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グォークと精霊講義

「概念王……存在しないっていうのはどういうことだ?前にアンネが魔境の話をした時は、魔王がいるから魔境ができているという話を聞いたことがある気がするんだが」


 それを聞いて、アンネは静かに頷いた。


「確かに、そう言ったわ。正確には、魔境にはその地域に影響を及ぼす存在がいる、って風に教えたと思うんだけど、まあ、基本は魔王よ。だけど、この精霊郷は少し例外でね。

 そもそもの話、精霊って言う存在自体が、ちょっと珍しい生態をしているからね」


 アンネによれば、そもそも精霊というのは、単体に見えて単体でない存在なのだという。今目の前にいる湖の精霊だって、伝説をもとに生まれた精霊だが、同じ伝説をもとにした精霊も複数おり、そして、伝説や認識の変化によって変質する性質上、その同じ伝説をもとにした精霊が活躍した場合、他の湖の精霊にも遠隔地であるにもかかわらず影響が出たりする。


 場合によっては旅の途中に、はるか遠くの場所で出会った精霊に、懐かしそうに声を掛けられたが、その精霊は結局声をかけた相手がだれか分からなかった……みたいな話もあるらしい。


 そして、精霊王の伝説というのは、精霊達の中には、世界にある全ての伝説や自然法則の大本を司る精霊の王がいる。というものだ。


「……ん?全ての伝説や自然法則を司る?それって……」


 先ほどの話と照らし合わせて頭を捻った俺に、アンネは頷いた。


「ええ、つまるところ、それって全ての精霊が精霊王ともいえるってこと。だから、精霊郷というのはそこにいる全ての精霊の意志の集合体である精霊王……という名前の伝説を中心に発生した場所じゃないかって言われてるのよ」


「……難しいことは分かりませぬが、要するに、存在する全ての精霊を纏めて呼ぶときの呼称が精霊王である、という認識で相違ないか?」


 ボスの言葉にアンネは頷いた。


「正確には、全ての精霊そのもの、ではなくて、全ての精霊が、精霊王という存在を成り立たせる要素を持っている、って認識……だったんだけど、それは違ったってことでいいのかしら?」


 アンネの言葉を受けて、湖の精霊は人差し指を頬に押し当てながら返答する。


「う~ん。その質問に対して答えるなら、間違っていない、かなぁ?確かに精霊王様は、私たち精霊一人一人の願いや意志の集合体ではあるんだけど、それが精霊王の伝説を中心に生み出された時点で、精霊王様という別個の人格も持っている、というか」


 なんだかややこしいが、つまり精霊王という存在はいるという事だろう。


「それじゃあ、今度は精霊王に会う為に会いたいと思いながら歩けばいいってことか?」


「それでもいいんだけれど~、そうすると、アリシアちゃんを置いていくことになるでしょ?だ・か・ら~あなた達も湖に入ってみない?」


 ……。


「聞き間違いか?控えめに言って頭がおかしくなったような発言が聞こえたんだが?」


「やん、ひどい」


 そんな風に薄笑いしながら言った湖の精霊が、しかし、キリッとした顔をして説明を続けた。


「精霊王様って、全ての精霊の思いの集合体……それってつまり、全ての精霊の性質を持っているって言う事でもあるの~。そして、この世界には夢の精霊っていうのもいるのよ~」


「つまり、私達に夢の世界で精霊王を探せ、ってこと?」


 アンネの言葉に、湖の精霊は満足そうに手を上にあげて丸を作った。


「その通り~。時間を止めてるのは肉体だけだから、精神は眠ってるだけなのよ。だから、私の影響を受けやすい湖の中に入れば~夢の世界へ送れるってわけ!」


「だが、アリシアはそのまま眠ってるんだろ?俺たちが同じ状況になっても、同じようになった奴が増えるだけじゃないのか?」


「それは、あらかじめ意志を強く持っておけば大丈夫よ~夢の世界とはいえ、ここは精霊郷、願った場所に行ける場所なんだから」


 どうやら、夢の世界とやらも、精霊郷の一部らしい。まあ、精霊王がいるっていうんだから当然かもしれない。とりあえず、失敗すれば結構まずい状況になりそうだが、湖の精霊が勧めて来る方法だ、彼女が悪意を持った存在でないならば、勝算は高いはずだ。


「さて、覚悟は決めたわ!飛び込むわよ!」


「諦めるなら、ここに戻りたいと思えば目覚められるはずだからね~」


 湖の精霊のそんな言葉を最後に、俺たちは湖に飛び込んだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 飛び込んだ先の湖、それは、深淵を思わせるほどに深く、濃い色をしていた。見上げれば空には明るい日差しが見える。

 オークの目はここでも高性能を発揮する様で、多少濁っては見えるものの、人の認識が可能な程度には水中を見通すことができた。


 しばらく待つこと一分。一向に時間の止まる気配がなかった。息を止めているのが悪いのかもしれないが、正直なところ、この水中で息を吐き切るというのは、かなり抵抗がある。


 よく見るとアンネは既に気絶した様で、ふわふわと気泡に包まれてどこかへと運ばれて行っていた。反対側を見ると、ボスがバタバタともがいている。うん。これは気絶が必要なんだろう。


 3分ほど経過したが、俺はやっぱりまだ息を吐く勇気が出ないでいた。というか、オークの体、火力だけじゃなく燃費もそこそこいいようだ。息を止めて3分ほどだが、まだ息苦しさはない。ボスは、気絶したらしく、そのまま水中へと沈んでいく……ってちょっと待て!


 水泡が無いことに気付き、俺は慌ててボスに追いすがり、岸へと向かう。だが、進化した上にしっかりと装備を纏ったオークの体である。非常に重く、後を気にする余裕などなかった。


 限界まで力を振り絞り、気力だけで俺はボスを岸に上げることに成功した。


「くそ、……なんで……」


 なんとか岸に上半身を横たえた段階で、俺は意識を失ったのだった。

※オークに魔法は効きません。


 湖の精霊的には

 湖に入った奴が自分の魔力を受け入れる(物品なら全ての部分が湖に漬かる、生物なら気絶などで魔力的な抵抗力がかなり下がる)

→時間停止の魔法をかける

→水泡によって保管場所に移動。

→今回はそこから夢の世界への誘導(夢の世界にはいれる確率UP)


 の順番で魔法が発動するようなシステムだったんだけど、オークの特性的に2番が上手くいかなくてそのままどざえもんになりかけた。

 最後の→があるから、アンネだけなら無意味というわけではない。



精霊王について説明を試みてみると。


 アンネの認識

  湖の精霊という存在の本質=各地の湖の精霊という認識なので。

  精霊王という存在の本質=各地の精霊たちの総体という解釈。極論、精霊郷という存在そのものが精霊王という存在であるとすら思っていた。


 湖の精霊の認識

 精霊王という存在の本質=精霊王がいるという伝説→精霊王の伝説は全ての自然法則を司るという伝説なので成立時点で全ての精霊とのつながりがある。


 まあ、ぶっちゃけ、全部の精霊が得た情報と能力を使えるめっちゃ強いおじさんとでも思っておけばまちがいない。

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