#36
《少々…私の力を甘く見過ぎだったな妖魔め…ッ!!》
酔月の起死回生となる最後の抵抗は見事に成功した。
現在の酔月の身体は…全身麻痺に近い状態で…例えるのなら、日本人であれば…誰しも経験した事のある、長時間…正座をした後の足に襲い掛かる『あの』感覚に近かった。
あの独特な自分の足なのに他人の足でも、すげつけられたような違和感を覚える。
麻痺に近い感覚に加えて…かなりの重量の手枷…足枷をつけられたような束縛感を肉体に覚えながらも霊札を張り付けてみせたのだった。
《残念だが…私の命…全てを使い……キサマを封印してみせる。
………カァァァッ!!
念神封呪ッッッッッ…!!》
『ヤ…ヤメロォォォォッッ!!』
支配されたかに思われた酔月の身体に『魔』を封じる高等霊術が施された。
すると…身体中が見る間に…パキパキと音を立てて、凍り付くように石化し始めたのである。
『グワァァ…ァァァァヲ…ヲヲッ…………ッ!!!!!!』
その妖魔の叫び声さえも石化していくようにシーンと静まり返った。
これで…全てが終わった!?
酔月という勇敢な青年の尊い犠牲によって安息な日々へと戻ったのだった。
……………………………。
……ピキ…パキキ…ッ!!
………だが…しかし、酔月の命懸けの高等霊術も完全には成功してはいなかったのだった。
「……フッ…………フフフハハハハハッッ…!!!!!!」
いまだ…石像と化している妖魔が身動き取れぬままに笑い声をあげた。
「………クケケケケッ!!
オド…ロイタゼ………ドウヤラシ…ッパイ…シヤガッタミタ…イダナ。
シ…カシ……イマイマシイ…コノ……フウイ…ンヲト…クニハ…ソウト…ウ…ジカンガカ…カリソ…ウダ。」
……………………………。
その言葉通りであった。
あの妖魔の身体には…血管のように張り巡らされた聖なる力が…障害となり…すぐには動けそうには無かったのである。
しかし…着実に亀の歩み程のスピードではあるが、その体内に邪悪なる力を蓄え始めていた。
「フフフ…ハンニ…チモ…アレバ………フ…ウイン…ヲトイ…テミ…セル……ワァ!!」
時は…また少しづつ運命をも無慈悲で残酷なる方向へと…その針を進めていた。
まもなく…明朝八時を迎えようとしていたのであった。




