第50話 PSの差は最早いじめ
「こちらキーコード。ヒトマルだ。まんぷくテロリストは司令部へ。繰り返す……」
そんな放送が要塞内に響き渡る。訓練された兵士ならば飛び起きて駆け足。しかしまんぷくテロリストはさっきまで民間人。故に担任に呼び出された学級委員並にノロマ。
彼ら彼女らがプレハブを出て、さて困った。司令部はどこだ。ゲン総長がいた所か。五人は説明されていなかった。あたふたしていられない。通行人をBBが捕まえ、司令部の場所を聞く。兵士は怪訝な顔をしながら場所を答えた。ゲンがいるビルが司令部であることを確認。であればあまりにも貧相ではないか。そんな突っ込みをそれぞれ胸に仕舞う。
車は置いてきたままだ。そもそもこの交通量では使えない。なので走った。プロペインは運動部の経験から急いだほうがいいも判断したのだ。みなもそれに従う。
司令部に着く。太陽が汗を流させる。警備が一瞬五人を止めようとして、何者であるか知るとすぐ通した。通されたはいいが、どこへ向かえば。ゲンの所だろうか。それさえ解らず、相談しようかとレモンが動く。廊下の中央左の扉が開いたことで、それは遮られた。
「こっちだよん飯テロ。ボスは時間に厳しいぜ」
顔に星だのハートだのをつけているパンクな女が呼んだ。何者なのかは知らない。ともかく行ってみる。扉の先へ。
そこには複数の兵士男女と、リーダー格の男が一人いた。兵士は軍服を着た真面目そうなのと、ロックな見た目の二種類。リーダー格は厳格そうな顔で、その眼光たるや業物の如く。慣れていないオサム以下女性陣は圧を受けた。プロペインも少し気圧された。BBは方眉を上げ、口角を下げた。すぐに表情を戻す。
「申し訳ありません。遅れました」
BBがハキハキと答えても、彼の眼に変わりはない。ネチネチと文句を言われるだろうと、皆身構えた。男が口を開く。
「……いや、遅れてはないな。ようこそキーコードへ。歓迎しよう。俺はヒトマル。キーコードの隊長だ。そして、その顔にあれこれつけている奴がマケメロン。ふざけた名前だが副隊長だ」
「よろしくビーム」
案外簡単に受容された。その上遅れていないこと、マケメロンとやらの変なテンションに、一同驚愕。まんぷくテロリスト以外の兵士達は慣れたものだ。
「よ、よろしくお願いします」
草食も出遅れながら挨拶をする。それに満足げなヒトマル。兵士達を一瞥した。
「さて、まんぷくテロリスト達。前に来てくれ」
今気付けばここはブリーフィングルーム。また作戦会議室のようだ。前にはホワイトボード。それに合わせたかのようなパイプ椅子。教室のようにも見えなくはない。
五人はホワイトボードの前に立たされた。BBとしては転校した時と同じ気分。兵士達の物珍しげな目は、こちらからしても珍しい。
「彼らがまんぷくテロリストだ」ヒトマルが紹介を始める。「彼らはファームシティにおいて、オールドスランガーズという巨大組織を撃破するに貢献しただけでなく、それ以前に拳銃警察隊というギャング団を撃破している。五人のみでだ。そんな豪傑が味方となる。各員、だからって気を抜くなよ」
パチパチと拍手。草食はヘラヘラと困り笑い。そして副隊長のマケメロンに手招きされ席に座る。
「よし。揃った。作戦を説明する」
どうやら話は長くなりそうだ。ヒトマルは動かずに続ける。
「我々キーコードは、まんぷくテロリストを除いて戦闘に参加しない。あくまでバックアップだ。今回は、飯テロの、プレイヤーズで初の実戦。それの、いわば観察となる」
「さて飯テロ達。お前達の作戦は最早作戦ではない。要塞より南方のギャング団の撃滅。それだけだ。好きに調理してくれ。いつもと同じ戦い方でいい。俺達はその戦い方を見たい。アピールなどは考えなくていいぞ」
これには呆けざるを得なかった。好きにしていい。それならキーコードに所属した意味はなんだ。と、考えるのは作戦立案者以外のこと。プロペインとレモンはすでに試されていることが理解できた。今はまだ体験入隊の扱いだ。
「了解しました」
プロペインはそう返す。疑問符を掲げる三人に目を配る。それを見て、プロペインが決めたのだからと安心する。
「では、これから移動だ。俺とマケメロンと、飯テロは同じ車で移動する。移動!」
どうやらブリーフィングは終わったみたいだ。それぞれが席を立ち、好奇の目を飯テロに向ける。たとえ作戦が成功しても、しばらくはそういった目に晒されるだろう。BBは理解した。
マケメロンが一人一人の肩を叩き、ニパッと笑う。そして室外へ出ていく。着いてこいという意味だろう。ヒトマルが後ろでため息を吐く。
「すまない、マケメロンは自由人でな。着いてきてくれ。一緒の車に乗るぞ」
そう言われ、やっと立ち着いていく。外に出ると車が整列している。装甲車だ。迷彩柄で、軍隊にあるようなデザイン。自分達のバンはどこかへ消えた。不安をよそに、近くの車の後部ドアが開く。中へ。
天井は低く、狭い車内。そのメカニカルさとミリタリーの雰囲気は、新鮮であった。まんぷくテロリストに二人のキーコード。乗り終わり、出発する。
「さてと、じゃあキーコードのことを話すか」
ヒトマルが言った。手を組み前のめりに。五人へ向けて語り始める。マケメロンはあや取りをしていた。
「キーコードは元々二つのチームが合流してできたものだ。俺達アウターセブンと、マケメロンのゴール・オブ・ジューシー。略してゴブジ。その二つはプレイヤーズの中で強いほうだったからな。それを総長は一つにした」
「キーコードとして、な。だが元々別の組織なのは変わらない。作戦に従事する時は、アウターセブンとゴブジに別れることが多い。そこにまんぷくテロリストが入った。つまり三つのチーム。それぞれがやれることをやる。それがキーコードだ」
「なるほど」プロペインが頷く。「つまり、指揮系統に違いが?」
「そうだ。大まかな作戦は決めるが、そのあとは大体自由だ。総長がキーコードにあんたらを入れた理由が判るだろう。うちはプレイヤーズで一番自由が効くんだよ」
「そう。自由だぜー。こうやって遊んでいても気付かれねぇぐらいにはよぉー」
「マケメロン。お前は見過ごされているだけだ」
オサムは正直話を聞いていなかった。マケメロンのあや取り技術にただ感動している。彼女は見られているのが知れると調子に乗ろうとした。
「ところで、その」草食はおずおずと尋ねる。「マケメロンさんはどういう経歴を?」
「何もしてないねー」
「してない?」
「まぁ色々あったけど勝手に持ち上げられただけよん。正直、脱出とかどうでもいいんだけど」
彼女の発言に、場がぬるい空気に占領された。オサムやレモンは批判的に見た。草食は同じ感想を抱いてしまう。彼女としては、その通りなのだろう。
ヒトマルはマケメロンを強い目で咎める。彼女は全く動じない。胆力があるのか、ただ空気が読めないのか。ヒトマルは咳払いをした。
「さて、あんたらに渡すものがある。ぜひ使ってくれ」
彼は最初から置いてあったトランクから、何かを取り出す。アサルトライフル五つ。無線機五つ。それぞれ受け取って、しげしげと見つめる。ある程度のマガジンも貰う。BBとオサムは素直に喜んだ。
それ以外は困った顔をする。プロペインはすでにリピーターも機関銃もある。リピーターと交換するか程度の悩み。レモンにとっても無用の長物。彼女はスナイパー。特に必要とは思えなかった。そして草食は単に好みでない故に困る。リボルバー一丁で充分なのだ。
「いるか?」
ヒトマルの問いに三人は首を振る。レモンと草食は返した。プロペインはリピーターを取った。
「レモン。こいつを使ってみないか? 近距離戦専用としてこいつを使うんだ。アサルトライフルよりは性に合うんじゃないか? お古でいいなら、だが」
少し悩み、「そうですね」と言って銃と弾を貰い受けた。飯テロの武装が更新される。BB、オサムは今までの装備にアサルトライフルを追加。全身の重みが増した。プロペインはライフルと機関銃。レモンはリピーターとスナイパーライフル。草食のみ変わらず。
車が停まった。どうやら目的地に着いたようだ。七人は車から降りた。
降車して目に写るのは、キーコード隊員の規律の取れた速い動き。すぐに四方へ警戒を巡らし、一種の防御陣地を構築。軍服の集団とそれ以外がいるが、特に軍服の兵士達の練度の高さにプロペインは舌を巻く。
小高い丘。そこに木造の基地が建てられていた。あれが目標らしい。どこか中世を思わせる。
「作戦は何にするかね」
プロペインの一言はレモンを煽るのに足りた。彼女は作戦で功績を立てるべきと考えていたのだ。だが考えてみると、下手に策を練るより力押しで潰したほうが見かけはいい。
「行ってらマッスル~」
受けを狙っていないマケメロンの一言。五人は敵地へ向かった。
BBとオサムはアサルトライフルを使おうとさて、レモンに止められた。今回は今までどおりでいいと。そして正面から突っ込むとも。ならBBは突っ込ませてオサムは援護に回るべきだとなる。オサムはライフルを使うことに。
「おい、見ろよ。変な奴らがノソノソ来たぜ」
基地のギャングが言った言葉は、何ら間違っていなかった。一人カウボーイがいるのだから確かに変。飯テロは気にせず歩いて進む。
見張りがBBへ発砲。容易く弾丸を斬る。そして他の四人による一斉攻撃が始まる。高台の見張りは全てキル。内部へ押し入る。
槍だの斧だのを持った輩が来る。BBは走るついでにキルしていく。それを援護するは飯テロ四人。いくらかBBを無視して彼らへ来る。オサムはライフルを捨て抜刀。カウンターで傷つけていく。よろめいた敵を草食は逃さず、ヘッドショット。オサムは棘のついた盾となり、仲間達に近付けさせない。
その間にBBはどんどん進む。暴れ狂う。敵はほぼ何もできない。突こうとすれば槍を地面叩きつけられ首を斬られる。斬ろうとしてもその瞬間懐へ侵入、斬首。銃を撃っても刀で弾丸を斬られる。
手榴弾をオサムは投げる。爆発で敵は木っ端微塵。レモンは高台に逃げる者を狙撃した。
ベッドルームに来た。フラッシュバンを内部へ。閃光の最中手榴弾。爆発。中に入り、キルしていきベッドを破壊する。
あとは、ライターで基地の木材を燃やしていく。大火事。はっきり言って、敵は弱かった。まんぷくテロリストでなくとも簡単だろう。
戻った。双眼鏡を目から離すヒトマルがいた。
「もう終わったのか?」
「弱かったんですよ」プロペインが肩をすくめる。「俺達でなくてもよかったのでは?」
「だが、これ以上試しても意味なかろうよ。これからは、キーコードとして、お互い頑張ろうや」
いい加減夕焼けも眠そうだ。みな要塞へ戻る。
マケメロンくん今書いてるところと性格違う……(連載の常道)




