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騎士と逃げる妖精

本日3話目です

 アリシアは、ふと気が付くと、大きな湖の前までやって来ていた。


「湖か……丁度喉が渇いていたところだ。助かる」


 そう言って手で水を掬って飲んだアリシアはカッと目を見開いた。


「美味い!これほどの水飲んだことはないぞ!」


「あらあら~それは光栄だわ」


「!?」


 その声に慌てて剣を構えるアリシアだったが、すぐにその剣を下におろした。何故ならそれは湖そのものの色をした女性だったからだ。仮に剣で応戦したとしても勝ち目はないだろうし、そもそも敵意も無いように見える。


「あなたは……もしや湖の精霊様か?もし私が水を飲んだことが気に入らないのなら謝罪しよう。精霊様がここにいるなど、知らなかったのだ」


「いえいえ~いいのよ。水を全部飲み干す~とかなったら流石に怒りますけど、生きとし生けるものに生きるための水を恵むことも、湖の役目ですから~」


 にこにこと笑いながら伝える精霊の姿に、アリシアはホッと胸をなでおろした。


「……そうであれば、厚かましいがもう少し水をいただいても良いだろうか」


「もちろんよ~」


 許可を得て、アリシアは安心して水を掬い、飲み始める。


「う~ん。でも、せっかくここで出会ったのだし、少しあなたのお話を聞かせていただけないかしら」


「私の、ですか?それほど面白い話をできるとも思いませんが、精霊様が望むというのなら」


 そうしてアリシアが話し始めたのは、ここまでの旅路だった。話せる中で、一番突拍子がなく、興味を引けそうな内容が今現在の、オークと妖精と共に冒険した日々だったからだ。


「なるほどね~それで、なんであなたはここに来たの?」


 一通り話し、気付いたらこの湖にいたことを伝えると、しかし湖の精霊はそう聞き返してきた。


「いや、精霊殿。だから、先ほど話したように、たまたm……」


「私、嘘は嫌いよ」


 のんびりと、しかしはっきりと言われ、アリシアは思わず口をつぐんだ。そして、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「……そうだ、な。私が意図していない。それは、間違いない。だが、もしかしたら、私が精霊に、まさにあなたのような湖の精霊に憧れていたから、ここに導かれたのかもしれない」


「あらあら~そうなの?光栄だわ~」


 にこりと笑う湖の精霊に、アリシアも思わず顔が綻んだ。そして。


「そうだ、精霊殿できればここから……!?」


「イヤァァァ!?何でこっち来るのですぅぅぅ!?」


 アリシアがこの状況の打開策を問いかけようとした瞬間、誰かの甲高い悲鳴が耳朶を震わせた。

咄嗟に振り向くと、恐ろしい顔をした狼に、ハムスターに似た何者かが追いかけまわされているところだった。


「あれは!黒妖犬(ブラックドッグ)!?とにかく、助けないと!おおい!こっちに逃げて来い!」


 アリシアは何はともあれ、ハムスター姿の何者かを助けるのを決め、黒妖犬に向き合った。そして、保護対象が脇を通り過ぎたことを確認した瞬間、全身に力を込める。


「食らうがいい!”盾突撃(シールドチャージ)”!」


 ただでさえ威力のありそうな、アリシアの剛腕によって押し出された盾は、さらに光を纏い、黒妖犬に迫っていった。大楯を使い続けることで習得できる、魔素を盾に込め、その威力や防御力を増すという技であり、アリシアの奥の手である、特技(スキル)盾突撃(シールドチャージ)である。

 基本的に直線的な攻撃であり、使用前使用後共に隙がかなり大きいため使用できる状況を整えるのもかなり苦労するものの、威力だけを見るならば生半可な刃物や鈍器の攻撃力さえも上回る威力を誇る攻撃である。


 そんな一撃を食らい、黒妖犬はなすすべもなく数メートル吹き飛ばされる。


「ギャン!?キャンキャン!」


 どうやら、黒妖犬はそこまで好戦的ではなかったようだ。一度の追突で既に戦う気力を失ったようで、ふらふらとしながらも、急速に逃げ出していった。


「ふう、大丈夫か、そこの……!?」


 そのあっけなさに、安心半分拍子抜け半分で顔を向けたアリシアはしかし、保護した対象が湖に沈んでいくのを見て、とっさにそちらに駆け寄った。


「あらあら、リトルウィッチフェアリーが湖の中に「えいっ!」沈んじゃt……ってえぇ!?」


 悠長に話していた湖の精を無視して、アリシアは湖の中に飛び込んだのだった。

☆黒妖犬 ランク オーク級

 精霊種から派生した犬型の魔物。物理攻撃に耐性があり、魔法攻撃にはやや弱い。一方で、肉食というわけでもないため、人間と戦闘になることは稀である。また、倒すと影のように消えてしまうことが確認されており、落とすものも低級の精霊石と呼ばれる精霊が持つ鉱石だけとなっている。

 一応、極まれに何らかの判断基準で付け狙われる人物がいたり、精霊石を落とす存在の中では理性が最底辺である、ということから、良心の呵責に悩まされることなく精霊石を採取できる、というメリットを見出すこともできるものの、上位クラスの精霊であれば精霊達の命を対価にせずとも精霊石を生成できるため、よっぽどのことがなければ黒妖犬を倒すメリットはない。



☆リトルウィッチフェアリー


 人間に興味のある精霊が進化した姿。一応妖精族であるが、性質的には独自の魔法を司る存在であり、精霊の特徴である、概念の化身としての存在という説もある。

 因みに、何故リトルウィッチという名前なのかというと、彼ら自身が臆病な性格であり、主に女児の前に姿を見せるから。彼らを保護した女児は、彼らによって加護を与えられ、特別な魔法を扱うことができるようになる。系統は色々とあるが、基本的には全身を強化する魔法霊装と、魔法の力の大半を一点に集中させる、魔力砲的な攻撃は基本搭載されていることが多い。

 なぜか腹黒な奴が多いという流言飛語が飛び交っているが、そんな事実はない。


 決してプ○キュアとか魔○少女○どか○ギカとかは関係ない。でも契約はする。


 投稿少し遅れました。ごめんなさい。


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