ボスとオークキング
本日2話目です。
オークキング、グォーク、そしてボス。殆どのオークが屍を晒し、それ以外のオークもここ一時間程度ではどうにもならないほどの怪我を負っている中、三体だけがその場に立っていた。
「コノエ!貴様、なぜこんなことを!」
激高するオークキングが、今にもボスに飛びかからんと身構えた直後、それを止める者があった。獲物であろう荷物を置いて、身軽になったグォークだ。
「キング、愚かな私に教えていただきたい。私はこのオークを知っている。そして、彼は名乗ったことはなかった。あのオークは一体何者なのですか?」
「コノエは俺の群れの隊長だった。一番の頭を持っていたから、隊長にして雌も餌もいいようにしてやったというのに!!」
それを聞いて、グォークが推測を口にする。
「……ならば、嫉妬ではないのですか?何らかの理由で群れを離れていたコノエ殿が帰ってくると、自分よりも優遇されているらしいオーク達がいる。自分があいつらよりも強く賢い、そう言ったことを伝えるために、このようなことをしでかしたのでは?」
「そうなのか?コノエ」
ボスが考えるに、それは、グォークの慈悲だった。グォークがオークキングの命令で操られているにしても、彼がグォーク本人だとすれば、オークキングに認められたくて、認められて嫉妬した結果大量虐殺をする、なんてことを考えるはずがないことは自明だからだ。
それはつまり、こういうことだろう”オークキングの軍門に下り、従順にすれば、今死ぬことはない”
ボスはギリリと唇を噛んだ。いくらそれが敬愛する主人の、グォークの意志だとしても、それを認めるわけにはいかなかった。
「オレガ シタガウ オマエ チガウ !オレハ モウ オマエノ イウコトハ キカナイ!」
「なんだと!? ふざけるな!殺してやる!殺してやる!」
いきり立つオークキングを、再び制したグォークは、ボスと対峙して斧を構えた。
「キング様、キング様の手を煩わせるまでもありません。ご命令ください、俺に”戦え”と」
「戦え!サイショウ!残虐に殺すのだ!」
「御意!」
その直後、グォークは弾かれたようにボスとの距離を縮めた。直後、一閃。その斧の冴えは冒険者も角やというほどのものだ。魔法の武具でも何でもない攻撃。だが、ただの冒険者が放てばただそれだけの攻撃でも、オークであるグォークの身体能力でそれを行えば、それはオークであるボスにも届きうるほどの速度、威力を持つ一撃へと変化する。
ボスは混乱しながらも、そんなグォークの攻撃を避ける。容赦のなく加えられるグォークの攻撃を必死に避けながら、しかしボスはグォークの言葉を聞いていた。
「なぜキング様に逆らう!それが一番楽な道だろう!」
「オレハ アタラシイ ボス ミツケタ! ボス イナクテモ オレ ボスノ イシ ツグ!」
その言葉に、グォークはふっと表情を緩める。
「なら、敵に目標を定めろ!お前の主人を害するものを!討ち取って見せろ。自分の主人を信じろ!」
その一言共に、グォークがボスに向かって飛びかかり、その身を後ろへ突き飛ばす。
「ご苦労だった!死ね!」
そして、オークキングがその間に割り込んでくる。そして、大きく振りかぶった斧がボスを襲……わない。
「ぐ、グググ……どういうことだ!サイショウ!」
驚くオークキングの後頭部には、先ほどまでグォークの手にあった斧が突き刺さっている。
「どうしたもこうしたもない。俺は戦え、としか命令されていませんから。誰と戦うかは、自由でしょう?」
その言葉に愕然とするオークキングに、グォークはにこりと微笑んだ。
「ところで、目の前の攻撃はどうするのですか?」
それを聞いて、ハッと前を向いたオークキングは、その眼前にボスの短槍が突き刺さる。
「グアアアアアアアアアア!?」
眼球から侵入した短槍は、しかし今度は脳を破壊することなく中断されてしまう。
「愚弄じて、俺を、愚弄じでェェェェェ!?ゴロゼ!サイショウ!コノエをゴロゼ!そして貴様もシネ!」
「断る!そもそも、サイショウってのは誰のことだ?俺はそんな名前じゃない」
それを聞いて愕然とするオークキングに、グォークは、剣……カリュードというオークが持っていたそれを死体から奪い取り、オークキングに叩き付けた。その一撃を持って、オークキングはその巨体を地面に横たえた。
「ふぅ、何とかなったか」
「ア アア……アウ、ア」
「ん、あ、あぁ心配させて悪かったな。何しろいきなりオークキングに会ってしまったからな。キングの命令は強制力があるのは分かってたから、キングが命令しそうなことを率先してやりつつ、名前を指定してきた命令が効かなくなればいいと思って、本当の名前とは違う名前を使って過ごしていたんだ。口調もその一環だな」
それを聞いて、安堵したボスは、ヘナヘナと尻もちをついた。とその時、二人と異なる声が聞こえて来た。
「グォーク!貴様ら、殺したのか?本当に?オークキングを?」
それは、戦闘が始まる前に放り出された獲物の中にいた女戦士、アリシアだった。
「ああ、アリシア、さんだったか?悪かったな、こんなところまで連れてきて。こっちとしても、あそこでああいっておかなければ、俺か冒険者か、どっちかが犠牲になる方法しか思い浮かばなくてな」
「あ、あぁ、いや、それに関しては別にいい。私も冒険者だ、いざという時があるのは覚悟している……それよりもオークキングのことだ、お前たちは、オーク、だろう?なぜオークキングを倒した?そして、どうして倒せた?」
そのことについて、グォークが応えようとしたその時、あたりに不気味な笑い声が響き渡る。
「ぐぶっ、グハハハハハハ!?キイタゾ!キイタゾサイショウ!いやさグォーク!?」
「なっ!しまっt……」
慌ててオークキングにとどめを刺そうとしたグォークに、オークキングはたった一言呟くだけでよかった。
「俺を守り、他のオークを殺せ!グォークよ!」
「ぐっ……くうぅうううっ!逃げ……ろ!ニゲロ!」
必死に抵抗するグォーク。だが、仮にその抵抗が成功するとしても、そんなことは意味がなかった。何故なら、オークキングは別に行動を制限されていないのだから。
苦しんでいるグォークをしり目に、オークキングは獲物である大剣を振りかぶる。
「コノエ、やはりお前は俺が殺す。反抗しなければ、再び俺の群れでの贅沢を認めたというのに、残念だ。死ね」
そして、大剣が振り下ろされ……なかった。振りかぶった大剣がすっぽぬけ、地面に突き刺さる。
「間に合った、みたいね」
「!?」
思わず振り向いた一同の目線の先には、ふよふよと浮く小さな妖精が存在した。
「助っ人はもう少し時間がかかるわ!あと一時間もあれば来れるはず!」
それはつまり、魔王と交渉ができたということだ。グォークは歓喜の声を上げ、ボスはなんだかわからないまでも、頼りになる姉貴分であるアンネの策がめぐらされていることを理解し、戦意をたぎらせた。第二戦の始まりである。
一応、オークキング周囲の死にかけオークをジェノサイドしに行くこともできるけど、流石にシュールになるのでやめた。なんかジェノサイドしている間に攻撃されそうだし。
感想等ありましたらよろしくお願いいたします。




