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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の2 ファームシティ編
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第16話 ファームシティ


あれから二日経った。足を止める理由がなかったためだ。まんぷくテロリストは移動を続ける。もちろん敵の襲撃もあった。だが彼らにとってはアリを踏み潰すより容易い戦いだった。


窓は全開。砂混じりの心地よい風が車内を巡る。この二日、戦闘と、草食が最近ハマりだしたロシアンルーレット以外、平穏無事であった。ちなみにロシアンルーレットは全弾一発でヘッドショットが決まった。


「ねぇ、BB」


オサムが雑談を持ちかける。別にハチと呼んでもいいのに。BBはそう考えるが、オサムはどうもそうじゃない。二人きり以外だと常にBBと呼ぶ。BBもそれに倣い皆の前ではサムと呼ばない。


「何?」


「前から襲撃されたりするけど、何でその人達はあーいうことするのかな」


「そりゃ物資を奪いたいからじゃない」


「いや、そういうことじゃなくて。わたし達みたいなことしないなって話」


BBはすぐ草食の様子を見る。前の席には、爆睡する草食。オサムに視線を戻す。


レモンが興味ありげに流し目で見てくる。それもBBは確認。この話をしても問題なさそうだ。草食はなぜか脱出に関わる話をしたがらない。しない。BBは何かあるのだろうと察し、草食の前では脱出関連の話を避けていた。


「確かにね。絶望感ないよね」BBは言う。絶望感ないのはBBもそうだが。


「だよね。あのメールから結構経ったけど、それ以上の動きはないし。なんかモヤッとする」


「皆が皆、脱出を考えているワケではない、ということなのかもね。それにしても変だけど」とは言ったが、変ではない。現実とゲームどっちに居たいかと聞かれれば答えは決まっている。


「全くだよ。BBはさ、現実に戻ったら何したい?」


「何したい、か。オサムは?」


この質問は、してほしくなかった。彼にとって現実は嫌なものだ。


「わたしは、うーん、マンガの続きをよみたい」


「マンガかぁ。どんなマンガが好き?」


「マンガ? やっぱりスポーツマンガとか、アクションとかのバトルものかな。と言ってもマンガなら何でも読んじゃうけど」


「へー。オレは小説ばっかだから新鮮だな」


「BBって小説好きなんだ。何か好きな小説ってある?」


「古典SFとか好きだな。SFならよく読むよ」


「そんな難しそうなのよく読めるね」


二人が話しているのをレモンは楽しげに眺める。ガタンと車が跳ねた。ふと気になって外を見る。今は崖際を走っているようだ。眼下には、当たり前だが崖より下の大地が見える。


「確かに難しいよ。でも、マンガにも難しいのはあるでしょ。どんなのがあるのかな」


「えっと、古典なら医療ものとか、いやあれはどちらかというとホラーか」


「古いってどのくらい?」


「一九〇〇年代の奴」


「オサムも古典好きじゃん。仲間だよ」


「そ、そうかな」


オサムが照れるのを微笑んで見守るレモン。再度外へ目を向ける。何か、植物が見えた。遠い。それは均一に並べられ、どこまでも続いていくように見えた。


気になったので、ライフルを外に出しスコープを覗く。


「どしたのレモン」


オサムが異変に気付き会話を中断。レモンが次第に激しく震えることから、只事ではないと知る。


「プロペインさん! 停めてください!」


タイヤと地面の擦れる音。


「どうした?」


レモンは車から飛び降りる。スコープの倍率を上げる。目に写り広がるのは、トウモロコシの農場だった。さらに奥を見る。あばら家、いや、ウッドハウスが林立していた。


「街です……」


他の者もその声で外に出る。点となっていてよく見えない。だが植物があり人工物があるのは間違いない。敵以外のプレイヤーが見つかる可能性が高い。


「皆どうしたのぉ? さっきからドタバタしているけど」


車から草食が這い出る。眠気に追われ、今にも寝そうだ。


「街らしきものが見えます。それと農場みたいのも」


「えっ?」


その言葉でハッキリ目が覚めた。転びながら崖際まで来て、一望。確かだ。何かある。


「出発しよう! プロペイン?」


「もちろんだ。さぁ行くぞ! 乗り込めっ」


車に飛び込んで急発進。坂を見付け崖を降りていく。農場があるということ。それは食糧を自給自足できているということ。経済の規模も、街の大きさも、今までよりも広く大きいに違いない。


下り終わった。幾多の人々が足を踏みしめてできた道を辿る。それが示す先はあの街だ。太陽でさえ、祝福してくれているかのような明るい昼。


農場に差し掛かるとスピードを緩める。トウモロコシが青々と輝いている。それに従事する人。いや、人じゃない。動きが単調すぎる。


よく目を凝らした。彼らの頭の上にはbotと表示されている。このゲームにNPCはいない。だがbotというものはいるらしい。まんぷくテロリストは初めて知った。


ある程度進むと、兵士らしい人が二人。


「止まれ」


どうやら検問のようだ。また車を要求されたらどうしようかとヒヤヒヤする。


「お前達。このファームシティに何のようだ」


「街を探して旅をしていたんです」草食が答える。


「旅人か。入っていいぞ。ただし、暴れてくれるなよ。暴れたら財産はいただくぞ」


「え、通っていいんですか?」


「ハァ。道中何をされたかは知らないが、この街はそんなことをしない。さぁどうぞ」


「ありがとうございます!」


車を発進させようとアクセルを踏みかけて、


「ちょっと待ってください」


もう一人の兵士が止める。彼女は中にいるBB達を注意深く観察。そしてどんどんと、氷室が燃えたかのような衝撃を広げていく。


「もしかして、まんぷくテロリスト?」


「そうですけど」


「待った待った。こいつらがあの?」もう一人の方、男の兵士が質問する。二人は五人を置いて話し合う。


「この装備、間違いなくまんぷくテロリストです」


「はぁそうか。じゃあラスルネの奴らに見せればいいな。真偽が判る」


「皆さん、自分達に着いてきてください」


状況が飲み込めない五人。早歩きで進む二人にスピードを合わせる。


本格的に街へ。そこは、崖から見た広がる街だった。全てげ見事なウッドハウス。掛けられている看板がどこか西部劇を演出。人の通りもいい。最初に目に飛んできたのは他に市場だった。弾薬やトウモロコシ、水、などなど、全て商人に任せられている。配給ではない。


それでも車は珍しいのかこちらを見る人は絶えず。まんぷくテロリストは一体どこへ連れていかれるのか。そして件のラスルネのは何奴か。興味が尽きない。


BBは肌がピリピリしていく。ウッドハウス。嫌な予感がする。ナタを逆手に握る。ホルスターのショットガンと前に拾った拳銃を指先で確認。その様子を感じ取ったオサムも、しかしその意図は知らない。


そうして、一軒の家に到着した。看板には、ラストルネッサンスとある。ローマ字で。


「ラストルネッサンス。ここの有力者ですか」


「あぁ。家を建て替えたのはこの人らだ。有力者というか、実質ドンだけどな」草食の問いを気軽に返す。


車から降りて家に行く。プロペインは車が盗られないか警戒した。兵士の二人が、「安心してください。自分らが守るんで」と言う。ここは二人を信じた。


草食が洒落た窓のついたドアをノック。


「すみませーん。ここまで通されたまんぷくテロリストという者なんですがぁ」


ドタドタと走る音が聞こえたと思ったら、ドアが押し開けられた。息を切らした女性が満面な、しかしどこかダウナーな笑みで迎えた。


「貴方達がまんぷくテロリスト! 本当に? すみませんウチは初めてなもんで。リーダーに見せないと。さ、速く入って」


ほとんど気迫で引っ張られ家に入る。広々としている。外観も豪邸のそれだった。内部も相応の調度品がある。


久々に文明的生活を見た。ソファまである。破れているが。現実だったらいいお値段で売られていそうな家。初めて上京した田舎者のような考えを巡らせる。


奥の階段から下ってくる足音。自然、目が行く。


「久しぶり。まんぷくテロリストの皆」


その声でBBは一気に殺気立つ。他の三人、プロペイン以外は懐かしさに表情を弾ませる。


「チェリーさん! お久しぶりです」


レモンが返事。変わらない美青年。サンドロチェリーが階下に来た。シャツとズボンも変わらず。BBは目を見開き感情まで冷たくなる。今の彼を刺激するのは危険だ。傍のオサムは彼の怒りに内心恐怖する。


チェリーはBBの目を見て、顔全体で困惑を表した。彼に銃を向けたのは確かに自分なのだから、恨まれても仕方ない。後で謝ろうと決める。とりあえずと話を進める。


「最近の活躍耳にしたよ。あの拳銃警察隊を全滅させたってね。たった五人で。普通、やろうとは思わない」


「まぁ、切羽詰まってたからね」草食は自慢気だ。


「流石は貴方達だ。さ、お好きに席に座って。初対面の方もいることだし」


プロペインは丁度話についてこれなかったので提案には助かった。草食は図々しくソファに座ふ。BBはあえてチェリーに近い席へ。それ以外は各々好きな位置へ。


「改めて自己紹介を。ボクはサンドロチェリー。ラストルネッサンスのリーダーだ。そこの筋肉が素晴らしい人は?」


「俺はプロペイン。まんぷくテロリストの運転手だ。まだ見習いみたいなもんだがな」


「そうでしたっけ」オサムは話の腰を折ってしまう。


「え、違うのか」「あたしも本入隊したかと」「私もそう思ってました」


他四人とは違いBBはチェリーを睨んでいた。こんな緩やかな空気と似合わない。一生懸命彼から目を離し、チェリーは続ける。


「プロペインさんだね。憶えた。さて、早速だけど頼みがあって」


「何? 縁があるし、報酬は安くていいよ」


「いや、姉さん」草食の提案をBBが遮る。「ラストルネッサンスとは初めての取引。だからむしろ色をつけてもらうべきだよ」


BBは臆せず言う。この姉さん呼びには慣れたメンバーも、今のBBのことは解せない。


「そうだね。BBくんの言う通りだ。それに、元から報酬は用意していたよ」


「どんなの?」草食が聞く。


「この街で貴方達の家を建てようと思う」


BB以外から感嘆の声がこぼれる。


「それだけ言うなら、余程の大事件なんだねぇ」


「そう。今回もまた、ギャング団なんだ」


「どんな奴ら?」


「実は、我々も奴ら相手に取引、いや貢ぎ物をしていてね。奴らはとても数が多い。それこそ拳銃警察隊なんかよりもずっと」


「それは……大変だね」


「うん。このままだと奴らは冗長して、この街を飲み込みかねない。あの街の二の舞はしたくない」


顔には覚悟が煌めいている。


「だから、まんぷくテロリストの皆さんに頼みたい。オールドスランガーズとの戦いを」


新たなる敵が、現れた。

ここからパロネタが多くなります。主にオールドスランガーズがの奴らが特に

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