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ソウルズ!麒麟覚醒篇  作者: オレンジタイフーン


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25/28

#55


 

なんだか…リンが鏡月の母親のようにも見えてしまうのであった。

 

 

大切な我が子を抱きしめているように………

 

 

 

涙を溜めて潤んだ瞳で…いとおしそうに、きつく抱きしめるリンの胸の中で…もぞもぞと苦しそうに鏡月が動くのを感じた。

 

 

 

その事でリンは無意識に、ギュッと強く抱きしめていた事に気が付いて…抱きしめている腕の力をスッと弱めたのであった!

 

 




 

 

リンは静かに眠り…スヤスヤと寝息を立てている鏡月の頬に、そっと軽く触れてみた。

 

 

もう…いつもと変わらないくらいに、ほんのりとした桜色の温かな肌の感触にホッとするのだった。

 

 

頬に触れていた手を額にまで輪郭をなぞるように持って行くと幾度となく…ゆっくりと優しく頭を撫で上げてやるのであった。

 

 

まもなく目覚める鏡月に血の匂いに咽ぶ…地獄のような惨劇をコレでもかと言うくらいに見せつけて…それが夢や幻の類いではなく、現実なのだと告げるのを躊躇うようにも見受けられた。

 

 

リンも…また…これが夢であればと、鏡月が修行するだけの十分な時間が有ればと…もはや叶わぬ願いとは知りつつも、今は…今だけは願わずにはいられなかったのであった。

 

 

妖魔は焼け野原となった地上を見ると満足そうにニタリと薄く笑ったのだった。 

 

次は生き残った鏡月をどうやったら楽しんで殺せるかな?…とランチのデザートを何にしようかと昼の休憩前にワクワクしながら思案しているOLみたいな幸せそうな顔をしていた。

 

 

そんな理解出来るような幸せではなく…もっと愉悦に満ちた感情からの笑みだったのかも知れない。

 

 

 

そんな絶体絶命の窮地に陥っているものだとは露知らず…意識を取り戻した鏡月が気だるそうに欠伸をした。

 

 

 

「ふぁぁ~ァァ…ッ!

 

ん…まだ眠た……あれ、リンか?

 

ふぁぁ……おはよ~。」

 

 

 

リンの柔らかな膝枕の上で瀕死だった鏡月は子猫のように顔をくしくしと手の甲で擦ると…目を覚ましたのであった!

 

 

眠気まなこから朧気に霞んで見えるリンの頬を返り血と涙が濡らしているのに気付いた。

 

 

 

リンの瞳は哀しみと絶望に彩られていた。

 

 

 

その表情に我に帰ったように全てを思い出したのだった。

 

 

鏡月は…ハッとしてリンに訊ねた。

 

 

 

「すまない…あれから、何が起こったんだ。

 

リン、母上や美月は無事なのか?」

 

 

 

鏡月は…リンの柔らかな膝枕からムクリと起き上がるのだった。

 

 

鏡月の瞳に飛び込んできた視覚を通してえられた情報……

 

 

 

 

それは空を蹂躙する妖魔の姿と…空爆でもあったのだろうかと思える程に変貌した我が家の姿であった。

 

 

 

廃屋と化した我が家に茫然としつつ…改めて、リンの方向へと振り返り、事の成り行きを聞こうとした。

 

 

 

その時…鏡月はリンの身体中が、あまり酷くズタズタに引き裂かれ…痛々しい傷だらけになっていることに気付かされた。

 

 

 

「リン…どうした酷い怪我をしているじゃないか?」 

 

 

座り込んだままのリンに近寄ると心配そうに顔を覗き込んだのであった。

 

 

 

「一体…どうしたと言うのだ、妖魔にやられたのか?」

 

 

鏡月が答えの分かりきった質問をしたのであった。

 

 

 

すると…リンは淑やかな笑みを浮かべた。

 

 

 

『私は人間とは違うオーラの集合体のようなもの…大したことはありません。

 

…それよりも鏡月様は大丈夫なのですか?』

 

 

 

その言葉に鏡月は怒りをあらわにした。

 

 

「………違う、違うよ。

 

リンは人間と同じだ…

 

君が…君自身を人とは思えなくても、私には大切な家族も同じだよ。

 

私は…君が傷付いているのを笑って見ていられるような存在じゃない。」

 

 

リンは嬉しさと気恥ずかしさと鏡月の純粋な心に泣き崩れた。

 


 

「大丈夫…いつもみたいに微笑ってよ。

 

出来るよね…私のリンだもの。」

 

 

今度は鏡月の胸の中で込み上げてくる感情に身を委ねるリンであった。

 

 

 

「どうしたら…リンの傷を癒せるんだい?」

 

 

抱きしめたリンの耳元で優しく囁く鏡月だった。

 

 

 

『注いで下さいませ。』

 

 

 

その言葉を発したリンの胸がトクンと音を立てた。

 

 

リンの言葉の意味を理解出来ずに不思議そうな表情をする鏡月だった。

 

 

 

『鏡月様のオーラをリンに注いで下さいませ。』

 

 

リンは気恥ずかしさから耳まで顔を真っ赤にして…囁くのであった。

 

 

 

「え…っと…リン……オーラを注ぐには、どうしたら良いのかが…私には分からないのだけど教えてくれないか?」

 

 

 

鏡月はリンの照れて真っ赤になったリンゴみたいな顔を見つめたのだった。

 

 

 

『き、き、鏡月様…ッ!

 

あ…あの、その~…えぇ~っと…………』

 

 

リンは益々…真っ赤になって沸騰しそうな程であった。

 

 

「ん…?

 

何か問題でもある事なのかい。」

 

 

鏡月がニコリと微笑んだのであった。

 

 

言い淀んでいるリンは…意を決したように言葉にした。

 

 

『鏡月様…ッ!

 

私と…その口づけをして下さいませ。』

 

 

 

「な、な、何をいきなり言い出すんだ。

 

リンと…私が…キスをする……だって…?」

 

 

鏡月も、突然…リンからの大胆極まりない言葉に顔を真っ赤に上気させた。

 

 

 

「えぇッ!!

 

ち、ち…ちょっと待って、それがリンを回復させる手段なのかい?」

 

 

 

鏡月は思考回路がショート寸前で…しどろもどろに聞き返したのであった。

 

 

 

『もう…時間はありません。

 

鏡月様なら上手く出来ますよ。』

 

 

 

主人に対して失礼と思いつつもリンは…その言葉を口にせずにはいられなかったのであった。

 

 

しかし…リンは勇気をつける為に励ましたつもりだったが、鏡月には逆効果だった様子でカチコチに緊張してしまっていた。

 

 

『しょうがありませんわね…』

 

 

リンは…いつにも増して、大人びた穏やかな笑みを浮かべると…甘えるようなトロンとした憂いのある瞳で鏡月の顔を息が掛かるくらいにまで近づいて覗き込んでいくのであった!

 

 

 

そうして…ゆっくりと焦らすようにリンの方から鏡月の唇を奪ったのであった! 

 

 

鏡月は…あまりの事に目を丸くした。

 

 

そんな甘い感覚に溺れていると………

 

 

リンは一旦…鏡月の唇から離れて、そっと囁く。


 

 

『私の事を想って………

 

今は…嘘でも構いませんから愛して下さいませ!

 

そうすれば…きっと。』

 

 

 

リンは…するりと鏡月の首筋を撫でるように両腕を回して、抱きしめるように引き寄せたのであった!

 

 

 

「ん…リン……。」

 

 

鏡月は無重力の中を漂うような感覚に身を委せる。

 

 

『…………………ぁ…ッ』 

 

リンも頭の後ろが少しだけ痺れるような感覚と、お腹の辺りがキュンと切なくなるのを感じていた。

 

 

リンは…鏡月が意外にも自分を求めるような積極的なキスをしてくれたのに驚かされていた。

 

 

こんなにも過酷で悲劇的な運命の嵐が吹きすさぶ夜にもかかわらず蜜のように甘ったるい、そんなミルクティーみたいな特別な時間が流れていた。

 

 

 

《パァァ~~ッ…ッ!!》

 

 

まばゆい光が瞬いた。

 

 

その光は…鏡月とリンを絹のように滑らかで濃密で、きめ細やかな薄い銀色に包み込むと、静かに…ゆっくりと淡く仄かに輝くのであった!

 

 

 

『奴等、一体、な、何をしたのだ。』

 

 

妖魔には光の中を見透かす事は出来なかったのであった。

 

 

妖魔は…その穏やかで暖かな春の陽射しの木漏れ日の様な光を不愉快、極まりない表情で睨み付けたのだった。

 

 

妖魔にしてみれば…吐き気がするくらいに胸クソ悪い慈愛に満ち溢れた輝きだったからだ。

 

 

生来、闇を好み…そして求め、欲する妖魔にとっては至極…腹立たしい光景であった。

 

 

しかし…汚れなき輝きは妖魔を自然と遠ざけるのであった。

 

 

たゆたうような穏やかな輝きの中で甘美なる時と愛し合う儀式は…未だ費える事なく流れ続けていた。

 

 

 

『ッん……………んぁッ!!……………ッ。』

 

 

「…んッ…………んむ。」 

 

 

リンも…鏡月も…重なり合う唇をくちゅくちゅと水音を立てて、そして蠢くように舌を絡め合わせて…キスを続けていた。


 

 

そうして…鏡月とリンが、ひとしきり、お互いを感じ合い…たっぷりとキスを味わうと何故か離れてしまうのが勿体なげに潤んだ瞳をしたまま、唇から顔を離すのであった。

 

 

リンと鏡月は月明かりに照らされて、唇を繋げるように二人の混じり合った唾液の細い糸が頼りない弧を描きながら銀色にキラキラと輝きを放っていたのであった。

 

 

鏡月とリンは改めて、お互いの顔を見つめ合うと瞬間湯沸し器のようにポッと真っ赤に上気して、もう…それきり目を合わせられないといった様子であった。

 

 

彼らの心の片隅には…無意識に…例え…一瞬であったとしても鏡月もリンも現実逃避をしたかったのかも知れない。

 

 

 

リンは照れながら…ペコリと会釈する。

 

 

 

『あ…あの、その、私は…もう大丈夫ですから……戦いましょう。

 

油断さえしなければ…必ず勝てますから。』

 

 

そんな甘酸っぱい空気を打ち破るように妖魔が空から激怒したのであった!

 

 

『グォォォォォヲッッ!

 

……忌々しいヤツラめ!  

キサマも…さっきのババァやチビみたいに…すぐに殺してやるから安心しなッ! 

ファハハハハハハッッ!』 

 

 

鏡月は…その言葉に身体を射抜かれたのであった!

 

 

 

「…ま、まさか…母上も美月までも殺されたのか?」 

 

 

鏡月は深い谷間と化した境内と廃墟と呼ぶに相応しい光景をぐるりと見渡したのであった!

 

 

鏡月は…人らしき何かが倒れているのに気が付いた。 

 

鏡月は足下を確かめながら人らしきものに近づいていくのであった。

 

 

 

鏡月が…それが何であるのかを理解すると膝を崩れ折って絶叫した!

 

 

「ッ………ぁぁァァァァァァ……………ウワァァァァァァァァァァァァァァーーーッッ…!!」

 

 

 

鏡月は威嚇する犬みたいに低く唸り声を上げると…何が弾けたみたいに大声で絶叫したのであった!

 

 

 

「母上ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェぇぇッッ…!!!!」

 

 

 

鏡月の瞳に映し出された光景は信じ難く…受け入れ難いものであった。

 

 

先程…リンが見た陽子の亡骸の腰から下が妖魔の攻撃で吹き飛んでしまっていて肉片と内臓や破砕された骨の混じった大量の黒ずんだ血液が辺りを濡らしていた。

 

 

吹き飛ばされた衝撃で頭骨は、さらに割れて中身がグチャリと飛び出して、片方の眼球も…けん玉みたいに飛び出していたのであった!

 

 

鏡月は…美月の安否を確かめる為に視線を前後左右にやるのであったが、その姿を見つける事は出来なかった。

 

 

 

『あのチビなら…オレが粉々に吹き飛ばしてやったからな、死骸なんて見つからねぇよ!

 

ファハハハハハハッ…!!』 

 

 

妖魔が残酷な内容をサラリと告げてみせた。

 

 

 

「許さない…許してなるものか、キサマのような存在は生きていてはいけないんだッ!」

 

 

 

鏡月は…妖魔を見上げて睨み付けると烈火の如く、怒りの言葉を吐き出したのだった!

 

 

妖魔は鼻で笑い飛ばした。 

 

 

『フン…出来るものなら、殺ってみるが良いわッ!!

 

ファハハハッ!

 

地上を這いずり回るしか脳の無いキサマ如きに…片腕になったとは言え、このオレが負けるモノかよッ!

 

ファハハハハハハッ!』

 

 

見下すように妖魔が睨み付けていた。

 

 

鋭い眼差しの鏡月と視線が交錯して火花が飛び散るようであった。

 

 

「リンと…ひとつになりたいんだ!

 

妖魔に勝つには…それしか無い。」

 

 

 

リンは…鏡月がソウルズの能力の解放の仕方を口にした事に驚きを隠せなかった!

 

 

同時にリンは…まだ鏡月には…それは無理ではないのかと思わずにはいられなかったのであった。

 

 


 

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