#39
時を同じくして…酔月の施した封印を何とか解き放つ事に成功した妖魔。
不完全な封印は霊札と共に弾け飛んだ!!
『…ファハハハハハハッ!!
思ったよりも…早く封印が解けたぜ。
取り込んだコイツのおかげか…生まれ変わったみたいだぜ!
今までで最高の気分だ!!
ファハハハハハハハハッ!
コイツは…好都合だぜ。
なによりも人間らしく話せているしな。
だが…まだまだ…だ。
オーラも全然…足りない。
むぅぅ……餌を探すか!?』
妖魔は…酔月と激闘した崖から…何も躊躇せずに勢いよく飛び降りた。
そのまま重力の法則に従って弧を描いた!!
ゴツゴツとした荒々しい岩肌が剥き出しの地面へ直滑降で死のダイビングかと思うや否や…上体を反らすように身体を持ち上げると……………。
背中から…コウモリの羽根を、さらに不気味にしたような赤黒く毛むくじゃらな羽根を生やして…どこかへと飛び去って行くのであった。
酔月の衣服を突き破り…生えた羽根からは、ベチョベチョと汚ならしい音を立てて…腐ったように黒みがかった緑色の粘液が滴っていた。
その粘液に触れた箇所からは…沸騰したようにシュウシュウと音を立てて紫がかった煙が細く立ち上り…見る間にグチャリと溶解していくのであった。
妖魔は…一体、何処へと向かっているのだろうか?
……時間は、円月が鏡月に麒麟を託して…彫魂神殿の外から、これからの展開に胸踊らせて期待していた所まで戻る。
円月は爆発的な鏡月の霊力に驚愕していると…それはふいにやってきた。
先程までとは明らかに段違いな邪悪さで…殺意に満ち満ちた強烈な妖気を感ぜずにはいられなかった。
円月くらいの霊力を持ち合わせる者であれば…相手の力量など簡単に推し測る事が出来ようものであったのだ。
だが…その妖魔が向かう先が古くから紫雲一族の隠れ里と呼ばれたていた月里村なのでは無かろうか?…と思うと居ても立ってもおられずに飛び出して行くのであった。
「むざむざ…尊い命を踏みにじられてたまるものか!
鏡月が麒麟様の力を手に入れるまでは…何としても、何としても食い止めてみせねば。」
酔月が使っていた高速移動術・脱兎を難無く使いこなしている事だけで…円月がどれくらいの霊能力者であるのかが推測出来たのである!
「この里の者達を一人足りとも…妖魔の餌などにしてなるものか!」
円月は…昔、里に住む若夫婦を妖魔から救えなかった事を思い出すと、非力だった頃の悔しさから苦々しく唇を噛み締めたのであった。
ふと…妻・陽子の言葉を思い出す。
飛び出していく円月に彼女は…こう言った。
「もう…あなた一人で全てを背負おうなんて思わないでくださいね。
いまは…あの子達がいるのですから。」
ヒュンヒュンと肩で風を切って…ぐんぐん進む。
円月の視界に月里村が入ってきた。
しかし…すでに妖魔が里に住む人々を喰らおうとして暴れていたのであった!
残酷なる運命を告げる時計の針は…十二時を向かえようとしていた。
新たなる謎と招かれざる来客が…さらなる災厄となる事をまだ誰も知らなかった。




