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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の2 ファームシティ編
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第22話 トウモロコシが欲しい


オールドスランガーズの基地を攻略したまんぷくテロリスト及びラストルネッサンス。何事にも余暇というものはある。彼らは勝利のため、思い思いに過ごしていた。


BBとオサムも例外ではない。彼らは基地を探検している。全てが木でできている基地。中々珍しい。二人は観光気分。もし戦場跡地を観るならどうするか。勝者の足を追うのがやはり楽しい。敗者はここにはいないのだし。その跡がたとえ己であったとしても、いや、己であるからこそ面白いのだ。


二人はまず、自分達の破った柵を見た。二人にとって一番キツかったのは正直ここ。オサムのナタで無理やり破壊した。だから彼女の得物はボロボロになった。


「まさか、本当に潜入できるとは思わなかったよ」


BBの呟きをオサムが笑う。「こういうのって、もっと厳しいイメージだしね」


「レモンが行けるって言ったから信じたけど、マジでサボりだらけとはね」


「案外、オールドスランガーズって弱い?」


「油断しないほうがいいけどね」そう言いつつ顔は険しくない。「あの剣士が言っていた、ねこって奴も気になる。奴らの総隊長らしいけど」


「いずれ戦うことになるのかな」


歩きながら会話。倉庫に着いた。大量の爆弾がある。今回の作戦、その要。これの利用と、これの確保。それが重要目標だった。


中に入る。自分がパクったTNTのあとを眺める。レモンの報告だと、ここで交代があったよう。だがなぜ、なくなったTNTに気付かなかったのか。


「ここの部隊が怠けていただけかな」


「そう思ってたほうが、ハチの言う通り油断しなくてすむね」


オサムは手榴弾を取れるだけ取った。その中で、違うものを見つけた。円筒状の物だ。


手に取ってみる。手榴弾の一種か。そう見える。手榴弾より少々大きい。中に大量の爆薬が詰まっているのだろうか? いかんせんミリタリー知識なんて、カラシニコフ小銃とアメリカの小銃しかしらない程度の二人。戦車も見分けがつかない。


オサムはBBのもとへ行く。見つけたものを二人で共有しだした。


「これ何だと思う? わたしにはサッパリなんだけど」


「うーん。いや判らない。ピン抜いて投げてみる?」


「えぇやだよ。爆発したら責任取れないし」


「まぁこの中ではね。プロペインさんなら知っているんじゃない?」


「いいね。聞いてみよう」


彼らは自らの足取りを追うのをやめる。休憩中のプロペインの所へ行くことに。


二人の足取り。あとは事前に知っていた居住区画へ突入しただけなのだ。円筒を見つけずともこのツアーは終わりだった。結果論かもしれないが、この作戦は敵が無能だから成功した。次はこうもいかない。


プロペインは筋トレ中だった。これでは休んでいるのか判らない。顔は、見事な生を実感しているようだ。実に晴れやか。少し気後れ。


「プロペインさん、ちょっといいですか?」


「お、BBか。オサムも。どうした」


「この手榴弾みたいなの何か知ってますか?」


「どれどれ」立ち上がり、ブツを受け取る。「多分フラッシュバンかスモークだな。どっかに書いてないかな」


「何ですかそれ」BBはピンと来ない。


「フラッシュが目潰し、スモークが煙だな。こいつには、フラッシュって書いてあるな。おそらくダメージはないが、使えるかもな」


プロペインがBBにフラッシュバンを返す。BBやオサムは、聞いただけでその有用性を理解できた。目は命だ。これを潰されたらたまらない。


しかし、自身の目で体験しなければ。いざという時の信用が薄いのだ。BBは手でくるくると回しつつ、効果の想像をしていた。


「プロペインさん」BBが手の物を見ながら聞く。「試しても?」


「いいぞ。ただ、俺は遠くに行かせてもらうぞ。キーンってなるらしいからな」


そう言い彼は後方へ離れた。新兵器のテストは、小さなものでもワクワクするもの。オサムは子供らしい笑顔を浮かべた。


BBはそんなオサムを可愛らしく思う。ピンを抜いた。レバーを外して、ポイと投げた。


オサム達は幼心にドキドキを抱いていた。それを、巨大な音と閃光で引き裂かれた。


BBは、今自分が耳を塞いでいるのか、目を瞑っているのか、すぐに判断できなかった。そのままの通りバンッと音がした。そこから真っ白な光景が広がって、それから戻らない。


驚きのあまり転んだ、ような気がした。背に砂と地面の感触を味わった。それが本当かは判らないが。耳がキーンという音に占領されている。


ようやく視界が回復しだすと、上体に重い衝撃。BBはあおむけになっていた。耳から音が離れる。腹の辺りで唸っている少女を聴覚で発見した。


全てが回復。惨状が見えてきた。BBの腹の上にうつ伏せのオサムが突っ伏していた。相変わらず唸る。BBは彼女の頭をポンポンと叩く。それに反応して、BBの手を頭に乗せたまま、頭を上げる。まだ現状を飲み込めていないようだ。イタズラとして優しく撫でた。


オサムとBBの目が合う。その間も撫で続けるBB。顔を赤らめ、しかし抵抗はしなかった。


「すごいもの手に入れたね。サムは大丈夫?」


彼女はただ、恥ずかしそうに「……うん」と答えるだけだった。BBはそれが可愛くて、ちょっとの嗜虐心が湧いた。


「お二人さん。まんぷくテロリスト、集合だ」


先ほどの様子を見ていたプロペインがそれとなく言う。オサムはそれでさらに恥じ入る。BBは気にしない。撫でた手を上げフラフラさせる。彼なりの意思表示。


目でオサムに起きるように促す。彼女は目を見て、ボソッと呟く。


「皆が見てる前で、恥ずかしいよ」


「じゃあ次は二人きりの時にしようか」


「……え?」


驚くオサムの手を取り起こす。そのまま手を引いてメンバーとの合流を急ぐ。BBは、手を引く少女の顔を見れて大層満足した。


集合場所。そこには、ラストルネッサンス達がいて、当然チェリーもいた。BBは手を離した。オサムは名残惜しそうに手を見る。皆の前ではやめてくれる。それはちょっと嬉しくて、なのに切なかった。


「よし。皆揃ったな」


どうやらプロペインが司会進行するらしい。そしてこれは作戦会議。もうプロペインがリーダーを勤めればいいのに。そう思う。だが敵役として草食がいれば、相手は油断する。BBは好き勝手に勘定した。


「それじゃあ、今後のことを決める。レモン、案があるんだよな?」


「案というか、予想です。おそらくオールドスランガーズの次は、こちらへの反撃。それも二面からの。一つはこの基地の奪還。しかしこれはブラフでしょう。本当の目的はファームシティ。本隊はそこに回されるものと予想されます」


「なるほど」チェリーは納得しかけた。それをレモンが手で制す。


「これは全て仮説です。自分が向こうならこうすると考えただけですので。反論等ありますか」


「いや、今の所これ以外の定石はない」プロペインが補足した。「何でも言ってくれ。この作戦の成否で今後が決まるかもしれないからな」


「奴らが二分するということは、こちらも二分するしかないよね」


チェリーの発言にこの場の全員が頷いた。まだ防御の地盤は固めていない。重厚な攻撃は厚い状態から放たれる。


そして、こちらが攻めたのだ。次は守る。ターン制だ。これが定石。


「二分するのはいい」プロペインは腕を組む。「しかし、主戦場はファームシティだ。戦力的にファームに比重を置きたい」


「となると、ボクらでこの基地を守ることになるのか」


「そうだ。だがここを落とされたら振り出しだ。そこで、こちらからは草食を出そうと思う。いけるか、草食」


「もっちのろん!」ガッツポーズをし、やる気を見せる草食。今はこの軽々しさが頼りだ。


「そして、残りのまんぷくテロリストはファームシティを防衛する。詳しい防衛作戦はあちらに行って考える。攻めることは考えなくていい。ただここを守ってくれれば勲章もの。何か質問は?」


プロペインが参加者に目を配る。誰も質問の意思がある者はいない。あるのは闘志だ。


「ボクからはないよ」


「俺達もだ。よし、移動する。健闘を祈る」


「そっちも。草食さん、お願いします」


「この基地であたしの銃に使える弾を集めてちょーだい。セミオートガトリング見せてあげるよ」


その言葉にまんぷくテロリストは安心し、手を振って別れた。ここからは歩きだ。


キングベヒんもスという名の基地からファームシティまで。そこそこの距離。今にして思えば、この距離までの接近を許した時点で、ファームシティの政治的敗北ではないか。プロペインはふとそんなことを考えた。


道中。レモンは静けさにドッキリ。そういえば草食がいない。彼女が大抵下らないことを喋っているから、沈黙が訪れるのは中々ないのだ。


「静かですね。草食さんがいないと」


「姉さんはいつも騒がしいからね」


BBの姉さん呼び。それにいつも不思議なマイナス感情を抱くオサムだが、今日は少し違った。自分はBBに触れられた。肉体的に。故に自分にはあれとは差がある。勝手な勝利を得ていた。


「騒がしいって」レモンは吹き出した。「BBさんは静かなのが好きなんですか?」


「姉さんは嫌いじゃないけどね。まぁあの明るさは見習いたいね」問いには答えなかった。


「草食を見習うなら、俺の筋肉も見習ってくれよ」


「プロペインさんぐらいまでには遠いですよ」


BBがそう言う。各々平和な会話をしていた。ファームシティに着く。木の柵で囲われ、その中にも柵があり、防御を固めていた。眼前にあるのは急造の門。簡単には破られそうにない。


すでに名の知られていたまんぷくテロリスト。彼らは顔パスで通された。さてまずはここの司令官と話を通すべきだ。通りすがりの人に誰がリーダーか尋ねる。しかしどうもそういう人はいないらしい。皆話し合いで決めたそうだ。


だがそれは問題とならない。それほど防衛隊は完成されていた。ケチの付け所は防御柵の素材が木であることぐらい。この分だと、自分達が何をするか、悩む。


「どうするの?」


オサムの何気ない問いかけ。レモンもプロペインも困った。車はある。けれど外で遊撃して暴れても、味方は混乱するだろう。


「んー。とりあえず私は高い所から撃ちますね」


「そうだな。残りは、まぁ、柵内での遊撃にするか。もし突入を許してしまったら、BBとオサムの出番だ」


「了解」BBは答えた。


レモンと別れ、三人で武器を貰いに行く。銃はたんまりあるそうだ。弾の備蓄も、商売が成り立つほどあった。


守りを観察していると、所々フレアガンを持っているプレイヤーがいる。それで状況を遠くに伝えるらしい。無線のない今、いい連絡手段といえる。


三人はいつでもどこでも行けるように中央に陣取った。レモンは、初めてのクラフトに苦戦高台を作っていた。プロペインはそれを見上げつつ、BBとオサムに言う。


「よしよし。正直俺らはいらなかったかもな。じゃ、これから俺達のことを伝達しにいく。待っててな」


「判りました。いってらっしゃい」


「いってきますよっと」


BBがプロペインを軽く見送る。他のプレイヤーは街の中央、この通りにいない。BBとオサムの二人だけだ。


BBはそっとオサムに近寄る。戦いのことしか頭になかったオサム。いきなりのことに反応できなかった。


「二人きりになったね」


その顔は、人を惑わすフェイス。美少年特有の艶やかさ。BBは、オサムの髪をそっと撫でた。やっと理解を追えたオサムは、また真っ赤になる。されるがまま。


「サムってさ」髪の先を傷付けないようつまむ。「かわいいよね」


「へ?」


彼は何も答えず撫でる。


「……ハチは、わたしのどこがかわいいと思うの。レモンのほうがかわいげがあるでしょ」


「そういうところだよ」「皮肉?」「どう思う? 好きなように受け取っていいよ」


ズルい。彼女はもちろん好意的に受け取りたかった。でも、彼女の知らない青春の魔物が、心中にある素直さを、打ち消そうとする。でも今だけは、それに抗った。

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