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オークとスマッシュ

 大きなキノコのあった場所。それは、2階層の階段を挟んで、エリア(ドリュアルド)さんの居た場所の丁度反対側だった。

 大きな木々に隠れていたとはいえ、発見できなかったのが不思議なほどの存在感がある。


 と、アンネがドンドンとキノコに拳をぶつけた。


「ねえ、あなたがスマッシュかしら?お届け物があるんだけど」


 そう言うと、キノコがブルリと身じろぎして、アンネの方に体を傾けた。


「確かに儂がスマッシュじゃ。そなたらは……なるほど、塔の外の者か。よかろう。ならば、その手にある箱を開けてみると良い」


 そう言うと、スマッシュは体から振る振ると胞子を舞い散らせる。


 俺は、言われるがままに箱に手をかけ、開けてみた。


 すると、中から出てきたのは一枚の紙きれだ。何も書いていないように見えたのは、一瞬、そのすぐ後に、キノコの胞子が紙に降り注ぎ、紙切れに何かが浮かび上がる。


「なになに?”試練は合格です!スマッシュさんの足元の転移陣から、次の階層に進んでください!”……これって」


「冒険を生業にする者は、町に住む者よりも多くの種族に出会うことになる。この試練は見た目に騙されず、知恵を絞り、情報を集めて儂にたどり着く、その過程で偏見を捨てた柔軟な発想ができるようにと賢者様が考えられたものなのじゃよ」


 そもそも、試練だのなんだのと言うのは初耳なのだが……。


 その不満を察したのか、スマッシュはからからと笑いながら言葉を紡いだ。


「冒険者の中には、血気盛んで、自分と見た目が違う者と町の外で会えば剣を構える者もいるからの。エリア殿に剣を向けたり、儂に話かけたりせん者に関しては、そもそも試練を与えんし、これが試練だ、と言って気負われては本質を見誤ることもあり得るからの」


 そう言い終わると、スマッシュはその巨体を動かし、小さな転移陣を露わにする。


「さぁ、それでは次の階層に行くがよい。試練を突破した者は以後3階層を飛ばして7階層に転送されるぞ」


 そう言うスマッシュだったが、俺たちは動かない。


「あれ?どうしたんです?3階層短縮は滅多にないことですよ?」


「いや、俺たち転移陣は使えないんだよ」


 リストの言葉に返答した俺たちに、スマッシュが驚愕したように口を開ける。


「え、うそじゃろう?」


 そう言うスマッシュに俺はスラじいとの会話を伝えた。


「……そうか。うむ、承知した。ならば、これを持っていくがよい」


 そう言って、差し出されたのは、小さな茸人(マイコニド)だった。


「試練を熟したにもかかわらず、何も褒美が無いというのは良くないであろう。それには、8

階層までの道案内をさせる。実際歩くことになるから1階層はおまけじゃ。その後に関しては案内はさせぬが、大切に育てれば戦力になるであろう。気にいれば使ってやってくれ」


 そう言うのを最後に、スマッシュは口を閉ざした。


「……それじゃあ、行きましょうか」


 俺たちは、茸人の道案内で、次の階層に足を進めるのだった。


~~~~~~~~~

「次は……こっちか。ありがとな」


「♪☆■~~ΩΦ」


 俺の言葉に反応した茸の小人は、嬉しそうに俺の頬にすり寄った。なお、反対側の肩には羽根休めしているアンネがいる。大きさ的には同じようなものだ。


 現在、階層にして7階層を進行中である。スマッシュが用意した茸人の仕事は多岐に渡り、道案内はもちろんの事、5階層で二つの素材をお供えしないと開かない扉などもあったのだが、謎茸人がすぐさま持って来たり、敵対する魔物のいる場所を察知して遭遇をしないよう誘導したりするなど、まさに至れりつくせりと言ったような活躍をしてくれた。


「……なんというか、逆に申し訳なくなる感じで楽だったな」


「まぁ、本来は転移できたって言う話だし、こんなもんなんじゃない?」


 俺たちの話しているところに、リストが笑って加わってきた。


「なんでも、賢者様は異種族との共和を大事にしているそうですね。異種族とも仲良くする者はそこそこ塔内でも贔屓されるようになっているみたいです。まあ、逆にそこを付け狙われて寝首を書かれるパターンもあるみたいですが。異種族と節度を持って関われるなら短時間で、異種族皆敵な脳筋はその分苦労しろ、ってところですかね」


「なるほどな」


 まあ、賢者の塔全体でそういう風潮であるなら、気負う必要もないか。

 そう思って俺たちは更に進んで行った。


 茸人の助けもあり、やはり特に何事もなく進んだ第8階層を抜けたどり着いた第9階層は、先ほどとはまた違った階層だった。

 

 先ほどまでは森の中と言った雰囲気だったところから、今度は石畳の床と、古い石組みの遺跡のようなものへと変わったのだ。


「これは……遺跡、をモチーフにしているのか?」


 しかし、少し先を進んだ曲がり角に、あるものが掲げられているのを見て、俺たちは頭を捻ることになった。


 俺はこの世界の文字を読めないため、アンネが読んだものではあるが、曲がり角には、このように書かれた鉄のプレートが掲げられていたのだ。


”ゴブリンは強い魔物である。強いと思うのなら右へ進め、弱いと思うのなら左へ進め”


と。

 スマッシュさんとエリアさんは当然知り合い。というかコンビ。賢者が派遣した魔物だったり。

 冒険者の見えないところで、二人の眷属が子ども達の世話もしている。

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