オークとクイズ迷宮
本日2話目です。
「……ここにきてクイズ問題なのか」
何となくチープなアトラクション感を感じてしまい、少し萎える俺だったが、他のメンバーはそんなこともないのか、普通に頭を捻っていた。
「……まぁ、少なくとも私はゴブリンに負ける気はしませんね」
というのはリスト。しかし、それに対してアンネが反論する。
「他の皆にとってはそうかもしれないけど、私にとっては結構厳しいわよ。逃げるならともかく」
その言葉にうんうんと茸人が頷くと、ボスがさらに口を開く。
「姉御殿の話も尤もであるが、問題と言うのなら一般的にこの階層にたどり着ける存在に投げかけているのでは?それなら、一般的に弱いと言えると思いますが……」
その言葉を受けて、俺は少し考えてリストに向き直る。
「リストさん、あなたは、何度もこのダンジョンを往復している、つまり、何度もこの階層にも来ているんだよな?」
「そうですね」
うんと頷くリストは、なんだか少し嬉しそうだった。
「なら、この問題の解答も分かっているということでいいか?」
「それが、毎回問題が変わるもので……まぁ、後のことは大体予想はつきますけどね」
そう言って笑うリストに、俺は最後の問いかけをする。
「毎回問題が変わる、か。なら、回答が失敗した時、致命的なことは起きるか?」
「そうですね致命的なことにならない、とは言い切れませんが、少なくとも、このゴブリンの問題ならすぐに死ぬことは無いでしょうね」
とりあえず、それだけ聞くと、俺はアンネ達に向き合った。
「なら、とりあえず答えてみて、どうなるか確認しよう。ここで立ち止まっていてもしょうがないしな」
「で、どっちに進むのよ?私は”強い”の方に進みたいんだけど」
「我は主殿に従いますが、強いて言うなら”弱い”が正しいと思いますな」
俺は二人の意見を聞いて、少し頭を悩ませる。そして、ふとリストに顔を向けた。
「すまん、リストさん。もう一つ、質問いいか?」
「なんです?答えは私も解りませんよ?」
「ああ、だから、この階層について教えてくれ。この階層は、冒険者が力をつけることを狙いにして構成されている、という認識でいいか?」
それを聞いて、リストの目が鋭くなった。
「へぇ……。なるほど。もしや、気が付きましたか?」
その反応で、俺はこの先にあるものにあたりを付けた。
「アンネ、ボス戦闘の準備をして”弱い”方の道を行くぞ」
そう俺はアンネ達に声をかけ、先を進んだ。それまで明確な根拠がなく言い合っていたので、俺が断定して伝えたことで、それがそのまま通る形になった。
そして、先を進んですぐ、背後から飛びかかってくるものがあった。
「ボス!」
「ヤァッ!」
裂帛の気合で振り下ろされたボスの剣で撫で斬りされた一体のゴブリンが氷漬けになる。その間に正面から何匹ものゴブリンが現れ、俺とアンネに襲い掛かった。
俺は剣を一閃し、先頭のゴブリンを薙ぎ払う。炎が飛び散り、一瞬ゴブリン達が怯んだ。
その隙をついて、俺はアンネに指示を飛ばす。
「子守歌だ!」
「お、おっけー!」
慌てるアンネだったが、すぐにアンネは魔法を組み立て始める。その間にゴブリンも体勢を立て直し、こちらを睨んでいる。相手も、俺とボスの剣がただものではないことを学習したのか、近くに近寄ってこようとはしない。その代り、投石をするようになった。
いくつもの石が手で投げられていたが、それはすぐに簡易的な投石布での投石へと移っていく。ハンマー投げのように力を貯めてからの攻撃は強力で、アンネの代わりに受けた俺が少し後ずさる程の威力を有している。
と、そうこうしているうちにアンネの魔法が完成した。
「そのものに抗い難き眠りを与え給え。《眠りの霧》」
アンネから霧状のものが放たれると、それに包まれたゴブリン達がバタバタと倒れて行った。
俺は油断なくゴブリン達にとどめを刺してからため息を吐いた。
「よし、これで終わった……な」
そして、振り向きざま一閃。どこに隠れていたのか俺のすぐ後ろで小さな刃を構えていたゴブリンを焼き尽くした。
「……って、なんなのよ?というか、もしかしてグォークはこれを分かってたの?」
「分かってた……というか、予想した中の一つだな。ほら、この塔は、冒険者の育成場所も兼ねてるって言ってただろ?それで、ゴブリンが弱いっていう冒険者にどんな経験をさせたいかって考えたんだよ」
「……なるほど、そういうことね」
「……どういうことですかな?」
あまりピンと来ていないようなボスに、俺は声をかける。
「今のゴブリン、どうだった?」
「そう……ですな。少なくともエサではなく、敵としては見ておりましたな……なるほど。思い上がった者の鼻っ柱を折るため、ということですか」
まぁ、そう言うことだ。ゴブリンならば、大抵の者が弱い、と答えるだろう。なら、そこに、普通のゴブリンよりもかなり強いゴブリンが居ればどうなるか。
オーク級に対して対策していたはずのアベル達が俺に蹴散らされたように、強さというのは個体によってかなりの差が出る。
ゴブリンもそれは同じだ。むしろ、元から強者であるオークよりも強さの差は激しいだろう。それ故に、死ぬことのないこの塔で気を引き締めるようにするのが目的なのだろう。
とはいえ、十分な実力がれば特に問題ない。油断だけはしないように俺たちは先を進むのだった。
因みに、強いの方を選んだ場合は、戦闘が起こらない代わりに、問題数が少し増えたり。
エキストラのゴブリンさんたちは普段20階層あたりで暮らしている方たちなので、一応やや強め。もしこの塔で最強クラスのゴブリンと戦った場合は多分3体で主人公たちと互角くらいの強さになる。
進化したホブゴブやシャーマンが出てくるともっと厄介になるという。




