにショットガンをリロード。テイルは回復剤を打ち込み、再び挑む。


脇差で二連の斬撃。BBを怯ませ右半身を前に出す。攻撃と勘違いしたBBは避ける、がその先に曲刀の刃。またもディレイにかかった。だがBBは上を行く。隙まみれとなったテイルへショットガンを向ける。


銃を向けられたと判ったテイル。刹那、大曲刀を盾に散弾を受ける。衝撃が腕を震わせる。


大曲刀の重さは、それが武器だった。だけどもそれが仇となり、地面に突き刺さる。


そこへもう一発とBBは引き金を引こうとした。テイルは曲刀からも手を離した。ショットガンを蹴り飛ばす。続く刀の突きを右手で掴んでそらす。BBは刀から手を離し拳銃を抜く。危険に対し一秒未満、テイルは固まる。逃さず、弾のない拳銃を落としテイルの握る刀を引き抜く。


右手は使い物にならなくなった。指は切り落とされた。そこに意識が向いているテイルの首へ、突き。今度こそ確実に、貫き抜いた。


勝った。


「あ、ぐぐ、ぐ」テイルは呻き倒れた。すぐ何か言い始める。


「へ、へへ。一撃も当てられなかったぜ……。けどよ、やっぱバトルはいいなぁ……」


そう言って、ポリゴンとなり消失した。


BBは安心で呼吸を乱した。直すため、深呼吸をする。強敵だった。一撃も当てられない、と彼は言ったが、一撃当てるまでが大惨事だった。


そこで、あることに気付く。まだ緊張の空気が歯ぎしりしている。見渡せば、銃を向けあっている敵味方。今までの戦闘では確かに横槍が入らなかった。それは彼らがあってこそだった。下手に撃てば、大変だ。プロペインの機銃掃射と草食の早撃ちが待っている。


それともう一つ懸念材料がある。テイルのリスポーンだ。もし鉱山内にベッドがあったら、また奴と戦うことになる。それは避けたい。


BBは今の自分の役割を見失っていた。


「ハチっ」


プロペインが声を張り詰める。


「ベッドルームの探索と、脱出口の確保を頼んだ」


「……了解」


敵方へ強い警戒感を抱く。広場内の敵のいない場所へ、駆けていった。


「さてさて」


草食がふてぶてしく笑う。指揮官を失った兵士達は困惑していた。


「始めましょうかね」


次の戦いは我々だ。草食は腰に銃を持っていき、撃った。六人の頭を撃ち抜いた。すぐリロード。その瞬間をプロペインとオサムの射撃が埋める。敵も撃ち返す。それより早く飯テロが攻撃。敵はほうほうのていで退却する。


BBは脱出口を探した。何かないか目を配る。まさか入り口が二つあるのかも。だがそれより出口があることのほうが、可能性がある。走った。鉱脈か、土もランプしかない。どこも一緒だ。坑道を行けど行けど、その先にあったのはまたちょっとした広場だった。


たくさんのプレイヤーもいた。あちらもBBに気付いた。思わずとも拳銃を抜き向けた。


「待ってくれ!」


悲痛な叫び。疲労したBBを押しとどめるには充分だった。だが決してその場を動かない。何の意図があるか判明するまで殺意の奔流を止めない。


「あんた、まんぷくテロリストのハチ公だろう? 俺達は閉じ込められたんだ。あんたらと一緒に。テイルの兄貴はもうあんたにやられた。リスポーンはこの鉱山の外だ。俺達、どうしたらいいんだ……」


脱出方法を探しているのはこちらも同じ。しかしながら疑問が一つ。なぜこいつらはベッドを破壊し、デスして脱出しないのか。そうすれば外でリスポーンする。前のベッドの位置から復活。BB達にはデスしたら困る事情がある。負けたらここを獲れない。敵は違うハズだ。


「なぜデスして逃げないのですか」


「デス? あぁその方法が! あっ、でもでも、俺達がいなくなったらこの鉱山は……。それより、デスしてもここまでは遠い」


少なくともここにベッドはないようだ。でなければベッドのことを聞いている。処遇をどうするか考えていると、向こうが勝手に言い出した。


「ハチ公、ここからの脱出に協力してくれ! 俺達もあんたらも鉱山から出たいハズだ。頼む!」


「なぜそこまで……」


「いや、ここでKIAして抜けるってのは何か負けた気がするんだよ。判るでしょ? でもこのままは何かなぁってさぁ。ね? お願い、頼む!」


「……脱出しても攻撃しないなら」BBは呆れて妥協した。


「もちろんしませんよっと。助かるぜ。こっちの武装は放棄するんで、仲間を呼んでつかぁさい」


BBは怪しく思いつつ仲間達を呼ぶ。プロペイン達は流石に罠を疑ったが、弾の無駄にならなければそれでいいとなる。そしてここにベッドはない。奴らが退けば、こっちのもの。


脱出方法はすぐ思い付いた。外に近い壁を堀抜くというもの。入り口は厚く塞がっているから不可能。そして、こういった壁を掘るためにはスコップが必要。面倒なので爆破して穴を開ける。


本来は鉱山ごと自決するためのTNTを少し使う。爆発。壁を吹き飛ばした。なら最初からそうすればよかったのに。しかし本当に最初からこうしていたら飯テロ的には詰みだった。敵のパニックに感謝だ。


土が舞い太陽が目に挨拶する。眩しくて影へ逃げようとしてしまう。


全員外に出た。鉱山の麓へ出たようだ。飯テロが入ったのが中腹辺りなので、かなり下った。


「ありがとう!」兵士が感謝を口にする。


「いいですけど」BBは口を尖らせた。「次は敵ですからね」


「ハチ公殿は手厳しいなぁ。今度はよき戦友として出会いたいもんだ。でも、俺らは流れ者の傭兵だったしな。まぁいいや。それじゃ」


彼らは去っていった。ひとまずの危機は脱した。これから本隊へ合流する。


「ハチ」オサムが後ろから肩に手をかける。「お疲れ様」


「今回ばかりは、本当に疲れたよ」


「まさか弾を斬れるのがハチだけじゃないなんてね」


「全くだよ」


「任務が終わったらおごりますよ。ね、二人共」


レモンに優しくされたBBとオサムは、快活な笑みを見せた。

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