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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の2 ファームシティ編
27/137

第27話 アリの巣、第二の穴


爆発によって進軍は停止していた。先行車のいくつかが被害を受けた。だが全体から見れば軽微と言っていい。


しかし問題はそこではない。間違いなくオールドスランガーズであろうあの車、あれの運転手がリスポーンしたら。報告をし、この一大奇襲を知られたら。崖っぷちからのスタートだ。このまま歩めば落ちる。


各車はスピードを上げた。急がねばならない。何より、まず一回前哨戦があるのだ。そこから本陣。短期決戦とはいうが、一部分は長い。


速度を上げた甲斐あり。オールドスランガーズへの侵攻ルートに一つある基地。それを見つけた。


レモンや他のスナイパーが前に出てスコープを覗く。偵察だ。


見たところ、砂の山だ。中を掘りできた基地らしい。所々に穴があるのは当然通路か、撃ち下ろすためのものだろう。単純だ。だから難い。


チェリーとプロペインがスナイパー部隊の下に来る。その中でもレモンの下へ。三人で作戦会議を始めた。


「どうだレモン。あのアリの巣に弱点はあるか」


「不明です、プロペインさん。皆穴の中にこもっています。外を歩いている兵士は少なめ。総数は一切解りません」


「そうか」


うーんと唸って腕を組む。前回の基地攻略と違い、基地そのものが隠れている。情報はないも同然。頭の中に兵糧攻めなる文が思い浮かんだ。すぐにゴミ箱へ。そんな時間はない。


「なら二手に別けるか。挟み込んで潰す……いや忘れてくれ」


「二手には別けられなくても、少数で内部に侵入、混乱している時に大軍で押し寄せれば」


「前回と同じ。そして事前の考え通りか。しかし、今回は全く情報もない。そして狭すぎる空間で戦うことになる。いくらハチとサムでも危険だ」


「狙撃でも無理ですね」


ため息が空気と入れ替わる。見ても聞いても攻め辛い。数で勝っている確証があるなら攻めるのだが。その調査さえ時間がない。


「なら、もうやるしかないな」


「どうやってですか?」


「ハチかサムを背後から潜入させ、こちらは攻撃。意識がこっちに向いている間にハチとかが内部を掃除。混乱の中を侵攻。その勢いで本陣だ」


「それ以外に策はなさそうですね。チェリーさんは?」


「ボクも賛成だよ」チェリーげやっと会話に混じった。


「よし、ハチ達に伝えてくる」


「ちょっと待って」チェリーがプロペインの肩に手をかける。


「ハチくんとサムさんの装備は? 不足分はこちらで出すよ」


「助かる。伝えておこう」


プロペインは走る。車列の真ん中に移動したまんぷくテロリストへ。彼らは先ほどの爆発の話をしていた。プロペインが着く。


「皆、作戦が決まった」


「出撃ですか」BBが立つ。


「そうだ。今回は、ハチかサム、または二人で裏から攻めて、こちらも攻める。二人は混乱を作ればいい」


BBは深く考え込んだ。


プロペインの作戦の中に、オサムの投擲技術が含まれていない。彼女は自立稼働するグレネードランチャーだ。活躍させない理由がない。


「一ついいですか」


「どうした」


「サムは手榴弾を使わせると最強です。あの穴の中に投げ込むことも造作ない。なら、裏から攻めさせるより、正面から穴の中へポイポイ投げたほうが適正ではないでしょうか」


「いや最強って……」オサムは素直に喜ばない。


「そうか。サム、できるか?」


「まぁ、あの大きさの穴なら、フツーにできますよ、プロペインさん」


「よし決まりだ。サムは正面に回ってもらう。となると裏はどうする」


「オレ一人で行きますよ」BBは力んで言う。


「本気か? 相手の総数も解らないんだぞ」


「かくれんぼは得意です。やってみせます」


プロペインは普段のBBを見ている。だからできると感じられる。そんなプロペインは、BBへの依存がこのチームを支えているのではないかと不安になる。


そして前提として、BBがやられたらこの作戦は失敗する。ファームシティも終わる。その責任を、彼の肩に乗せられるのだろうか。このうら若き少年に。


「大丈夫です」


そのハッキリした声が男の耳を打つ。


BBは知っていて、覚悟していた。


「よし、ハチ、頼んだぞ」


「わたしも頑張るよ」「まぁミスってもどうにかなるなる」オサム、草食の声援を受ける。


「じゃあ、あの山の、こちらから見て裏側に行けばいいんですね」


「ああ。行ってこい」


背中をバシッと叩き送る。BBは一心不乱に駆け出して、裏側へ。


BBの背中の向こうには、まんぷくテロリストが立っていた。戦いはすでに始まっている。


BBはバレても構わんと足を動かす。横目に見る基地はまだ動きがない。と思ったら、自陣のほうで銃声。始まった。


穴から銃が突き出される。発砲。ファームシティ側は車を盾にして攻撃。一台だけ突出。まんぷくテロリストだ。キキッとスライド。メンバーが車から降りる。プロペイン、草食、オサム。オサム以外は射撃する。草食は相手が見えないので苦戦している。


オサムはラストルネッサンスから貰った、大量の手榴弾に手をつけた。一つ手にし、もっと基地を覗きこむ。どれだけの距離で、どのぐらいの力を入れれば、などを偶像の形で織り込んでいく。


ピンを抜きレバーを弾き飛ばす。投げる。万年野球選手のような芸術的フォーム。手榴弾は、基地の上部に空いた穴へ入る。


ワーワー叫ぶ声。それも穴から吹き出た土煙によって消えた。オサムは無感動に次の手榴弾を手にした。


BBは驚き立ち止まっていた。裏に回ることには成功。そこには巨大な扉があった。おそらく何らかの入り口だったのだろう。もしくはそうなのだろう。


山の向こうから激戦の音がする。それを更にうるさくしてやろう。BBは刀を抜き、誰も見張ってない穴の中へ入って行った。


その中は意外にも明るい。とはいえ闇夜のホタル程度だが。足音を抑える。背を低く。銃声に紛れて移動する。


マズルフラッシュが上から見えた。はしごを登り、敵の背を奪う。


ダッと地を蹴る。銃声でこちらに気付いてない。しめた。中央に立つ奴をひと突き。抜きざまに左の者を袈裟斬り。よく斬れた。右の者は銃剣で突いてくる。弾いて首を一閃。


別の穴で爆発。はしごを飛び降りた。ベッドルームを探す。探すついでに道で会った敵を次々キル。暗闇。戦闘。これらがBBを守護した。


一つの部屋に入る。何らかの準備室。一瞥すると、銃器などが揃っている。奥に扉が見える。


その扉を開け放ったのは、先にキルした三人だった。おそらくこの先にベッドがある。その確信を殺意に変え三人に躍りかかる。今度は相手も準備できていた。


BBはジャンプして詰め寄る。上段からの振り下ろし。剣で防がれた。そして弾いた。その反動で上へ飛び天井に足をつける。蹴って再度攻撃。今度は突き。横に流される。流された勢いを使い回し蹴り。敵を壁へ叩きつける。


二人が同時に着地狩り。天井を蹴ったのと同じ要領で地を蹴り二人の懐へ。そこへ横薙ぎ一閃。腹をかっさばく。キル。しばらくの時間は稼げる。


「あぁん? 見せかけで超ビビってるな?」


BBに蹴り飛ばされた男が不敵に笑う。


判りやすい突きを男は繰り出す。罠だ。刀で受けると不味い。論理的本能的直感。体を捻り、元に戻す勢いで、左腕で槍をパリィした。


そのがら空きのボディに突きを返す。しかしそれを拳銃で防がれる。流され、銃口を突き付けられる。


撃たれる前に頭突き。男は体勢をすぐに戻そうとして、そこへ刀の投擲。くるくる回るそれは確実に敵を斬った。


「あぁんひどぅい」


そう言って敵は倒れた。刀を拾い間断なくベッドルームへ突っ込む。


チャキッと銃が持ち上がる音。待ち伏せされていた。しかも、この殺気。


BBは焦って横に身を投げた。三点バーストで放たれた弾丸。空を切る。機関銃か? しかし彼の記憶がアサルトライフルを持ち上げる。


息を吐いて、吸って、吐く。迷う暇はない。被弾覚悟で突破する。


転がり起きて室内へ。フルオートで弾が来る。何発も斬った。間に合わず被弾。だがすでにアサルトライフル持ちの眼前にいる。


頭を突きライフルを奪う。瞬時にマガジンを変え引き金を引き絞る。部屋中に弾をばらまく。敵は全員伏せて一難逃れる。次の一難が来る。


伏せから起きようとする敵を刺してキルしていく。そしてリスポーン。当然だ、ベッドルームなのだから。凄惨なぐらいリスキルしていく。


その罪が祟ったか。室内に手榴弾が投げ込まれる。ベッドを盾に防ぐ。が、続いての火炎瓶。阿鼻叫喚の地獄。ベッドは燃え退路はない。ここもダメージ覚悟で強引に乗り切る。


ベッドルームから脱出。ついでに三人キル。HPは三分の一を切った。まだやれる。


辻斬りしていきつつ、情報を掴もうとする。まだベッドルームがあるハズだ。人が減っていないのだ。ベッドは破壊したのに。


BBは執念深く探し回った。道中戦闘は何度も起きた。だがベッドルームは見つからない。第二のベッドルームが。


ここから、方針を変える。キルしまくって、どこから敵が湧いているのか確認することにした。暗闇を駆け回り、キルを重ねる。オサムの手榴弾もよく爆発している。そして一方向に偏った人の列を、見つけた。


百人斬りが如く斬り進む。ここだけで先までのキル数を上回った。


そして見つける。下に続くはしごを。地下があったのだ。敵の全てをキルしたが、まだ先がある。もしTNTがあれば、生き埋めにできただろう。ないが。ないなら斬り込むだけだ。HPは、すでにかすり傷でデスする。回復剤はない。


はしごを下りる。広場があった。そこにいる者は全員、網にかかる哀れな魚を見る目をしていた。土嚢が積まれ、防壁が築かれていることを、BBは知らない。


眩しい灯りがつく。電気だ。目を潰された。すかさず左へ飛んだ。目が回復する。生きていた。さらに逃げた先が丁度土嚢だった。光が広場を照らしている。近付く足音。手榴弾が投げられた。


チャンス。BBは手榴弾をキャッチし、土嚢を飛び出し、全力で走った。その手に持つものは。オールドスランガーズは驚愕で瞬きを忘れた。


運命の投擲。爆発まであと一瞬。BBは後ろへ倒れるように跳ぶ。拳銃を抜き乱射。手榴弾が爆発した。この間三秒。


「ああ! スゴい漢隊長がやられた!」


BBは着地の衝撃を転がって流す。すぐにリロード。天井についている電球を撃ち落とす。八発中五発命中。随分暗くなった。


隊長を失ったこと、いきなり光が消えたこと。それにたった一人で自分達を追い込んだ者がいること。それらが相乗して深い混乱を生んだ。だが狩り場に逃げ場なし。


BBは本能という泉を得たハンターになる。数多の斬撃により敵は次々と消えていく。ベッドをズタズタにしリスポーンを封じる。勝った!


ハズだった。


「オウノウ。オーケー。ネクストプログレム」


機械翻訳みたいな声をした女が一人。はしごから下りて来た。二対の刀。鳥の仮面。虹色の布を巻いた体。


HP、数値にして残り一。敵、オールドスランガーズ四天王の一人、パロット。

投稿遅れちまったぜ。

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