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ソウルズ!麒麟覚醒篇  作者: オレンジタイフーン


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24/28

#54


 

空気をピーンと引き締めるように凄烈な声が響いた。 

 

 

『そこまでよ!

 

いい加減にしなさい!

 

テヤァ…妖魔退散ッ!』

 

 

 

 

《バシュウゥゥッッ!》

 

 

 

 

真白き敬虔なる者だけが放てるであろう聖なる輝きが…リンを掴んでいる妖魔の左腕を消滅させた!

 

 

 

 

リンをなぶるのに没頭していた妖魔の隙を見て…鏡月の母・陽子は巫女時代に着ていた破邪の力を秘めた巫女服に着替え、家宝の破魔矢を携えていた!

 

 

 

同時に…美月も家の中へ避難させてきた様子であった。

 

 

 

いつもおっとりしている彼女からは想像できない行動力と素早さであった。

 

 

 

やはり『母は強し!』と言う事なのだろうか。

 

 

 

リンの喉を締め付けていた左手だけを残して…妖魔の左腕は白銀なる輝きと共に肩の辺りから消滅していた。

 

 

 

まるで初めから左腕が無かったかのように綺麗さっぱりと消滅していた。

 

 

 

リンは喉を掴む妖魔の左手の肉塊を大胆に…もぎ取ると妖魔からフラフラになりながら離れるのであった。 

 

 

 

「リンちゃん、リンちゃん大丈夫………な訳ないわよね。」

 

 

 

抱き止めるようにして…陽子がリンを支えると、リンは申し訳なさそうに口を開いた。

 

 

 

『母君殿…申し訳ありません、もう少し時間稼ぎをしなければ………。

 

主人は…鏡月様は…必ずや、必ずや…憎き妖魔を倒してくれます。

 

きっと…無念を晴らしてくれますから。』

 

 

 

 

「あなたは大丈夫なの?

 

そんなケガをしているのに………。」

 

 

 

陽子は心配そうに言葉をかける。

 

 

 

『えぇ…大事ありません。 

念神体とは…主人の力がみせる幻影のようなものですから。

 

…鏡月様さえ回復すれば、どうということはありません。』

 

 

 

リンは心配させないように微笑んでみせた。

 

 

 

「そうなのね、わかったわ…もう一度、今の破魔矢による攻撃を仕掛けるから、リンちゃんも協力してね。」

 

 

 

陽子はコクリと頷くと…こう言った。

 

 

 

『任せて下さい。

 

あの妖魔の気を引いてみせますから…隙を見て仕掛けて下さいませ。』

 

 

 

声を潜めて、リンが言うと………

 

 

 

「じゃあ、頼んだわよ。」 

 

 

陽子の…その言葉が作戦開始の合図となり、二人は左右別々の方向へ駆け出したのであった。

 

 

 

陽子は右側の木々の後ろに回り込み…仕掛けるタイミングを見計らっていた。

 

 

 

リンは…左側から回り込むようにして、オーラの塊を何度も手のひらから放ちながら妖魔の気を引いてみせていた。

 

 

 

妖魔からしてみればリンの放つオーラの攻撃など水鉄砲で撃たれているようなダメージなど皆無に近いものであったのだが、妖魔の気持ちを逆撫でるのには適していた様子であった。

 

 

 

『クソ…何で、こう次から次へと奇妙な力を使う人間が出てきやがるんだ。』

 

 

 

妖魔は歯軋りをして苛立ち始めた。

 

 

そんな状態の妖魔にリンは飛びっきりの笑顔で、こう挑発した。

 

 

 

『鬼さん…こちら…手の鳴る方へ!

 

ウフフ…こっちだよ~…おし~り~ペンペン!』

 

 

 

リンは…そうやって、わざとらしく演技してみせた。 

 

あっかんべ~と舌を出しながら…おしりを突きだし、ぷりぷりと振って、おまけにおしりを叩いて挑発していた。

 

 

 

もう何だか鏡月が見ていたら果てしなくガッカリしそうな光景であった。

 

 

 

『ぐぬぬぬぬぬぬッッ!』 

 

 

小さく舌打ちをすると妖魔は噴火しそうな程に顔を真っ赤にして地団駄を踏んで怒り出した。

 

 

 

『オレを小馬鹿にしやがって許しちゃおけない。

 

お楽しみは終わりにして、さっさと殺すべきだと言う事が…よ~く解ったぜ。』 

 

 

妖魔は羽を広げると上空へ飛び立とうとした。

 

 

リンは…すかさず妖魔の足にしがみつき絶好のチャンスを作り出した。

 

 

 

『母君殿!』

 

 

空に再び…白銀の霊気が輝やいた!

 

 

もう一度、激しく閃光が瞬くと…そこに妖魔の姿は無くなっていた!

 

 

かなりの衝撃からか…地面が抉られていた!

 

 

リンの掴んでいた両方の足首だけが手のひらの中に残されていたのであった。

 

 

 

『倒したのでしょうか?』 

 

 

リンは辺りを見回して確認してみる。

 

 

上空も地上も…三百六十度見回しても確認出来なかったのである。

 

 

 

『母君殿、お怪我はありませんか?』

 

 

 

やおら…リンが陽子の方へと振り返ってみると……

 

 

 

 

その瞬間…天から大量の血の雨が降り注いだ!

 

 

 

『は…母君殿ォォォ…ッッ!!』

 

 

 

返り血を浴びながら、振り返ったリンの瞳に映し出された光景は脳裏に焼き付ける程に壮絶なものであった。

 

 

陽子が…喜び勇んでリンの元に駆け寄ろうとした瞬間に、地中からモグラが動いたみたいに地表をモコモコと小さな山を五つ作った。 

 

 

そのモコモコした小さな山を貫いて、うねる大蛇の如く…鋭利な槍のような妖魔の爪が五本、一斉に飛び出したのであった!

 

 

 

その爪は…陽子の顎から脳天を一本目が貫き、さらに両肩と心臓を貫かれていた。

 

 

トドメとばかりにヘソの上の辺り…つまりは子宮の辺りを貫かれていた!

 

 

 

陽子は…即死だった。

 

 

 

割れた頭骨から脳ミソが飛び散り…そこから血が噴水のように噴き出していた! 

 

 

他にも千切れた臓物や肉塊や砕けた骨が血と混じり…吹き出していたのだった。 

 

 

身体中の力は抜け…ぐったりとしていて、土気色をした顔だったものから白目を剥いて泡を吹いている事も確認できた。

 

 

 

妖魔は爪をヌチャリと引き抜くと…オモチャに飽きた幼児みたいにポイと放り投げたのであった!

 

 

宙を高く舞い上がる陽子の身体中に空けられた穴からは…流血の雫と綺麗な星空が皮肉にも輝いて見えたのだった。

 

 

その星空を飾る綺羅星の一つとなってしまった事が皮肉だったのかさえ…リンには何もかもが分からなくなってしまっていた。

 

 

 

地中から引き抜いた右腕一本を使って…地上へと這い上がると妖魔はニタリと満足気に笑い、羽を広げて上空へ舞い上がった。

 

 

見上げたリンの視界に飛び込んできたものは……

 

 

 

スパッと切れてしまった妖魔の両足首であった。

 

 

 

あの瞬間…妖魔は自ら、両足首を切断して地中へと退避していたのであった。

 

 

 

『カァァァッ!』

 

 

 

力を込めるように歯を食い縛り、息むと……

 

 

両足首がスバァッと生えてきたのであった!

 

 

 

『な…左腕が再生しない!? 

あの女ァァ…何をしやがったんだッ!!』

 

 

 

妖魔は…ワナワナと肩を揺らして破魔矢の効力のひとつに驚愕していた。

 

 

 

『まともに食らっていたら死んでいたのは、このオレか……』

 

 

 

妖魔は独り言ちた。

 

 

 

妖魔は嬉しいのか悲しいのかが判らない笑い声を上げると…次の標的を決めた。 

 

 

『ッ…フハハハハハッ!  

なるほど…考えを改めねばならないな。

 

この世界には能力者ではない人間でも強いヤツがゴロゴロ居やがるって事をなぁ!

 

肉体の強さでもオーラの強さでもない強さか…

 

フハハハハハ!

 

ククク…フハハハハハーッッ、面白い…面白いぞ。』 


 

 

品定めでもするように地上をぐるりと見渡すと…鏡月達が食事をしていた離れや建物に向けて凄まじい破壊力のある放射状のオーラを放った。

 

 

妖魔のオーラと殺気が…より強力に…そして鋭くなるのを感じて、リンは鏡月の元におっとりがたなで駆け寄り…抱きかかえ…その攻撃を危うくも避ける事が出来た。

 

 

それは津波が押し寄せるような圧倒的なプレッシャーを感じさせるモノでもあった。

 

 

妖魔はガコン!!…と顎が外れんばかりに口を大きく開くと、その喉元が煌めいた瞬間に放射状に広がる閃光が真っ直ぐに地上へと伸びてきた!

 

 

 

恐ろしく強烈な閃光は底が見えないくらいのとんでもない大穴を幾つも空けていたのであった!

 

 

 

そして…それは美月の死を意味していたのだった!

 

 

受け入れ難い事実だが紛れもない事実でもあった。

 

 

 

リンは…パタリと消え失せてしまった美月の霊力に愕然としたのであった。

 

 

 

どんなに美月の霊力を探そうとしてみても、どこにも塵や芥ほどの霊力さえ感じ取る事が出来なかった!

 

 

 

抱きかかえている鏡月を無意識にきつく…きつく抱きしめていた。

 

 

 

リンは鏡月が返り血でベトベトになるのも構わずに抱きしめ続けていた。

 

 

 

『く…うぅ…鏡月様…鏡月様……鏡月様ーァァァァァァァァァァァァァァァァァァ………ッッ!!』

 

 

 

夜空にリンの絶望と悲哀に満ち溢れた声が響いたのであった!

 

 

 

その叫び声の中でリンは意味深な言葉を漏らしたのであった。

 

 

 

『お兄様ァッ…鏡月様は双月様とは違います。

 

ですから…ですから…

 

力を御貸しください。』

 

 

誰の耳にも届かないくらいの小さな声でポツリと呟いたのだった。

 

 

 

 

果たして…たった一人残された鏡月に待ち受けている運命とは………

 

 

紫色に染まった真円を描く月だけが不穏なる光で鏡月達を照らし出すのであった。

 


 

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