ヴァーンズイン
★第54話目
ある者は矢を番え、またある者は剣を構えながら俺とチェイムを取り囲んでいた。
その瞳には国家に対しての忠誠がある反面、俺達に対する恐怖の色も窺える。
俺は手にした剣を軽く肩に担ぎながら口を開いた。
「奇奇怪怪な生き物になりたくなければ、そこを退け」
「……」
返答は風を切り裂く矢の音だった。
――ヒュッ!!
もちろん、防御魔法に守られている俺達には通用しない。
キンッと甲高い金属音を響かせ、飛来した矢は弾き返される。
「もう一度言うぞ。そこを退け」
俺はゆっくりと歩きながらそう言った。
それでも兵士達の輪は、俺達の移動に合わせる様にジリジリと動いて行き、崩れ様とはしない。
ったく、全員ウサギにでも姿を変えてやろうか?ジョニーみたいなウサギによ。
そんな事を考え、唇を吊り上げて少し笑っていると、
「そこを退きなさい」
兵達の輪が崩れ、その一角から、件の女魔導師がゆっくり歩いてきた。
その瞳は警戒の色に満ちている。
「貴方、何者なの?」
「はへ?ミーですか?」
「そうよ。報告では、殿下の逃亡に関与した所属不明の兵士が一人居る、とあったけど……先程の私の魔法を弾いたのも貴方でしょ?一体、何者なわけ?」
まどかにそっくりなシャーディは腕を組み、傲岸不遜と言った様で俺を睨みつけた。
「……チッ、変な仕草までアイツに似てやがるぜ」
俺はチェイムを守る様に、半歩前へ出ながら呟いた。
「おい、偽まどか」
「……は?偽…マドカ?」
「そうだ。俺が名付けた貴様の名前だ。もしくは海賊版でもOK」
「ワケの分からない事を……」
シャーディ改め、偽まどかは少しだけイライラしたような顔で、
「私の質問に答えなさい。貴方、一体何者なの」
再度尋ねてきた。
「ふふーん……秘密なり」
俺は挑発するようにニヤリと笑い、
「俺の正体を教えて欲しくば、今すぐここで『教えて下さい洸一様』と土下座しろ。あと『いつも殴ってすみません』とも言え。うむ、僕ちゃんそれで満足だ」
そう言った瞬間、ポコンと効果音付きで後ろからチェイムに軽く殴られた。
「ふ~ん……貴方、コーイチと言うのね。奇妙な名ね」
「……あ、何気にバラしてもうた」
「それで、何者なワケ?何で殿下の味方をしているの?その魔法、どこで憶えたの?」
「質問がいっぱいあるでちゅね。取り敢えず答えるとしたら……オ○ニーは一日三回です」
そう言ったら、またチェイムに頭を殴られた。
何故だ?
多いからか?
「なるほど。答える気は無いワケね」
「いや、一応は答えたぞ。だから君も答えてくれ。週に何回ぐらいしてんの?」
「……まぁ良いわ。じっくり聞き出してあげるから」
そう言って、女魔導師はサッと片手を上げた。
「いかん!?き、気を付けろ洸一!!召喚魔法を唱える気だぞ!!」
チェイムがが叫ぶと同時に、シャーディ(偽まどか)の足元の地面が膨れ上がり、
「キシャーーーーーーーーーッ!!」
甲高い鳴き声を発しながら、見た事も無い奇怪な生物が飛び出した。
なんちゅうか、腕が6本に頭が2つ、目が8つの生き物なぁに?と言うナゾナゾの答えみたいなヤツだ。
お、おおぅ、スゲェ……
B級RPGのラスボスみたいな感じだなぁ。
「な、なぁチェイム。召喚魔法って、どうやるんだ?」
俺も一度はやってみたい。
何故なら召喚魔法は男の子の憧れだからだ。
……
や、良く知らんけど。
「む……召喚魔法はかなり高度な魔法だぞ。私も出来ないから良く知らないが……そもそも召喚するにも色々とあるみたいだ。悪魔や精霊と直接契約する場合や、異界より強引に呼び出す……又は具現化したイメージに力を取り込むなど……正直、良く分からん」
「……むぅ」
俺なんかサッパリ分からん。
ゲームでは定番なんだけどねぇ。
のどかさんや酒井さん辺りなら、的確にレクチャーしてくれるかも知れんが……
「取り敢えず、試しにやってみよ」
人間、何事もチャレンジだ。
俺は手にした羅洸剣に、
……取り敢えず、先ずはイメージを作って……むぅ、何も思い付かんが……それに今度は精霊やら何やらを呼び込んで……ん?どうやって?ゴーレムを作るのとは違うのか?むむむ?全然分からんですたい。でもまぁ……こんな感じかにゃ?
等と思念を込めると、ズゴゴゴゥ……と重い地響きと共に、いきなり足元の地面が膨れ上がり、そして、
「――ゲッ!?」
見上げるほど巨大な熊の一刀彫りが出現した。
あの鮭を咥えた北海道名物の謎の置物だ。
よく見ると、鮭の尻尾がビチビチと跳ねている。
面白いくらいに鮮度は抜群だ。
「……洸一。何を召喚したんだ?」
チェイムが呆れ顔で言った。
「……分からん」
俺は答えた。
「分からんが、何となく強そうだぞ」
大きさでは、俺様の召喚?した熊の一刀彫り(名前は赤カブト)は、シャーディの召喚した魔物を遥かに凌駕していた。
「へぇ~……こんな召喚獣は初めて見た」
少しだけおどけたように、偽まどか。
「でも、強そうには見えないわね♪」
言うや彼女の召喚獣は「クケェー」と奇声を発し、6本の尖った足をワキワキと動かしながら俺様の召喚した謎のクマ目掛けて急接近しつつ、8つの目から怪光線を出して攻撃。
強烈な爆音と共に、クマちゃんの後ろ足が少しだけ吹き飛んだ。
「ま、負けるな赤カブトッ!!」
だが俺様の召喚?したクマ公は今一つ分かってないらしく、ノソノソと歩き、ンフゥ~と重い溜息を吐いてくれた。
「な、なんてマイペースなヤツなんだ……」
「ふふ……入れ物は立派でも、中身は空っぽのようね」
シャーディはクスクスと笑い、
「さぁ、その巨大な置物を破壊しなさい」
「クケェーーーッ!!」
嘶くや彼女の召喚獣の背中から無数の刃が飛び出し、俺様のクマ野郎に向かって攻撃。
軽やかに飛び上がるや、シュシュッと鋭い風切り音と共に、クマの咥えているサーモンを3枚に卸してしまった。
見事な包丁捌きだ。
だが、大好物を奪われた赤カブトはようやく覚醒したのか、その愛らしい瞳がキラーンと光り、
「ガォウッ!!」
咆哮するや巨大な前足でシャーディの召喚獣を踏みつけ、更にガブリと、そのまま咥えてしまった。
「な…」
偽まどかは声も無し。
彼女の召喚獣は、赤カブトの口の中で暴れるが、いつしかグッタリと動かなくなってしまった。
★
「へ、へぇ……凄いじゃない」
消え行く二体の召喚獣を眺めながら、シャーディは漏らした。
「私の召喚魔法に対抗出来るなんて、やっぱり貴方、只者じゃないわね」
「ふ……当たり前だ」
俺は不敵且つステキな笑顔で答える。
「分かったら、そこを退いてもらおうか」
「あら?只者じゃないとは言ったけど、私に勝てるとは言ってないわよ」
本物のまどかが言いそうな事を言うそっくりさん。
「それより、どう?殿下を渡してくれれば、私の一存で貴方を助けても良いわよ。強い魔術師は貴重な存在だからね」
「ほぅ…」
「どうかしら?良い交換条件じゃなくって?」
「そうだなぁ」
言いながら俺は、ゆっくりとチェイムの肩を抱いた。
「素晴らしい条件だが、生憎とチェイムは俺様の彼女(その1)だからな。呑む事はできねぇーや」
「あら?殿下の恋人なわけ?」
少しだけ驚いた様にシャーディ。
この辺りが、本物のまどかとは大分違う。
もしも彼女が本物だったら、きっと今頃、僕ちゃんは血の海の中か、もしくは超土下座の真っ最中だ。
「……そっかぁ。それじゃしょうがないけど、二人とも仲良く捕まってもらうわ」
「ほほぅ……出来ると思うか?」
「もちろんよ♪でもその前に、貴方の名前を教えてくれる?最悪、死んじゃったら聞き出せないからね」
彼女のおどけたような口調に、俺は笑いながら答える。
「神代だ。神代洸一。大魔王にしてパインフィールドの守護天使。またの名を学園の赤き核弾頭」
だが、名乗りを挙げた途端、その場の空気が一変した。
取り囲んだ兵士達は蒼ざめながら、少しだけ後ずさる。
余裕の表情だったシャーディも、キッと眉を吊り上げ、真剣な面持ちになった。
「そ、そう。貴方が大魔王。帝国の騎士団を壊滅させた男……」
「まぁな」
俺は笑顔を絶やさずに、剣を構えた。
「さて、お遊びはこれまでだ。死よりも恐ろしい目に遭いたくなければ、素直に道を開けろ」
「……ふ」
彼女はスッと目を閉じ、何やら力を込めるように小刻みに体を震わせた。
脳の血管が切れやしないか、ちとドキドキだ。
「お、おいおい……なんだ?大丈夫か?もしかして癲癇持ちか?」
「……」
ギュッと結んだ彼女の口から、何やら搾り出すような声が漏れて来る。
「きゅ、究極召喚だ」
チェイムが呟いた。
「は?究極召喚?」
何それ?厨二?
「少し拙いぞ、洸一。シャーディのヤツ、召喚獣ではなく本物の悪魔を呼び出すつもりだ」
「……悪魔?」
俺が首を捻っていると、いつしか晴れ渡っていた空に黒雲が立ち込め、何やら生暖かい風が吹いてきた。
取り囲む兵士達も、おっかねぇのかキョロキョロと辺りを不安そうに眺めている。
「ふ…ふふふ……大魔王に対抗するには、こちらもそれなりの魔神を召喚しなくてはね」
「へ?」
「出でよッ!!」
サッとシャーディーが両の手を掲げると、いきなり俺と彼女の間に竜巻が沸起り、その中心に一つの巨大な魔方陣が描かれた。
そしてその中から、影が一つ、浮かび上がって来る。
「ふふ……異界より恐るべき最強の魔神を召喚した。大魔王とて敵ではないわよ」
「チッ」
俺は舌打ちと共に、両の手で剣を構えて臨戦態勢を取る。
が、しかし
「あ、あれれれ?」
「……ほぅ」
薄れ行く風の中から現れたのは、漆黒の長い髪に巨大な角を生やしたグライアイだった。
「何じゃ、人の子ではないかえ」
そして何やら可笑しそうにコロコロと笑う。
「つくづく、妾とそなたは縁があるようじゃなぁ」
「……どーなんってんの?」
俺はポリポリと頭を掻いた。
「さぁな。妾は召喚されたゆえ……ま、妾を召喚すること自体、中々な術士のようじゃがな」
グライアイはサッと長い髪を片手で掻き上げ、赤い瞳で俺を見つめた。
「それにしても、早くも一人目と同調できたようじゃな。幸先が良いぞえ」
「まぁな。二人目ももうすぐだぜ。……多分」
「ふむ…」
彼女は軽く頷き、そしてシャーディに振り返った。
「悪いが召喚師よ。妾はあの者と闘う事は出来ぬぞえ」
「な、何故ですッ!?」
シャーディが驚愕の表情で声を上げる。
「あの者は、妾に関わりが深い者ゆえな。それに闘ったとしても、媒介者が相手では……どうしてもと言うのであれば、契約料は魂100万人分じゃ」
「な…」
「悪いが、そう言う事じゃ」
彼女はそう言って話を打ち切ると、再び俺の方に向き直り、
「では、一刻も早い帰りを待っているぞえ」
笑みを溢し、そして霞み掛るようにして消えてしまったのだった。
★
「こ、洸一……今のは……」
クイクイっと俺の服の袖を引っ張りながら、チェイムが尋ねてきた。
「あ、ああ……彼女は魔神だ。魔界屈指の魔神だ。名前はグライアイ。ちょいとおっかないが、それでもまぁ……話の分かるナイスレディだ。ま、ちとあって長い付き合いでなぁ」
「魔神……」
「おうよ。彼女がこの世界に俺を送り込んでくれたんだ。問答無用でな」
言いながら俺は、取り囲む兵士達と蒼ざめたシャーディを見渡し、
「さて、取っておきがダメだったようだが……それでもやるか?」
「くッ…」
歯軋りが聞こえそうなほど、シャーディは苦虫を潰したような顔をしていた。
「ふふーん……さぁ、どうする?今すぐに道を空けるならば良し。さもなくば……キツツキの仲間のノグチゲラに姿を変えてやろうか?」
しかも特別天然記念物なのだ。
「さぁ……どうするんだっ!!」
俺は声を大にして一歩前へ踏み出すと、一人の兵士が武器を放り投げ、「ウキャーッ」とモンキーのように叫んで遁走。
それに釣られてか、残った兵士達も蜘蛛の子を散らす様に逃げて行く。
いやはや……
大魔王という呼称は、意外に怖れられているんだなぁ、としみじみ思った。
「さて、残ったのは……まどか二号だけか。どうする?僕チンに挑むかい?」
「くッ…」
「俺様は女に手を挙げる趣味はない。何故ならジェントルメェンだからだ。だが、降り掛かる火の粉は払わなければならん」
「な…舐めるな大魔王ッ!!」
シャーディは怒気も顕に、俺を見据えて吼えた。
どうやら余裕が無くなり、本性が現れて来たようだ。
「例えこの身が引き裂かれようが、帝国随一の魔導師と呼ばれたこの私が、おめおめと敵に背を向けてなるものかッ!!」
「あ、いや別に……引き裂きはしないんだけども……」
具体的に言うと、ノグチゲラになってもらうのだ。
「黙れーーーッ!!」
彼女はヒステリックに叫ぶや、両の手をしっかりと重ね合わせて呪文詠唱。
本当に脳の血管が切れるのではないか?と思うぐらいに眉間に皺を寄せて精神集中していた。
と、チェイムが一歩前に出て、
「や、止めろシャーディ!?通行人を巻き添えにする気か!!」
慌てた様に叫んだ。
「お、おいおい、穏やかじゃないねぇ」
「の、呑気に言ってる場合かッ!!アイツの唱えているのは極限魔法だ!!早く止めないと、この辺り一帯が吹っ飛ぶんだッ!!」
「そ、そうなのか?」
俺はドキドキしながら辺りを見渡す。
街道には、遠巻きに俺達を眺めているギャラリーの方々が……
しかも子供連れまでいる。
こいつはちょいと、ヤバイんでないかい?
「……チッ」
俺は剣を構え、シャーディに対峙した。
彼女は一心不乱に、何やらややこやしい呪文を唱えている。
ぬぅ……しかしどーすりゃ良いんだ?
今すぐ攻撃しても良いのか?
し、しかし、無抵抗な婦女子に手を挙げるのは、ちょいと気が引けるにゃあ。
そんな事を考えていると
「ま、待て洸一!!迂闊に攻撃はするなッ!!」
「へ?」
「既にシャーディの周りに過剰な魔力が充満している。外部から刺激を与えれば、暴走するかもしれないぞ」
「そ、そうなのか?」
確かにチェイムの言う通り、シャーディの周りには何やら火花すら散っていた。
その姿自体、陽炎のように歪んで見える。
しかし、攻撃してはいけないと言うが、ならばどーやって彼女を止めれば良いのだ?
やはり変身魔法?
いや、更に魔力を注入したら、それこそ大変な事になりそうだ。
「こ、洸一!!何とかしろッ!!」
「や、何とかと言われましても……」
どうしよう?
逃げようか?
いや、それはさすがにねぇ……
取り敢えず、このシャーディの魔法が、他人様に迷惑を掛けない様にするには……
ふむ、空間ごと遮断するのはどうじゃろう?
俺は握り締めた剣に向け、頭の中で想像したイメージを投影した。
すると眩い光と共に、俺達とシャーディをドーム状のピンク色掛かった薄透明バリアが覆い、外部との空域を遮断した。
「よ、よし。これで被害は広がらないな。上出来で御座る」
「ば、馬鹿か洸一ッ!!」
俺の満足気な台詞をチェイムの怒声がかき消した。
「なんで私達までこっち側にいるんだ!!シャーディだけ閉じ込めれば良いじゃないかッ!!」
「……あ、なるほど」
俺はポンッと手を打った。
「そいつは気付かなかったにゃあ。盲点で御座る」
「だ、だからお前は馬鹿って言われるんだッ!!もしこんな密封された空間で魔法を使われたら……」
「……全て無に帰すのよ」
低く重い、シャーディの声が響いた。
見ると彼女は両手を軽く広げ、ニヤニヤと笑っていた。
その体の中心には、青白く光る玉が浮いている。
「わざわざ死に場所を作ってくれるなんてねぇ……有難い大魔王だこと」
そんな事を呟く彼女の瞳は、何だか僕の知らない世界を見ているようであった。
「ちょ、ちょいとお待ちなせぇ、お嬢さん。ここは一つ冷静になるべきだと、僕チンは思うんだけど……」
「……」
「そ、そうだぞシャーディ。ここで魔法を唱えれば、お前だって確実に死ぬぞ」
だが彼女は、そんなチェイムの言葉を鼻で笑うと、
「それがどうしたの?私は死よりプライドを選ぶわ」
と言った。
うむ、実に困った魔法使いだ。
俺もプライドは高い方だけど、死ぬぐらいだったら土下座して靴だって舐めちゃいますよ。
「シ、シャーディ……」
「フフ……本当言うとね殿下。私、貴方が大ッ嫌いだったの」
「なっ…」
「ぬぅ…」
嫌な事を嫌な時に言いますねぇ。
なんて痛い女なんだか。
「知ってた?私はヴィンス伯爵が好きだったってこと。もちろん、彼が悪党だってのも知ってたわ。だけど……それでも好きだったの。でも、彼は自分の野心の為に貴方を選んだ。しょうがないわよねぇ……だって貴方は皇族ですもの。だけど、私にはそれが嫉ましかった」
「……」
「だけど貴方は、彼の正体を知って逆襲に出たわ。しかも殺さずに床に埋め込むなんて……私はそれが許せないの。いっそのこと、死を与えれば良いのに」
「……」
や、埋めたのは僕チンなんだけどねぇ……
「……結局、シャーディもあの男に誑かされていたのか」
ポツリとチェイムが漏らすと、彼女はせせら笑った。
「そうよ?それがどうしたの?例え利用されようが、私はあの人が好き。ただそれだけよ」
「シャーディ…」
「ふふ……そしてね、伯爵は私に言ったわ。貴方を捕らえるか、殺せって。分かる?あの人が私に頼みごとをしてくれたのよ?床に埋まりながら悲しそうな顔で私に頼むのよ?私は……命に代えてもそれを遂行するわ。だって、初めて私を頼ってくれたのですもの」
言い終わるや、彼女は勢い良く両手を天に翳した。
「話はこれでおしまい♪私は大魔王と反逆者を殺した魔導師として後世に名を残すわ」
「――ッ!?」
い、いかんッ!!
俺は咄嗟にチェイムの腕を掴んだ。
それと同時に、眩いばかりの閃光が結界で覆われた空間を埋め尽くして行く。
ぬぅッ!?
体が千切れそうな衝撃。
薄れ行く意識の下、シャーディの笑い声だけが木霊していた。




