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オークの狩りと冒険者

一話飛ばして投稿してしまうミス!!


すみません。最新話は一つ前となります。次は8時頃投稿します。

 調味料を手に入れ、再び俺たちはレベルアップのための経験値稼ぎを再開した。


 アンネの魔法、”グラビティ”での経験値取得増加は、思ったよりも多くの経験値を齎した。その分、思い通りにいかない戦闘にひやりとする場面もあったものの、その苦労に見合った分の経験値を得ることができたため問題はない。それに、ヒヤッとした場面もボスと俺が交互に訓練するようにしたことで、リカバーも十分できている。


「よし!最後!」


 そう言って俺は最後のサラマンドラに攻撃を仕掛けた。その一撃は特に問題もなく、サラマンドラに致命傷を与える。少し哀愁の漂う悲鳴を上げ、サラマンドラが倒れ伏した。

 しばらくしても立ち上がってこないことを確認してから、額の汗を拭った。


「ふう。お、今のでレベルアップしたかな」


 これで俺はレベル10、これでアンネとレベルが並ぶことになった。アンネのレベルがあまり上がっていないのは、自分で重力魔法を使うとまともに戦えないため、(そしてそもそも魔物に対しての有効打がないので)経験値効率が変わらなかったからだ。


 ボスに関してはこれまでレベルアップを数える習慣がなかったため、具体的なレベルは不明だ。ただ、強さを基準に推測するとすれば、レベル14~15程度と言ったところだろう。俺たちよりもだいぶレベルが高いが、これでも俺たちと出会った時より1つレベルが上がっている。


「ボス、レベルアップできたか?」


「レベルアップ、した、ない」


 落ち込んでいるボスに、気にしなくていいことを伝えると、それだけで花が咲いたような笑みを浮かべるボス。

 ……いや、スキンヘッドで豚鼻の片目傷持ちが、花のような笑みを浮かべても不気味なだけなのだが。まあ、それは言わないお約束だ。


 と、近くの林でガサゴソと音が鳴った。どうやら獲物が近づいてきたようだ。


「……とうに大丈夫なの?」


「まあ、……でしょ」


 おや?何やら意味のある言葉が聞こえてくるのだが……。


「なあ、アンネ。何やら意味のある言葉が聞こえてくるんだが。気のせいか?」


「私にも聞こえるわ。気のせいじゃないわね。とりあえず、ボスはステイよ……ボス?」


 ボスを呼ぶも、反応が全くない。よく見れば姿もなかった。


「うわああああああああ!?」


 近くで聞きなれない悲鳴が上がり、俺たちは顔を見合わせ、慌てて声の方に飛び出したのだった。


~~~~~~~~~~~~

「いや、それにしても驚いたっス。まさか話ができるオークがいるなんて」


「済まなかったな、こちらの連れが迷惑をかけてしまった」


 俺の謝罪に対し、襲われた本人である冒険者の男が手を振って笑った。


「まあ、全く気にしない、ってわけにはいきませんが、攻撃を受ける前に旦那が止めてくれましたからね。……それに、こんな浅層でアントやらトレントの素材まで頂けるとあれば、水に流すには十分すぎるっス」


 軽口を言う冒険者に俺も笑いかける。何やら息を飲む声が聞こえるが、とりあえず無視だ無視。


「しかし、浅層と言っていたが、ここらへんで冒険者を見たのは今回で2回目だぞ。どうしてこの森に入ってきたんだ」


 それを聞いて口を開きかけた男を、別の声が鋭く静止した。


「な、なにを言おうとしているんだ!あ、相手はオークだぞ!そんなことをすれば、人間がどれだけ脅かされるか!」


 がくがくと震えながらも気丈な声を出す女性は、その直後、俺たちに注目されて腰が抜けたところをアンネに助けられた。かなり小さいアンネに支えられる女性の図は結構面白いが、今はそんなことを気にしている場合ではないだろう。


 というか、オークの生態を考えるなら、この女性の反応の方が一般的なのではないだろうか。男やアンネの反応を基準に考えて人間に接するのは危険だろう。


「すまねぇな。旦那。アリシアは割り切れねぇみたいで」


「……まあ、オークが近くにいると考えれば、あの怯えようも無理はないさ。こちらこそ気にしないでほしい」


 それを聞いて、男は頭を下げる。


「で、俺たちがこの森に来ている理由でやしたね。それは、新緑原野……って言っても分かりやせんよね?まあ、俺たちがいつも狩場にしている平野での狩りが難しくなっちまいまして」


 女のことを気にもかけず話しかけた男冒険者に対し、アリシアと呼ばれた女性は更に声を荒げるが、それを無視して彼は話し続けた。


「なんでもギルドの発表だと、平野全域に旦那と同じ……っていうとすこし失礼か……。あぁっと、いわゆる普通のオーク、って言えば分かりますかい?一般的にイメージするオークが大繁殖したみたいで。あいつら、単純な能力だけならかなりの脅威っすからね。俺たちでも一匹くらいなら返り討ちにできるっすが、数体集られたら流石に勝ち目がないんで、仕方なくこの森の方に来た感じっすね」


「そうか、オークの大繁殖が……」


 俺はその様子を想像してみる。

 右を見ても左を見てもオーク。普段以上のオークに、おそらく獲物となる生物たちも数を減らしているだろう。そんな状況なら、オーク達も攻撃的になっているに違いない。

 普段よりも数の多いオークが、普段よりも喧嘩腰で闊歩している。殴り合いと殺し合いと、あとは不幸な女の嗚咽が入り混じった地獄絵図が一瞬で頭の中にイメージされた。


「それは、大変だな」


 俺の声に、男はその通りっすよ、と肩をすくめる。


「まあ、幸いなことに、平原の奥の方からオークが来たことと、そっちの方に上位冒険者のパーティがいて、そのパーティがいち早く報告をしたおかげで、被害は通達を軽く見た馬鹿な奴らを除けば、皆無ってのはありがたいところですがね。

 ……っと、そんな状況なんですが、オークの旦那。旦那なら繁殖に理由、見当ついたりしやせんか?」


「……もしかして、それを聞くために……たしか、アリシアだったか?彼女のことを無視して話を続けてたのか?」

 

 男は首を横に振って笑った。


「いやいや、旦那はオークらしくありやせんし、普通に話したいと思っただけですよ。まあ、失礼ながら、この程度の情報が漏れたところで俺たちの国もギルドも何の痛痒もないと思いやすし。大繁殖の理由については……まあ、俺の興味でさぁ」


 なるほど。まあ確かに、オークが大量発生してるからといって、それに便乗して人間攻めるぞ!なんて言う気にはならないし、この男の態度から見ても、普通に殲滅されるのは時間の問題だろう。そもそも、拙いながらも料理もできるようになった今の森の居心地は悪いものではない。仮に人間たちに弓引いて勝てるとしても、攻め込む必要性は皆無だ。


 まあ、それは兎も角、彼の疑問について考えてみる。


「そうだな……オークの大繁殖、となれば、母体の関係が考えられるんじゃないか?例えば、まずウルフやラビットが増え、その増えた魔物を母体としてオークが増殖した……というのはどうだ?あとは、地形の問題だな。平原に元々オークがいなかったなら、それ自体がオークが増えた理由になるかもしれないな。オークの一番の死因は事故死だから、事故が起こらなければその分個体が増えると思うぞ」


 それを聞いて、男はなるほどと相槌を打った。


「なるほど、納得できる話っス。流石オークの旦那……っと大分長話しちまいやしたね。そろそろ俺たちは帰ることにしまさぁ。アリシアも、気が休まらんようだし、これ以上話していては日が暮れちまう」


「そうか、気を付けて帰れよ」


 それを聞いて、男はニカリと笑った。


「こんな上等な素材を抱えて、むざむざ死ぬわけにはいきやせんよ。這ってでも帰って見せやすよ。っと、そうだ。旦那、もう一つ、お願いしてもいいっすか?」


「まあ、俺たちにできることならな」


「それはありがたいっす。さっきも言ったっすけど、平原にはオークが大発生してるっス。だから、今はギルドの補助金やら蓄えやらでごまかしてる冒険者が多いっすが、これから長引けば、オークに追い立てられてこの森に入ってくる冒険者が多くなると思うっす。そいつらのこと、襲わずにいちゃくれやせんか?」


 それを聞いて、俺は困り顔で頷いた。


「流石に、他のオークの行動をどうこうすることは出来ないが、俺とボス……こいつに関しては向こうが何かしない限りは冒険者を襲わないことを約束しよう」


 それを聞いて、男は嬉しそうに、女は信じられないように顔をゆがめた。


「他のオークに関しては残念っすが、ありがとうございやす」


 そう言って、冒険者達は素材を持って帰っていった。


「……ふぅ、帰ったな」


「全く、あの女の人の世話を全部私に任せて、……まあ、あんたもボスもオークだし、仕方ないっちゃ仕方ないけど」


 冒険者達も帰ったので、落ち込んでいて最後まで一言も発しなかったボスも合わせて、オークの集落に帰ることにしたのだった。

 何気に主人公と人間が関わった初めての場面だったり、というか、30話超えたのに意思疎通できるキャラクターが両手で事足りるの、自分の作品ながら変な笑いが出る。


 一応、1章終了までには、名持ちの知性を持ったキャラクターは10人(匹)超える予定。

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