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楽園のポストアポカリプス  作者: 平之和移
第1部の1 集合編
12/137

第12話 敵は拳銃


朝。BBとオサムが鍛練に明け暮れていた。


二人はすでにリスポーン地点を確保している。街から移動していない。つまり何度デスしてもいいということ。彼らは単純な、物騒に言えば殺し合いによって強くはなろうとしていた。


しかし見た目はいじめの形をしていた。BBが一方的にオサムを狩る図。オサムが「手加減しないで」とは言った。それにしても容赦しなさすぎである。


オサムがベッドからリスポーン。ロストしたアイテム、ナタとナイフを手に取りBBに挑む。


ナイフで突くと見せかけてBBの右へ回り斬る。しゃがんでかわされ足を薙がれた。姿勢を崩してしまったところを首一閃。BBはほとんど動いてなかった。そのBBも気分はよくない。かつての義親を連想させる行いだ。だからって戦わないのも失礼だ。


オサムとしては、純粋に手も足もでない悔しさと、形容できぬ感情でむしゃくしゃしている。彼が草食のことを「姉さん」と呼んだのが心に渦が巻いて苦しい。彼女は感情の整理ができていなかった。


またオサムが復活。健気にもアイテムを拾う。


「オサム。まずは落ち着いて」


もう我慢できんと、BBは痛切な声で訴えた。


「黙ってやる!」


そう言ってオサムは動じない。ナイフの突きと同時にまた上段からの振り下ろし。ナイフは手の甲で弾かれナタをナタで受ける。鍔迫り合いとなった。


「フェイントに拘りすぎだよ。いつもそればかりだと相手に読まれる。突きの精度はいいから直したほうがいい」


BBの言葉に何を思ったか。オサムは彼の足を踏み意識を向けさせた。瞬間また突く。褒められた技で攻撃したのだ。それを片手で捕まれ引っ張られ首を薙がれる。デスする前に一言残しておく。


「今のは良かったよ」


そしてポリゴンとなって消滅。BBはナタを納め、リスポーンを待つ。


リスポーンしたオサム。応援するでもなく、子供の喧嘩を見る気分のその他三人。オサムは武器をしまったBBを見た。先の策を褒められたが、それでも負けた。感情がたくさん現れた。


「だぁー!」


叫んで地面に寝っ転がる。空は感情なく彼女を見下ろす。いかにも。彼女は恨めしげである。


「勝てないよぉ」


あれだけ必死になった姿から、この脱力したギャップ。自然と皆を笑顔にさせた。


彼女の抱く悔しさはそれほどじめじめしていない。高難易度のアクションゲームで勝てないボスにぶちあたったかのような感覚。一歩一歩勝ちには近付いているハズ。なのに届かない。


「今回はこれぐらいにしようか」


「そうだね」心の整理ができたのだろう。「でもさぁ、弱点ぐらい教えてよ」


BBは力を抜いて近寄る。その目は後輩か、妹を見るかのような優しさ。「それじゃあ訓練にはならないでしょ」


「BBを攻略できないよ」BBの伸ばした手に捕まり起き上がる。


「この分だとBBさんは弾丸も斬れそうですね」レモンは冗談をもらす。


「斬れたら姉さんにも勝てそうだけどね」


「いやいや、それ以前に近付かれたらあたし終わるよ」


草食は笑い受け流す。彼女は、BBが自分のことを「姉さん」と呼ぶ声音に、一粒あるかどうかの憫笑を覚える。


オサムはその言葉にまた顔を歪ませかけた。しかしBBの手が肩に乗せられ、微笑んでくれたことで自然体となる。逆に、ちょっと顔を赤らめたぐらい。


「さて、これからどうする?」


プロペインの言葉にいち早く反応したのは、やはり草食だった。


「次の街へ行こう。車も手に入ったワケだしね」


「何でだ? まだこの街を探索しきれてない」


「あたし達の目的はこのゲームからの脱出! その為には情報が必要。他のところへ行って、色々な調べるほうがいいと思うな」どうせ冒険したいだけだろうが。


「ふむ。皆はどうだ?」


レモン、オサム両方頷く。BBは人と情報交換、交流したいなら前のモヒカン達のところへ行けばいいではないか。と考えたが、しかし異存はないので頷いた。


「よぉし! 皆賛成だね。次の街へ行こう。プロペイン、運転お願い」


「はいよ。ま、ここに拘らなくても物はまだあるしな」


プロペイン、草食が行動すると、それに従って子供達も動く。寝袋を片付け、ランタンの火を消し、車に入れる。いつか、この車が物でパンパンになる。そんな未来を草食は夢見る。


全員が車に乗った。軽快に走り出す。またアスファルトの上に乗り、街を通過して荒野に出る。この世界にはこの光景しかないのか。見飽きた景色に思いを馳せる。


しばらくして、プロペインが「あっ」と異変に気付く。


「どうしました?」レモンが心配する。


「ガソリンが切れそうだ」


一斉にプロペインを見る。これがなければどう移動しろというのか。現代人らしい感情を視線でぶつける。それでどうにかなるワケないが。


「予備は?」「ない」「どうしよ」


草食も笑って誤魔化しているがかなり焦っている。それでも車は進む。目線があちらこちらに向けられている。


「止まれ!」


その声が自分達に向けられているとは最初思えなかった。二度目の声でやっと気付く。理解し車を止めた。


車の前には、土嚢で作られた検問らしきものがある。そこに五人の人。プレイヤーだ。防弾ベストを着て、その下に青い服を着ていた。全員そうだ。察しのいい者はこれだけで彼らの脅威が解る。


「お前達は何者だ」


いつ銃を抜くかの張りつめた空気。それでも草食は怯まない。


「あたしらまんぷくテロリストって言うんです。今はガソリン求めてまして。どこにあるか知ってます? タダでとは言いませんので」


助手席から顔を出して訪ねる。それを聞いた検問革の女プレイヤーは表情を固くする。


「ガソリンがあるかどうかはともかく。ここから先は、我々、拳銃警察隊の領地です。入るなら代価をくれませんとね」


「あぁ、なるほどね」ケッ、役人面か。草食以外もそう思うが、ここは悪代官にペコペコする三下の気持ちでいこう。


「それだったら、何がいいです? 水も食べ物もありますよ」


「車で」


「は?」


「ガソリンが欲しいのでしょう?なら、押収させていただきます。我々には秩序があるのですから。国みたいなもんです。ですので、ようは税ですね。必要なんですよ。関税関税」


「ちょっと待って下さい。税ってことは、この車を完全に手放せってことですか?」


「一度こちらで預かるだけですよ。そこで異常があったら、この車はいただきますけどね。ごく普通の、国家的な検査です。それとも、不味いものでも持っているんですか?」


「何が異常になるんですか?」


「そんなの、普通に勉強してきたなら解るハズですが」


「信用できません」


「我々を信用できないというなら、ここはお通しできませんね。もちろん、どこかを縫って出ることも許されません。チーム名あり。まんぷくテロリスト。バンで中には大人二人子供三人。人相は憶えました。立ち去って下さい」


五人はすでに戦闘態勢に移行。草食は己の迂闊を呪ういつつ銃に手をかける。BBとオサムはいつでも飛び出せるようドアに手を置く。レモンはこんな長物車内では扱えないと悩む。


ただならぬ状況であると判断した相手側も武器を抜いた。話していた女は離れ、しかし銃は向けない。


「警告します。我々は少なくとも小国家単位の兵力を所持しています。反抗した場合どうなるかは理解しているハズです。もし反抗した場合、我々は組織だって排除します」


ここで退いてはガソリンを得られない。ない、とそう言えるなら、言っているハズだ。ガソリンはないと言ってない。ならある。


ガソリンがなければ貴重な移動手段を失う。そして何より、この世界では相手を、しかも敵意を向けてくる相手なんて簡単に信じてはいけない。腐ってもサバイバルゲームなのだ。やらなきゃやられ、全て失う。


プロペインが車を急発進させる。同時にBBとオサムが車から出る。瞬時に判断できぬ警察隊は発砲さえできず。車の威圧に負けた下がった。そこにBBとオサムの急襲。BBは流れるが如く首を裂き、オサムは事実上の不意討ちでキルした。


検問を破壊し車は止まる。全員素早く車から降りた。作戦会議だ。


「奴らはガソリンを持っているに違いない。だから車を欲しいんだ」プロペインが早口で言う。


「じゃあ奴らのアジトを探して叩こう」


その草食の意見にレモンが返す。


「いえ、目標はあくまでもガソリンです。まずガソリンを手にしてから反撃しましょう。その為にはまず残り少ないガソリンで車を動かし続けて、そう、ガソリンを探します」


「じゃあ、探しやすいところへ行こう」オサムが提案。


「そうしましょう。高所を探さないと」


プロペインは検問跡地を見た。


「領地なんだ国なんだと言ってもそこまで大きくはないだろう。せいぜい街一つ二つぐらいだろう。でなけりゃ、武器が拳銃だけなワケない」


「よし、じゃあまずは高所で物見、その後ガソリンを入手、ついでに追ってくるなんたら隊を潰そう」


草食が締めくくる。誰も異論はなかった。


「アレだ! 撃て!」


車の進行方向から見て右側の小高い丘から声。撃ってきた。「奴らだ」BBはライフルを持ってないことを惜しむ。


レモンが狙いをつける。プロペインが真っ先に撃ち返した。当たらない。ただビビらせはする。レモンが引き金を引く。一人が倒れる。コッキング。引く。倒れる。


危機を悟ったのか丘を降りて逃げられる。「車に乗れ!」プロペインの掛け声でサッと乗る。エンジンはつけっぱなしなのですぐ発進。丘めがけて走る。砂利道をどうともせず、丘の上に乗り上げた。逃げる者を、窓から身を乗り出した草食が次々撃ち抜く。


あったのはオアシスだ。油田でもない。だがそこが奴らの拠点、その一つ。続々とリスポーンしては、置いてある拳銃を持って反撃する。


パリンとフロントガラスが割れる。このまま集中放火されてはやられる。「オレが囮に!」BBが返事を待たずに降り愚直に突進する。仲間の制止は完全に無視した。車がやられるのは自分がやられるより不味い。多少の無茶はしよう。


全神経を集中。相手を数える暇はない。弾を避けるのもだ。その余計な動作が無駄になる。弾を斬るしかない。


目をカッと開ける。自分を狙う銃口の穴を見る。そして弾道をイメージする。計算する。あの銃は当たる、あの銃は外す、あの銃は……。


先の発砲の間隔を思い出せ。どのタイミングで、どのぐらいの時間をあけて撃っていた? パターンを掴め。


その間も走る。そのハズなのに時間が遅い。直感が告げた。斬れ!


鉄と鉄の弾ける音と共に、全て斬った。理解を放棄した敵がやけくそに撃つもその弾も斬る。敵の弾道が全て解る。最早敵はBBにのみ集中していた。


敵が目前。敵にとって、彼は修羅だ。

人間止めるの早くない?

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